岩手県立総合教育センター教育研究(2000)


中学校技術・家庭科における基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する研究(第1報)


《  目  次  》

はじめに
1 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する基本構想
 (1) 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する基本的な考え方の検討
 (2) 実習題材に関する教師の実態調査結果の分析と考察
 (3) 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する基本的な考え方
 (4) 実習題材の捉え方
 (5) 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材
 (6) 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する基本構想図
2 基本的な知識と技術の分析
3 基本構想に基づいた実習題材の開発
 (1) 実習題材例1「フラワースタンドの製作」
 (2) 実習題材例2「CDラックの製作」
 (3) 実習題材例3「簡単な日常食の調理」
 (4) 実習題材例4「補修技術を生かした小物の製作」
4 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関するまとめ
5 研究のまとめと今後の課題
 (1) 研究のまとめ
 (2) 今後の課題
おわりに

【主な参考文献】

はじめに

 中学校技術・家庭科では、変化し続ける社会に主体的に対応し自立した生活を営むために、課題を解決する能力を育てることをめざしています。
 しかしながら、課題を解決するために必要な「基礎的な知識と技術」と実習題材との有機的な関連が十分に図られているとは言い難い現状があります。さらに、学習指導要領の改訂により「技術」と「家庭」という二つの分野に再編され、指導内容が大幅に厳選された技術・家庭科において、基礎的な知識と技術をどのような実習題材で身に付けさせるべきかが大きな課題となっています。
 このような状況を改善するためには、将来にわたり生活に役立てることができる「基礎的な知識と技術」と実習題材とのかかわりを検討するとともに、具体的にそれを身に付けることができる実習題材の開発が必要です。
 そこで本研究では、技術・家庭科の指導において、今後必要とされる基礎的な知識と技術を身に付けることができる実習題材はどうあればよいか実践的に明らかにすることによって、技術・家庭科の指導の充実に役立てようとするものです。

1 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する基本構想

(1) 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する基本的な考え方の検討

ア 研究の進め方
 今年度は基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材について、基本的な考え方の検討や実習題材に関する教師の実態調査の分析と考察を行いました。また、基本構想を立案しそれに基づいて実習題材の開発を行いました。

イ 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材の開発にあたっての考え方
 中学校技術・家庭科では、自分なりの工夫を生かして生活を営むことや、学習した事柄を進んで生活の場で活用する能力や態度を育成することをねらいとしています。そのためには、生活の自立を図る観点から、生活に必要な基礎的な知識と技術を身に付けることが重要であると考えました。
 本教科では平成14年度から完全実施される新学習指導要領において、基礎的な知識と技術を確実に身に付けること、生活を自立して営む能力を育てることが一層重視されています。
 しかし、平成12年度入学生は移行措置により新学習指導要領(平成10年12月告示)にそって指導しなければならないにもかかわらず、新学習指導要領に準拠した教科書の発行が平成14年であり、実際には現行の学習指導要領(平成元年3月告示)にそった教科書で指導しているのが現状です。また題材が大綱化されたことで各学校で実習題材を創意工夫できるようになりましたが、どのようなものを活用すればよいか教師が悩むことも考えられます。
 以上のことから技術・家庭科担当教員が指導上の課題を克服し、新学習指導要領の完全実施に向けて円滑に移行期間を乗り切ることができるよう、支援していく必要があります。そのためには本研究において基礎的な知識と技術と実習題材との関わりを検討し、基礎的な知識と技術が身に付く実習題材を開発することは重要かつ急務であると考えました。
 そこで、実習題材の開発について次のように考えました。
 ・各分野の指導内容から基礎的な知識と技術の内容を明らかにする
 ・実習題材に関する教師への実態調査から現状を把握する
 ・基本構想を立案しその中で実習題材開発の視点を明らかにする
 ・基本構想をもとに明らかにした基礎的な知識と技術を取り入れた実習題材を開発する

(2) 実習題材に関する教師の実態調査結果の分析と考察

ア 実習題材に関する実態調査のねらいと内容
 本研究の主題である「基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する研究」を進めるために、実習題材に関する現状把握とその課題を基本構想に取り入れ、基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材の開発を行うための資料として本県技術・家庭科教員に実態調査を実施しました。

(ア) 実態調査の対象
  
調査協力校 県内公立中学校54校の技術・家庭科の担当教員
(イ) 調査実施期間
  平成12年9月27日から10月6日
(ウ) 実態調査の内容
  @ 実習題材について
   ・実習題材を選ぶにあたっての基準
  A 新学習指導要領の実施について
   ・新学習指導要領における各学校の課題
   ・今後取り組もうとしている実習題材

