印刷用紙:B4縦 1ページの行数:81 1行の文字数(半角文字で):100 音楽科学習指導案 指導者 福士 幸雄 1.日時 平成7年7月7日(金) 第2校時 2.学級 1年4組 男子 16名、女子 19名、計 35名 北校舎2階 第1音楽室 3.題材 日本の音楽 使用する主教材 郷土の民謡 「沢内甚句」「南部牛追いうた」「外山節」 雅楽 平調の「越天楽」 関連教材 「江差追分」「八木節」 近衛秀磨編曲 管弦楽による「越天楽」 宮城道雄作曲 「越天楽変奏曲」 「越天楽今様」「筑前今様(黒田節)」 4.題材について 学習指導要領の第2 各学年の目標及び内容・2内容・B鑑賞アによると、鑑賞教材には次に示すものを取り 扱うように書かれている。「我が国及び諸外国の古典から現代までの作品、郷土の音楽及び諸外国の民族音楽と すること」(第1学年〜第2・3学年)また、教育課程審議会の答申の中に「国際理解を深め、我が国の文化と 伝統を尊重する態度を重視すること」とある。これは、明治期からの日本の音楽教育界が、近代西洋音楽を普遍 的な芸術とみなし西洋音楽中心にめざましい発展を遂げてきたが、その反面日本の伝統音楽を含む民俗的音楽が 急速に私達の心の中から消え去っていこうとしていることへの反省と受けとめることができる。また、比較音楽 学という言葉が生まれた根源には、やはり西洋音楽中心の考えが根底にあり、そのような考え方に対する反省と も受けとめられる。国際化が進む中で、これからの学校教育は、諸外国の人々の生活や文化を理解し尊重すると ともに、我が国の文化と伝統を大切にする態度の育成を重視していく必要がある。我が国の身近な文化や伝統に 対する関心を深め理解するとともに、諸外国の文化に対する理解を深め、世界と日本とのかかわりに関心をもっ て生きていく自覚と責任を持てる教育が望まれている。広く世界の音楽を見つめることは、日本の音楽を見つめ 直すことにつながる。現在まで伝承されてきた身近にありながら普段の生活の中で接する機会が少なく、私達の 心の中から忘れ去られようとしている日本の音楽を大切にしていける生徒の育成を願って、この題材を設定した ものである。 雅楽 平調の「越天楽」は、前述のような音楽教育界の歴史の中で、昭和33年に共通教材として第3学年の 鑑賞教材に顔を出し、昭和44年には第2学年に移行し(※1)昭和47年の教科書改訂のときに、初めて中学 2年の教科書に「越天楽」が掲載された。(※2)現在の学習指導要領では、第1学年の鑑賞共通教材となって おり、我が国最古の伝承音楽である雅楽が必修となっている。雅楽の定義づけは多岐にわたるが、大まかな言い 方をすれば次のように説明することができる。唐時代を中心とする中国とその近隣諸国及び朝鮮半島で盛んだっ た音楽や楽器が日本に入り、アジア的特性と日本人の好みの旋律や楽器の音色・響きが混ざり合って時代ととも に「日本的」な姿に変化した音楽ということができる。そのため、その響きはきわめて日本的な音感覚を反映し ていると同時に、一方では、他のアジアの国々の音楽との共通点も持っている。平調の「越天楽」は、現在結婚 式や正月などの儀式の中でよく演奏されもっともポピュラーな曲になっている。そのポピュラー性を生かして、 まず興味・関心を引き出したい。そして、雅楽の管絃で用いられている三管・両絃・三鼓の楽器の音色と響き及 び日本の伝統音楽の雰囲気を感じ取らせたい。次に、日本の音楽の伝承方法として重要である口唱歌を体験する ことを通して、旋律の構造やテンポ感及び間合いなどの旋律的特徴を感じ取らせたい。口唱歌によって旋律線を 把握したならば、次にリズム的特徴に目を向けさせ、打ち物がどのようなリズムを打っているか調べ、話し合い お互いの考えをまとめて、口唱歌と打ち物の模擬演奏を行うことによって、雅楽のリズムの規則性(パターン) に気づかせたい。この雅楽の音楽的特徴をとらえさせる活動を通して、我が国の音楽及びアジア諸地域の音楽と の共通性を把握させ、広く世界の音楽を見つめていく契機としたい。 生徒の日常の音楽体験は、歌うことと聴くことが中心になっている。普段歌っている音楽や日常的に聴いてい る音楽については関心を示すが、普段触れる機会の少ない音楽に対しては興味をあまり示さない傾向がある。つ まり、「知らない」=「嫌い」の構図が出来上がっており、生徒を取り巻くメディアの拡大とは裏腹に、生徒が 接している音楽の世界は非常にせまくなりつつある。