印刷用紙:B4縦 1ページの行数:66 1行の文字数(半角で):106   −−以下 指導案本文−−   国 語 科 学 習 指 導 案 日 時 平成8年10月7日(月)5校時 学 級 3年1組(男子18名 女子15名 計33名) 授業者 ・橋 早依子 1.単元名 六 古典を味わう 東下り−−−「伊勢物語」から−−− (光村図書 国語3年) 2.単元について(教材について)   本単元は、中学校三年間の「古典入門期」の学習のまとめにあたり、第一学年・第二学年の古典学習を発展させ た総合的役割を担う単元である。第一学年「古典との出会い−−−昔の文章に出会い、現代とのつながりを考える」 、第二学年「古典に親しむ−−−古典の文章に読み慣れ、古人の心に触れる」を受け、本学年では「古典の文章を読 み味わい、作者の感じ方・考え方をとらえる」ことをねらいとしている。単元は、和歌(万葉・古今・新古今)・歌 物語(伊勢物語)・俳諧紀行文(おくの細道)の古文三教材と、漢文一教材(論語)から成っている。韻文、及び韻 文と散文の融合から成る教材の配置は、日本文学の系譜を考えさせ る要素をもっている。「伊勢物語」は歌物語(和歌を中心に構成された物語)の頂点ともいうべき作品であり、在原 業平と思われる男の一代を和歌を中心とした短い物語で綴ったものである(全125段)。散文により作歌の状況を 理解することで、和歌に表された心情を読み味わわせたい。「東下り」(第9段)は、主人公の「男」の旅立ちの場 面である。何かの事情で都にいても仕方がないと思い込んだ「男」が友と東国に旅立つ。しかし、都から離れれば離 れるほど、望郷心 や恋人への思慕が高まっていく。行為と思いの矛盾(「旅の心」)が主題といっていいだろう。 「旅をする」ということは、今と違い非常な困難と強い意志・決意を伴うものであったことも理解させたい。中学三 年生は人生の岐路に立ち、将来の生活や自己のあり方に思いを巡らすようになる時期である。そういう時期に、一人 の男の旅立ちを通し、自立や人生のさまざまな姿を写す古典に接し考えさせることは、意義あることと考える。 3.単元目標  1 文語の調子や和歌の定型のリズムを音読により味わうことができる。 2 脚注や解説を参考にし、物語の展開を理解できる。 3 当時の人々の生き方・考え方に触れ、現代と比べることができる。  4 文語の表現・語句・語法に関心をもち、現代語との違いに気づくことができる。 4.単元の指導計画 1 君待つと−−万葉・古今・新古今−− 5時間  2 東下り(「伊勢物語」から)      4時間         ・全文通読  課題設定 「伊勢物語」(歌物語)について ・・・・・1時間     ・音読 大意をつかむ(現代語訳) 和歌の修辞について  ・・・・・1時間     ・内容の読み深め  主人公の「旅の心」をとらえる    ・・・・・1時間(本時)     ・まとめ(感想) 当時の人々と現代との比較       ・・・・・1時間      コラム「古文の言葉遣い」   3 夏草(「おくの細道」から)      5時間  4 学びて時にこれを習ふ(「論語」から) 3時間 5.生徒の実態   明るく活気ある学級であるが、発言となると他人任せで、消極的になりがちである。男女数名ずつの反応の早い 生徒の挙手発言に頼っているところがある。一問一答型の簡単な発問に対する反応はよく、一人一人が考えようとす る姿勢が見られる。  古典教材については、抵抗感を持っている生徒が大部分である。事前調査によると古典学習について「難しい」と 答えた生徒が24名(33名中)であった。理由は「意味が分からない(15名)」「言葉の変形・仮名遣い・どれ が動詞か、等表現が分からない(5名)」「読みづらい、読めない(3名)」などで、見慣れない表現や言い回しに てこずり十分に読みこなせていないことが分かる。一方で古典はつまらないと感じている生徒は11名(33人中) であり、難しくてもおもしろいと感じている生徒が多い。「現代文とちがう」「歴史とかそういうのが好き」「国語 では古典がいい」「いろいろな意味があるから」など、興味をもっている部分も様々である。一年生の時から取り組 んでいる「百人一首」の暗唱やゲームにも高い関心を示している。そこで、本教材では、古典の文章に楽しみながら 慣れ親しませるために音読に重点をおき、声に出してリズムをつかむこと、言い回しに慣れることを目指したい。ま た、意味を確認するために、穴埋め式の学習プリントを用意したり、イラスト(マンガ)を用いることで、抵抗なく 現代語訳ができるよう配慮する必要がある。 6.本時の指導構想   前時までに「伊勢物語」の大まかなあらすじは確認されており、本時は主人公の旅先での心情(「旅の心」)を  つかむことを主なねらいとしている。   まず、文語のリズムに慣れさせ、味わわせるために、全体で本文を音読(分かち読み)させたい。