イ 実態調査結果の分析と考察

(ア) 実習題材について
 【図1】のグラフは実習題材を選ぶにあたっての基準を示したものです。回答は10項目の中から3項目を選び回答をお願いしました。また、グラフ中の数字は回答数を示します。
 回答数が54校中40校と最も多かったのは「完成品として使用できる」でした。続いて、ほぼ同数の回答が「生徒が興味・関心をもつ」「値段がてごろ」「基礎的・基本的事項の定着」でした。
 この結果から以上の4つを実習題材の選定基準として教師が重視していることがわかりました。
 「完成品として使用できる」と「値段がてごろ」については生徒の生活に直接結びついた課題であると考えます。また、「生徒が興味・関心をもつ」と「基礎的・基本的事項の定着」については教師の指導上の課題であると捉えることができます。このことから、教師は生徒の実生活での利用に関する視点と生徒への学習指導に関する視点で実習題材を考えているといえます。
 特に回答数の多い「完成品として使用できる」を選んだ理由としては、実習題材を生活の中で生かすことができるということから選んだと考えます。

(イ) 新学習指導要領の実施について

@ 新学習指導要領における各学校の課題
 【図2】のグラフは新学習指導要領に対して教師がもっている課題を示したもので、回答は自由記述とし、それを類型別に分け示しました。
 これを見ると「実習題材に関すること」「教科の指導に関すること」「指導計画に関すること」の3点を特に重視していることがわかりました。
 回答数が20校ともっとも多かった「実習題材に関すること」では「どのような実習題材にすればよいか」等、具体的な題材にかかわる課題があげられました。また「教科の指導に関すること」では「基礎的な知識と技術を身に付ける指導はどうすればよいか」等で、「指導計画に関すること」では「学年毎の時間数はどうすべきか」等があげられていました。
 このことから、教師は新学習指導要領にそって具体的にどのように指導すればよいか悩んでいると考えられます。これは、今年度が新学習指導要領の移行期であるため、新しい教科書が示されていないことが原因と考えます。

A 来年度以降の実習題材の計画
 【図3】のグラフは平成12年度1年生が来年度以降実施する実習題材の計画です。
 すでに「予定がある」と答えた学校はわずか3校にとどまり、検討中と答えた学校は44校でした。
 ほとんどの学校は実習題材を具体的には決めていませんが、決定にむけ動き始めていると捉えることができます。しかし、検討中であると答えた学校でもおおむね計画ができている学校と取り組み始めの学校があると予想されます。
 来年度以降の実習題材の計画について、大半の学校では検討中であり、その内容にばらつきがみられるのは、新学習指導要領の完全実施までは若干の期間があると捉えているからだと考えます。

ウ 実態調査結果の分析と考察のまとめ
 実態調査の結果から教師は実習題材に完成品として使用できるものを望み、実習題材を何にしたらよいか等、課題をもっています。また、実習題材や新学習指導要領にそった学習指導を検討している段階であることがわかりました。
 調査結果を概括すると教師は具体的な実習題材を求めていると考えます。また、実習題材を選ぶにあたっての基準として「興味・関心を高めること」や「基礎的・基本的事項の定着」をあげて回答していることから、学習指導に関する部分で関心が高いことがわかりました。
 しかし、来年度以降の実習題材の計画がまだ検討中であると答えていることから、具体的な実習題材を準備・開発するまでには至っていないといえます。
 以上のことから、本研究において実習題材を開発することが必要と考えました。そして実態調査の結果を基本構想で実習題材開発の視点として示し、実習題材を開発しました。

(3) 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する基本的な考え方

ア 基礎的な知識と技術とは
 中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−技術・家庭科編−(以下新学習指導要領の解説)において、「生活に必要な基礎的な知識と技術」とは「生徒が自立して主体的な生活を営むために必要とされる基礎的な知識と技術であり、各分野の指導内容」と示されています。そこで、本研究では各分野の具体的指導内容の分析を行うことにしました。

