印刷用紙:B4縦 1ページの行数:51 1行の文字数(半角で):120   −−以下 指導案本文−−   第3学年   国語科学習指導案                        日 時  平成8年10月1日(火)5校時                        対 象  第3学年(男子2名,女子1名,計3名)                        指導者  須 藤  淳 1.単元名   五.現代社会を考える 〜文章の展開に即して内容をとらえ、現代社会について考える〜               教材名   「金星大気の教えるもの」(光村図書 国語三) 2.単元および教材について  (1)教材観                 中学校での国語学習の締めくくりにある三年生には、自分のものの見方や考え方を広く豊かにし、しかも、確かな根拠に基づいて論 理的にものを考え、追求していく力を養うことが求められる。本単元は、「現代社会を考える」という共通のテーマのもとに、筆者 が自分の体験に基づいて文化を比較した評論と、確かなデータを基に地球環境問題をグローバルに論じた論説文が位置づけられてい る。国際化・情報化社会に伴い、自分たちの生きる社会を大きな視点で見つめ、考えていく力を深めていくことができると同時に、 二つの文章の書き方の違いについて比較をしながら、論理的文章読解の基本的技能を身につけることができるといえよう。特にここ では、これまでの要点・展開・要旨をとらえる学習をふまえ、「文章の展開に即して内容をとらえる」ということが中心になる。 本教材「金星大気の教えるもの」は、金星の環境を地球への警告と受け止め、豊かな地球環境を大切にすることが「地球人として」 の課題であると提言し、論じている。書き方や内容は多少硬質で抽象的ではあるが、論の展開や対比表現が巧みで、難解さを感じさ せない工夫も凝らされており、よって、二酸化炭素の増大から起こる地球の温暖化現象について、生徒が自分たちの問題として危機 感をもって考えることのできる教材であるといえる。 (2)生徒観           中学3年生のこの時期は、今後の自分の生き方を模索する時である。このような時期に、人間としてのよりよい生き方を示唆してい る文章にふれ、現代社会をグローバルな視点から考え追求していくことは、生徒の成長過程をふまえて実に意義あることである。論 説的文章の学習に関しては、各段落の要点をまとめ要旨に迫る、あるいは接続語や指示語に注意し構成を考えるという基本的な読解 技能について学んではいるが、苦手意識があることは否めない。読書量も比較的多く、表現活動にも意欲的に取り組んでいるが、興 味がなかなかわかないもの、殊に論説的文章に関しては、語彙の不足からも抵抗を感じている。 明るく真摯で、人の失敗も許容する雰囲気のある学年ではあるが、ともすれば互いに遠慮し合い、理解がなかなか深まらないことも 多い。また、環境および環境問題に対して関心の高まりは感じられるが、殊に地球規模の環境問題になると、その現実感や危機感と いう点ではまだまだ概念的である。よって、一人一人が自分で課題を設定し積極的に取り組むことで、主体的思考・判断に基づく学 習が進められるよう考えていきたい。 (3)指導観 地球環境の保全がどんなに大切かは、生徒にとっても十分理解できることである。しかし、その危機感にはなかなか具体的なイメー ジが伴わず、どういう面が危ないのか、どの程度危ないのかが漠然としており、したがって、それを打破しようとする意識につなが るのは難しい。重要なことは、単に地球の温暖化現象についての知識・理解にとどまらず、論説的文章の読解技能を高めながら、生 徒自らが自分たちの問題として受け止めるようにしなければならない。そして、望ましい暮らし方を考え、現代社会をどのように生 きていったらよいのか追求してく力を養うことが大切である。 本教材は、金星を話題として登場させ、終始、それとの対比のうえで地球環境の問題を論じている。まずは四つそれぞれの意味段落 の要点をつかむことが必要であるが、「導入」「事実+分析」「結論」という意味段落相互のつながりに注目したい。しかし、情緒 的・感覚的な思考を好む学年なだけに、辞書の積極的な活用により文章への抵抗感を弱め、十分な音読活動を位置づけつつ、指示語 等の内容も確実にとらえていきたい。また、難しい用語が多いため、教科書欄外の説明の他にも補足していかなければならないが、 必要最小限にとどめながら、段階的に内容理解ができるよう配慮し、できるだけ苦手意識を持たないように学習を進めていきたい。 同種の教材「三十五億年の命」の学習では、初発の感想から課題をつくり、読解の過程で口頭による発表の場を多く設定し、学び合 う活動を行った。よって本教材の最終段階では、発展学習として「自然と人間のかかわり」等に関する自分の考え、あるいは新しい 視点について発表し合うことにより、環境および環境問題に対して深く考えていくようにしたい。 (4)環境教育に関わって この教材は、「人間が物質的な豊かさや便利さを追い求めれば追い求めるほど、かけがえのない地球が破壊され」という表現に象徴 されるように、人間の生活が盛んになればなるほどエネルギー消費が増大し、それによって生み出される二酸化炭素が増えることに より、地球温暖化現象が起こるというメカニズムをやさしく説いている。そしてこの問題は、一国だけのものでも、一地域だけの問 題でもない、地球上に住む全ての人間が力を合わせて考えていかなければならない問題であることを提言しているものである。すな わちこれは、地球温暖化現象に限らず、多種多様な地球環境問題を抱える人々の意識に警告を与えるものであり、生徒の主体的な思 考・判断により、実感としての問題意識を持つことをねらいとして学習を展開していく必要がある。 3.指導目標                    〈国語への関心・意欲・態度〉   ・現代社会の地球環境問題について、自分の考えや意見をもとうとする。            〈表現の能力〉   ・具体例の精細な記述方法について気づき、地球環境問題についての考えをまとめることができる。  〈理解の能力〉   ・文章の展開に即して、要点をおさえながら文章の論理的な展開や構成、筆者の主張を正確にとらえることができる。  