印刷用紙   :A4 縦 1ページの行数:50 1行の文字数 :89 A4縦 89字50行                  学校名    大槌町立大槌中学校                  対象学級   3年6組(男子20名、女子19名、計39名)                  指導年月日  平成4年9月16日(水)〜9月21日(月)      作成者    大槌町立大槌中学校 鈴木利典 1 単元名「水生生物と環境」 2 単元設定の理由 本単元は、「水生生物による水質調査」を体験させることによって、身のまわりの自然に対する興 味・関心を高めさせ、自然に対する豊かな感性を養い、科学的に自然を調べる能力と、自然環境を保 全し生命を尊重する態度の育成をめざして設定した。  特に、本単元の学習を通して重点的に指導したいことは、本校の北側を東西に流れる大槌川の水質 調査という体験活動を通して、大槌川に住む水生生物や大槌川流域の自然環境に対する興味・関心を 高めることであり、第2分野の最終的な目標ともいえる「自然と人間」との関わり合いについて、自 分達の生活と関わり合いの深い大槌川という身近な事例をもとに考えさせることである。 これまでに、生徒は、身のまわりの生物や生物どうしのつながりの学習を通して自然界には様々な 動植物が存在し、それらが生産者、消費者、分解者に分けられ有機的なつながりをもっていることや、 水温や気温といった自然環境と深く関わっていることを知っている。また、細胞や原子・分子の学習 などを通して自然の事象を微視的に洞察する能力も養ってきており、自然界における水や二酸化炭素 の大循環についても説明することができる。  しかしながら、これまでの学習は、自然界における法則や規則性を見いだすことが中心であり、自 然と人間との関わり合いについては深く学習していない。自然と人間との関わり合いについて、生徒 は、フロンガスによるオゾン層の破壊とか、二酸化炭素の増加による地球の温暖化というような一方 的に与えられがちの知識を持つにとどまっている。 現代社会における人間の活動は、大気汚染や海洋汚染をもたらし深刻な問題となっているが、限ら れた環境でしか生きられない水生生物にも大きな影響をあたえ、水質によって生物相に違いが見られ るようになっている。水質判定に利用される水生生物は指標生物と呼ばれ、指標生物を基にして水質 を判定する方法が「水生生物による水質調査法」と呼ばれているものである。  本単元は、この「水生生物による水質調査法」により大槌川の水質調査を実施し、調査結果と流域 の自然環境との対比から、自然と人間との関わり合いについて主体的に探求させることをねらいとし ている。  指導にあたっては、まず、環境調査の大切さと環境調査の方法として水生生物による水質調査法が あることを理解させることが必要である。単元の導入段階でもあり、環境問題に対する生徒の意識を 高め学習の動機づけを図るために、身近な実践例として本校科学部による大槌川の水質調査の活動を VTRによって紹介する。 次に、川の水質と流域の自然環境との関係について考察させ「川の水質は流域の自然環境を反映し ており、大槌川の上流域は自然が豊かであり水がきれいである。下流域は住宅が密集し、生活排水な どの影響で水質が悪い」という仮説を設定させるようにする。そして、この仮説を検証する手段とし て「水生生物による水質調査法」を学習させ、大槌川の水質調査という野外学習を通して水質に関す る情報を収集させる。流域の自然環境の情報は、映像から得られるようにVTR教材を開発する。  「水生生物による水質調査法」を学習させる段階では、水生生物を指標生物に分類することによっ て、定量的、統計的に水質が判定できることに気づかせ、自然事象を科学的に調べる能力が養われる ように配慮する。指標生物の分類は、中学生にとってやや困難な作業であるが、コンピュータを利用 することによって困難さを解消するとともに、コンピュータの情報処理能力の素晴らしさについても 気づかせたい。  本単元は、身のまわりの自然に対する直接経験を重視しており、その中心をなすのが生徒にとって ふるさとの川である大槌川での野外学習である。野外学習では分刻みの指導や細々とした指導はさけ、 生徒が自由に行動し、大槌川や水生生物に触れ親しむことのできる時間をできるだけ確保したい。  仮説の検証は、水質調査の結果と流域の自然環境の映像資料を基に行われるが、仮説の検証と同時 に、大槌川流域には豊かな自然が残されていることに気づかせることができるようにVTR教材を開 発したい。  最後に、学習のまとめとして、学習の感想と環境に対する自分たちの責任や役割についての発表と 話し合いを行わせる。学習に対する肯定的な評価と自然や環境に対する関心や態度を認め合わせるこ とによって、生命を尊重し自然環境を保全していこうとする態度を育成したい。 3 単元の指導目標  大槌川の上流と下流の水質の違いを水生生物による水質調査から探らせる。 更に、VTR教材によって大槌川流域の自然環境の様子を提示し、水質が流域の環境を反映してい ることに気づかせる。  また、水生生物による水質調査という野外での学習や、流域の自然環境を視覚的に学習させること を通して、水生生物や流域の自然環境に対する興味・関心を高めさせ生命を尊重するとともに大槌川 流域の自然環境を保全しようとする態度を養う。 