岩手県立総合教育センター教育研究(1999)


文章表現力の育成を図る国語科の学習指導の在り方に関する研究(第1報)

−筆者の表現意図に着目した説明文指導をとおして−


目         次

T はじめに
U 文章表現力の育成を図る国語科の学習指導の在り方についての基本的な考え方
 1 文章表現力とは
 (1) 国語科における文章表現力の意味
 (2) 国語科における文章表現力の育成に関する学習指導の意味
 (3) 国語科における文章表現力の育成の意義
 (4) 表現の意図に着目することの意義
 (5) 話題や判断を読み手の立場から検討することの意義
 (6) 読み手の立場から記述することの意義
 2 文章表現力の育成を図る国語科の学習指導の在り方についての基本構想
 (1) 文章表現力の育成を図る学習指導の展開
 (2) 文章表現力の育成と関連させた読解指導の展開
 (3) 文章表現力の育成を図る国語科の学習指導についての基本構想図
 3 児童生徒の実態調査及び結果の分析と考察
 (1) 文章の記述に関する実態調査
 (2) 文章の理解に関する実態調査
 (3) 言語事項に関する実態調査
 (4) 理解と表現に関する実態調査
 (5) 意識に関する実態調査
 (6) 文章表現力の育成を図る国語科の学習指導の在り方についての指導試案
V 研究のまとめと今後の課題
 1 研究のまとめ
 2 今後の課題
W おわりに

【主な参考文献】

T はじめに

 国語科の学習指導では、児童生徒が筆者の考えやものの見方をもとに自らの考えやものの見方を深めたり、表現したりする資質や能力、すなわち論理的な思考にかかわる表現力を育成することが求められています。そのためには、相互に情報や主張を分かりやすくかつ客観的に伝えたり、理解したりする表現と理解の関連を図った学習活動を意図的に行う必要があります。
 しかし、小・中学校における理解と表現の関連を図る学習指導においては、要旨を読み取る指導が中心となり、読み取った内容や論理性を表現に生かす指導や相手に理解させるための論理の展開を生かす指導、論理的な展開を伴う文章の読解学習における児童生徒に構成と筆者の記述のねらいとの関連を意識させる指導が十分でない状況が見られました。その結果、要旨の読み取りはおおむねできるものの、相手や場に応じて適切かつ分かりやすく伝えるための表現力の育成は十分ではない状況がみられます。
 このような状況を改善するためには、説明文における表現と理解の関連を図る読解学習において、文単位での表現意図と文章全体の展開の関連に着目する場を位置づけ、児童生徒が説明の意図の明確さと展開の論理性から説明文を記述したり読んだりできるようにする必要があると考えます。
 そこで、この研究は、説明文の学習指導過程の中に、文章の展開と表現意図の関連に着目させた学習を位置づけることによって、文章表現力を育成する指導の在り方を明らかにし、国語科の学習指導の改善に役立てようとするものです。

U 文章表現力の育成を図る国語科の学習指導の在り方についての基本的な考え方

1 文章表現とは
(1) 国語科における文章表現力の意味
 文章表現力とは、文字言語を用いて、自らの考えや事実、情報など伝えたい事柄を、相手や場面に応じて適切に伝える能力であり、視写力、取材・選材力、構想力、記述力、推敲力、評価力等の力からなるものです。本研究では、特に確かな伝達の目的と明確な意図をもち、その目的と意図に応じて適切に文章表現を工夫し、読み手に分かるように伝える能力の育成を目指し、その要素を次の「伝達の確かさ」と「意図の明確さ」の二つとしました。

表現における「伝達の確かさ」
 目的に応じて、書き手が伝えようとする事柄や意志判断を、読み手に確実に伝えることができた状態、また伝わることができた状態

 表現における「伝達の確かさ」とは、書き手が記述にあたってその伝達の状況を推測し、そのための適切な表現の工夫をすることであり、そのことにより、読み手に表現の内容や意図を確実にとらえさせることができます。このことから「伝達の確かさ」は、目的に応じて、読み手に伝えようとする事柄を確かに伝達できる力としました。

表現における「意図の明確さ」
 目的に応じて、書き手の伝えようとする意図を、言葉や文の展開により明確に表現することができた状態、また読み手にそのことがとらえられた状態

 表現における「意図の明確さ」とは、書き手が伝えようとする意図を読み手に明確にとらえられるよう適切に表現の工夫をすることであり、そのことにより、読み手に対しても、書き手の表現の意図を明確にとらえさせることができます。このことから「意図の明確さ」は、目的に応じて読み手に伝えようとする意図を明確に表現できる力としました。

