岩手県立総合教育センター教育研究(2000)


インターネットを利用した教育情報データベースシステムの構築に関する研究(第2報)


《  目  次  》

はじめに
1 教育情報データベースシステム構築に関する基本的な考え方
 (1) データベースとは
 (2) 教育におけるデータベースシステムの意義
 (3) 教育情報データベースシステムの構築に関する基本的な考え方
2 教育情報データベースの内容
3 インターフェースの開発
 (1) トップページ
 (2) じどう生徒用のページ
 (3) 先生用のページ
4 教育情報データベースシステム
 (1) 銀河情報データベース
   ア 教育研究文献情報データベース
   イ ソフトウェアライブラリデータベース
   ウ 領域別実践データベース
   エ 学習素材データベース
   オ 地域素材データベース
   カ 児童生徒作品データベース
 (2) 学習用ソフトウェアにおける教材データベース
   ア 個別学習システムにおける教材データベース
   イ 協調学習システムにおける教材データベース
5 研究のまとめと今後の課題
 (1) 研究のまとめ
 (2) 今後の課題
おわりに

【主な参考文献】

はじめに

 近年、急速に進展する高度情報通信社会では、情報機器を利用し、様々な情報を収集・発信することが可能になっています。学校にもコンピュータの導入が進められ、ネットワークを利用して多くの教育情報を得ることができる環境が整いつつあります。一方、新学習指導要領では、コンピュータ等の情報手段の活用を一層求めており、今後多くの学校から実践事例や研究成果の公開が期待されます。また、岩手県では「いわて情報ハイウェイ」による情報基盤の整備と情報教育の充実を掲げ、県の情報ネットワーク作りが始まっています。このような状況のなかで、県内に多数存在する有益な情報を教育活動に活用していくことが必要です。
 しかし、これらの有益な情報は、それぞれが散在しデータベース化されていないため、教育活動において有効に活用されていない状況です。また、当総合教育センターが平成元年度から提供してきた教育研究パソコン通信ネットワーク「銀河コスモスネット」(平成13年3月運用終了)による教育情報データベースシステムでは、マルチメディアデータを扱うことができなかったため情報の提供方法に制限があり、インターネットからも利用することができない状況にありました。
 このような状況を改善するためには、インターネットを利用して多くの学校や教育機関から公開されている実践事例や研究成果、及び教育活動で活用されている情報を収集して、静止画・動画・音声等を取り入れた形式で提供することが必要です。また、わかり易い検索用インターフェースを開発して、各教育関係機関との双方向による情報の受け渡しが可能となるシステムの構築が必要です。
 そこでこの研究は、教育情報をマルチメディアデータベース化して、インターネットを使って各教育関係機関から容易に検索できるシステムを構築することによって、児童生徒の学習活動や先生方の教育活動に役立つ情報を提供しようとするものです。
 本年度は、2年次研究の完結年度であり、研究内容は以下の3点です。
  @ 教育情報データベースシステムの構築
  A 教育情報データベースシステムの運用
  B 教育情報データベースシステムの構築に関するまとめ

1 教育情報データベースシステム構築に関する基本的な考え方

(1) データベースとは
 データベースは情報(データ)の蓄積を行うものです。情報という資産を、利用者からの多様なニーズに対応できるように整理・統合して蓄積し、情報が有効活用されるようにしたシステムのことです。
 データベースは、コンピュータシステムの発達や情報通信ネットワークの進展に伴って急速に発展しています。社会の様々な分野で生み出される情報の量が飛躍的に増大し、それを統合的に効率よく管理する方法として注目されてきました。今日の社会では、データベースを中心として関係機関が情報を共有し、連携して業務を遂行するという形態が一般的になっています。

(2) 教育におけるデータベースシステムの意義
 教育に関する情報の種類は、教育研究文献・実践事例・学習指導案・教育用ソフトウェア等主として教師側にかかわるもの、教科における学習活動や特別活動に役立つ素材等主として児童生徒にかかわるもの等様々あります。これらの情報を収集・整理・分類し、必要に応じていつでも利用できるようにすることは、教育における様々な課題への対応や指導方法の改善、ひいては新学習指導要領における改訂のねらいである、児童生徒が自ら学び自ら考える「生きる力の育成」や「特色ある教育」の展開等に役立つものと考えます。
 また今日、社会のあらゆる分野で静止画・動画・音声等によるデータのマルチメディア化が進んでいます。学校にもコンピュータの他、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等のマルチメディア関係機器が導入されつつあり、これらを用いて行った実践事例、画像や映像等が組み込まれた学習指導案及びマルチメディア教材等の公開や提供が一層進むと予想されます。
 今後、マルチメディアを利用したデータの作成は、先生方だけではなく児童生徒の様々な学習活動においても活発に行われるものと考えます。そこで、これからの教育情報データベースシステムは、ネットワーク上から利用でき、操作し易いインターフェースを有し、マルチメディアデータを扱うことができるシステムとして構築することが必要です。このことにより、先生方が行う指導実践や学習指導案等の作成方法の幅を広げ、新たな教育活動の展開をするための情報の提供ができ、また、マルチメディアデータの作成をとおして、多彩なメディアを活用しながら児童生徒の表現力や創造力を育成することができ、情報教育の目標である「情報活用能力の育成」にもつながるものと考えます。
 以上のことから、多様な情報を公開し、共有しながら活用していくことを可能にする教育情報データベースシステムの構築は、これからの教育において先生方及び児童生徒に有益な教育情報や手段を提供するもので、大変意義のあることと考えます。

