印刷用紙:B5縦 1ページの行数:36 1行の文字数:80 第1学年社会科学習指導案 期 日 平成5年9月9日〜9月22日 場 所 千厩町立千厩中学校 1年B組 指導者 加 藤 清(長期研修生)  生徒数 1年B組 男18名女16名計34名 1 単元名 「中世日本のなりたちとアジア」教材「室町幕府の政治と外交」 2 単元について この単元では,律令制による貴族が中心であった時代に対して鎌倉幕府の成立 によって武家政治が始まり,武士の支配がしだいに全国に及び武家社会が発展し ていった時代の移り変わりを扱うことになる。したがって,武家政治の特色,武 家の社会・文化の形成とその成熟の過程をみていくことが中心となる。具体的に は,建武の新政,室町幕府の成立から南北朝の争乱を経て戦国大名の支配に至る 時代の政治の変化と対外関係の推移を学習し,公家・寺社勢力を圧倒して武家社 会が発展していった様子を理解させることになる。 一方,農業技術の進歩に伴う生産の向上によって農業・手工業が著しく発達し   広い地域間での商品の流通が行われるようになった。そして,港町や門前町・市   場町などが各地に生まれていった。こうした生産力の向上や商品流通の活発化,   当時の社会情勢を背景として,畿内を中心とする都市や農村では荘園制から新し   い村を作りあげ,自治的な組織を持つ郷村制を成立させていった。このことは民   衆が着実に力をつけてきた証しでもあり,こうした動きに関連して庶民文化も芽   生えてきたのである。具体的には,生産力の向上による民衆の成長の様子,一揆   の多発による幕府の動揺,応仁の乱を契機とする下剋上の風潮,領国支配を固め   てきた戦国大名による新しい支配の仕組み,こうした動きを背景とする文化の特   色や地方への文化の広がり・普及など,この時代の人々の生活と社会の動きにつ   いて理解させることになる。 生徒たちはこれまで,事実認識を中心とする受け身の学習姿勢であり,歴史的 事象相互の関連や歴史像への迫り方に不十分な点が見られ,ややもすると学習し ていることがどこかよそのことという抽象的・概念的な理解に止まりがちである 生徒が学習するこの時代は,武家が貴族の政治を圧倒し,中央政治の実権を握 っていく内容を扱う。一般的に,室町時代は事柄の関係が複雑で関係がつかみに くく,時代像を明確にとらえるのが難しいと言われている。そこで,指導にあっ たっては,室町に幕府がおかれていたころを代表する具体的な事実(文化的事象   )を提示し,事象が成立したころの社会情勢や背景を考察する活動を行い,時代   の特色や変化を総合的につかませていきたい。とくに,建物が単なる居住の場で   あるだけでなく,自分の権力の大きさを示す手段として使用されていた様子につ   いては,実際に現存する建造物のVTRや当時の庶民の姿を描いたOHPなどの   資料を効果的に活用したい。さらに,この時代の文化が現代文化のひとつの大き   な流れになっていることを,現在の生徒の生活や暮らしの中から発見させていく   ことをとおして,この時代と現代とのつながりについても合わせて理解できるよ   うに工夫していきたい。なお,政治や土地制度などの細かい史実への深入りを避   け,できるだけ人びとの生活様式に視点をあてた指導をするように留意していき   たい。 3 目 標 (1)建武の新政に始まり室町幕府の成立から南北朝の動乱期を経て,戦国大名 の領国支配に至る時代について,政治上の変化と対外関係の推移の学習をと おして,武家社会が発展した時代像を理解させる。 (2)室町時代全体にわたって,都市や農村の人々の生活がどのように変化して きたか,また,その中からどんな文化が生まれてきたかについて産業や社会 生活,文化の動向を相互に関連させながら理解させる。 4 指導計画 (8時間) (1)建武の新政と南北朝の内乱 1時間 (2)室町幕府と守護大名,応仁の乱,戦国大名 2時間 (本時) (3)明・朝鮮との貿易 1時間 (4)産業の発達と民衆の成長 3時間 (農業の発達,経済の発展と都市の自治,農村の生活と農民の成長) (5)まとめ 1時間 5 本時の指導 (1)目標 金閣寺と銀閣寺は室町文化を象徴する典型的な建築であるとともに時代の推 移をも端的に象徴していることをつかませ,それらを生んだ政治的事情や時代 背景についての理解を深める。 (2)本時の展開 +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ | | 学習内容・学習活動 | 指導上の留意点 | 資料 | +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ |つ|1室町時代の文化を概観す|・教科書や資料集によって文化の|年表 | |か| る。 | 特色を大まかにつかませる。 |教科書 | |む|2金閣寺と銀閣寺の写真を|・多くの疑問が出せるよう自由な|資料集 | | | 見て感想を出し合う。 | 発表をさせる。 |VTR | +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ | |3金閣寺と銀閣寺の建物の|・金閣寺と銀閣寺(同仁斉)とを|教科書 | | | 建立,時期,人物,場所| 外観と内観との比較から,建造| | | | 特徴を調べる。 | 物の特色をまとめさせる。 | | | | |・時代の推移に気づかせる。 | | | |4義満,義政が生きていた|・政治的事情や時代背景を調べる| | | | ころの世の中の様子に気| ように促す。 | | |関| づく。 | | | | |5義満のころの幕府の力と|・有力守護との争いに勝利し日本|義満・義| | | 財政 | 国王と呼ばれた幕府の絶頂期を|政の頃の| | | ・花の御所 | つかませる。 |年表 | |係| ・守護大名の統制 |・金閣寺が義満の権力のシンボル| | | | ・南北朝の統一 | であることをつかませる。 | | | | | | | | |6義政のころの幕府の力と|・有力守護の対立や将軍家の相続|応仁の乱| |を| 応仁の乱の起きた経緯と| 争いで乱が起こったことを確認|の図表 | | | 影響について調べる。 | させる。 | | | | ・1467〜1477 | |都が焼け| | | ・原因・背景 |・乱の結果,社会がどのように変|野原にな| | | ・有力守護大名である細| わったかを考えさせる。 |った様子| |調| 川氏と山名氏との対立|(1)下剋上の風潮が強まったこ|を示す絵| | | | とに注目させる。 | | | | |(2)将軍の権威の衰えに気づか| | | | | せる。 | | | | |・義政にとって銀閣寺は,政治か| | | | | らの回避・隠せいの場として趣| | | | ・応仁の乱の影響 | 味を目的とするものであったと| | | | | とらえさせる。 | | | | |・義政の経済力との関連を図る。| | |べ| | | | | |7書院造の内部から,現在|・今日の和風建築(和室)の起源| | | | の生活との結びつきを探| となっていることを説明する。|文化財と| | | る。 |・京の文化の地方への伝播 |して残さ| |る|(1)襖絵(水墨画)  |・禅宗の影響で落ち着いた深みの|れている| | |(2)床の間 生け花,| ある文化が生まれたことに気づ|ものを | | | 掛け軸 | かせる。(わび,さび) |絵,写真| | |(3)四畳半の空間(茶 | |で写実的| | | 道) |・主な戦国大名の分布の様子をと|に見せる| | |8戦国大名の領国支配の特| らえさせる。 | | | | 色をまとめる。 | | | | | ・分国法 |・領国支配の特色を資料からまと|戦国大名| | | ・検地 | めさせる。 |の分布図| | | ・産業の保護 | |分国法 | | | ・城下町の建設 | | | +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ |ま|9まとめをノートに記入す|・何人かの生徒の発表を聞き,新|ノート | |と| る。 | たにわかったことを補足・修正|構想図 | |め| | し,新たな疑問を出させる。 | | +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+