(2) 国語科における文章表現力の育成に関する学習指導の意味
 従来より国語科においては、文章表現力を育成するため表現領域に関する学習指導過程を設定し文章表現学習を展開するとともに、理解と表現の関連を図る観点から、理解の学習においても、叙述に即して読み取ったことやそのことから考えたことを表現する学習を展開してきました。これらの指導の結果、児童生徒においては、与えられた課題やテーマに応じて、事実や意志をおおむね適切に表現できるようにはなってきましたが、より相手に分かりやすく適切に伝えようとする意識や微妙なニュアンスを込めたり、文章の展開を検討したりするなど表現の工夫については、指導が十分ではありませんでした。分かりやすい文章を記述するためには、書き手が、読み手の立場に立ち、伝えたい意図が適切に伝わるよう意識して表現することが大切です。そのためには、記述内容や伝達しようとする意図が論理的であり、誰にでも客観的かつ的確にとらえることができる説明文の読解において、書き手がどのような目的で伝えようとしているのか、客観的な立場からその表現の意図をとらえる学習を位置づけ、学んだことを自らの表現に生かすことができるように指導することが必要と考えます。

(3) 国語科における文章表現力の育成の意義
 今日、社会においては、豊かで目的に応じて相手に適切に意志を伝えられる表現力が求められています。学習指導要領においても新たに「伝え合う力」が加えられるなど、学校教育においても、社会の要請に応じて、「生きて働く力」の一つとして表現力の育成が急がれ、表現指導の一層の充実が求められています。表現力の基礎にかかわることとしては、内容と方法に加えて、目的意識を明確にもつことが挙げられます。文章の読解をとおして、表現における書き手のもつ目的意識や相手意識を読み手として学ぶことは、場や相手に応じて適切に表現する能力の基礎を培うとともに、自らの文章表現において、表現の分かりやすさや意図の明確さとして生かすことができるなど、文章表現力の育成はおおいに意義のあることと考えます。

(4) 表現の意図に着目することの意義
 表現の意図とは、その内容を「だれに」「どの程度」「どのように」伝えようとするのかをめざしたもの、すなわち全体もしくは部分から読み取る、書き手の意志や判断など表現行為の根本にあって表現活動のすべてを統率しているものです。この書き手の意志や判断などの意図が、読み手により分かりやすく適切に伝わることが、表現が伝達された状態といえます。そのため読み手が、書き手の意図にそった語句の使用に気づいたり、文章の展開をつかんだりする表現内容の構成や語句、そして判断の程度など表現の意図にそった工夫に着目し、自らの表現に生かすことは、文章表現力を育成することに十分効果があるものと考えます。

(5) 話題や判断を読み手の立場から検討することの意義
 論理の構成や表現の工夫に留意しながら主張や話題を読み取る説明文の学習において、書き手から読み手へと立場をかえて、話題や書き手の判断を検討することは、書き手の意図を主体的に考えることができることから、全体の要旨をより適切に把握するのに有効と思われます。具体的には、書き手がどのような意図で、その言葉を用いたり、文章を構成したりしたのかを検討しその意図に納得することで、表現が単なる事実や考えの一方的な伝達から、書き手と読み手の思いが通じ、本当の意味での読解となること、読み手としてより分かりやすい表現はどうあればよいのかを検討することにより、具体的な表現の工夫を学ぶことができると考えられます。

(6) 読み手の立場から記述することの意義
 これまでの表現学習では、書き手の立場から自らの思いや考えなど、伝えたい事柄を書くことに主眼が置かれ、相手意識については内容に対する評価者という意識にとどまりがちでした。推敲においても、自らの表現の意図が正しく伝わったかどうかということや微妙な言い回しや言葉の使用については評価の対象には取り上げられませんでした。これからの表現学習においては、具体的に読み手を想起し、読み手がどのように受け止めるのかを予想し、書き手としてどのように伝えるのかなどの意識をもたせることが必要と考えます。読み手の立場に立って記述するとは、書き手が相手意識をもつことであり、そのことが相手や場など目的に応じた表現への工夫を促し、分かりやすく適切に伝える文章表現力の育成に有効に働くものと考えます。

2 文章表現力の育成を図る国語科の学習指導の在り方についての基本構想

(1) 文章表現力の育成を図る学習指導の展開
 本研究では、文章表現力の育成を図る学習指導の展開を次のように考えました。

ア 文章表現への興味関心の喚起
 文章表現行為の一般化・日常化をめざす観点から、児童生徒の文章表現への興味関心を高めるとともに、文章表現学習への抵抗感を取り除き、主体的な文章表現学習が展開できるようにします。そのためには、身近な題材による作文を書いたり多様な教材文を用いたりするとともに、平易な表現を用いたり多様な表現形式を取り入れたりすることが必要です。
イ 理解と表現の関連を図る学習の展開
 理解と表現の関連において文章表現力の育成を図ろうとする観点から、文章読解から表現に生かすことができる事柄の学習を展開します。そのためには、説明文の読解学習においては語句や表現にこだわらせるとともに、筆者の意図に対して関心をもたせるように配慮する必要があります。
ウ 相手意識と書き手意識の育成
 目的や相手に応じた文章表現をめざす観点から、記述にあたっては相手意識や目的意識を常に意識させるとともに、読解学習においても、書き手や読み手の立場にたって学習に取り組ませるようにします。
エ 総合的な文章表現学習の展開
 文章表現学習の充実を図る観点から、文章表現においては記述のみの活動に終始することなく、事前・事後の学習を充実させることが必要です。そのため個と集団による学習を工夫するとともに、特に評価や検討においては、共感的な態度で臨ませ、文章表現力を相互に高め合う活動となるように配慮する必要があります。
オ 基本的基礎的事項の定着
 言語教育の立場から、多様な表現活動の展開にのみ重点を置くのではなく、文章表現における基礎的基本的事項の定着を図る必要があります。

