岩手県立総合教育センター教育研究(1999)


理科におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の開発に関する研究(第1年次)


目  次

はじめに
1 理科におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の開発に関する基本的な考え方
 (1)物理領域におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の必要性
 (2)生物領域におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の必要性
 (3)天文領域におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の必要性
2 物理領域における開発教材
 (1)センサの働きと回路
 (2)データのコンピュータへの取り込み
 (3)シリアルポートを利用した計測
 (4)ネットワーク(インターネット)を利用した計測
 (5)データの分析例
3 生物領域における開発教材
 (1)マルチメディア機能を活用した教材(多目的にメダカを活用した教材)
 (2)ネットワークを活用した調査(2000年岩手県内の生き物調査)
4 研究のまとめ
 (1)研究のまとめ
 (2)今後の課題
おわりに

文  献

はじめに

 新学習指導要領では、「自ら学び、自ら考える力を育成すること」が重視され、理科の学習指導に当たっては、適宜コンピュータや情報通信ネットワーク等の活用を図りながら、体験的な学習や問題解決的な学習の充実が求められています。
 しかし、児童生徒一人一人に事象に対する問題意識をもたせたり、科学的な考え方を高めていくためには、観察、実験を欠くことはできませんが、自然事象の中には、非常にゆっくりと変化し観察に長時間を必要とするもの、空間的に離れた地点からのデータ収集を必要とするものなどがあり、授業では扱いにくい現状にあります。
 このような状況を改善していくためには、ミクロの世界や時間を縮めて撮影したものをコンピュータのマルチメディア機能を活用して教材化したり、遠隔地の測定データをコンピュータ画面上に表示しデータベース化したりすることができるネットワークを活用した教材の開発が必要であると考えます。
そこで、この研究は、理科において時間的、空間的に従来は観察、実験が困難と思われる事象について、マルチメディアとネットワークを活用した教材を開発、提供することにより、理科の学習指導の改善に役立てようとするものです。

1 理科におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の開発に関する基本的な考え方

(1)物理領域におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の必要性
 小・中・高等学校理科(物理)の学習においては、身の回りに起こっている様々な物理現象について観察、実験をした後に、発達段階に応じた分析や一般化を図ることが重要です。また、観察、実験の過程での情報の収集・検索,計測・制御、結果の集計・処理などにおいては、適宜コンピュータや情報通信ネットワーク等を積極的に活用することが求められています。そこで本研究では、遠隔地間でのリアルタイム計測や、情報の収集にコンピュータとネットワーク(インターネット)を活用した教材を開発することにしました。ネットワーク(インターネット)を利用することによって、センサ及びパソコンを用いた計測の適用範囲は大きく広がります。その結果として、時間的、空間的に従来は観察、実験が困難と思われる事象を取り扱うことができるようになり、問題解決的な教材を提供することが可能になると考えられます。さらに、ネットワーク(インターネット)を利用することによって、メールの交換以外に測定データ、写真、図などあらゆるデジタルデータの交換、蓄積、公開が可能になり、理科(物理)の学習において、科学的なテーマにもとづく探求活動及び課題研究を行う場合や、他校と共同研究を行う際の有力な思考の道具あるいは、情報を再編集するための道具になりうると考えます。
 本研究では、上述した利用法の基礎となる、いろいろなセンサから出力される電流や電圧などの計測と、それらの計測値をネットワークを介して送受信しグラフ化する方法並びにデータベース的取り扱いを、センサ、デジタルマルチメータ、A−Dコンバータ、コンピュータ等を用いて行いました。

(2)生物領域におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の必要性
 小・中・高等学校の理科(生物)の学習においては、身の回りに起こっている様々な生命現象を直接観察、実験することが重要であり、その活動の中からより深く自然を追究しようとする意欲や科学的な考え方、並びに、生命を尊重する態度も育つと考えます。
 しかし、生物領域の学習において扱う生命現象は実に多様であり、その中には、観察に長時間を要するものや、学校の設備では実験が不可能に近いものも多くあります。また、様々な地域からより多くのデータを集め比較することが求められる場合もあります。
 そこで、それを実際の学習に位置づけ、児童生徒の直接体験を深化補充することができるマルチメディアとネットワークを活用した教材の開発が望まれます。
 このことによって、従来は、断片的な観察にとどまっていたものが連続的に観察可能になったり、より詳細かつ鮮明な教材を視聴したりすることができるようになり、児童生徒の理解を深めることができると考えます。さらに、ネットワーク(インターネット)を利用した教材を活用することにより、身の回りの生物に対する興味・関心が高まり、より広い目で自然の事象をとらえることができるようになると考えます。