〈言語についての知識・理解・技能〉   ・接続する語句や指示する語句について理解することができる。       4.指導計画(8時間扱い)  +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |時間| 学習内容 | 目標(※は環境教育に関わること) | 評価〈観点〉 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 第1次 金星との対比のうえで、地球環境問題を論じている文章であることを知る。 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |1 | 地球がどのようにして生まれ| VTRを鑑賞し、地球の生成過程について|○地球の生成過程について、関心をもとう| | |たのかを知る。 |関心をもとうとする。 |としたか。〈関・意・態〉 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |1 | あらすじをとらえる。 | 全文を通読し、初発の感想をまとめるとと|○正確に音読することができたか。 | | | |もに、全文の大まかな構成をとらえることが|〈表現〉 | | | |できる。 |○問題意識をもとうとしているか。 | | | | |〈関・意・態〉 | | | | |○意味段落の内容を大まかに説明できたか| | | | | 。〈理解〉 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 第2次 地球の温暖化現象は、二酸化炭素の増大によって起こることを知る。 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | ++ | |2 | 各段落の要点をまとめる。 | 文章の展開に即して、考えの根拠や進め方|○1導入「昔から人々に親しまれてきた金| | | |をおさえ、各部分の要点をとらえ、その論理| ++ 星と、生命存在の夢」について| | | |的な内容をまとめることができる。 | 理解することができたか。 | | | | | 〈理解〉 | | | | | ++ | | | | |○2事実・分析「セ氏480℃にも達して| | | | | ++ いる金星の実情とその原| | | | | 因」について理解するこ| | | | | とができたか。〈理解〉| | | | | ++ | | | | |○3事実・分析「金星と地球の生成過程、| | | | | ++ 地球の海の存在」につい| | | | | て理解することができた| | | | | か。〈理解〉 | | | | | ++ | | | | |○4結論「水と緑の美しい惑星『地球』を| | | | | ++ 守るために」について理解する| | | | | ことができたか | | | | | 〈理解〉 | | | | |○接続する語句や指示する語句について理| | | | | 解することができたか。〈言語事項〉 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |1 | 筆者が提言(主張)している| 筆者の提言(主張)をとらえ、文章全体の|○筆者の提言(主張)@「だから今、地球| | |ことをとらえる。 |展開や構成について理解できる。 |が温暖化するのをこれ以上進めないため、| | | | |世界の人々が知恵を出し合うことが求めら| | | | |れている」を、とらえることができたか。| | | | |〈理解〉 | | | | |○筆者の提言(主張)A「温室効果による| | | | |極限の状況が、金星というすぐ隣の惑星に| | | | |あるという事実は、地球への大きな警告と| | | | |受け止めねばなるまい」を、とらえること| | | | |ができたか。〈理解〉 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 第3次 地球の環境や環境問題について気づく。 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |3 | 地球の環境や環境問題につい|※地球の環境や環境問題について、その問題|○地球の環境や環境問題について、その問| | |て気づき、自分たちができるこ|点をあげようとする。 |題点をあげようとしたか。〈関・意・態〉| | |とは何かを考える。 |※筆者の提言「世界の人々が知恵を出し合う|○自分の考えや意見をまとめ、発表するこ| |本時| |ことが求められている」について考えようと|とができたか。〈関・意・態〉〈表現〉 | | 3 | |する。 |○筆者の提言「世界の人々が知恵を出し合| | / | | |うことが求められている」について考えよ| | 3 | | |うとしたか。〈関・意・態〉 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 5.本時の指導 (1)目 標                                                        ・地球の環境や環境問題について気づき、自分たちができることは何かを考えようとする。                                                             (2)環境教育に関わって 地球の温暖化現象について理解できたことを生かして、筆者の提言(主張)から一人一人が課題を設定し、地球の環境や環境問題の状 況、その原因について客観的に調査し発表する。また、その発表を基に感想や意見の交流を深めることによって、生徒自らがどう迫っ ていくべきかの態度やこれからの生き方について考える契機としたい。 (3)展 開                                                       +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−+ | | 学習内容 | 学習活動 | 教師の支援・評価(評価は□) |準備等| +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−+ |導|1.