(2) 文章表現力の育成と関連させた読解指導の展開
 本研究では、文章の読解と表現学習の関連を図る観点から、次のような指導の段階を設定し、文章表現力の育成との関連を図る読解学習を展開するものとします。

ア つかむ段階
 文章表現に興味関心をもち、基礎的基本的事項を確認する
 文章を概観し、あらましをつかむ
イ ふかめる段階
 書き手の判断部分と文章の論の展開から書き手の意図に着目する
 書き手の伝えようとする話題や判断を読み手の立場から検討する
 文章の読み取りを深める
ウ ひろげる段階
 読み手の立場に立って、伝えたい事柄を工夫して文章を記述する

 なおア〜ウの一連の学習活動を通じて、文章の読解をも深めることをねらいとします。次にア〜ウについて、詳しく述べます。

ア つかむ段階
 この段階では、文章表現力の育成を図る学習が円滑に導入できるようにするため、文章表現への興味関心を喚起し学習意欲を高めるとともに、文章表現の基礎的基本的事項を確認する学習を展開します。また教材文による指導においては、文章を概観しあらましをつかむための読解を中心に展開します。指導にあたっては、文章の展開を理解させるとともに、事実と考察を区別させることにより、文章全体における書き手の意図や文章の内容をおおまかにつかませることが大切です。
イ ふかめる段階
 この段階では、前半に理解を中心として展開するとともに、後半では理解と表現の関連を図る学習を展開します。理解学習では、書き手の表現のねらいに気づき、文章の展開をつかませるとともに、書き手の思いや判断にかかわる部分と文章の論の展開から書き手の意図に着目する学習を展開します。理解と表現の関連では、読み手の立場から、書き手の伝えようとする表現について意図の明確さや伝達の確実さを検討する学習を展開します。
 指導にあたっては、特に書き手の表現しようとする意図が明確にとらえられる表現箇所に焦点をあて、説明文における書き手の考えや判断などと文章の展開とのかかわりについて取り上げます。また読み手の立場から、伝えようとする内容や判断の適切さを検討させるとともに、実際に教材文の書き換えなどにより、他の表現との比較や意図の伝わりの程度を検討し相互批正に生かします。さらにその学習を基にして教材文の読み取りを深めさせることも大切と考えます。
ウ ひろげる段階
 この段階では、読み手の立場に立ち、伝えたい事柄を工夫して文章を記述させる学習を展開します。指導にあたっては、伝えようとする事柄が、自分の意図に照らし合わせて適切であるかどうか、また読み手にとって分かりやすく表現されているかどうかについて検討させ、必要に応じて修正のうえ記述させる学習を行います。

(3) 文章表現力の育成を図る国語科の学習指導についての基本構想図
 これまで述べてきたことをもとにして、文章表現力の育成を図る国語科の学習指導の在り方について基本構想を図にまとめたものが、次頁の【図1】です。

3 児童生徒の実態調査及び結果の分析と考察

 基本構想の具体化と、指導試案作成のために、「文章の記述」「文章の理解」「言語事項」「理解と表現」「意識」に関する実態を調査、分析・考察しました。その結果は次のとおりです。

