印刷用紙:A4縦 1ページの行数:59 1行の文字数(半角で):96   −−以下 指導案本文−−                理 科 学 習 指 導 案                     日 時:平成8年9月27日(金)1校時                     学 級:第3学年(男子5名,女子3名 計8名)                     授業者:教諭 高橋 秀之 1 単元名 5 運動とエネルギー (東京書籍 新しい科学1分野下) 2 単元について   この単元では、エネルギー概念についての初歩的な見方や考え方を養うことをねらいとしている。これ  までに学習してきた事物・現象のエネルギー的な見方・考え方を有機的に結びつけて、自然のしくみや働  きを統一的にとらえさせる。   これまでに生徒たちは、小学校で「てこ」の学習を通して、支点・力点・作用点と力の大きさの関係に  ついて学んでいる。また、中学1年時には「力とはなにか」について、その概念と働き、バネによる測り  方と力の大きさを図に示す方法について学習している。本単元では、エネルギーの概念と関連させて学ば  せることになる。   単元の学習を進めるにあたり、エネルギーという抽象的な概念を定性的にとらえさせるため、観察・実  験を大切にしたい。   まず、物体に働く2力の合力と力の分解について、その規則性を見い出させて、その考え方をしっかり  とらえさせる。次に物体に働く力と物体の運動について実験をしながら規則性を見い出させる。   次に、滑車を使った重力に対する仕事の実験から、仕事とは何かを学習していく。仕事をエネルギーの  移り変りと関連させることで、物体のもつ位置エネルギーと動いている物体の運動エネルギーについて理  解させる。さらに、日常生活におけるさまざまなエネルギーやその移り変りについて認識を深めさせる。   私たちは日常生活の中で、さまざまなエネルギーを利用し生活している。しかし、生徒たちはエネルギ  ーの学習になると、難解であるという印象をもち理解が進みにくい。したがって、指導にあたっては生徒  自身が疑問をもち探求活動を重ねていくきっかけとなるような教材を工夫することが必要である。   観察・実験を通して、運動やエネルギーの調べ方の基礎を身につけさせ、力と運動についての規則性、  および仕事、エネルギーについての基礎的概念について理解させるとともに、日常生活に見られる事象と  関わらせて、その規則性を科学的に調べようとする意欲やそれらに対する初歩的な見方や考え方を養い、  科学的思考力を高める。   思考や発表のきっかけを与えるとすぐれた考えを発表できる生徒たちなので、一人一人の科学的思考力  ・発表力を高め、主体的に学習を進められる自信と意欲をつけさせていきたい。 3 生徒の実態   理科離れが言われている昨今であるが、生徒の理科実験に対する興味・関心は決して低くない。しかし  理科学習を難しいと感じている生徒が多い。これは、基礎的・基本的事項を知識として身につけてはいる  が、実験を通して定性的・定量的に見い出したり、科学的・論理的に考察することを苦手としているため  と考えられる。   このことは、観察や実験は楽しく感じ、家庭学習でも「理科の学習はやりやすい」としながら「難しい勉  強だとあきらめてしまう」と答えることにも現われている。   授業に対する態度はおとなしく、受け身的である。自分の考えを順序だてて発表したり、他人の意見か  ら新しい考えに至るといったことは苦手である。他者の意見や実験の結果を素直に受け入れてしまい、疑  問を出さない。 4 単元の目標  ・ 物体に働く2力についての実験を行い、力がつり合うときの条件を見い出すことができる。  ・ 力の合成と分解についての実験を行い、合力や分力の間の規則性を見い出すことができる。  ・ 物体の運動について観察・実験を行い、運動には速さと向きがあることを知る。  ・ 物体に力が働かない運動についての観察・実験を行い、その物体は等速直線運動をすることを見い出   すことができる。  ・ 落下運動についての観察・実験を行い、力の働く運動では、時間の経過に伴って速さが変わることを   見い出すことができる。  ・ 仕事の実験を行い、仕事や仕事率について理解するとともに、道具を用いても道具に与えた仕事以上   の仕事はできないことを見い出すことができる。  ・ エネルギーに関する実験や体験を通して、物体のもつエネルギーの量は物体が他の物体になしうる仕   事で測られることを理解するとともに、エネルギーについての理解を深める。 5 指導の構想   本単元を指導するにあたり以下の点に留意し、学習意欲を高める。  (1) 個々の興味・関心を生かした学習過程の工夫    @ 身近な事象からエネルギーに関わる事柄を示し、学習内容と関連させて興味・関心を高め、科学     的に解明しようとする意欲をもたせる。    A 生徒一人一人に課題をもたせて授業や実験に臨ませ、課題解決のための意欲を喚起して主体的に     学習させる。  (2) 個々のよさが発揮される学習過程の工夫    @ 実験班を少人数にし、課題解決に一人一人が主体的に臨むようにさせる。    A 相談し合いながら自分の考えを確かめ、課題解決にあたることができるようにさせる。  (3) よさを認め合える場の設定の工夫    @ 実験結果を発表し合い、その考えを参考にし修正もできる態度を身につけさせる。    A 相互評価で学習活動を評価する場を設定し意欲づけを図る。 6 指導計画 (全24時間)   第1章 力のはたらき                 5時間   第2章 物体の運動と速さ              10時間   第3章 仕事とエネルギー               7時間     第1時 1.仕事の大きさはどのようにして比べるか(本 時)     第2時  [1]仕事とはなにか     第3時  [2]仕事の原理     第4時  [3]仕事率         2.