(3) 教育情報データベースシステムの構築に関する基本的な考え方
 これまで「銀河コスモスネット」では約15万件の教育情報を提供し、毎年数千件のアクセスがあり大きな成果を上げてきました。しかし、「銀河コスモスネット」に構築してきた教育情報データベースは文字情報が中心で、動画や音声等のマルチメディアデータを扱うことができなかったため、データの収集や提供方法に制約がありました。
 また、近年インターネットから利用可能な教育情報データベースに対する要望が強く寄せられています。そのため、情報のマルチメディア化が進んでいる今日のデータベースとして、インターネットを利用して検索でき、マルチメディアデータを取り入れた多様な教育情報を提供できる、より新しいデータベースシステムを構築することが必要な時期にきています。平成11年度には、バーチャルエージェンシーのプロジェクトの一つである「教育の情報化プロジェクト」報告がなされ、ミレニアムプロジェクトとして具体的に教育における情報化が進められている状況にあります。
 このような状況のなかで、教育情報データベースを運用していくためには、先生方の教育活動及び児童生徒の様々な学習活動に役に立つ情報を分類・整理・蓄積していくことが必要です。また、主として児童生徒が使う情報については、データを教師主導のもとで作成していくだけでなく、児童生徒もデータの作成に携わることができ、作品や学習成果等の発表をとおして情報の受発信ができるようにしていく必要があります。
 以上のことから、この研究では次のようなデータベースシステムの構築を考えました。

@  インターネットから利用できるシステムの構築
A  マルチメディアデータを扱うことができるデータベースシステムの構築
B  親しみ易く、わかり易いインターフェースの開発
C  本県の教師の教育活動に役立つ教育情報データベースの構築
D  本県の学校や地域の特色を生かした児童生徒の学習に役立つデータベースの構築
E  児童生徒もデータベースの構築に参加できるシステムの構築
F  協調学習や交流学習ができるシステムの構築
G  学校や教育機関から比較的容易に情報を得ることができるシステムの構築

 特にインターフェースは、インターネットブラウザの操作性の良さを生かしたグラフィカルでわかり易いシステムにするため、次のような点に配慮して開発しました。

@  画面のスクロールを最小限にするように工夫する。
A  検索画面は1画面になるように工夫する。
B  キーボード入力を最小限にして、マウスをクリックすることで検索できるように工夫する。
C  主に児童生徒が使う画面では、言葉の表現や用いる絵・画像等を工夫する。
D  ファイルの内容がわかるように、ファイルを特徴付けるサムネイル表示を工夫する。
E  主に先生方が使う画面では、キーワードとカテゴリを併用した日本語全文検索を導入する。
F  データは校種や教科・領域に分類して、児童生徒も検索し易いように工夫する。

2 教育情報データベースの内容
 当総合教育センターは、平成10年12月に当時の文部省と郵政省の共同事業である「先進的教育用ネットワークモデル地域事業」(通称、学校インターネット事業)における全国30モデル地域の一つとして指定され、平成11年11月末、花巻地域ネットワークセンターとして稼働を開始しました。
 この事業の目的は、教育センター等を拠点としてモデル校35校を高速回線で接続し、学校教育におけるインターネットの有効活用や地域ネットワークの在り方に関する先導的な研究開発を行い、学校教育の改善や充実に資することです。当花巻地域では、「学校、地域の特性を生かしたデータベースの構築と先進的教育用ネットワークの活用の在り方に関する研究」を主題として掲げています。
 この研究は、学校インターネット事業で導入されたWWWサーバ、マルチメディア対応データベースサーバ及びデータベース用ソフトウェアを使用して行いました。研究の成果は、今後当センターに導入されるデータベース関係機器やソフトウェアを用いて外部に公開します。
 この研究で構築したデータベースは、これまで当センターに蓄えられてきたデータを含めて以下の6種類です。
  @ 教育研究文献情報データベース
  A ソフトウェアライブラリデータベース
  B 領域別実践データベース
  C 学習素材データベース
  D 地域素材データベース
  E 児童生徒作品データベース
 このほか、児童生徒の個別学習や協調学習に活用できる教材データベースも構築しました。なお、構築したデータベースシステムの基本構想図を【図1】に示します。