(1) 文章の記述に関する実態調査 −『自由作文』『題付け』−
 この調査は、制限時間内に与えられた題材(小「じゃんけん」、中高「流行語」)について児童生徒に自由記述させ、その記述内容をいくつかの観点から生徒の記述の傾向を把握するとともに、どの程度記述する力を有しているか、またテーマの設定が支障なくできるか、さらに記述内容と題名の関係から理解と表現に関連する実態を把握し、表現活動に関する資料を得ようとするものです。
 小学校における調査結果は次頁の【表1、2】のとおりです。
 【表1】から、文と字数は、論の展開に支障がなく妥当であるものの、漢字の使用は少なく使用する言葉も限られていることが分かります。常体表記の説明文型が多く、文末に自分の考えや思いなど感想を記述したものが7例、経験を叙述したものが7例です。自分の考えをきちんと論立てているものは4例あり、全体に論理的な文章を記述する傾向がみられます。
 【表2】から、記述内容と題付けは、おおむね一致していることが分かります。題付けには、修飾関係の工夫や他の言葉を用いるなどの工夫がみられるものの「○○について」「○○のじゃんけん」「じゃんけんの○○」など自分の書きたいことを十分表したものではありません。また6例が文章の一部を用いており、記述後に題付けを行ったと思われます。なお意識調査の結果にも題は自分で付けたほうがよいと回答した児童が多くみられ、題付けと記述との一致などの実態と合わせ望ましい状況にあると思われます。
 中高の結果は【表3・4・5】に示すとおりです。【表3】の観点のうち「題名無」が中学校3名、高校6名と自分が書いた文章に題を付けていないのが多く「流行語」または「流行語について」以外の題を付けることが困難だったと思われます。題名を付けるということは、自分の伝えたいことを最も端的に要約することであり、指導にあたっては要約力を付けることが必要と思われます。文数は少ないもので中高とも1文、多いものでは中学校が9文、高校が7文です。い
ずれも個人差が大きく、また文字数も少ないもので中学校は34字、高校は47字、多いものでは中学校が370字、高校は356字といずれも個人差が大きいことが分かります。句読点の不備の主なものは、句点か読点かはっきりしないものや文末にもかかわらず、句点のないものなどです。活字離れに象徴されるように、文章を書く機会が少なくなっていく状況にあって、これら文章を書くうえでの基礎的基本的な指導事項を徹底する必要があると思われます。【表4】の観点のうち、文体については中学校、高校とも男子が常体、女子が敬体を用いる傾向にあります。なお、いずれも文体の混用は見られませんでしたが、これは記述する文の数が少なかったことにもよると思われます。記述内容からみて、中高ともすべて説明文または意見文的なものでした。これは、読み手意識をもって書いていることによるものと考えられます。また、記述内容からみて、男子よりも女子が流行語を日常的に使用しているとともに、比較的好意的に受け止めている傾向が見られます。【表5】をみると、「流行語」の性格を「時代の象徴または反映」ととらえるとともに、その使用にあたっては流行語が理解できる世代かどうかを考えること、さらに言葉を広くとらえて正しい日本語を使うべきであるといった好ましい方向にあることが分かります。大きくはこの三類型ですが、流行語をめぐってこのほかにも様々な観点から記述してあり、総じて言葉への関心の表れととらえられ、中高生が流行語の渦中にあることをうかがわせます。以上のことから、表現の意図をより明確にもたせるためには、文章の記述後、要旨をとらえ直すための題付けを行ったり、記述前に書きたいことを十分にふくらませるための題づくりをしたりするなど、要旨の把握と記述活動を関連させる指導が必要と思われます。
(2) 文章の理解に関する実態調査 −『書き手に対する質問』『文章の補足』−
 この調査は、児童生徒に書き手に対する質問を一つだけ考えさせ、読み手の立場から書き手に対して、どの程度意図に着目しているかという実態をみるとともに、説明文の内容から全体の意図を把握し、読み取ったことに、書き手の考えや気持ちを類推し、二〜三文で後半部分を補足させ、意図のとらえと表現の関連における実態を把握しようとするものです。
 小学校の調査結果を【資料1・2・3】に示します。
 【資料1】から、質問の多くが話題への興味関心と書き手の考えや記述の意図についてのものであり、単なる受け身にとどまらず、書き手の考えを聞き出そうとする積極的な姿勢がみられます。【資料2】から、質問の着目状況が部分的ではあるものの、文章の読解においては、興味関心から着目させたり、書き手の心情に着目させる等、事実の読み取りだけではなく、全体における書き手の意図についてとらえさせるための質問づくりの場を読解指導過程に取り入れるとともに、文章の記述にあたっても、質問の予想を位置づける等、表現の意図への着目を理解と表現の両面から展開し、表現の意図に着目した表現活動をめざす必要があると思われます。なお、【資料3】から、自分の質問を難しいものと回答した児童の質問内容には、事実の確認から「どうして、この話を書こうと思ったのか」など話題を取り上げた理由まで様々あり、難易のとらえ方には個人差の大きいことが分かります。また児童には、相手に考えさせるような質問は避けたいとの意識もみられます。これらのことから、表現の意図の検討においては、児童の興味関心を記述内容に対するものから表現の意図に対するものへと向けさせるなど、読解のねらいを質的に高めるとともに、事実の確認や書き手の判断などの様様な視点に基づく複数の質問をもたせ、積極的に質問を促すような指導が必要と思われます。
 続き書きの結果は【資料4】のとおりです。おおむね直前の記述に関連して、事の結末を記述していることと、適切な主語を使用していることから、前段落や前文の要旨の把握ができていることが分かります。