エネルギー     第5時  [1]エネルギー     第6時  [2]高いところにある物体のもつエネルギー     第7時  [3]動いている物体のもつエネルギー          [4]エネルギーの移り変り   章のまとめ                      2時間 7 本時の指導  (1)主 題  仕事の大きさはどのようにして比べるか  (2)本時の目標    ◎ 滑車を道具として使うと、物体を直接持ち上げるより小さな力ですむことを調べようとする。    ○ 定滑車、動滑車を使っておもりを持ち上げる実験を行うことができる。    ◎ 定滑車、動滑車を使っておもりを持ち上げる実験から、持ち上げるのに必要な力と、ひもを引く     距離の関係を見い出すことができる。  (3)本時の視点    @ 大型滑車を用いた演示実験から、滑車を使った仕事への興味・関心をもたせて、一人一人が主体     的に実験を行うようにさせる。    A 実験を2人班とし、互いの考えを出し協力し合って実験を進めさせることにより解決への意欲を     もたせる。    B 自己課題(予想)を科学的に推論し検証する学習過程により、そのおもしろさと解決した成就感     を味わわせる。 (4)本時の展開 +−+−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−+ |段階 学習内容 |時間| 生徒の活動 |形態 留意点 | +−+−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−+ | |1 演示実験 |5分|1 大型滑車を使うと人を|全|・前時で行った定滑車との| | | 本時の学習について意|(5) | 持ち上げられるかの演示| | 違いに気づかせる。 | |導| 欲を持つ | | 実験を見る。 | |・人を引き上げる際の安全| | | | | |個| について配慮する。 | | | | | | | | | |2 予 想 |3分|2 人を持ち上げるのに必|個|・理由が述べられる生徒に| |入| |(8) | 要な力の大きさを予想す| | は発表させる。 | | |3 課題確認 |1分| る。 | | | | |+−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−+ | | | +−++ 動滑車を使って人を持ち上げるとき、必要な力の大き+−+−+−−−−−−−−−−−−+ | ||さはどのくらいになるだろうか。 | | |※実験装置 | | |+−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−+ | | | | |4 実験5 |15|4 実験5を行う。 |班|・2人実験を行わせる。 | | | 「道具(滑車)を使ったと| 分 | @手で持ち上げたとき | | (4班制) | | | きの力の大きさとひも|(24)| A定滑車を使ったとき | |・加えた力が安定してから| | | を引く距離の関係」 | | B動滑車を使ったとき | | 記録することを確認する| |展| | | の力と距離を調べる。| |・操作間違いについては、| | | | | | | 机間巡視で訂正する。 | | | | | | | | | |5 実験5の結果発表 |7分|5 実験5の結果を発表す|班|・結果を比較するとき、力| | | |(31)| る。 |全| の大きさとひもを引く距| | | | | ・@、A、Bについての結| | 離に着目させる。 | | | | | 果を黒板に書く。 | |・結果が不確かな班にはや| | | | | ・結果に疑問を抱いた班| | り直しの時間を与える。| | | | | は再度実験を行う。 | |・値のバラツキが許容の範| | | | | | | 囲であるか考えさせる。| | | | | | | | |開|6 結果のまとめ |10|6 互いの結果を参考にし|個|・班で相談しながら個々が| | | ○手と定滑車では、力も| 分 | ながら力と距離の関係を|班| まとめたものを発表させ| | | 引く距離も変わらない|(41)| 言葉でまとめる。 | | る。 | | | ○動滑車では力はおよそ| | |全| | | | 半分になる | | | | | | | ○動滑車ではひもを引く| | ・動滑車を使うと力が半|班|・既習事項で考えられるよ| | | 距離は2倍になる | | 分になる理由を考える| | うなヒントを用意してお| 全 く。 +−+−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−+ | |7 課題解決 |8分|7 課題解決に取り組む。|班|・本時の実験結果を生かし| | | 大型滑車を用いての確|(49)| ○大型滑車を用いての確|全| て、数値を検討してから| | | 認 | | 認に取り組む。 | | 取り組ませる。 | |終| | | ・人を持ち上げるために| |・人を引き上げる際の安全| 必要な力を計測する。 について配慮する。 | | | | ・検討した値との差があ|全|・余裕のある班には、差の| |末| | | れば理由を考える。 | | 原因を考えさせたい。 | | | | | | | | | |8 次時の予告 |1分|8 次時の予告を聞く。 |全|・本時の結果を使って考え| | | 「仕事」の学習 |(50)| 「仕事」について学習する| | ていくこと。 | +−+−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−+ (5)本時の評価    ◎ 滑車を道具として使うと、物体を直接持ち上げるより小さな力ですむことを調べようとしたか。    ○ 定滑車、動滑車を使っておもりを持ち上げる実験を行うことができたか。    ◎ 定滑車、動滑車を使っておもりを持ち上げる実験から、持ち上げるのに必要な力と、ひもを引く     距離の関係を見い出すことができたか。