(3)天文領域におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の必要性
 小・中・高等学校の理科(天文)の学習においては,身の回りに起こっている様々な天文現象を直接観察、観測することが重要であり、その活動から天体の運動や特性についてその規則性を追究しようとする意欲や科学的な考え方などが育つと考えます。

 しかし、天文領域の学習は、観察や観測が夜間の場合が多く学校の授業の中で扱うことが難しく、対象となる天体についても時間的、空間的なスケールが長大なため、断片的な観察や観測だけではその規則性や特性をとらえることが困難です。
 そこで、長時間にわたる天文現象や特殊な装置を用いなければとらえることができないものについて、マルチメディア教材などを活用することによって、時間的、空間的スケールを縮め、継続的により鮮明かつ詳細な疑似観察並びに観測等が可能になり、児童生徒の理解を深め、興味関心を高めることができると思われます。さらに、ネットワークを活用した教材等を活用することによって、一カ所の観測等では、わからない事象についても、遠く離れた複数の観測点を結ぶことで、より広い目で地球や宇宙などの空間を的確に認識できるようになると考えます。
 上述した、物理、生物、天文領域に 【図1】教材開発に関する基本的な考え方 おけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の必要性をもとに、教材開発に関する基本的な考え方をまとめたものが図1です。教材の中には、各学校で実施できるような各種実験方法の紹介及び解説等も入れておき、実体験が希薄にならないような配慮を施していきたいと考えています。なお、天文領域については第2年次(平成12年度)に教材を開発する予定です。

2 物理領域における開発教材

(1)センサの働きと回路
 理科教育だけでなく情報や環境教育での活用も視野に入れたWindows 上での計測という観点から、本年度は温度センサ(LM35DZ)を中心に、湿度センサ(CHS-MSS)、紫外線センサ(G5842)等も対象に入れて研究を進めました。温度センサのLM35DZは、図2に示したように、出力電圧が摂氏[℃]温度にリニアに比例する高精度IC温度センサです。 図4は、出力電圧がそのまま温度を表す回路であり、図5は、熱電対用プリアンプ回路です。また、湿度センサであるTDKのCHS-MSSも、図3に示したようにリニアリティ特性に優れたセンサで、3つの端子をもち電源を接続すると簡単に出力が得られます。電源電圧に1Vを加えると、湿度0〜100%RHの湿度変化が信号出力0〜1Vの電圧変化としてリニアに得られ、湿度30%RHでは0.3Vとなります。

(2)データのコンピュータへの取り込み
 物理量をネットワークを介して送受信する前に、センサを用いて図6に示すように、デジタルデータとしてコンピュータに取り込む必要があります。アナログデータをデジタルデータに変換する装置は、自作したA-Dコンバータと、デジタルマルチメータを用いました。後者の特徴は、BasicやDelphiを使用してRS232C制御用のソフトを作り、センサが出力するアナログデータを直接コンピュータに送り、画面上でグラフ化することによって、物理量(実験値)の時間的変化を容易に計測できることです。

(3)シリアルポートを利用した計測
 Windowsで外部機器を操作したり、データ収集を行うには、シリアルポートの活用が最も簡単で確実な方法です。このシリアルポートにADコンバータ、デジタルマルチメータ、ワンチップマイコンを使用して組み立てた回路等を接続すれば、センサからのデータをコンピュータに直接取り込むことができます。ここでは、RS232Cを介してコンピュータと通信できる機能をもつデジタルマルチメータをコンピュータに接続し、VisualBasicとExcel2000を用い、データの収集、蓄積、表示等が比較的容易にできる例を次に示します。 ア Visual Basicを使用したデータ収集  図7の中央は、コンピュータにデジタルマルチメータを接続したもので、計測開始前の表示画面は図7の左です。2秒ごとに抵抗に流れる電流値を計測した表示画面を図7の右に示します。