また展開においては、適切に指示語や接続語を使用するとともに、文体に合わせて適切に敬体も使用しています。書き手の意図については、自分の意見感想を書き手の判断や主張として書き加える例もみられますが、全体として、読み取った事柄に適切に事実などにかかわる文を書き加えることができるものの、個人では書き手のねらいについては把握できない状況も予想されます。そこで個人の読解においては、キーワードや書き手の心情、判断に関する叙述に目を向けさせ、なぜこの話題を書き手は取り上げたのかについて、集団学習等の場で、文章全体から理解を深めていくことの指導が必要と思われます。
 中高では【表6】から分かるように「地球の回復能力はどのくらいか」と「なぜこのテーマを取り上げたのか」といった質問が多くみられます。森林 の伐採等によって自然破壊がもたらされ、地球の回復能力をこえてしまったことを考えると、はたして地球は回復できるのか、回復するとなるとどのくらいかかるのかとといったことを質問に挙げるのはきわめて自然なことであると思われます。また高校生は、自然破壊の発生時期、背景から「どうしたら不自由なく暮らし、地球の回復能力を越えない生活ができるか」の問いにみられるように、質問の視点が中学生よりも 広がっているのが特徴として挙げられます。総じて、「自然破壊」と「地球の回復能力」といった、本文のキーワードに関する質問が多くみられます。一方、「人類はなぜ木をきったのか」にみられるように、本文を読めば分かるような質問など、質問づくりのための質問もみられ、これが自分から自主的に発した問いならば、ある程度問題の核心に迫る質問になるものと考えられます。
 文章の続きを類型化したものが【表7】です。中高とも、本文の「なぜ、
こんなことになってしまったのでしょう。」という原因をたずねる記述に対応した記述(それは、〜だからです)が最も多いことが分かります。したがって、本文の続きを書くという記述スタイルに沿って書くことができているものと思われます。
(3) 言語事項に関する実態調査 −『文の修正』− 
 この調査は、「強い否定」「強い疑問」「強い意志」の観点から児童生徒に単文を修正させ、どの程度書き直すことができるかどうかといった実態をあらかじめ把握しようとするものです。
 小学校の調査結果を【表8】に示します。この表から、否定と意志については、おおむね意味の書き加えができていることが分かります。修正の実態としては、主に文末表現の修正と語句の付加の二つが見られますが、文の「強調」について理解が十分ではない状況にあります。また「推量」と「否定」「疑問」の混同がみられることから、意図の理解や表現については、正確さのみを追究するのではなく、児童一人一人のとらえ方を検討の場を通じて比較交流させながら、意図をとらえていく必要があると思われます。
 表現においては、主述関係や修飾関係などの言葉のきまりをある程度理解したうえで記述することが大切です。これら文法的な基礎知識が十分定着していないと、表現に限らず読解においても、書き手の意図が誤ってとらえられたり、正しく伝わらなかったりすることになりかねず、言語事項の指導の実態を踏まえ、読解においても言葉のきまりに適宜留意させながら、自らの伝えようとする意図を適切に表現できるようにする指導の必要があります。
 中高の結果を【表9】にまとめました。生徒の記述をみると「強い」意味合いが含まれているものとそうでないものがみられますが、この表から、否定、疑問、意志の意味をほぼ理解していることが分かります。しかし、それを強調するための表現が不十分で、「絶対に、本当に、必ず」といった副詞を使ったものがほとんどです。その他には、「○○にもかかわらず、○○だからこそ、○○なのに、〜わけがない、〜何がなんでも」など望ましい表現の工夫もみられますが全体として少数でした。このことから「絶対に、本当に、必ず」といった語句をつける以外にも表現の工夫によって意味を強調できることを指導する必要があると思われます。
(4) 理解と表現に関する実態調査 −『会話の創作』−
 この調査は、児童生徒に4コマの絵から登場人物の会話を創作させ、そのことから場面や相互の関係の把握の実態をみるものです。
 小中高の調査結果を【表10】に示します。この表から、児童生徒は全体の状況をとらえ、相互の会話を成立させるとともに、空腹を訴えている内容もおおむねとらえていることが分かります。会話における関係把握と適切な会話を創作することなどに対しては、児童生徒の興味関心が高いことも意識調査の結果から確かめられています。これらのことから、児童生徒が興味関心をもちやすい表現の方法を工夫するとともに、全体の構成や展開から、読み手にどのように伝えるかという観点からの指導が大切と考えます。
 以上の「文章の記述」「文章の理解」「言語事項」「理解と表現」に関する実態調査の結果から、学習指導試案に生かすポイントを次のようにまとめました。
ア 文章への題付けや見出し付けと記述との関連をとらえさせるとともに、題名や見出しの果たす役割に関する指導や要旨の把握と記述活動を関連させる指導を行う必要があること
イ 表現意図に着目させるため、記述内容への興味関心から書き手の心情を推し量ったり、全体的な筆者の意図を把握させたりするための様々な視点からの質問や検討の場を読解と表現のそれぞれの学習指導過程に位置づけること
ウ 読解にあたっては、文章全体からみて、筆者の論の展開に着目した指導を行うとともに読みのねらいを高めるような質問を複数もたせる必要があること
エ 表現にあたっては、意図の適切さと言葉のきまりに留意させるとともに、決まり切った表現でなく、場面に合った多様な表現が重要であることを指導する必要があること
オ 興味関心がもてる表現形式の方法を工夫する必要があること