3 インターフェースの開発
 昨年、学校インターネット事業における花巻地域ネットワークセンターのホームページを作成し公開しましたが、目的とする教育情報データベースシステムへより容易にアクセスできるように、更にインターフェースの開発を行いました。

(1) トップページ
 昨年度の研究では、学校インターネット事業における花巻地域ネットワークを宮澤賢治にちなんで「イーハトーブ銀河ネットワーク」と命名しましたが、先生方や児童生徒が教育情報データベースへアクセスするためのインターフェースをより明確に区別できるように、トップページの更新を行いました(【図2】)。画面中央部に「じどう生徒用のページ」「先生用のページ」と二つのボタンを配置して、それぞれのインターフェースを区別しました(【図3】)。この二つのボタンが、構築した各種の教育情報データベースへの入り口となります。
 平成11年度に、JPNIC((社)日本ネットワークインフォメーションセンター)から独自のedドメインを取得して、学校インターネット事業における内部版ホームページとして現在公開していますが、この事業における研究成果は、今後、外部版ホームページのなかでも一般公開していく予定です(http://www.ihatov.ed.jp/)。

(2) じどう生徒用のページ
 「じどう生徒用のページ」をクリックすると、【図4】の画面が表示されます。このページは、主に児童生徒が活用できる教育情報データベースへのインターフェースとなっていて、学校インターネット事業で導入され、児童生徒の学習に役立つ各種の学習用ソフトウェアへ容易にアクセスできるようになっています。また、平成9年度研究の一環として作成した教育情報リンク集「イーハトーブリンク」へのアクセスも可能です。インターフェース部分は、児童生徒にも馴染みやすい画面構成となるように工夫しています。

(3) 先生用のページ
 「先生用のページ」をクリックすると、【図5】の画面が表示されます。このページは、主に先生方が活用できる教育情報データベースへのインターフェースとなっていて、この研究で構築した教育情報データベースシステムを「銀河情報データベース」と命名しました。また、このページからも各種の学習用ソフトウェア等へのアクセスが可能です。
 インターフェースについては、更に利用し易いように、今後も必要に応じて開発を行っていく予定です。なお、トップページから各種の教育情報データベースへのアクセスは、【図6】に示すメニューツリーのとおりとなっています。

4 教育情報データベースシステム
 ここでは、この研究で構築した六つの教育情報データベースと、学習ソフトウェアを用いた二つの教材データベースについて説明します。

(1) 銀河情報データベース

ア 教育研究文献情報データベース
 これは、平成元年度から運用してきたパソコン通信ネットワーク「銀河コスモスネット」のデータをインターネット上で検索できるようにしたものです。データとなる教育情報をすべてテキストベースで検索する日本語全文検索システムを導入し、キーワード検索とカテゴリー検索を併用することによって、データベース化されているすべての教育に関する文書から検索できるようにしています。  また、マルチメディアデータを扱えることにより、より視覚的に情報検索を進めることができ、画像や図等を取り入れた情報を提供できます。

(ア) 日本語全文検索システムの概要
 日本語全文検索システムを導入するために、フリーソフトである「Namazu v2.0.5」を使用しました。このNamazuは、文書中にどの様な単語が含まれているかというインデックスを作成する機能と、インデックスに基づいて実際に検索を行う機能(サーチエンジン)があります。Namazuは様々なサイトで使用され、システムとしての安定性が実証されていることや、検索システムとして高速であること、また、インデックス作成のバッチファイルのカスタマイズや検索するときの環境、検索画面等のカスタマイズが容易なことから、導入し易いシステムと考えられます。さらにフリーソフトであり、様々なOSに対応しているため、他のサーバや学校等におけるイントラネット等にも導入できると考えられます。Namazuを用いた全文検索システムの基本的な構造は【図7】に示します。