(※3)しかし、生徒たちは、新しく触れる音楽に対して 何らかの方法でその魅力に迫ることができれば、自分にとって価値のある音楽として受け入れてくれる。これま で「多声的な音楽」の題材の中で扱ったポリフォニックな合唱曲や選択音楽の中での郷土の民謡の取り組みなど が、生徒の音楽の世界を広げた良い例であろう。音楽の中に新しい価値や魅力を見いだし、音楽に対する見方や 考え方が広がったとき、また主体的に音楽に関わったときに生徒は本当の喜びや充実感を感じることであろう。 生徒には、郷土の民謡を実際に歌ったり、雅楽の旋律的特徴を実際に口唱歌を歌うことを通して感じ取ったり、 雅楽のリズム的特徴を推察し実際に演奏を試みて実証するなどの活動を通して、さらに広く世界の音楽に対して 興味・関心を高め、音楽に対する見方・考え方を深めさせたい。 ※1 音楽科実技実践講座第15巻 音楽科教育の動向 ※2 雅楽への招待(押田良久著 共同通信社) ※3 メディア時代の音楽と社会(小川博司著 音楽之友社) 5.指導計画 (1)郷土の民謡を歌い、日本的な旋律や雰囲気を味わうことができる。・・・・・・・・・1時間 (2)雅楽に用いられている楽器や音色及び雅楽独特の響きを感じ取ることができる。・・・1時間 (3)竜笛の口唱歌を考え表現することができる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1時間 (4)雅楽に用いられている三鼓のリズムを打つことができる。・・・・・・・・・・・・・1時間(本時) (5)雅楽の音楽的な特徴のまとめとアジア諸地域との関連を説明することができる。・・・1時間 6.本時の達成目標 (1)雅楽の口唱歌を通して雅楽への関心を深め、進んで表現や鑑賞の活動に取り組もうとしている。 (2)雅楽に用いられている三鼓のリズムを打つことができる。 7.本時の下位行動目標 a.口唱歌に合わせて三鼓のリズムを打つことができる(音楽的な感受と表現の工夫)(表現の技能) b.書き取った各楽器のリズムを口唱歌に合わせて打つことができる。 (音楽的な感受と表現の工夫)(表現の技能) c.書き取った各楽器のリズムを発表し合い、自分の書き取ったものと比較することができる。 (音楽への関心・意欲・態度)(音楽的な感受と表現の工夫) d.打ち物の中からひとつ楽器を選び、演奏を聴きながらリズムを書き取ることができる。(表現の技能) e.雅楽の楽器の中から打ち物を選び、名前を言うことができる。(表現の技能) f.演奏を聴いて、楽譜の記号が何を表しているか予想し発表することができる。(表現の技能) g.竜笛の楽譜を見て、気づいたことを発表することができる。(音楽への関心・意欲・態度) h.平調の「越天楽」の竜笛の口唱歌を歌うことができる。(音楽的な感受と表現の工夫)(表現の技能) 8.本時の評価の観点 (1)雅楽の口唱歌を通して雅楽への関心を深め、進んで表現や鑑賞の活動に取り組もうとしていたか。 (2)雅楽に用いられている三鼓のリズムを打つことができたか。 9.本時の展開 <個に対する配慮> <A>達成度 <B>学習速度 <C>取り組み方(意欲・態度) <D>見方・考え方<E>興味・関心 <F>生活経験 <S>学習形態 +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ |段|過|時| | 個 人 差 に 対 す る 配 慮 |資料 | | | | | 学 習 活 動 +−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+ | |階|程|間| |評価の観点・方法| 配 慮 事 項 | 教具等| +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ |導|既| |1.平調の「越天楽」の竜笛| |1.<F> | | |入|習| | の口唱歌を歌うことができ| | 本来は楽座で歌うものなので| | | |内| | る。 | |時間があれば楽座で歌わせたい| | | |容| | | | | | | |の| |2.竜笛の楽譜を見て、気が| | |竜笛の本| | |確| | ついたことを発表すること| | |譜・仮名| | |認| | ができる。 | | |譜 | | | | | | | | | | | | |3.楽譜の中にある記号が何|+−3−−−−+|3.