イ Excel2000を使用したデータ収集
 図8は、表計算ソフトのExcel2000 にデータを取り込んでいる様子です。ワークシート上のセル内にデータを取り込めるので、グラフ表示、データ分析、データベースとしての取り扱いなどが容易にできます。デジタルマルチメータは、いろいろなセンサからの出力(電圧、電流など)や、抵抗値、 周波数、電気容量等を手軽に計測できるので非常に便利です。また、Visual Basicで、ActiveXコン トロールを作成しておけば、Excelでもコンテナとしてワークシートなどに貼り付けて利用することが可能になると同時に、インターネットエクスプローラで ActiveXコントロールを利用することができるなど、いろいろな利点があります。
 本研究では、VBAとActiveX の2つを活用しました。
(4)ネットワーク(インターネット)を利用した計測
ア ネットワークの構築とインターネットへの接続
 研究のために図9のようなネットワークを物理実験室に構築しました。サーバ用パソコン(OSは、Linux)を中心に、クライアントパソコン(OSは Windows95)が10台稼働しています。これらのパソコ ンは平成9年度の理振で導入したものです。
 A-D変換をしてパソコンに取り込まれた データをネットワーク上で送受信するため、A-D 変換データを送り出したり(サーバー側)、読み込む (クライアント側)プログラムを、VisualBasic、とJava で作成し、あわせてA-D 変換した時系列データを表示するプログラムも作成することにしました。
 インターネット上でTCP/IPを使って、あるアプリケーションが他のアプリケーションと通信を行うときには、まず、それぞれのアプリケーションが1個ずつソケットを作成します。そして、この1組のソケットがネットワークを通じて接続された後で、一方のソケットからあるデータを送り込むと、相手のソケットからはそのデータが出てくるという仕組みになっています。逆もまた同様です。
 ソケットの種類には2種類あり、ソケットとソケットを接続して通信を行う方法をストリーム型といいます。このソケットを作成した場合は、TCPというプロト コルが使用されます。TCP は、信頼性が高く、データが、送った順番に確実に相手に届くことが保証されており、図10のように水道管の中を順序よくデータが流れていくイメージにたとえることができます。特徴としては、ファイルの読み書きと同じ感覚で使用することができることです(図11)。

イ サーバー側プログラムの概要
 コンピュータ間のデータ通信では、片方をサーバー、もう一方をクライアントという形にするのが一般的です。Winsockコントロール を用いたプログラムでもサーバー用プログラムとクライアント用プログラムを作成することになります。サーバー側のプログラムでの動作順序と使用するプロパティ 及びメソッドを次に示します。

@ポート番号の設定
 TCP/IC で通信を行うには、「ポート番号」を設定する必要があります。これはクライアント側からデータが送られてきた時に、ポート番号によって、そのデータがどういう種類のものかを判断するためのものです。プログラミングの際には、ポート番号を「LocalPort」というプロパティで設定します。例えば、Winsockコントロールの名前が「ScienceServer」の場合、「ScienceServer.LocalPort=1001」とすると、ポート番号が1001番になります。ただし、いくつかの番号は既存のインターネット用アプリケーションのために予約されているので、それらと重ならないように指定する必要があるので、1000番以降を指定するのが無難だと思われます。
Aクライアントとの接続
 ポート番号を設定した後、「Listen」というメソッドを実行します。これでクライアントとの接続の準備ができたことになります。この状態でクライアントが接続してくると、Winsockコントロールの「ConnectionRequest」 というイベントが発生し、このイベントプロシージャの中で「Accept」というメソッドを実行すると、接続が確立します。
Bデータの送受信
 クライアントからデータが送られてくると、「DataArrived」というイベントが発生します。そして、このイベントが発生した時に、「GetData」 メソッドを利用してデータを受信します。クライアントからの接続要求待ちのサーバーを図12に示します。ローカルポートを監視中であることが、ステータスバーに表示されています。また、接続を完了して、温度データをクライアントに送信している状態が図13です。

ウ クライアント側プログラムの概要
 前頁図12の待機中のサーバーに対して、クライアント側で、サーバーのホスト名または、IPアドレスを図14(ホスト名:Physics40) のように入力し、接続ボタンをクリックすると、サーバーとクライアントが接続されます。図14は、サーバーから送信されてきた温度データをクライアントが受信し、その値を表示しながらリアルタイムにグラフ化している状態です。作成には、VisualBasicを使用しました。