(イ) 構築した教育研究文献情報データベース
 トップページ(【図8】)から三つのデータベース「教育研究データベース」「学習指導案データベース」「教育文献データベース」を選択できるようにしており、それぞれのカテゴリーはリストボックスから選択できるようにしました。また、キーワードは三つのデータベースに共通して使えることから、入力するテキストボックスは一つとなっています(【図9】)。
 「教育研究データベース」は、現在二つのカテゴリーで運用していますが、今後教育研究に関するデータ(学校においては研究紀要等)を収集し、揃いしだい4校種別と「岩手県立総合教育センター教育研究」「岩手県立総合教育センター研究集録」を加えた、六つのカテゴリーに分類する予定です(【図10】)。
 「学習指導案データベース」は、現在4校種別のカテゴリーに分類し、「盲・聾・養護学校」以外はさらに教科・領域ごとに分類していますが、データが増えしだい各データに対するカテゴリーを作成していく予定です(【図11】)。なお、このデータベースと「教育研究データベース」は、一覧表からも検索できるようにしています。
 「教育文献データベース」は、全データからの検索と、発行年度による検索ができるようにしています(【図12】)。

(ウ) 構築した教育研究文献情報データベースについての考察
 検索システムの操作性とデータ内容について、研究協力校に対し自由記述によるアンケートを実施ました。操作性については、「操作性がいい」「検索し易いシステムである」「リストボックスを用いたことでわかり易い」等高い評価を得ています。また、補助的検索として一覧表を作成していますが、これも使い易いという意見を頂いています。
 教育研究・学習指導案・教育文献の各データについては、「かなり参考となる」「今後のデータ収集に期待している」という意見が多く、利用価値が高いものであると考えられます。また、先生方はそのデータ収集に期待しながら、データの提供も考えていることから、各学校ともお互いにデータの提供、データの閲覧という検索システムをとおしての情報の受発信を望んでいるものと考えられます。「銀河コスモスネット」におけるテキストファイルについては、変換・整形が不十分であるために表示される文書が見にくい点もありますが、ファイルの性格上やむを得ない部分があります。
 今後は、マルチメディアデータの収集に努めるとともに、さらに分類・選択できる項目に検討を加え、充実させていきたいと考えます。また、さらに検索システムとしての改善を図るとともに、データについての著作権や肖像権に関する利用規程やフォーマットを作成して、量・質ともに高い教育情報データベースとして育てていきたいと考えます。

イ ソフトウェアライブラリデータベース
 これは、平成8年度に当センター内に開設した「教育用ソフトウェアライブラリ」所蔵の教育用ソフト約3,000本余りをインターネット上から検索できるようにしたものです。全部で61のカテゴリーに分類され(【図13】)、それぞれのカテゴリーを選択すると、2次情報として教育用ソフトが一覧表形式で表示されます。実際のソフトは、教育用ソフトウェアライブラリにおいて閲覧・試用することができます。
 今後は、新規ソフトが増えしだいデータベースを更新していきます。

ウ 領域別実践データベース
 これは、国際理解・環境・教育相談・進路指導・クラブ活動等、教育における各領域に関する文献や資料及び実践事例等をマルチメディアデータベースサーバに構築し、検索・閲覧・配信できるようにしたもので、先生方だけでなく児童生徒も利用できる内容としています。昨年度構築した「学習素材データベース」と同様、学校インターネット事業で導入されたソフトウェアである「CyberLoft」(NTTラーニングシステムズ株式会社)と「MediaBase」(日本SGI株式会社)を用いて構築しています。また、「CyberLoft」には「条件指定検索」「カテゴリ検索」「キーワード検索」の3通りの検索方法がありますが、このデータベースは「カテゴリ検索」を利用して構築しています。

(ア) データの登録
 一つのデータに複数のキーワードを設定することができ、またデータのアクセス権についても設定することができるため、プレビューやダウンロードを制限することもできます。登録項目についてはあらかじめ設定しておくことができるため、殆どがリストボックスからの選択になります。また、データの変更や削除、項目内容の変更や削除も登録と同様に行うことができます。

