中学校道徳学習指導案

川崎村立川崎中学校 小野寺 孝

1 実践日時: 平成10年9月25日(金) 1校時

2 対 象 : 川崎村立川崎中学校2年A組

3 主題名 : 「社会への奉仕」

4 資料名 : 「北上川クリーン作戦に参加して」(自作資料)

5 ねらい : 社会のために役立つ喜びを知り、進んで公共のために尽くそうとする態度を育てる。4−(4) 勤労・奉仕

6 関連価値: 3−(1) 自然愛    4−(2)公徳心

7 あらすじ

 川崎中学校の生徒会では、毎年一学期の終業式の日に北上川の堤防や通学路のゴミ拾いをする北上川クリーン作戦を伝統として行っている。しかし、暑いなかを自分が捨てたものでもないゴミを拾って歩くことに対して主人公は、内心いやだと思っている。当日、北上川の堤防に行く途中、友達のA君に公民館のゴミ箱から空き缶を拾ってこようと誘われる。一緒に行き、空き缶を持ってくる主人公であったが、みんながまじめに働いている姿や北上川の流れを見ながらいろいろなことを考える。その時やってくる見知らぬおばあさんとの会話やゴミが散乱している様子を見ているうちに、主人公はゴミを拾い始める。やがて、みんなと一緒になって黙々と拾う。そして、終わった後に再び堤防に立ってみると、少し汗ばんでいたが、すがすがしい気持ちになった。

8 展開の大要

段階 学習活動 主な発問と予想される生徒の反応 指 導 上 の 留 意 点


○ねらいとする価値についての関心を高める。 ☆新聞で紹介された洪水の時の三年生のボランティア活動についての話を聞き、川崎中学校のボランティア活動が評価されていることを理解する。 ・新聞の記事や学年通信を紹介して、生徒の興味・関心を高めるようにする。

























○自作資料を読んで話し合う。
○あらすじと登場人物を把握する。
☆資料のあらすじと登場人物を確認する。
☆自分の体験を想起して、自分に重ねて考える。
・生徒が体験したことのある内容の自作資料を用いて、最初から資料中の人物と自分を重ねて考えさせるようにする。
・生徒の体験的な活動におけるよさに着目させて、生徒の批判にならないように注意する。
@北上川クリーン作戦を嫌がっている主人公の気持ちについて練り合い活動を行う。 @北上川クリーン作戦を嫌がっている主人公をどう思うか。
・毎年生徒会の伝統としてやっていることだからやるべきだと思う。
・生徒総会で決めたのだから、やるべきだと思う。
・暑い中ゴミ拾いをするのは面倒だし、疲れるからこう考えるのも仕方ないと思う。
・主人公の気持ちについて自分の体験をもとにして考えさせるようにする。
・体験カードの分析による意図的指名を行い、主人公の気持ちについての共感と批判の二つの考えを引き出し、相互に交流させるようにする。どちらかの考えに偏った反応をした場合には、教師がかたいれを行い、二つの意見を導くようにする。
○北上川クリーン作戦前の自分の本当の気持ちについて考える。 ○北上川クリーン作戦の前、自分は本当はどのような気持ちだったろうか。主人公と同じような気持ちはなかったろうか。
・主人公と同じように本当はいやだった。
・同じような気持ちがあった。
・行為とは切り離し、気持ちだけなら自分にも主人公と同じような心の弱さがあったことに気付かせ、自分自身にとって切実なものとしてとらえさせるようにする。
A楽をしようとA君の誘いにのって公民館のゴミ箱から空き缶を持ってき た主人公の行為について練り合い活動を行う。 AA君の誘いにのって、公民館のゴミ箱の中から空き缶を持ってきた主人公をどう思うか。
・みんながまじめにやっているのだから、ゴミ箱から空き缶を持ってくることは悪いと思う。
・自分だけ楽をしようと考えるのはずるいと思う。
・A君に誘われたのだから仕方がないと思う。
・誰だって楽をしたいと気持ちがあるから、仕方がないと思う。
・楽をしようとA君の誘いにのって公民館から空き缶を持ってきた主人公の行為について自分の体験をもとにして考えさせるようにする。
・主人公の行為に対して生徒の多様な価値観に基づく考えを導き、自分と異なる考え方に気付かせるようにする。
・一度発言した生徒を再度指名して、考えの根拠や理由について交流させて、自分の考えを広めさせるようにする。
B堤防に散らかっていたゴミを拾い始めた主人公の気持ちについての練り合い活動を行う。 B主人公が、黙々とゴミを拾ったのは、どんなことを思ったからだろうか。
・堤防にゴミがたくさんあってだんだん腹立たしく思ってきたから。
・自分がおばあさんに「僕たちの川だ」といいながら、全然ゴミを拾おうとしていなかったのでうそをついたことになると思ったから。
・みんながまじめにゴミを拾っているのに、自分は何もしていないと思ったから。
・自分がA君の誘いにのって公民館から空き缶を持ってきてしまったのを後悔しているから。
・自分自身に対して腹が立ってきたから。
・主人公が黙々とゴミを拾った理由について自分の体験をもとにして考えさせようにする。
・自分と異なる考え方の発言を聞き合いながら自分の考えを広めさせるようにする。
・ゴミを勝手に捨てる人に対する腹立たしさに対する腹立たしさにも気付かせるようにする。
C北上川クリーン作戦後の主人公の気持ちについて練り合い活動を行う。 C主人公がすがすがしい気持ちになったのは、どうしてだろうか。
・堤防がきれいになってうれしくなったから。
・おばあさんのごくろうさんという言葉に対してきちんと応えることができたから。
・花火大会の時にみんなが喜んでくれるだろうと思ったから。 
・ゴミを拾ったことで、空き缶をもってきた罪悪感や後ろめたさがなくなってすっきりしたから。
・みんなのために役に立つことができたと思ったから。
・北上川クリーン作戦後の主人公の気持ちについて自分の考えを交流し合い、自分の考えをさらに深めさせるようにする。
・体験カードの見直しをさせ自分が体験的な活動後に思ったことと主人公の考えとを比較しながら考えさせるようにする。
・罪悪感や後ろめたさの解消だけでなく、人のために尽くす喜びの面を中心に考えさせるようにする。
・生徒のどんな発言も肯定的に受けとめるようにする。
○北上川クリーン作戦後の自分の気持ちについて振り返る。 ○北上川クリーン作戦が終わった時、自分はどんな気持ちにだったろうか。主人公と同じような気持ちはなかったろうか。
・疲れたと思った。
・やってよかったと思った。
・自分の北上川クリーン作戦後の気持ちを交流し合い、少しは自分の気持ちのなかにも主人公と同じような気持ちがあったことに気付かせるようにする。
○書く活動を行いながら、今までの自分自身の生き方を振り返る。 ・今まで主人公と同じように人のために尽くしてすがすがしい気持ちになった経験を思い出して書いてみよう。
・みんなの話を聞いて、北上川クリーン作戦に対して考え方の変わったところがあれば書いてみよう。
・今までの経験のなかから人のために尽くしてすがすがしい気持ちがした経験を想起させ、人のために尽くすことの喜びを実感としてとらえさせるようにする。
・自分の体験直後の考えと今の考えを比較し、考えの変容に気付かせるようにする。