4 単元の教材構造                     【ビデオ教材】 +−−−−−−−−−−−−−−+ | 科学部による水質調査活動 | +−−−−−−−+−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 水生生物による水質調査法 +−−+ | +−−−−−−−+−−−−−−+ | | +−−−−−−−+−−−−−−+ | | | 採集・保存・記録の方法 | | | 【CAI教材】 +−−−−−−−+−−−−−−+ | | +−−−−−−−−−−−−−−+ | | +−+ 指標生物の分類方法  +−−−−−+ | 【野外学習】 | | +−−−−−−−−+−−+−−+ +−−−+−−−+−−−−−−+ | | | | |   大槌川の水質調査 +−−+ | | |  +−−−−−−−+−−−−−−+ | | 【検索ソフト】 | +−−−−−−−−+ | | | +−−−−−−−−+−−−−−+ +−−−+−−−+−−−−−−+ | +−+   指標生物の検索   +−+ 採集した指標生物の分類 +−−+ | +−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−+ | +−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−+ +−+ 水質階級の判定方法 +−+ 調査地点の水質階級の判定 | | +−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−+ | +−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−+ +−+ 水質階級図の作成法 +−+ 大槌川の水質階級図の作成 | +−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−+ 【ビデオ教材】 | +−−−−−−−−−−−−−−+ | | 大槌川流域の自然環境 | | +−−−−−−−+−−−−−−+ | +−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ | 水生生物と環境(自然と人間との関わり合い) | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 5 単元の指導計画と配当時間   第1時 「水生生物による環境調査法」 第2時 「指標生物の分類のしかた」 第3時 「水生生物の採集と保存(野外学習)」 第4時 「水生生物の分類による水質判定と水質階級図の作成」 第5時 「水生生物と環境」 6 各時の学習指導 (1) 第1時 ア 主題「水生生物による環境調査法」 イ 指導目標    生徒にとって身近な存在である科学部の活動を紹介することによって、水生生物による水質調   査や大槌川流域の自然環境に対する関心を高めるとともに、「水質の変化は環境の変化によるも   のである」という仮説を設定させる。    検証過程として、本時は、水生生物による水質調査法の概略を理解させる。 ウ 目標行動    大槌川の水質や科学部の活動に対する自分の考えを述べるとともに、「水質の変化は環境の変   化である」という仮説を設定し、検証の手段として「水生生物による水質調査法」の概略を説明   することができる。 エ 下位目標行動  G 目標行動に同じ G1 大槌川の上流と下流では水質が違い、水質の変化は流域の環境の変化によるものであるという   仮説を立てることができる。 G2 水生生物による水質調査法について、指標生物という言葉を用いて定量的な調査方法について 概略を説明できる。 1 大槌川流域の環境の現状について予測できる。 2 大槌川の水質の現状について予測できる。 R3 大槌川流域の地理を説明できる。 4 VTR教材を視聴した感想についてまとめることができる。 R5 環境問題をいくつかあげ、その要因を指摘できる。 6 指標生物について説明できる。 7 水質により生物相が変化していることを説明できる。 R8 種ごとに適応できる環境が決っていることを指摘できる。 9 水質階級について説明できる。 R10 水質の良い状態、悪い状態を例をあげて説明できる。 11 水生生物の定量的な調査法について説明できる。 12 ネット・コドラートの使用方法を説明できる。 R13 水生生物が生活している場所を予測できる。 14 水質調査の記録方法について説明できる。 R15 実験・観察の一般的な整理方法を説明できる。 R16 水生生物による水質調査に必要な事項を予測できる。  オ 形成関係図 省略 カ コースアウトライン    R5→4→R3→2→1→G1→R16→R8→7→6→R10→9→R13→12→11→R15→14→G2→G キ 振り付け表 −省略− ク プロセスフローチャート −省略− (2) 第2時 ア 主題「指標生物の分類のしかた」 イ 指導目標  CAI教材を活用することによって、学習に興味をもたせながら、水生生物を指標生物に分類   するためのポイントをいくつか発見させる。 ウ 目標行動    代表的な指標生物と水質、水生生物の観察方法と指標生物を分類するポイントについていくつ   か指摘できるとともに、提示さた水生生物を検索ソフト等を活用し指標生物に分類することがで   きる。  エ 下位目標行動  G 目標行動に同じ。  