既習事項の確認 |○筆者の提言(主張)を読んで確認する。 | 結論部分から筆者の提言(主張)を| | | | | |提示する。 | | |入| | | 紙板書で簡潔に掲示する。 |紙板書| | | | | | | | |2.学習課題の確認 |○提示された学習課題を確認する。 | 本時の学習課題を提示し、全員で音| | |5| | |読して確認する。 | | |分| +−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+ | | | +−+−−−−+地球の環境や環境問題について考えよう +−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−+ | | +−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+ | | | | | | | | | | |3.課題発表と話し合い |○課題について資料をもとに発表する。 | 発表の手順を話し、大きな声でゆっ|模造紙| | | |(環境問題がもたらす生物への影響を含む)|くり、簡潔に発表するよう促す。 | | | | | −−−−−−−−−−−−−−−− 課 題 | | | | ||・水量の減少(森林伐採など) | | | |展| ||・水質汚濁(生活排水、開発工事など) | 発表に対する質問がでるように配慮| | | | ||・ゴミ問題 他 |する。 | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | | | | | | |4.感想や意見のまとめ |○筆者の提言(主張)をふまえながら、課題| 学習プリントに200字から400|学習プ| | | |について調査した感想や意見をまとめる。 |字程度でまとめるように話す。 |リント| | | |・環境問題には人間の営みが原因となってい| 机間巡視し支援する。 | | | | | ること。 | | | |開| |・理解していても、なかなか行動に移せない| | | | | | こと。 | | | | | |・地球環境を大切にするため、自分たちが考| | | | | | え取り組まなければならないこと。 | | | |35| | | | | |分|5.発表と意見交換 |○自分の感想や意見を発表する。 | 挙手による発表を促し、常に評価を| | | | | |しながら進める。 | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | ||自分の考えや意見をまとめ、発表 | | | | | ||することができたか。〈発表〉 | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−+ | |6.本時のまとめ |○学習の感想を発表する。 | 5の発表をふまえ、思考の広がりに| | |終| |・自然界の複雑な調和 |配慮しながら、口頭で発表するよう話| | | | |・環境を大切にしていくことの必要性 |す。 | | |末| |・「地球人として」の私たちの使命 |+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | ||地球の環境や環境問題について気 | | | | | ||づき、自分たちができることは何 | | |10| | ||かを考えようとしたか。 | | |分| | ||〈観察・発表〉 | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−+ (4)評 価  @教科指導のねらいに即して  ・自分の考えや意見をまとめ、発表することができたか。〈表 現〉  A環境教育に関わって  ・地球の環境や環境問題について気づき、自分たちができることは何かを考えようとしたか。〈関心・意欲・態度〉 (5)板書計画 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | |五 現代社会を考える | | 金星大気の教えるもの 伊藤和明 | | | |〈筆者の結論〉 | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | 今、地球が温暖化するのをこれ以上進めないため、世界の人々が知恵を || | |出し合うことが求められている。 || | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | 温室効果による極限の状況が、金星というすぐ隣の惑星にあるという事 || | |実は、地球への大きな警告と受け止めねばなるまい。 || | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | ||学習課題 地球の環境や環境問題について考えよう | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | +−−−−−−−−−−−−−−−++−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | || | | | | || | | | | || | | | | || | | | | || | | | | || | | | | || | | | +−−−−−−−−−−−−−−−++−−−−−−−−−−−−−−−+ | | +−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | |・ 環境問題には、人間の営みが原因 | | | | となっている。 | | | |・ 理解していても、なかなか行動に | | | | うつせない。 | | | |・ 地球環境を保護するため、自分た | | | | ちが考え、取り組まなければならな | | | | い。 | | +−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+