分かち読みを  することにより、全員が声に出すだけでなく、どこを読んでいるのか注意して聞くこともできると考える。   また、主題をつかむ部分においては、生徒の自主的、相互協力の学習により古典作品の世界への興味・関心を深  めることができるよう、グループの学習形態を取り入れたい。 7.本時の達成目標 @ 「男」たちの様子から、当時の人々の「旅の心」が都を離れれば離れるほど高まる望郷心と帰るに帰れない事    情にあることを理解できる。  A グループでの話し合いに積極的に参加し、自分の考えを発表したり、他の人の考えを聞くことができる。 B 古文のリズムを生かし、声に出して本文を読むことができる。 8.本時の展開 +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ | | 学 習 内 容 | 目的 | 方法 | 形態 | 指導上の留意点 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ | |1.前時想起 | | | | | |導| 「東下り」の場面の流れをイラストを用いて確認| | | |・イラスト(マンガ)| | | する。 | | | |を描いた紙板書を用意| | | | | | |しておく。 | |入| | | | | 」「 」 | | |2.本時の課題確認。 | | | | 。 | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | | +−++「男」たちの様子から、当時の人々の旅の心を++−−−−+−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ | ||考えよう。 || | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | |・グループごとに一文| | |3.全文を音読し内容を確認する。 ( ) | | | |ずつ回し読みをする。| | | | | | |和歌は全員で読む。 | | | | | | |※声に出して音読して| | |4.内容把握。 | | | |いるか。 | | | 1「男」がなぜ自分を「要なきもの」と思ったの| | | |・前時に考えておくよ| | | かを想像し、旅立ちの意図を考える。( ) | | | |うに指示を出しておき| |展| ・小グループで確認 | | | |ここではすぐ確認がで| | | ・全体で発表し合う。 | | | |きるようにしておく。| | | | | | | | | | | | | | | | | 2前半(八橋)と後半(隅田川)の場面で詠まれ| | | | | | | た歌や人々の様子を比較して、共通点と変化を| | | | | | | 考える。 | | | | | | | ・個人で考える。プリント記入。 (5) |読み取る|考える |個 人 |・考えたことをプリン| | | | |メモする| |トにメモすることを指| | | | | ↓ | ↓ |示する。 | | | | ↓ | | | | |開| ・小グループで話し合う。 (1) | ↓ |話し合う|グループ|※個人のメモをもとに| | | | ↓ | | |全員が話し合いに参加| | | | ↓ | | |しているか。自分の気| | | | ↓ | ↓ | ↓ |づかなかったことに気| | | | ↓ | | |づくことができたか。| | | | ↓ | | | | | | ・個々に発表し、全員で確認し合う。(1) |深め合う|発表する|一 斉 |※他の意見を聞き、自| |35| | | | |分の考えを深めること| |分| | | | |ができたか。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ | |5.まとめ | | | | | | | 「男」たちの旅の心を自分のことばでまとめる。| | | | | |終|(時間があれば、一度全文音読をする。) | | | | | | | | | | | | | |6.次時の予告 | | | | | | | 次時は「男」たちの旅の心をまとめた文の交流と| | | | | |結| 現代人の考え方との比較をすることを予告し確認| | | | | | | する。 | | | | | | | | | | | | |10|7.自己評価をする。 | | | |・自己評価カードを用| |分| | | | |意する。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+                                           ※は評価の観点 9.本時の評価の観点   @ 「男」たちの様子から、当時の「旅の心」は都を離れれば離れるほど高まる望郷心と都を離れ     ざるを得ない事情の絡まり合った複雑なものであったことを理解することができたか。    