イ 基礎的な知識と技術を身に付けるとは
 「基礎的な知識と技術を身に付ける」とは生徒が自立して主体的な生活を営むために必要な基礎的な知識と技術を学習活動を通じて学び、自分のものとすることと考えます。
 生徒が学んだものを自分のものにするためには、手や身体を使っての実習や、体験する活動が重要であると考えます。さらに、調理実習や製作活動等の本教科の特性を生かした学習活動を行い、その中に生徒が自分で考えたり工夫する過程の中で生徒個々の習得につながるものと考えます。これは生徒が次の課題を解決するためのもとになり、将来の生徒の主体的な学習を支えるもので身に付かなければならないものと考えます。

(4) 実習題材の捉え方
 新学習指導要領の解説では、技術・家庭科においての題材とは「教科の目標及び各分野の目標の実現を目指して、各項目に示される指導内容を、例えば、生徒の身近な生活と関連させるなど、指導単位にまとめて組織したものである」と示されています。
 そこで本研究では、教師が学習のねらいの達成のため、指導に適するように構成したもので、特に生徒自身が実習をとおして取り組むことができる内容を実習題材としました。

(5) 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材

ア 実習題材開発の課題
 本研究では実習題材の開発にかかわって以下のような課題があると考え、それらを明らかにすることで新しい実習題材が開発できると考えました。
 ・新学習指導要領の指導内容から基礎的な知識と技術の検討をする
 ・基礎的な知識と技術と実習題材の関連を図る
 ・実習題材と日常生活とのかかわりを大切にする

イ 実習題材開発の視点
 本研究において実習題材を開発することは実習過程における指導内容を明確にすることと捉え、基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材について開発する視点を次のように考えました。
 ・基礎的な知識と技術の具体的な内容を盛り込むことができる
 ・生活に役立ち、生かすことができる
 ・学校で準備できる一般的な工具・器具等及び材料で実習が可能である

(6) 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する基本構想図
 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関する基本構想図を【図4】に示します。

2 基礎的な知識と技術の分析
 新学習指導要領の解説をもとに技術分野・家庭分野のAおよびBの全ての生徒に履修させる基礎的な内容(1)〜(4)について、基礎的な知識と技術を抽出し分析一覧表に整理しました。
 その一部を【表1】に示します。

 また、基礎的な知識と技術と実習題材との関連付けを行い、分析表として整理しました。その一部を【表2】に示します。今回開発した実習題材の中に取り入れた基礎的な知識と技術は実習題材例1〜4の中で分析表として示しました。その中で実習題材で指導できる内容を●□△で表し、●は実際の作業の内容、□は知識としての内容、△は選択的な内容としました。( は該当要素を示します)

3 基本構想に基づいた実習題材の開発
 基本構想に基づき開発した実習題材を実習題材例1〜4に示します。

(1) 実習題材例1「フラワースタンドの製作」

ア 概要
 本実習題材は、木材を主材料として、金属の加工要素も取り入れた実習題材です。この実習題材は最上部にある丸形の天板(φ170mm、厚さ15mm)と三角形の底板(一辺が360mm、厚さ25mmの集成材)支柱となる3本の丸棒(φ24×500mm)、支柱に取り付けた3枚の棚板(15×120×220mm)と鉢押さえ用の3枚の曲げ加工した杉板(5×50×300mm)からできています。金属部分には天板にガードレールとして「コ」の字型に折り曲げた3本の黄銅棒(φ6×160mm)を取り付け、棚板支え用として3本の黄銅棒(φ6×160mm)を支柱に通しています。
 製作にあたっては、寸法的に支柱の高さや間隔を変更したり、天板や杉板部分についてアクリル板等を使用したりすることも可能です。また、棚板の配置を同一方向にしたり、支柱を4本にするなどデザイン的にもいろいろと応用が可能です。
 基礎的な知識と技術の内容としては木材や金属材の切断(のこ切り・弓のこ)や切削(かんな・金工やすり)があげられます。また、木材の穴あけ(ドリル等)や、ダイスによる黄銅棒のねじ切りも行うことができます。木材では、杉板について熱湯による曲げ加工を施し、棚板の形状を杉板の曲面に合わせてショベル型に加工するようになっています。また、釘や木ねじを使用した接合方法が学習でき、さらに、支柱と棚板の接合部分は、簡単なほぞ組みになっているため、のみも使用することが可能です。使用する加工機械は、卓上ボール盤や丸のこ盤、糸のこ盤等が考えられます。また必要に応じて防腐・防水処理を目的とした塗装も考えられます。

イ 実習題材開発上の留意点
 (ア) 学校にある一般的な道具・機械で加工可能であること
 (イ) 「曲げ」加工について、材料により方法が異なることを学習できること
 (ウ) 生徒の発想や機能的な工夫により、デザインや寸法を変更できること