<D> |CD | | | | | を表しているか演奏と楽譜||楽譜中の記号|| これまで学習してきた口唱歌| | | | | | を見ながら考え発表するこ||が何を表して||が、雅楽の旋律的特徴をとらえ| | | | | | とができる。 ||いるか発表す||させるものであったことを確認| | | | | | ||ることができ||するその上でリズムに着目させ| | | | | | ||たか。 ||る。 | | | | | | |+−−−−−−+| | | | | | | |<発言と挙手によるチェック> | | | | | | |P・M:●のとこ| | | | | | | |ろで楽太鼓が入り| | | | | | | |●と●のところで| | | | | | | |は鉦鼓が入ってい| | | | | | | |ると説明すること| | | | | | | |ができる。 | | | | | | | |G:鞨鼓が●と●| | | | | | | |のところで入って| | | | | | | |いる。さらに●と| | | | | | | |●の間で細かくリ| | | | | | | |ズムを刻んでいる| | | | | | | |ことを説明するこ| | | | | | | |とができる。 | | | | |課| |4.本時の学習課題を確認す| | | | | |題| | る。 | | | | | |確| |+−本時の学習課題−−−+| | | | | |認| || 雅楽の打ち物のリズム|| | | | | | | ||を聴き取り、リズム打ち|| | | | | | |15||をしてみよう。 || | | | | |分|+−−−−−−−−−−−+| | | | +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ |展| | |5.雅楽の管絃の中で打ち物| |5.<F> |教科書 | |開| | | の楽器を発表することがで| | 生徒には、普段打楽器といっ|LD | | |課| | きる。 | |ている楽器が「打ち物(この場| | | | | | | |合は三鼓)」であることを確認| | | | | | | |する。 | | | | | |6.3つの打ち物のうち、自| | |<S> | | | | | 分の調べたい楽器を1つ選| | |コース別| | | | | ぶことができる。 | | |学習 | | | | | | | | | | |題| |7.口唱歌譜の1行目を聴き| |7.<D> | | | | | | どのようなリズム打ちをし| | 生徒によって様々なリズムの| | | | | | ているか聴き取ることがで| |聴き取り方をすると考えられる| | | | | | きる。 | |ので、楽器ごとに3つのグルー| | | | | | | |プに分かれて、お互いのリズム|<S> | | | | | | |を比較させる。またリズムを聞|グループ | | | | | | |き取れない生徒も出てくること|ごとの話 | | |追| | | |が考えられるので、学び合いの|し合い | | | | | | |場としたい。 | | | | | |8.聴き取ったリズムを実際|+−8−−−−+|8.<C> | | | | | | にリズム打ちすることがで||リズム打ちを|| 生徒に口唱歌をさせながら、| | | | | | きる。 | |することがで||リズム打ちをさせる。 | | | | | | ||きたか。 || | | | | | | |+−−−−−−+ | | | | |求| | |M:口唱歌に合わ | | | | | |30| |せてリズム打ちを | | | | |分| |することができた | | | | | | | |か。 | | | +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ |終|ま| |9.次時の学習内容を確認す| | | | |結|と| | ることができる。 | | | | | |め| | 3つの楽器のリズムには | | | | | | | | ある特徴があり、そのこと| | | | | | | | は広く世界の音楽に共通す| | | | | | |5| ることであることを確認す| | | | | | |分| る。 | | | | +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+