(5) 意識に関する実態調査
 この調査は、これまで述べてきた実態把握調査を踏まえ、経験や態度の他にそれぞれの学習に対する「関心」「意欲」「有用感」を調査し、文章表現学習に対する傾向を分析したものです。その中から主なものをここに掲載します。

ア 課題作文に対する意識
 題を与えられる場合と自分で決める場合のどちらが取り組みやすいかの調査結果は【図2】のとおりです。小学生は自分で決定することを好み、中高生では与えられたほうが取り組みやすいとしています。このことは小学生が書きたい事柄を多くもつのに対し、中高生は作文への抵抗感をもち、作文に対しては内容より構成・展開を重視していることによるものと思われます。本研究では、意図をどのように表現するかという点を取り上げることから、題材については選択とし、伝え方等表現の工夫に絞って記述させることとします。また作文への抵抗感に対しては、伝達の必要性を十分意識させることが有効と思われます。
イ 相手に対する質問の傾向
 文章を読んで知りたいことがあった場合どうするのかの調査結果は【図3】のとおりです。児童生徒の多くが、自分が知りたいことをそのまま質問しています。実態調査でも、事実についての確認など内容にかかわる質問が多くみられます。一方、相手の回答を予想しながら質問すると回答した児童生徒は3割前後おり、相手意識をもって読むことがある程度できることが分かります。本研究では、書き手の意図を検討する学習を設定する必要があり、内容に対する興味関心から、書き手の表現意図に対する興味関心へと読み手の意識の転換を図るとともに、読解においても意図にかかわる観点を与えることが必要と思われます。
ウ 質問の難易の判断
 自分の質問が相手にどう受け止められるかをの調査結果は【図4】のとおりです。「やさしい・やさしいほう」としているのは、小学生では半数に満たないものの、中高生では6割を超えています。「むずかしい・むずかしいほう」の理由には、質問が短すぎたり、考えさせたりすることがみられ、「やさしい」の理由には、「答える人の立場に立って質問しているから」などがみられます。質問の難易意識の個人差が大きいことから、これらの児童生徒間における質問の傾向や、書き手の意図に対する質問の在り方について認識させるための集団学習の場を設けるなど、あらかじめ質問の内容を予想させ、そのことにより表現内容や論の展開を工夫させることが必要と思われます。
エ 文章の続きを書くことに対する意識
 文章の続きを書くことをどう思うかの調査結果は次頁の【図5】のとおりです。小と中高で結果に大きな差が見られます。小学生では「自由に書けるから」易しいとしているのに対し、中高生は「どう続きを書けばよいか分からないから」「書き手の意図が分からないから」難しいととらえており、文全体の読解と合わせて書き手の表現の意図についても検討させたり、内容と書き手の意図との関連を把握させたりすることが必要と思われます。なお、直前の内容を受けて書いたものが多くみられることから、おおむね書き手の意図に着目していることが分かります。
オ 文の修正・推敲の経験
 文を推敲したり修正したりすることがあるかどうかの調査結果は【図6】のとおりです。小学生と中高生で大きな差がみられます。この結果からも、作文の内容より展開や構成など形式を重視する傾向がうかがわれ、文章を書くことにかかわる学習が十分でない実態が推測されます。自らの表現の検討を行い、意図の伝達をより適切にしようとするためには、具体的に読み手や質問を想定させるなど、相手意識を十分にもたせることが必要と思われます。
カ 作文の読み直しの経験について
 作文を書いた後に読み直しをするかどうかの調査結果は【図7】のとおりです。どの校種においても望ましい傾向が認められることが分かります。読み直しの観点として、読み手にとってよく分かるか、言いたいことは適切に述べられているかを意識させる必要があると思われます。
キ 作文の記述における読み手意識について
 作文を書くにあたって読み手を意識するかどうかの調査結果は【図8】のとおりです。小学生では読み手を特に強く意識していますが、「誰」に「どのように読まれるか」を意識させることは充実した表現には不可欠です。内容への興味本位だけの評価ではなく、書き手の表現しようとした意図がどのように伝わってくるのか、よりよくするためには、どのような推敲修正が望ましいのかなどの点について、十分意識させることが重要と考えます。
ク 同級生の作文に対する興味関心
 他の児童生徒の作文を読むことをどう思うかの調査結果は【図9】のとおりです。全体的に高い傾向をもち、小学生の理由としては、「内容への興味関心」が最も多く、次いで「自分との違いや記述態度への関心」などがみられます。中高生ではこれらのことから、指導上の留意点として、興味関心から読むのではなく、自らの表現に生かす点を学ぶという観点をもたせることが必要であると思われます。
ケ 自分の作文を読まれることへの意識
 自分が書いた作文を友達に読まれることをどう思うかの調査結果は【図10】のとおりです。全体的に消極的であり、その理由としては「はずかしい」が最も多く挙げられています。これは当然予想されたことであり、批正など表現における評価の場においては、ペアまたは小集団など学習に取り組みやすい環境を設定することが必要と思われる。
コ 自分の作文に対する誤りの指摘への意識
 自分の作文の表記上の誤りを指摘された場合どう思うかの調査結果は【図11】のとおりです。全体に好意的に受け止める傾向が認められ、特に中学生においては顕著です。文章表現における誤字脱字等を積極的に修正したいとの意識は大変好ましいものです。小学生の結果の要因は、項目ケの理由と同じく恥ずかしいという気持ちが強いためと思われます。このことから、特に検討においては、一人で読み直すだけでなく、ペアまたは小集団の中でよりよい文章表現をめざし、それを推敲につなげていく必要があると思われます。
サ 作文に対する上達意識
 文章をうまく書きたいと思うかどうかの調査結果は【図12】のとおりです。全体的に高い意識が認められますが、高校生に比べ、小中の児童生徒に向上意識に欠ける傾向がやや見受けられます。このことは高校生における文章表現が日常生活よりは、学習上においてその必要性を十分認識していることによるものと思われます。文章表現力の育成のねらいからみて、うまく書くことそのものを目的とするのではなく、相手意識と目的意識に基づいて必要な文章表現が日常的に行えるよう、身近な題材を取り上げ、負担感の少ない短文を中心とした作文学習を展開することが必要であると思われます。
シ 作文の上達に対する考え
 作文をうまく書くために大事だと考えていることをまとめた結果を【表11】にまとめました。小学生は「自分の考えを整理して書く」を第1位に挙げ、以下「内容の工夫」や「しっかりと書く」等、表現学習で学んだ基礎的基本的な事柄や態度的なことを挙げ、高校生では、「本をたくさん読み調べる」を第1位に挙げて、「下書きやメモをとって書く」「たくさん書く」が続いています。小学校の段階に培われた文章表現力が、成長するにつれて、日常における具体的な「読書」や「記述行為」につながったことは、国語科における文章表現力の育成の過程が児童生徒の意識や実態に沿うものであり、きわめて望ましい結果といえます。ただ「相手意識」が高校生になると低くなることから、本研究でめざす表現意図への着目においては「相手意識」を念頭に置かせることが大切です。指導上の留意点として、小学生においては「内容の工夫」や「考えを整理する」などの基礎的な表現学習を位置づけるとともに、中学生においては、文章表現力の習熟を図る場を設定することが必要です。
 以上意識に関する実態調査の結果から指導試案に生かすポイントを次のようにまとめました。
ア 課題作文への意識の差が大きいことから、指導にあたっては表現の目的、必要性について認識させる必要があること
イ 文章読解において、書き手の表現意図にはあまり関心をもっていないことから記述内容と書き手の意図に対する興味関心をもたせるなど、書き手と読み手の両者の立場から読んだり書いたりする必要があること
ウ 作文における推敲や修正の経験に大きな差がみられることから、相手意識を高め、より適切な文章表現への意識を高める必要があること
エ 文章の創作に対する興味関心が高いことから、発達段階に応じた文章表現学習の工夫が必要であること
オ 書き手の意図を考える学習に対する「関心」「意欲」が低いことから、表現においても読解においても、文章の書き手の意図を明確におさえることが必要であること
カ 意図を明確に伝える学習に対する「関心」「意欲」が低いことから、表現の目的と方法に対する興味関心を高める学習の工夫が必要であること
キ 下書きや推敲、辞書利用など作文学習の実態に校種の差が大きいことから、表現の基礎的・基本的事項の徹底が必要であること
ク 相互評価に対する姿勢が消極的であることから、よりよい表現活動への意欲を高める指導が必要であること