(イ) データの検索
 「カテゴリからさがす」ボタンをクリックすると、登録された領域名が検索画面右側に一覧表示されるようになっており、さらに領域名をクリックすると、そこに登録されているデータがサムネイル表示されます(【図14】)。このように、静止画や動画の場合は該当するデータがサムネイル表示されるため、どのような内容のデータなのかが一目でわかります。
 この画面から「プレイ」をクリックすると、静止画は拡大表示され、動画は再生ソフトが起動し再生されます(【図15】)。また、ワープロソフトや表計算ソフト等で作成したファイルは、必要なアプリケーションが起動し閲覧できます。「ダウンロード」をクリックすると、学校のコンピュータに転送されます。「せつめい」をクリックすると、データを登録した際の登録項目を見ることができます。何度も「プレイ」することができ、必要であれば動画を停止させることもできるため、学校において様々な教育活動を行うにあたり、有効に活用することができると考えます。
 このデータベースは、登録されている静止画・動画・音声等で作成されたデータと、ワープロソフト等で作成された研究発表資料や学習指導案等を連携させて提供することが可能です。
 【図16】は、ワープロソフトで作成され、提供された研究発表資料をHTML形式に変換することなく、そのままサーバに登録した後、閲覧している様子です。発表した際に用いた資料や参考資料等も登録しておくと、研究発表資料の必要な箇所(@〜B)に登録した参考資料へリンクさせることで、それらをいつでも見ることができます。
 【図16】の@とAにはビデオデータへリンクさせてあり、クリックすると「マカトンサイン」(【図17】左図)の動画が再生されます。@とAには「マカトンサイン」の異なるデータにリンクさせておくこともでき、それら複数の動画を同一画面に再生させることも可能です。また、Bには静止画(【図17】右図)へリンクさせてあり、クリックすると拡大された静止画が表示されます。
 このように、データ間の連携が可能となることにより、教育情報の提供方法が多様化し、教育活動の新たな展開につながるものと考えます。また、特にワープロソフト等で作成したファイルは、容量が少なければ電子メールによる添付ファイルとして送付することも可能なため、学校からの提供も容易であると考えます。
 このデータベースは、授業の際に活用するデータだけでなく、進路に関する面談やクラブ活動等、生徒との様々な関わりにおいて活用でき、また先生方にとっては、例えば教育相談に関する事例を集める等、学校における教育活動の参考になる内容としていきたいと考えます。

エ 学習素材データベース
 これは、授業等で活用できるマルチメディア素材をマルチメディアデータベースサーバに構築し、検索・閲覧・配信できるようにしたものです。「領域別実践データベース」と同様のソフトウェアを用いて構築しています。このデータベースは昨年度からシステム構築しており、今年度は主に管理、運用に関することについて研究を進めました。

(ア) データの登録
 研究協力校もファイル管理を行うことができるので、学習に関する素材や教材等様々なデータを学校からアップロードすることが可能となり、各学校から多くのデータが提供されることが期待できます。

(イ) ユーザ登録とグループ登録
 この研究では、データを共有化しながら学校間交流を行ったり、一つのテーマのもとで複数の学校がデータを作成し合うこと等も目的としていることから、各学校にユーザIDを発行し、ユーザ登録を行うことにしました(【図18】)。また、ユーザが所属するグループを地域別、校種別、クラブ別、委員会別、分掌別等に分けて登録します。

(ウ) データの検索
 検索方法は「ファイルをさがす」「カテゴリからさがす」「キーワードからさがす」の3通りです。現在登録されているデータには、動画による学習素材、静止画による教材例、表計算ソフトで作成した教材、実行ファイルによる教材等様々あります。これらを授業の際に用いることは勿論のこと、必要であればダウンロードして放課後や自宅での予習や復習にも活用し、児童生徒の学習活動に役立てて欲しいものです。また、「領域別実践データベース」で述べたようなデータ間の連携が可能であるため、学校との協力でデータを集め、この機能を利用しながら素材や教材等を提供していきたいと考えます。

(エ) アンケート調査結果と考察
 キーワードの表現、説明欄への記入項目について研究協力校に質問を行い、回答を頂いた結果、キーワードの表現については概ね良いとの回答でした。しかし、「今後データ数が増えていくと混乱しそうだ」「精選していく必要がある」という意見や、「小学生にはアルファベット表記は必要ない」「アルファベット表記にはふりがなが必要」といったアルファベット表記に関する意見、「キーワード検索に不慣れな生徒が多い」という意見もありました。キーワード数が多くならないよう更に表現を工夫し、改善していく必要があると考えます。アルファベット表記については小学生にもわかるよう、ふりがなを加えていきたいと考えます。キーワード検索についてはこのデータベースに関してだけでなく、今後、日常的に使っていく方法と思われるので、特に中学生や高校生はキーワード検索ができるようになるために、このデータベースをとおしてキーワード検索に慣れていただきたいと考えます。説明欄への記入項目(【図19】)については、「データの詳細な内容を詳しく知りたいときの連絡先や関連する資料を載せてほしい」、「ファイルの内容に関する文章による記述が必要」という意見がありました。記入文字数に制限があるためすべてを網羅することはできませんが、できるだけ要望に応えるようにしていきたいと考えます。

オ 地域素材データベース
 これは、児童生徒が収集したマルチメディア素材を含む県内各地域の情報を、WWWサーバとマルチメディアデータベースサーバを連携させて構築しています(【図20】)。