 また、Excel2000で作成したクライアントの表示画面を図15に示します。なお、温度センサの回路は、前述したように、出力電圧がそのまま温度を表示できるよう工夫しました。この例でも分かるよ うに、センサとコンピュータを利用した計測にインターネットを組み合わせることで、計測の適用範囲が大きく広がり、時間的、空間的に従来は計測が困難と思われていた事象を取り扱うことができるようになります。工夫次第では、科学的なテーマに基づく探求活動や課題研究を行う際の有力な手段になると思われます。

(5)データの分析例
ア SQLで行うデータ処理
 収集したデータにデータベース処理を行うには、データが記録されたファイルに対して、データの抽出や更新など、リレーショナルデータベースを管理する言語であるSQL(Structured Query Langu-age) を用いて、柔軟なデータ処理が行えるようにしました。図16は、Excelで収集したデータをグラフ表示したものであり、図17は、抽出するフィールドを指定し、レコード単位で必要なデータを取り出したものです。

イ Excel2000で行うデータ処理
 表計算ソフトであるExcel2000を使うと、グラフ表示やオートフィルタ機能を用いたデータの抽出、さらには、データベース的な処理が比較的容易に行えます。図18に、エナメル線を液体窒素に入れたときの抵抗値とその変化を表すグラフを示します。今後は、物理領域だけではなく、生物領域や天文 領域などと連携をとりながら、児童生徒が身の回りの自然に対する興味・関心を高め、より広い目で自然の事象をとらえることができるような教材を開発、提供していきたいと考えています。
 以上開発した教材の一部を紹介しました。来年度は、開発教材に改良を加え、周辺機器を充実させながら教材の種類を増やし、授業実践に備えたいと考えています。

3 生物領域における開発教材

(1)マルチメディア機能を活用した教材(多目的にメダカを活用した教材)
 メダカは、小学校から高等学校まで理科や生物の教材としてはば広く教科書に取り上げられています。これは、メダカの飼育や管理が容易であることや条件を制御しやすいこと、世代交代が早いこと、遺伝的系統がいくつかあり遺伝の教材に適していることなどの特性をもっており、実験材料として大変優れていることによります。当センターでも、多目的教材としての活用を図り研究を推進してきました(畑、阿部、1997)。
 しかし、メダカの生命現象を総合的に追究していこうとした場合、次のような困難点があります。

@ 発生現象のように比較的時間のかかる変化を動的な連続的変化としてとらえにくい。
A 学校の設備では実験が不可能に近い生命現象も多くある。

 したがって、このような困難点を克服できれば、総合的に生命現象を追究することが可能となりま す。そこで、上記@、Aの解決策を以下に示します。

@ 微速度撮影装置を使って時間を縮めて撮影し、連続的映像としてとらえる。
A 生物を遺伝子レベルで認識するDNA分析法や、電子顕微鏡レベルでの観察などセンターの設備を生かしながらマルチメディアを活用した教材として作成する。

 上記のようにして、マルチメディアを活用した教材を開発し、小、中、高等学校で比較的容易に行えるような実験例についても紹介し、すぐ授業で使えるようなかたちとしてまとめました。

 開発した教材の構成は、次の@からBのとおりで、その一部を次ページ以降に紹介します。

ア 岩手県内の野生メダカ(生息分布調査結果)
 環境庁が1999年2月に発表した絶滅のおそれのある汽水・淡水魚類のレッドデータブックに、メダカが記載されたことが話題になっています。メダカをはじめとする身近な生物の危機は、私たちのふるさとの自然環境、次世代をはぐくむ場の危機とも考えられます。
 総合教育センターでは、平成5年(1993)から毎年春と秋に県内のメダカの生息調査を実施してきました。その結果、県内の生息地は急速に減少しており、メダカの生活環境が悪化してきていることがわかりました(図20、21)。

イ 発生(微速度撮影装置を活用した教材)
 発生教材のページは、実験編と解説編とで構成しました(図22)。解説編は、観察器具の工夫や観察の際の観点などについてわかりやすく記述し(図23)、実験編は、手順などについて具体的に記述し、すぐ授業で使える様式にまとめました(図25)。また、発生は比較的時間がかかる変化なので、微速度撮影装置を活用し、時間を短縮した連続的映像としてとらえました。さらに、発生過程のそれぞれの画面をクリックすることにより動画を呼び出せるように工夫しました(図24)。 