(6) 文章表現力の育成を図る国語科の学習指導の在り方についての指導試案
ア 指導試案作成のポイント
 実態調査から、指導試案を作成するうえで、留意する必要があることを指導試案作成のポイントとして以下に述べます。

@ 文章表現に関する基礎的事項の指導
 文章記述にかかわる理解及び意識の調査における個人差が大きいことから、指導の導入段階では、文章記述の基本的な事項の確認をさせる必要がある。文章表現力の育成を図る学習においては、重要なのは、記述における基礎的基本的事項の十分な定着である。特に句読点の付け方や主述の関係を表す基本文型の理解にかかわる指導を十分に行い、文章表現にあたっては、語彙や修 飾語を用いるだけでなく、語順を変えたり助詞を変えたりすることによって効果的な表現になることを理解させることも必要であり、適宜言語事項の指導に配慮しなければならない。

A 文章表現学習への興味関心の喚起
 導入段階では、文章表現学習への興味関心を高め、主体的な取り組みができるようにするとともに、表現における伝達や意図について、その意味や目的、機能などを十分に理解させておく必要がある。例えば、表現形式や題材を選択させるなど、書きたいことを積極的に書くことができるようにするとともに、その学習をとおして、表現の意図をより明確にすることや伝達を確実にすることを主体的に学ぶことができるように配慮する必要がある。情報の伝達機能には、円滑なコミュニケーションもあることから、表現の伝達状況の検討では、書き手の意図や心情の理解にかかわる書き手と読み手双方のコミュニケーションの在り方にもふれることが必要である。

B 表現と理解の一体化への配慮
 表現と理解の関連を図ることから、表現をとおして理解が深まるようにする等、表現と理解が一体となるような指導に配慮する。教科書教材から学んだことを自らの表現に生かすとともに、その表現によって、書き手の意図がより確かにとらえられるようにする。

C 文章表現における相手意識・目的意識への配慮
 文章表現において場や相手に応じるなどの目的意識をもたせることが必要であることから、個による表現活動と併せて集団による表現活動も設定し、書き手と読み手の双方の立場から記述したり、検討・修正したりできるようにする。

D 指導事項の精選・厳選
 学習指導要領の改訂に伴って、教科の指導時間数の削減に対応した、指導内容の精選・厳選を しつつ指導できるように配慮する。文章の読解指導に表現の意図への着目にかかわる学習を位置づけることにより指導時間が多くなることが予想されるので、詳細な読解ではなく、要旨の読み取りを中心に行い、筆者の表現しようとする意図を文章全体から論の展開を中心として把握でき るようにする。