 カテゴリーは、「産業」「偉人」「伝統工芸」「自然」等に分類してあり、画面上部のメニューをクリックすることで、カテゴリー別のデータベースにアクセスできます。どのカテゴリーへアクセスしても、画面左には県内の地図が表示されます。
 データの閲覧方法は、地図上に配置されたピンをクリックします。ピンは、データが収集された場所に配置しており、データと地図上の位置関係が把握できます。【図21】は、岩手県の「伝統工芸」のデータを静止画や動画等により閲覧している様子です。
 このデータベースも、児童生徒がその構築に参加できるシステムとするために、CGIソフトウェア「imgboard v1.22R5」(フリーウェア)を画面右に配置したことにより、児童生徒がモバイル機器やビデオカメラ等で収集したデータを、WWWサーバに送信できます。
 送信できるファイルの種類はGIFやJPG形式等の静止画、AVIやMPG形式の動画、WAV形式の音声等のマルチメディアデータのほか、必要に応じてHTML形式ファイル等も送信可能なように配慮しています。【図22】は、WWWサーバとマルチメディアデータベースサーバを連携させて構築したシステムの構成を表しています。

 このデータベースの構築は、学校インターネット事業における研究協力校によって現在構築中であり、児童生徒が校外における様々な学習活動や学校行事等で収集したデータを提供して頂いています。このデータベースについて研究協力校に対しアンケート調査を行った結果、地域素材の種類については、「[文化][史跡][すべて]というカテゴリーも欲しい」、あるいは「[産業]を業種別に分類してはどうか」、また「[自然]は動植物に分類してはどうか」というアイデア、検索方法については、カテゴリー別にピンの色や形を変えたり、地図全体についてのズーム機能、市町村等の一覧表形式からの検索方法も併用するアイデアを頂きました。また、児童生徒のファイル送信の操作性については、児童はより容易な操作性が必要、教師は校内研修等で共通理解を深める必要があるという意見を頂きました。
 今後、各地域で収集される多くの素材の協力を頂きながら、必要に応じてカテゴリーの再分類を考える必要があります。また、カテゴリー別の一覧や、市町村別の一覧を併用した検索方法等についても是非取り入れたいと考えます。児童生徒のファイル送信の操作性については、各協力校における先生方の共通理解のもと、児童生徒への事前指導が不可欠であり、特に低学年児童に対しては先生方のサポートも必要と思われます。
 しかし、アンケート結果についてその多くは素材の種類、検索方法、操作性等について支障はないという良い評価を頂いていますが、これらの内容については今後再検討し、必要に応じて改善を加えていきたいと考えます。特にも、より詳細な地図画像も配置することで一層地域を限定しながらデータベースを構築し、検索・閲覧が容易にできるインターフェースの開発を行う必要があります。また、児童生徒の協同学習や発表の場としても活用できる様に、収集したデータを児童生徒自らが直接地図上へ配置できるしくみをシステム上に加えることについても、開発を継続していきたいと考えます。その上で、現在基盤整備が進められ、今年度にも運用開始予定である「いわて教育情報ネットワーク」を利用して、県内の全学校がこのデータベースの構築に参加し、児童生徒の学習活動に役立つようなデータベースの構築を進めていくことが必要であると考えます。

カ 児童生徒作品データベース
 これは、県内の児童生徒が図画・工作、書道、技術・家庭、課題研究、クラブ活動等において作製した作品や学習成果等をマルチメディアデータベースサーバに構築し、検索・閲覧・配信することができるようにしたものです(【図23】)。「領域別実践データベース」等同様のソフトウェアを用い、「キーワード検索」内に「児童生徒作品」というキーワードで構築しています。そのため、「領域別実践データベース」や「学習素材データベース」と同様のことができるシステムとなっています。
 例えば、児童生徒が作製した木工作品や書画等をデジタルカメラ等で撮影して登録しておくことにより、参考作品として提示できます。また、児童生徒が各種研究発表会で発表した際の研究成果等は、発表用のプレゼンテーション資料とともに、発表の際に用いた静止画や動画等も登録できるため、発表の流れや様子等を再現することができ、他校にとっても参考にすることができます。また、発表内容を何度も見ることができるため、研究成果に対する理解を深めることにもつながると考えます。
 現在はデータ数が少ないですが、今後、県内の児童生徒の優秀な作品を集め、参考作品として提供していきたいと考えています。

(2) 学習用ソフトウェアにおける教材データベース

ア 個別学習システムにおける教材データベース
 先生方が作成したマルチメディア教材をサーバに登録することによって、児童生徒はそれらの教材をインターネットやネットワークを介してホームページ感覚で学習することができるよう、学校インターネット事業で導入された個別学習システム(CALsurf)を用いてデータベースの構築を行いました。
 主な教材の特徴については次のとおりです。