ウ 指導内容
 【表3】にフラワースタンドの製作における基礎的な知識と技術にかかわる該当部分を示します。

(2) 実習題材例2「CDラックの製作」

ア 概要
 本実習題材は、木材を主材料として、金属の加工要素も取り入れた実習題材です。この実習題材は、CDケースを立てておく仕切り板付きの部分と、アクリル板のふたと木材からなる小物入れ部分と、支柱となる4本の黄銅棒からできています。製作に余裕があればアクリル板で製作したペンスタンドも取り付け可能です。CDケースを立てておく部分は、底板(25×160×280mmの集成材)と、2枚の仕切り板(10×100×150mm)からなり、仕切り板は背面の支柱に通したストッパで位置を変更できます。
 製作にあたり、小物入れ部分は背板(10×100×280mm)と2枚の側板(10×75×148mm)と前板(10×55×280mm)、及び底板(10×148×260mm)に木材を使用しています。アクリル板のふた(2×170×280mm)には、黄銅棒の取っ手を付けています。4本の支柱(φ12×230m)は、小物入れの底板の四隅に穴をあけて通し、上部を50mm程ねじ切りしていますので、小物入れの高さをナットで調節できるようになっています。ペンスタンド部分はアクリル板をヒータで曲げて加工し、直径12.5mmの穴あけした木片に取り付けて支柱に通しているため、向きを変えることが可能です。
 製作にあたっては、小物入れのサイズを変更したり、支柱の高さを調整によって、単行本などの本棚としても活用できると考えています。
 基礎的な知識と技術の内容としては、木材や金属材の切断(のこ切り・弓のこ)や切削(かんな・金工やすり)があります。また、木材や黄銅棒の穴あけ(ドリル等)や、タップやダイスによる黄銅棒のねじ切りも行うことができます。また、アクリル板の加工にヒータを使用し、取り付け用にアクリル製の丁番を使用しています。使用する加工機械は、卓上ボール盤や丸のこ盤、糸のこ盤等が考えられます。また、塗装を行うことにより、外観を美しく仕上げることもできます。

イ 実習題材開発上の留意点
 (ア) 学校にある一般的な道具・機械で加工可能であること
 (イ) 木材を主体としながらも、金属加工の学習要素もできるだけ盛り込むこと
 (ウ) 生徒の発想や必要な機能に応じ、デザインや寸法を変更できること

ウ 指導内容
 【表4】にCDラックの製作における基礎的な知識と技術にかかわる該当部分を示します。

(3) 実習題材例3「簡単な日常食の調理」

ア 概要
 家庭分野の内容A「生活の自立と衣食住」の指導において、中学生自身の食生活の自立を図るための実習題材です。成長期にある中学生に必要な栄養を満たす1日分の献立をふまえ、簡単な日常食の調理ができるようになるための基礎的な知識と技術の内容を取り入れた実習を構成しました。
 実践的・体験的な活動を重視する教科の特質から、実習はなるべく多く取り入れたいと考え、調理実習を3回計画しました。
 1回目の実習は調理の基本を学ぶために、食品の選択、材料の適切な洗い方、切り方、包丁の扱い方、計量器の取り扱い、調味の仕方などが習得できる内容にしました。
 2回目の実習は、中学生に必要な栄養を満たすために作成した1日分の献立の中から選択して取り上げ、調理実習を通して実際の食品の量や製作時間などを実感することをねらいとする内容にしました。
 3回目の実習は、総合的な扱いの実習として「昼食づくり」(指定食品は、鶏卵、野菜)というテーマで班ごとに献立を作成・実習し、まとめでは発表を行い、他の班の実習からも学べる内容としました。

イ 実習題材開発上の留意点
 (ア) 食品の衛生的な扱い方や基本的な調理操作を習得できる献立とする
 (イ) 使用する食品は、魚、肉、野菜、鶏卵など容易に入手できるもので日常の調理に用いられるものとする
 (ウ) 3回の実習を通して食生活の安全と衛生に関心をもち、食品や調理器具等の適切な管理ができるようになる態度の育成をめざす