E 推敲・批正と評価の工夫と支援
 文章の上達を望む意識が高いことから、文章の推敲や評価にあたっては、自己評価や相互評価する学習場面を取り入れる工夫をする。また教師による推敲や評価も学習を積極的なものにするのに確かな効果が期待できることから、適宜支援にあたるものとする。

イ 指導過程試案
 実態調査を基にして、小学校及び中学校を想定して作成した「文章表現力の育成を図る国語科の学習指導の在り方についての指導過程試案」を【表12】に示します。

V 研究のまとめと今後の課題

1 研究のまとめ
 この研究は、国語科における理解と表現の学習の関連を図る観点から、文章の読解学習指導過程に、文章の展開と表現意図の関連に着目させた学習を位置づけることによって、文章表現力を育成する指導の在り方を明らかにし、国語科の学習指導の改善に役立てようとするものです。
 具体的には、説明文の読解において、書き手が伝えようとする事柄とそのねらいから、書き手の表現の意図に着目し、相手や場などに応じた表現の工夫を読み手の立場から検討し、自らの表現に生かすなど、児童生徒が意図の明確さと展開の論理性から説明文を記述したり読んだりする学習を設定するならば、文章表現力が育成されるであろうとする仮説を設定し、基本構想で明らかにした、語彙の活用を図る学習活動を具体的で実践的なものにするために、児童生徒の実態調査を行い、その結果を基にして文章表現力を育成する指導の在り方の指導試案を作成することができました。
 本研究を進める中で「明らかになったこと」及び「課題として残ったこと」は次のとおりです。

(1) 指導の基本構想を考察するうえで明らかになったこと
ア 表現と理解の指導は、一体的に行われることによって表現力と理解力がいっそう育成されていくものであるという指導の構想をもつことができたこと
イ 従来のような指導では指導時間を確保できないことから、指導事項や指導内容をいっそう精選・厳選した指導構想をもつことができたこと
ウ 相手意識をもたせることが、書き手は読み手の立場から、読み手は書き手の立場から文章の推敲をしたり検討したりすることになり、文章を記述するうえで効果的な見通しをもつことができたこと
(2) 指導試案作成のため行った実態調査から明らかになったこと
ア 文章の読解に比べて、主述のかかわりや文法的な用法などを含めた文章記述における個人差が大きいこと
イ 文章の創作に関する興味や関心が高いことや文章をうまく書きたいという上達意識が高いことなど望ましい傾向がみられたこと
(3) 課題として残ったこと
ア 文章の記述状況と意識状況との関連をうまく見いだすことができなかったこと
イ 調査の対象とする児童生徒数が少ないことから、実態調査結果を参考にしつつも、授業実践に際しては、当該児童生徒の学習に向かう意欲等を十分に把握する必要があること

2 今後の課題
 本研究は、国語科における理解と表現の学習の関連を図る観点から、文章の読解学習指導過程に、文章の展開と表現意図の関連に着目させた学習を位置づけることによって、文章表現力を育成する指導の在り方を明らかにし、国語科の学習指導の改善に役立てようとするものです。そのため、本年度は、文章表現力に関する実態調査を行い、児童生徒の文章表現学習に対する意識や傾向などを把握し、その結果に基づいて指導試案を作成しました。今後の課題としては、授業実践をとおして育成しようとする文章表現力の変容状況、すなわち各要素の育成状況を適切に測るための評価問題の作成があります。また授業実践にあたって精選・厳選すべき内容の検討も行わなければなりません。殊に学習指導要領の改訂に伴って各学校においては移行措置に伴う教科の配当時間の削減が予想される状況にあって、指導事項の大幅な精選を図ることと文章表現力の育成をめざすことを十分に検討しながら授業実践を構想していくことも課題の一つと思われます。

W おわりに

 この研究を進めるにあたり、実態調査の実施などいろいろご協力いただいた研究協力校大迫町立外川目小学校多田玲子校長先生、花巻市立西南中学校太田代伸夫校長先生、岩手県立不来方高等学校伊藤民也校長先生をはじめ、諸先生方、児童生徒のみなさんに対し心からお礼を申し上げます。
 また、本研究の推進にかかわっていただいた、軽米町立晴山中学校尾澤厚子先生、岩手県立盛岡第三高校金濱安男先生、岩手県立久慈商業高校反町暢夫先生の三名の研究協力員の方々に心より感謝申し上げます。


【主な参考文献】
山本 稔著『文章表現に生きる文法指導』         明治図書 1981 初版刊
渋谷 孝著『説明的文章の教材研究論』         明治図書 1980 初版刊
森田信義著『筆者の工夫を評価する説明的文章の指導』         明治図書 1989 初版刊
藤原 宏著『論理的に表現する力を伸ばす作文指導』         明治図書 1992 初版刊
野地潤家・渡辺冨美雄監修『新版 国語実践指導全集』   日本教育図書センター1992  新版
藤井圀彦著『文章表現力の基礎指導−人間行動学としてのことばの教育−』東洋館出版社1993初版刊
藤原宏・長谷川孝士・渡辺実監修『中学校国語科教育実践講座』    ニチブン 1997  初版刊



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