(ア) 国語…書写
 30種類の手本を示したサムネイルをクリックすると動画が再生され、児童生徒個々の課題に従って筆使いを学習することができます(【図24】)。

(イ) 社会…江戸時代の美術
 学習事項をクリックすると、関連するホームページにより詳しく学習できます。重要語句に関するホームページにリンクさせることで興味・関心を高め、学習を発展させたり調べ学習等に効果があると思われます(【図25】)。

(ウ) 英語…Asking the Way
 【図26】のような学習画面が18シーンあり、音声による解説と動画による発音練習等ができ、学習者の興味・関心を高めることができると考えます。内容は、教科書から教材として構成しており、授業の予習・復習だけでなく、一斉授業においても十分活用できます。解説画面・音声・動画等により、学習効果も更に上がるものと思われます。

(エ) 技術・家庭…電気の正体
 50分の授業を記録した動画を13場面(合計15分程度)に編集し、さらに解説画面を五つ作成して【図27】のように18項目の内容に分けました。授業の復習として、あるいは自習時間の学習にも十分に活用できます。

 構築したこれらの教材データベースに共通している点は、板書事項に該当する学習画面、それぞれの学習項目や重要語句から関連するホームページへリンクさせていること、動画や音声による解説を取り入れていることです。また、学習の最後に演習問題が設定され、すべての問題に答え、正解しなければ次画面に進めないようにシステム化されています。さらに、各教材の最後の学習画面には、児童生徒の質問や感想、先生同士の教材に関する評価や意見交流を、電子メールを利用して行うことができるように工夫しています。
 教材を実際に使ってみての感想や意見について、研究協力校の先生方に対してアンケート調査を実施しました。学習効果が高まると思われる教材データベースの内容としては、小学校では理科における基本的な実験や危険な実験、太陽と月の関係等指導が困難な内容を動画で学習させることの効果が期待されています。また、算数における図形、図工における彫刻刀の使い方、体育における跳び箱やマット運動等、動画を繰り返し再生することで基本的な技能の習得に役立つと考えられています。中学校では、国語における音読方法や書写での筆使い、理科における実験、英語における発音や表情の学習等の内容に関して、それぞれ動画により学習効果が高まるものと考えられています。高等学校では、情報教育における電子メールの活用やHTML文書の作成方法、著作権等の内容、バーチャル見学できる文化財等の教材が回答されています。また、クラブ活動における個別練習にも活用することが考えられ、演劇における発声、柔軟体操、吹奏楽での基礎練習方法等を動画により学習させる活用方法等があげられています。
 今後は、研究協力校の教材作成者と連携を密にして教材作成とそのデータベース化を行い、校種や教科・領域ごとに系統性があり質・量とも充実した教材データベースとして構築したいと考えます。また、研究協力校による活用実践を繰り返しながら、その修正や改善も図っていきたいと考えます。

イ 協調学習システムによる教材データベース
 複数の児童生徒が様々な学習テーマについて、ネットワークを利用した意見交流をとおしてその理解が深められるように、学校インターネット事業で導入された協調学習システム(CollaboNavi)を用いて教材データベースの構築を考えました。ホームページを一つの教材として活用し、その学習成果や考察等もデータベース化し、さらに質問や意見・感想等も文字データの形でデータベース化できます。児童生徒は、掲示板機能やリアルタイムに双方向通信できるチャット機能を用いて意見交換することが可能で、時間や場所の隔たりを埋める学習形態をとることができます。このシステムによる教材データベースを構築することにより、具体的には以下のような可能性をもっています。

 自由な形で学習結果をまとめた児童生徒自作のホームページをもとに、お互いが積極的な意見交流を行ったり、それらをデータベース化することで学習成果の共有化が図られること
 学習成果に対する質問・意見・感想等をデータベース化し、それらを参考にすることでさらに学習が深まり、発展的な学習につなげていくこと
 協調学習システムによる教材データベースは、総合的な学習の時間、または各教科における調べ学習で活用できること

 この教材データベースの活用例としては、例えば「地球温暖化に対する問題」を大きな学習テーマとして取り上げた場合、まず児童生徒が更に興味・関心をもつ下記のような小テーマごとにグループが構成されます。
  ・グループ@:「オゾン層破壊の原因を探る」
  ・グループA:「オゾン層の役割は何?」
  ・グループB:「モルディブ消滅の要因」
  ・グループC:「皮膚癌はなぜ起きる」
  ・グループD:「気象変動についての調査」