ウ 指導内容
 【表5】に簡単な日常食の調理の基礎的な知識と技術にかかわる該当部分を示します。

(4) 実習題材例4「補修技術を生かした小物の製作」

ア 概要
 家庭分野の内容A「生活の自立と衣食住」の中の、「衣服の選択と手入れ」における補修技術を身に付けるための実習題材です。中学生のための衣類は、価格も手ごろで縫製技術も優れた既製品が手軽に入手できます。衣生活の自立に必要な基礎的な知識と技術とは、消費者の立場で必要な衣服の役割の理解、環境に配慮した計画的な着用と管理(洗濯や手入れ、保管)ができることと捉えました。
 小学校家庭科で、「衣服への関心」「生活に役立つ物の製作(布、ミシンを用いて)」の内容で衣服に関する知識・技能を学習してきます。この身に付いた技能を中学校の段階でも活用して、補修技術の学習と関連させて自分の生活に役立つ物を製作することにしました。
 補修の指導内容としては、例としてまつり縫いによる裾上げやミシン縫いによるほころび直し、スナップ付けなどがあげられていますが、単に技術を習得するだけではなく、これらを取り込んだ小物を製作して生活に役立てようとする意識を高めます。

イ 実習題材開発上の留意点
 (ア) 補修技術の習得が学習内容となるので、製作時間は5時間をめやすとする
 (イ) 使用する布は、綿、綿とポリエステルの混紡など、入手しやすく扱いやすい物にする購入するだけでなく、資源や環境に配慮する立場から、リフォームをかねてもよいものとする
 (ウ) 製作品は中学生の生活に役立つ物とし、【写真7】〜【写真10】の中で選択する

ウ 指導内容
 【表6】に補修技術を生かした小物の製作の基礎的な知識と技術にかかわる該当部分を示します。

4 基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材に関するまとめ
 今年度は基礎的な知識と技術を身に付ける実習題材について、基本的な考え方の検討と実習題材に関する教師への実態調査の分析と考察を行いました。また基本構想を立案し、その基本構想に基づいて実習題材の開発を行いました。そこで明らかになったことを以下に示します。

(1) 実態調査について

 実態調査の結果から教師は実習題材に大きな関心を寄せているが、実際には実習題材について検討中であることがわかった
 教師は生活に役立つものを実習題材としたいと考えており、基本構想の中で実習題材開発の視点として示すことができた

(2) 基本構想を生かして開発した実習題材について

 実習題材に関する基本的な考えをもとに基本構想を立案し、その中で実習題材を開発する視点を明らかにし、示すことができた
 新学習指導要領の指導内容から基礎的な知識と技術を明らかにし、分析表として示すことができた
 基本構想の中で明らかになった視点をもとに、実習題材を開発することができた
 新学習指導要領の指導内容から明らかになった基礎的な知識と技術を実習題材の中に取り入れ、該当する内容として示すことができた

5 研究のまとめと今後の課題
 この研究は中学校技術・家庭科の指導において、課題を解決するために必要な「基礎的な知識と技術」を身に付ける実習題材はどうあればよいか、実践的に明らかにすることによって技術・家庭科の指導の充実に役立てようとするものです。
 そこで今年度の研究のまとめと今後の課題を以下に述べます。

(1) 研究のまとめ

 基礎的な知識と技術を実習題材へ盛り込むことができた
 技術・家庭科における実習題材にかかわる実態調査と分析を行うことができた
 基本構想を生かした実習題材の開発を行うことができた

(2) 今後の課題
 今年度は技術・家庭科における実習題材にかかわる実態調査と分析をし、基本構想を生かした実習題材の開発を行いました。次年度は、開発した実習題材の有効性と効果的な活用について授業実践をとおして明らかにし、開発した実習題材とその活用の在り方について検討を加えたいと思います。

おわりに

 この研究を推進するにあたり、研究協力員としてご協力をいただいたきました研究協力校の校長先生をはじめ諸先生方、並びに研究協力員の先生方、並びに実態調査にご協力いただいた県内公立中学校の技術・家庭科の先生方および関係者に心から感謝を申しあげます。


【主な参考文献】

文部省 「中学校学習指導要領」 大蔵省印刷局 1998年
文部省 「中学校学習指導要領」 解説 技術・家庭科編 東京書籍 1999年
産業教育室 「情報基礎及び家庭生活領域における基礎・基本の定着を図るための教材開発に関する研究」 岩手県立総合教育センター 1993年
産業教育室 「技術・家庭科における課題解決を育てる教材の開発に関する研究」 岩手県立総合教育センター 1997年
産業教育室 「技術・家庭科における生活を工夫する意欲を育てる教材の開発に関する研究」 岩手県立総合教育センター 1999年



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