印刷用紙:A4縦 1ページの行数:50 1行の文字数(半角で):90 中学校 第3学年 理科/選択理科 選択理科の教材と展開(その4) 選択課題パッケージ4 ベーキングパウダー                 岩手県立総合教育センター 理科教育室 川 村 庸 子 +−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 選 択 課 題 | ベーキング・パウダーの秘密 |関連|ふくらし粉を熱してみよう(2年) | | | |単元|電流が流れる水溶液(3年) | +−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 課題のねらい | 電解質水溶液であるパンだねに電流を流して作る「電気パン」。よく膨ら| | |ますのは重曹かベーキング・パウダーか。その成分と働きについて調べる。| +−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 学習目標 | 重曹とベーキング・パウダーではどちらが良く膨らますかを調べ、ベーキ| | |ング・パウダーを使ったときは、二酸化炭素の発生が熱分解によるものだけ| | |でなく、酸との反応によるものも同時に起こっていることに気づく。 | +−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−+ |【実験1】重曹とベーキング・パウダーではどちらが良く膨らますか |所要時間| 40分 | |    を調べる。 | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−+ | |[準備] | | |○自作電気パン焼き器 | | | ・200CC牛乳パック ・ステンレス粘着板 +−−−−−+ | | | ・コード、ソケット ・わに口クリップ付きリード線 | | | |教|○交流電流計 ○温度計 | 写真1 | | | |○パンの材料 ・ベーキング・パウダー +−−−−−+ | |師| ・小麦粉 ・水 ・重曹 ・焼きミョウバン | | |[操作] | |予|(1) 自作パン焼き器をつくる。    電気パン焼き器 | | | 1.200CC牛乳パックのひとつの側面を切り取る。 | |備| 2.向き合う側面にステンレス粘着板を貼る。 | | | (底と側面の間に隙間ができないように貼る) | |実| 3.コードにソケットとわに口クリップをつける。 | | |(2) パンだねをつくる。 +−−−−−−−−−−+ | |験| +−−−−+−−−−−−−−+−−−+ | | | | | | 小麦粉 | 膨 化 剤 | 水 | | | | |用|+−−+−−−−+−−−−−−−−+−−−+ | | | | || A | 25g |B.P   2.0g|30g| | 写真2 | | | |+−−+−−−−+−−−−−−−−+−−−+ | | | | || B | 25g |重曹    0.5g|30g| | | | | |+−−+−−−−+−−−−−−−−+−−−+ | | | | || C | 25g |B+ミョウバン 0.5g|30g| +−−−−−−−−−−+ | | |+−−+−−−−+−−−−−−−−+−−−+ | | | ※B.P・・・ベーキング・パウダー A、B、Cの出来上がりの違い | | | ※砂糖、卵、牛乳は加えない。 (Aは、白くて厚い。) | | | ※AのB.Pには重曹が0.5g含まれている。 (Bは、黄褐色で膨らまない。) | | |(3)A、B、Cをパン焼き器に入れ、電流を流して (Cは、やや黄色く厚さはAとB | | | 1分ごとの温度と電流の大きさを測定する。 の間。) | | |(4)できたら取り出して厚さを測定し比較する。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 【PACK-4-C】 +−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |資料|A、B、Cの実験結果は次のようになる。 | +−−−−+ | |A ベーキング・パウダー | |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+| ||時間[分]| 0| 1| 2| 3| 4| 5| 6| 7| 8|| |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+ | ||電流[A]|1.1 |1.21 |1.58 |0.20 |0.03 |0.08 |0.06 |0.04 |0.03 || |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+ | ||温度[℃]| 24.0 | 58.5| 91.5 | 93.2 | 85.9| 78.0 | 73.3 | 68.1| 65.0 || |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+ | |B 重曹 | |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+ | ||電流[A]|1.00 |0.09 |0.06 |0.04 |0.03 |0.02 |0.019 |0.017|0.011 || |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+| ||温度[℃]| 38.0 | 68.2 | 78.3| 73.1 | 68.9| 65.5 | 62.0| 57.8| 53.4 || |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+| |C 重曹+ミョウバン | |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+| ||電流[A]|0.78 |1.21 |1.16 |1.00 |0.40 |0.25 |0.12 |0.041 |0.030|| |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+| ||温度[℃]| 23.5 | 56.1| 88.0 | 91.5| 90.5 | 80.4 | 74.9| 69.2 | 65.0|| |+−−−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+−−−+| | 電流値の変化      温度の変化 | | [A]+−+−+−+−+−+−+−+−+ [℃] | | 1.5+−+−+−+−+−+−+−+−+ 100+−+−+−+−+−+−+−+−+| | +−+−+−+−+−+−+−+−+ +−+−+−+−+−+−+−+−+| | +−+−+−+−+−+−+−+−+ +−+−+−+−+−+−+−+−+| | +−+−+−+−+−+−+−+−+温 +−+−+−+−+−+−+−+−+| | +−+−+−+−+−+−+−+−+ +−+−+−+−+−+−+−+−+| | 1.0+−+−+−+−+−+−+−+−+ 50+−+−+−+−+−+−+−+−+| | +−+−+−+−+−+−+−+−+度 +−+−+−+−+−+−+−+−+| | +−+−+−+−+−+−+−+−+ +−+−+−+−+−+−+−+−+| | 電 +−+−+−+−+−+−+−+−+ +−+−+−+−+−+−+−+−+| | +−+−+−+−+−+−+−+−+ +−+−+−+−+−+−+−+−+| | 0.5+−+−+−+−+−+−+−+−+ +−+−+−+−+−+−+−+−+| | +−+−+−+−+−+−+−+−+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8| | 流 +−+−+−+−+−+−+−+−+ 時 間 [分] | | +−+−+−+−+−+−+−+−+ 出来上りの厚さ[cm] | | +−+−+−+−+−+−+−+−+ +−−−+−−−+−−−+ | | +−+−+−+−+−+−+−+−+ | A | B | C | | | 0 1 2 3 4 5 6 7 8 [分] +−−−+−−−+−−−+ | | 時     間 |3.5|1.7|2.4| | | +−−−+−−−+−−−+ | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 【PACK-4-B】 +−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |原理|  | +−−−−+ | |1 炭酸水素ナトリウムの熱分解 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | 炭酸水素ナトリウムは分解しやすく、安定な | || |水溶液でも、65℃以上では二酸化炭素を発生 | || |する。 | || | 2NaHC03→NaCO3+H2O+CO2 | 図:炭酸水素ナトリウムの || | 発生する水蒸気は無水塩化カルシウムをつめ | 熱分解の実験 || |た管に、二酸化炭素はソーダ石灰をつめた管に | || |吸収させて、その重さの増加を測定し、生成し | || |た水蒸気や二酸化炭素のモル数の比を算出する | || |と定量的に進行する反応であるため、2:1:1:1 | || |となる。 | || | | || |2 ミョウバン | || |ミョウバンはM(1)・M(3)(SO4)2・12H2O | || |なる組成の3価金属と1価金属との硫酸塩の複 | || |塩の総称であるが、通常はカリウムミョウバン | || |〔KAl(SO4)2・12H2O〕または、アンモニ | || |ウムミョウバン〔NH4Al(SO4)2・12H2O〕 | || |がその代表的なものである。 | || | | || |3 ミョウバンと重曹の中和 | || | ミョウバン中の結晶水を焼成脱水した無水の | || |焼きミョウバンは、重曹とともにベーキング・ | || |パウダーの配合剤として、製菓加工用の膨張剤 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| |に使用されている。焼きミョウバンは、水に溶 『新しい科学』(1分野上)東京書籍より | |けると酸性になり、重曹を中和して二酸化炭素 | |を発生し、菓子類を徐々に適当に膨らますため | |の遅効性酸性剤である。 | | ミョウバンの水溶液は加水分解の結果H3O+、が +−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |生じ酸性を示す。 |○○○○ベーキングパウダー || |   H2O  H++OH- | 成分 % || | Al3++3OH-−− Al(OH)3 | 炭酸水素ナトリウム   25%|| | NH4++ OH-   NH3+H2O | 焼きミョウバン    25% || |または NH4++ H2O    NH3+H3O+ | 第一リン酸カルシウム 15% || | 炭酸水素ナトリウムの水溶液は加水分解により | d−酒石酸水素カリウム 1%|| |OH-を生じ、アルカリ性を示す。 | コーンスターチ     34%|| | HCO3-+H2O   H2CO3+OH- +−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | H2CO3   CO2 + H2O 某メーカーの商品に表示されている成分 | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 【PACK-4-D】 +−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−−−−+ |展開例 |選択課題   ベーキング・パウダーの秘密 | 時数 |  6時間 | +−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−−−−+ |+−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| ||【科学の | 【 生 徒 の 活 動 】 |    【 教 師 の 支 援 】 || ||方法等】 |*予想される活動、YES「できた」|◆資料提示 ■情報(知識)提供 || || |・NO「できない」(自己評価) |○技術指導 || |+−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| |☆第1時 +−−−−−−−−−−−−−+ | | |・課題を選択する。 → ◆資:教科書1分野上(東京書籍)P78 | | 課題選択 |*ベーキング・パウダーの成分は? NO    炭酸水素ナトリウムの熱分解 | | 情報収集 |・興味・関心にもとづいて自| ■情:短時間で実験するために分量やパン焼き | | 問題設定 | 分の問題を設定する。 |   器の大きさについて相談にのる。     | | 予想 |・大枠の予想のもとに予備実|                       | |  | 験の計画を立てる。 | ○技:ショートってどうなること? | | +−−−−−YES −−−−−−+ スイッチが開いているとき、イ、ウ間に | |☆第2時 +−−−−−↓−−−−−−−+  は何もない回路と同じである。しかし、ス | | |*予備調査にもとづいてベー | イッチを閉じるとアイウエというショート | | 予備実験 | キング・パウダー入りのパ | 回路ができる。イウ間は抵抗が非常に小さ | | ・条件統一| ンを焼いてみる。 →   いため電圧はほとんど0である。そのため | | |*条件を統一してベーキング NO 電球の回路には電流は流れない。電球はと | | | パウダー入りと重曹入りを |   もらないが、しばらくすると電池が熱くな | | | 焼いて膨張を比較する。 | ってくる。ショート回路を大電流が流れて | | +−−−−−YES −−−−−−+   いるためである。 | |☆第3時 +−−−−−↓−−−−−−−+  | | |*パンを膨らませるのは発生 | +−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | 仮説設定 | する二酸化炭素だ。重曹の |  | | | | | 他に何か熱分解している成 | | 図:回路図 | | | 実験計画 | 分があるのだろうか?   | | | | | |*重曹の他に含まれている成 | | | | | 実験 | 分の性質を調べる。(水溶 | +−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | 液を熱したとき二酸化炭素 NO | | | が発生するか、酸性かアル → ■情:重曹の水溶液は、65℃で二酸化炭素が | | | カリ性か等)    | 発生する。 | | +−−−−−YES −−−−−−+ 重曹に酸を加えたときの反応を想起させ | |☆第4・5時+−−−−−↓−−−−−−−+ る。 | | |・報告書(論文)をまとめる NO | | 考察 | → ○技:表やグラフの効果的な表し方を工夫させ| | 論文作成 +−−−−−YES −−−−−−+ る。 | |☆第6時 +−−−−−↓−−−−−−−+ | | 発表 |・発表する。 → ○技:重曹の熱分解による二酸化炭素の発生だ | | 質疑 |・質問・意見を出す。 NO   けではなく、酸性物質による中和も関係 | | 反省 |・研究を振り返る | していることを実験結果をふまえて説明 | | +−−−−−−−−−−−−−+ させる。 | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+