 それぞれのグループごとに、インターネット上から参考となるホームページを調べたり、文献資料や実地調査活動による資料収集を行いながら学習結果としてまとめ、それらの結果を各グループごとに討議し、考察を加え教材としてデータベース化します(【図28】)。これらに対して、インターネットを介して他の学校の児童生徒から届いた質問・意見・感想等を更に教材としてデータベース化します(【図29】)。このような学習を繰り返すことによって、学習がより深められていくと考えます。
 研究協力校に対して、児童生徒が協調学習を行う場合にふさわしい学習テーマについてアンケート調査を実施しましたが、総合的な学習の時間での活用を前提としたテーマが多く寄せられました。今後は、研究協力校とともに適切な学習テーマを設定し、当システムを用いた授業を数多く実践しながら、児童生徒の協調学習に活用できる教材データベースを構築していきたいと考えます。

5 研究のまとめと今後の課題

(1) 研究のまとめ
 近年におけるインターネットの飛躍的な普及と、それに伴う県内の多くの先生方からの要望に応えるため、教育情報の提供がインターネット上から可能となるデータベースシステムを、この研究によって構築しました。これにより、これまで利用されてきた「銀河コスモスネット」より操作性に優れた検索しやすいシステムとなり、先生方の様々な教育活動や指導方法の改善等に一層役立つデータベースを構築できたと考えます。さらに、児童生徒に対する学習素材や学習教材といった教育情報もデータベース化し、インターネット上から提供可能なシステムとして構築しました。
 また、提供できるデータの種類についても、従来の文字情報のみの提供に加え、マルチメディア情報の容易な提供が可能となり、教育情報の幅を一層広げることができたと考えます。
 そして、構築したどのデータベースへも容易にアクセスできるインターフェースの開発を行ったことによって、それぞれのデータベースを一つの大きな教育情報データベースシステムとして機能させることができるようになりました。

(2) 今後の課題
 一般的にデータベースは、必要とされている情報が豊富に蓄積されてこそ意味を持ち、また、誰もが簡単な操作によって必要とする情報を探し出すシステムにする必要があります。この点については、教育に関するデータベースシステムにおいても同様であると考えます。したがって、今後も著作権等に配慮しながら、多くの先生方や児童生徒に必要とされ、教育に関する質の高い情報の蓄積に努めるとともに、容易な検索システムの工夫をさらに行っていく必要があります。
 また、平成13年度まで継続される学校インターネット事業での研究協力校を中心に、関係機関からの有益な教育情報の提供を受けながら、教育情報データベースの基本的な考え方や、この研究において開発したデータベースシステムを基盤に、「いわて教育情報ネットワーク」を構築することも重要と考えます。

おわりに

 この研究は、平成11年度から開始された2年次研究ですが、この研究で構築したデータベースシステムをより多くの先生方や児童生徒に利用して頂き、今後も学校や地域の特色を生かした教育活動に役立てて頂ければ幸いです。また、これまで当センターに蓄えられてきた教育情報や、県内に散在する多数の有益な教育情報がデータベース化され、その公開によって共有化を図ることにより、学校や地域間交流が促進され、地域格差のない教育環境づくりがインターネットを利用して行われることも期待できると考えます。
 そして、これらの教育情報が、教育における様々な課題への対応や指導方法の改善、あるいは新学習指導要領における改訂のねらいである、自ら学び自ら考える「生きる力の育成」や「特色ある教育」の展開等にもつながるよう願うものです。
 なお、この研究推進にあたり教育情報の提供やデータベース構築についての意見、要望等を寄せて頂いた研究協力校に感謝するとともに、今後も継続してご協力をお願いしたいと考えます。


【主な参考文献】

1) 笹木望・太田晶宏・藤崎真美著、「新・HTML&CGI入門」、エーアイ出版、1997年
2) 「AdobePremiere5.0Jユーザーガイド」、アドビシステムズ株式会社、1998年
3) C&R研究所著、「動くホームページの作り方」、ナツメ社、1999年
4) C&R研究所著、「Photoshop5.0ウラ技テクニックfor Windows」、ナツメ社、1999年
5) 山崎昶・嶺町優司・早野征則著、「マルチメディア時代のデータベース入門」、海文堂、1994年
6) 「日経BPデジタル大事典 2000-2001年版」、日経BP社、2000年
7) 谷中一朝著、「CGIレスキュー実践Perlプログラミング」、秀和システム、1999年
8) 古川剛・谷中一朝・成田政司著、「CGI&SSIサンプル集」、秀和システム、1998年
9) 小泉茜著、「FLASHムービーのアイデア箱」、SCC、1999年
10) 工藤雅俊著、「Illustrator7.0J MENU MASTER for Windows95」、エクスメディア、1998年



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