○各自が書いたものを発表し合う。
○教師の説話を聞きまとめをする。
・老人ホームにボランティアに行った時に、すがすがしい気持ちがした。
☆教師の説話を聞き、本時のまとめをする。
「○○○○○○は、最高の喜びである」自己チューとエゴイスト
・書いている最中にチェックして意図的に紹介するようにする。

北上川クリーン作戦に参加して

 「こんな事、やりたくねーよなあ。」と友達のA君が生徒会の議案書を見ながら言っている。僕も同じ気持ちだった。
 僕たちの学校では、生徒会が中心になって北上川の周辺や通学路のゴミ拾いをする「北上川クリーン作戦」を十年以上も行っている。毎年、地域の人達が楽しみにしている花火大会が夏休み中に行われるので、一学期の終業式の日にボランティア活動として取り組んでいるのだ。活動が認められてこれまでに何度も表彰も受けており、今では生徒会活動の伝統にもなってきている。しかし、僕は内心いやだった。暑い中をゴミを拾って歩くのは疲れるし、何の得にもならないと思ったからだ。かといって生徒会執行部の提案に対して、反対するわけにもいかず、僕はしぶしぶ承認した。

当日、予想通り暑い日差しが照りつける中で「北上川クリーン作戦」が始まった。生徒会長や校長先生の話を聞いたあとで、僕たちは、クラスごとにゴミ拾いをすることになった。僕は、燃えないゴミを拾う係だった。みんなの後をなんとなくついて少し行くと、友達のA君が近付いてきて、
「この暑いのにゴミなんか拾っていられるか。」
「公民館のゴミ箱の中にたくさん空き缶があるからそれを拾ってこようぜ。」
と言ってきた。僕はどうしようかと迷いながらも、A君の誘いにのって、二人で急いで公民館へ行った。

 A君の言う通り公民館のゴミ箱には、空き缶がたくさんあった。A君はあたりをぐるりと見渡し、誰もいないことを確かめると
「ここの空き缶を持っていけば今日の仕事は終わりだ。」
と言ってA君は、すぐに袋に入れ始めた。僕はこんなことしていいのかとA君の入れるのを見ながらただ黙って立っていた。その時、A君に「早くやれよ。」と言われて、僕はあわてて袋に空き缶を投げ込んだ。三分の一くらいまで入れたところでみんなのいる堤防の方へゆっくり歩いて行った。