A グループでの話し合いに参加し、自分の考えを発表したり、他の人の考えを聞くことができたか。   B 古文のリズムを生かした音読ができたか。           国語科  「六 古典を味わう」  目標分析表 +−−−−−−+−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | 観 点 別 到 達 目 標 | | 教 材 |時間| 指導目標 +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | 国語への関心・意欲・態度 | 表現の能力 | 理解の能力 | 言語についての知識・理解・技能 | +−−−−−−+−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |君待つと | 5| ( 省 略 ) | +−−−−−−+−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | |・作品について概略|・教科書(P202)の出典概| |・「伊勢物語」の成立時代、作| | | | |を押さえて説明でき|略の大切なところに線を引き、| |者、主人公であると思われる人| | | | |る。 |身につけようとする。 | |物、歌物語についてまとめ、説| | | | |・仮名遣いに注意し|・恥ずかしがらずに大きな声を|・仮名遣いに気をつけながら、|明することができる。 |・歴史的仮名遣いの部分を指摘し、現| | | |正しく音読できる。|出して音読しようとする。 |自分の力で正しくはっきりと音| |代仮名遣いに直すことができる。 | | 東 | |・疑問点をもとに学|・進んで疑問点や感想を書こう|読できる。 | | | | | |習課題をもつことが|とする。 |・自分の言葉で疑問点をメモ用| | | | | 1|できる。 | |紙に記入することができる。 | | | | +−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 下 | |・物語の展開を理解|・脚注を手がかりにして、現代|・声量、間、速度に注意しなが|・「男」の旅の経過を説明でき|・省略された助詞が指摘できる。 | | | |し、作品の大まかな|語訳の作業に進んで取り組もう|ら音読できる。 |る。 | | | | |内容を説明できる。|とする。 | |・和歌の意味を説明できる。 |・和歌の修辞(枕詞、序詞、縁語、 | | | | | | |・「伊勢物語」第8段までの内|掛け詞、折り句)を確認することがで| | り | 1| | | |容を知ることができる。 |きる。 | | +−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | |・八橋、隅田川の場|・グループでの話し合いに進ん|・文章の調子、リズムを生かし|・「男」が旅先で詠んだ二首の| | | | |面から「男」たちの|で参加し、自分の考えを発表し|た音読ができる。 |歌や人々の様子を比較すること| | | ( | |様子を読み取り、古|ようとする。 |・「男」たちの「旅の心」を自|で、当時の人々の「旅の心」を| | | | |人の「旅の心」につ| |分の言葉で書くことができる。|理解し説明することができる。| | | 「 | |いて考えることがで| | | | | | 伊 | |きる。 | | | | | | 勢 | 1| | | | | | | 物 +−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 語 | |・当時の人々の生き|・「男」たちの旅についての考|・日本人の「旅の心」について| | | | 」 | |方、考え方について|え方と、現代の考え方を比較し|自分の考えをまとめて200字| | | | か | |現代と比べながら考|て、自分の言葉で表現し、説明|程度で表現できる。 | | | | ら | |えることができる。|しようとする。 | | | | | | |・「古文の言葉遣い」 | | | |・文中に使われている「係り結び」を| | ) | |(P203)を読み| | | |指摘することができる。 | | | |、古文特有の表現を| | | | | | | 1|説明できる。 | | | | | +−−−−−−+−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 夏 草 | 5| | +−−−−−−+−−+ ( 省 略 ) | |学びて時にこ| | | |れを習ふ | 3| | +−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+