ウ 遺伝(系統メダカと野生メダカを活用した教材)
 メダカの体色の遺伝がメンデルの遺伝の法則に従うかどうかを、岩手県の野生メダカと系統ヒメダカ(d−rR)を用いて確かめる実験教材を作成しました。なお、様式については、遺伝教材のページも発生教材と同様に実験編と解説編からできています(図26、図27、図28)。

エ 遺伝と変異(DNA分析装置を活用した教材)
 最近の科学技術の進歩はごく微量の組織でDNAの鑑定ができ、その生物の親子関係などを明らかにすることができるようになりました。そこでこの最新の科学技術についてメダカを例にDNA分析を行い、メダカの個体の由来を探りながら、わかりやすくその原理や方法について理解できるような教材を作成しています(図29)。

オ 本能行動(デジタルビデオを活用した教材) 
 メダカの産卵はふつう明け方3時から4時に行われるので、授業で産卵の瞬間を観察することは極めて困難です。しかし、産卵前に雌雄を分けておいた上で午前中に一緒の水槽に移すと、生殖行動を観察することができます。この行動は主に、視覚、嗅覚及び触覚によって誘発されるといわれ、産卵につながる一連の行動を伴う本能行動です。このページでは、この本能行動をビデオのボタンをクリックするこで動画として見ることができるように工夫しました(図30)。

カ 体色変化(自作水槽を活用した教材)
 メダカは周囲の明るさに反応して体の色を変化させることができ(背地反応)ます。それは鱗上の表皮の色素胞の中に含まれる色素顆粒を凝集・拡散させることによっておこります。実験には、黒と白の色調を兼ね備え、中央付近で仕切ができる小型の水槽を作製し、野生メダカをそれぞれ入れ、10分間背地反応させて鱗の黒色素胞を比較しました(図31)。

4 研究のまとめと今後の課題

(1)研究のまとめ
 本年度は、2年次研究の第1年次であり、理科におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の開発を行いました。本年度の研究成果として、次の3点があげられます。

@ 理科におけるマルチメディアとネットワークを活用した教材の開発に関する基本的な考え方とその必要性についてまとめることができた。
A 物理領域では、ネットワーク(インターネット)を活用した計測教材を開発することができた。
B 生物領域では、多目的にメダカを活用したマルチメディア教材を開発した。

(2)今後の課題
 来年度は、今回開発した教材に改良を加え、教材としての質及び量を充実させていきたいと考えています。また、天文領域においては、今年度収集したデータをもとに、長時間にわたる天文現象や特殊な装置を用いなければとらえることができないものなどについて、マルチメディア教材を開発します。その後、開発した教材を用いた授業の基本構想と指導試案を作成し、授業実践によってその有効性についての検討並びに研究のまとめを行う予定です。

おわりに

 本研究を進めるにあたり、多大なご協力をいただいた石鳥谷町立石鳥谷中学校 藤澤 信悦校長先生、岩手県立花巻北高等学校 富澤 正一校長先生、そして、研究協力員の岩手県立宮古北高等学校教諭 城守 寛先生に心から厚く御礼申し上げます。


文  献

1)江上信雄・山下健次郎・嶋 昭紘:メダカの生物学.東大出版会(1990)
2)岩松鷹司:メダカ学.サイエンティスト社(1993)
3)岩松鷹司・森 隆:野生メダカの鱗上の黒色素細胞反応の教材化の試み.愛知教育大学教科教育センター研究報告20(1996)
4)畑 正好:多目的利用をかねた生活環教材としてのメダカ.東洋館出版社 理科の教育6月号(通巻539号)(1997)
5)畑 正好・阿部祐基:小・中・高等学校における多目的教材としてのメダカの活用に関する研究 岩手県立総合教育センター平成8年度教育研究 152(1997)
6)酒泉 満:野生メダカの遺伝子レベルでの地域差.遺伝,39(8)(1985)
7)篠田宜道:岩手県内の野生メダカの生息状況(中間報告).岩手県生物教育研究会会誌(1986)
8)篠田宜道:県内の野生メダカの生息地点のその後の状況.岩手県生物教育研究会発表資料(1994)
9)冷水英二:マイコンセンサシステム入門(1986)
10) 渡辺嘉二郎・小林弘・小林一行:パソコンによるセンサ信号処理(1991)
11) トッド・トワ:JAVAネットワーキング&コミュニケーション



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