G1 提示された水生生物をコンピュータを利用ながら分類できる。 G2 代表的な指標生物と水質、水生生物の観察方法と指標生物を分類するポイントについていくつ   か指摘できる。 1 指標生物を分類するポイントについて、いくつか例をあげて説明できる。 2 (大槌川の)代表的な指標生物を見分けるポイントが指摘できる。 3 提示された水生生物を分類するポイントを指摘できる。 4 水生生物を観察し、その特徴を指摘することができる。 5 検索過程で使用される用語の意味を説明できる。 6 水生生物を観察するポイントについて、例をあげて説明できる。 R7 小さな生物の観察方法について説明できる。 8 (大槌川の)代表的な指標生物と水質との関係について具体的に例をあげて説明できる。 R9 指標生物について説明できる。 オ 形成関係図 省略 カ コースアウトライン R9→8→R7→6→1→4→2→5→G2→3→G1→G キ 振り付け表 −省略− ク プロセスフローチャート −省略− (3) 第3時 ア 主題「水生生物の採集と保存(野外学習)」  イ 指導目標    野外学習として大槌川の水質調査を実施することによって、自然に触れ親しませるとともに、   調査地点の観察記録と水生生物の採集・保存を行わせる。 ウ 目標行動    野外学習の準備ができるとともに、調査地点における水生生物の採集・保存を安全に行い、観   察記録をとることができる。 エ 下位目標行動 G 目標行動に同じ。 1 採集した水生生物の保存ができる。 2 調査地点において水生生物の採集ができる。 3 ネット、コドラートが使用できる。 R4 水生生物の採集方法が説明できる。 R5 水生生物の具体的な生活場所を指摘できる。 6 観察記録をとることができる。 7 サンプルケースに場所、日時、班名を記入できる。 8 ヒル類かウズムシ類かの区別ができる。 R9 ルーペを正しく操作できる。 10 優占種を特定できる。 R11 優占種について説明できる。 12 水温、川幅、水深、流速が測定できる。 R13 観測事項と観測方法を説明できる。 R14 必要な記録事項を指摘できる。 オ 形成関係図 省略 カ コースアウトライン R14→R13→12→R5→R4→3→2→7→R9→8→R11→10→6→1→G キ 振り付け表 −省略− ク プロセスフローチャート −省略− (4) 第4時  ア 主題「水生生物の分類による水質判定と水質階級図の作成」 イ 指導目標    調査地点の水生生物及び上流で採集した水生生物を指標生物ごとに分類させ、採集地点の水質   階級を判定させる。また、水質階級から大槌川の水質階級図を作成し、大槌川の水質についてま   とめさせる。   指標生物の分類には検索ソフトを利用させ、分類作業を分かりやすくするとともに、学習に興   味を持たせる。 ウ 目標行動    検索ソフト等を利用しながら採集した水生生物を分類し、採集地点の水質階級を判定するとと   もに、あらかじめ上流で採集された水生生物の分類、水質階級の判定も行い、これらの結果をも   とに大槌川の水質階級図を作成し、大槌川の水質について説明できる。 エ 下位目標行動  G 目標行動に同じ。 G1 調査地点の水生生物を指標生物に分類し、水質階級が判定できる。 G2 水質階級図をもとに大槌川の水質の現状について説明できる。 1 大槌川の水質階級図が作成できる。 2 他の調査地点(上流・中流・下流)の水質階級が判定できる。 3 水質階級の判定方法を説明できる。 R4 水質階級について説明できる。 R5 優占種、指標生物について説明できる。 6 分類された水生生物を指標生物に分類できる。 R7 採集した水生生物を種類ごとに分類できる。 R8 指標生物を分類するポイントを指摘できる。 R9 顕微鏡、ルーペを正しく操作できる。 オ 形成関係図 省略 カ コースアウトライン R7→R8→R9→6→R5→R4→3→G1→2→1→G2→G キ 振り付け表 −省略− ク プロセスフローチャート −省略− (5) 第5時 ア 主題「水生生物と環境」 イ 指導目標 大槌川の水質階級図とビデオ教材による流域の自然環境の学習から、水質の変化が生活排水を 中心とした環境の変化であることを検証させるとともに、話し合いを通して、生命を尊重し、環 境を保全しようとする態度を養う。 ウ 目標行動    大槌川の水質階級図と流域の自然環境の映像から、水質の変化が環境の変化であることを検証   できる。さらに、学習の意義を認め、生命を尊重し環境を保全していことする姿勢を話し合いの   中で述べることができる。 エ 下位目標行動 G 目標行動に同じ。 1 大槌川下流の水質の変化の要因として、生活排水があげられることを説明できる。 2 授業の感想を述べ、生命尊重や環境保全に対する自分の考えを述べることができる。 3 上流域と下流域における生活排水の自然浄化のされかたの違いについて説明できる。 4 水質に影響を与えている環境要因をいくつか指摘できる。 5 ビデオから知ることができた大槌川流域の環境について説明できる。 R6 自然浄化について説明できる。 R7 大槌川流域の地理的条件を説明できる。 R8 水生生物からみた大槌川の水質について説明できる。 R9 授業の感想をまとめることができる。 オ 形成関係図 省略  カ コースアウトライン R7→5→4→R6→3→R8→1→R9→R2→G キ 振り付け表 −省略− ク プロセスフローチャート −省略−