岩手県立総合教育センター研究集録(2000)


自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方に関する研究

−考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」の活用をとおして−

北上市立黒沢尻北小学校 教諭 佐藤 悦子


T 研究目的

 学級活動のねらいは、児童が自分たちの学級や学校の生活の充実や向上を目指すとともに、健全な生活態度を身に付ける活動をとおして、 集団の一員としての自覚を深めながら、自主的、実践的な態度を育成することである。また、学級活動のなかでも係活動は、児童一人一人に集団の一員としての役割と責任を自覚させるうえで最適な活動であり、 児童が十分創意工夫して計画し、 活動できるように配慮することが必要である。
 しかし、係活動における児童の実態をみると、 意欲が持続せず活動が停滞しがちになったり、活動は行っているものの自分の発想や工夫を生かせず、活動に高まりがみられなかったりする傾向にある。これは、活動の意義や内容の理解が不十分なために、他と交流して学級生活の向上のために活動しようという児童の意欲が低いことや、 係活動の意義や大切さを実感させ、 児童の発想や創意工夫を生かしながら活動を高めていこうとする教師の手だてが十分でなかったことが要因であると考えられる。
 このような状況を改善していくためには、 係活動において、 児童が互いの発想や工夫を交流し、それぞれの活動を認め合い高め合いながら、ともに活動を創りあげることができるような「係コーナー」を活用していくことが必要である。そのことにより、自ら活動しようとする意識が高まっていくと考える。
 そこで、この研究は、考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」の活用をとおして、自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方を明らかにし、 学級活動の指導の充実に役立てようとするものである。

U 研究仮説

 係活動において、「係コーナー」を以下のように活用し、児童が互いの発想や工夫を交流しながら、それぞれの活動を認め合い高め合って、ともに活動を創りあげていくならば、自ら活動しようとする意識が高まるであろう。
 (1) 係を決める段階において、取り組みたい係を決め、活動内容や方法を知らせ合う。
 (2) 活動に取り組む段階において、 互いの活動内容や方法のよさを学び合い、活動を高め合う。
 (3) 活動をまとめる段階において、互いの活動の成果を確かめ合う。

V 研究の内容と方法

1 研究の内容
(1) 自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方に関する基本構想の立案
(2) 自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方に関する実態調査及び調査結果の分析と考察
(3) 考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」を活用した係活動の指導試案の作成
(4) 指導実践及び実践結果の分析と考察
(5) 自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方に関する研究のまとめ

2 研究の方法
 (1) 文献法   (2) 質問紙法   (3) 指導実践

3 指導実践の対象
 北上市立黒沢尻北小学校 第4学年 1学級(男子19名 女子16名 計35名)

W 研究結果の分析と考察

1 自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方に関する基本構想

(1) 自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方についての基本的な考え方

ア 自ら活動しようとする意識が高まる係活動のとらえ方

(ア) 係活動の意義
 係活動は、自分以外の学級の児童とかかわり合いながら、児童の力で学級生活を豊かにすることをねらいとする活動である。児童が、自分たちの手で学級生活を充実向上させるために必要と思われる仕事を見いだし、その仕事を分担し処理する組織をつくり、学級の全員がいくつかの係に分かれて、協力し合って自主的に活動するものであり、学級の活動において重要なものであるといえる。つまり、児童が、互いに協力し、創意工夫しながら、生活をよりよくするための係活動が日常的に行われるようになれば、学級は活性化し、学級生活を向上させることができるものと考える。

(イ) 自ら活動しようとする意識の高まりについてのとらえ方
 本研究では、「自ら活動しようとする意識」を「活動をとおして生活がよりよくなることを理解し、そのための活動を考え、活動に積極的にかかわろうとする態度に結びつく内的作用」であるととらえた。
 児童が活動するとき、その活動が児童にとって価値のあるものになるためには、「活動の意欲」、「活動の理解」、「活動の技能」を身に付けていくことが必要である。「活動の意欲」とは、活動の目的、内容、方法に興味関心をもち、積極的に活動にかかわろうとすることであり、活動をしたことで生活がよりよくなったと実感できたり、学級の向上のために役に立っているということを実感できたりしたとき、次も学級のためになる活動をしようという意欲へと高まっていくと考える。「活動の理解」とは、活動の目的、内容、方法を認識し、他の人とのかかわり方を含む活動へのかかわり方がわかることである。「活動の技能」とは、活動の目的、内容に合った活動の仕方で実行できることであり、特に係活動においては、他とのコミュニケーションの仕方を具体化することが重要であると考える。
 これらの「活動の意欲」「活動の理解」「活動の技能」は、【図−1】のように、互いにかかわり合い高まっていくことにより、自ら活動しようとする意識が高まっていくものであると考える。したがって、係活動に継続的、発展的に取り組ませることは、活動の経過や結果によって培われた理解や技能、意欲が作用し合い、「自ら活動しようとする意識」が高まることに結びつくものと考える。

イ 考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」のとらえ方と活用のし方
 本研究では、「考えを交流し合う」ということを児童の発想や創意工夫を相互に出し合い、かかわり合うことととらえ、「ともに活動を創る」ということを、児童が互いにかかわり合いながら、学級生活の充実向上のために協力して活動を高めていくことととらえた。
 「係コーナー」とは、係活動についての自分の発想や創意工夫を表現するとともに他の活動についての感想や考えを伝え合うことによって、自ら活動しようとする意識を高める場や時間である。表現し伝え合うことは、他とかかわることであり、コミュニケーションの技能を高めることにもつながるものである。
 学級の活動は、集団のなかでの活動であり、他との適切なかかわり方を育てるために、特に重要であると考える。児童は、自分の活動が、学級のなかで承認され評価されたと実感したとき、満足感や成就感をもち、継続的発展的活動への意欲が高まっていくものと考える。この学級のなかでの承認や評価は、他とのかかわりから得られることが多い。また、さまざまな発想や創意工夫の交流は、活動内容や方法の検討、発展を促し、活動をよりよい活動に高めるもととなると考えられる。このように、考えを交流し合い、ともに活動を創るような「係コーナー」の活用を図ることは、自ら活動しようとする意識を高めるうえで重要であると考える。
 本研究では、考えを交流し合いともに活動を創る「係コーナー」を、係活動の各段階で次のように工夫し、活用していくこととする。

(ア) 係を決める段階での工夫
 係活動を決める段階は、活動を始めるための基礎となる「活動づくり」をする段階である。「活動づくり」では、学級生活の向上のための活動として、どのような係をつくりたいかということを自由に発想させ、PR活動をさせる。その後、児童の発想に基づいた活動が学級の係として組織されるための話し合い活動へとつなげ、どの係に取り組みたいかということを自分で選択、決定できるようにする。

(イ) 活動に取り組む段階での工夫
 係活動に取り組む段階は、「活動の広め合い、高め合い」をする段階である。「活動の広め合い、高め合い」とは、考えを交流し合い、活動を評価したり、新たな活動を提案したり、活動内容の検討を促したりしながら、活動を活性化し高めることである。そのために、活動内容や計画を明確にし、自分の活動の方法がわかるようにするとともに、他に知らせ、互いの活動への興味関心を高め、かかわり合いの促進となるようにする。

(ウ) 活動をまとめる段階での工夫
 活動をまとめる段階は、「活動の成果の認め合い」をする段階であり、自他の活動の成果を確かなものとして認識することである。そのために、活動を振り返ってまとめ、互いの活動についての感じ方や考えを交流するなかで、活動前と活動後の考えや行動の変容について気付くことができるようにする。それによって、活動の意義の認識や次の活動への意欲付けを図っていく。

ウ 考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」を活用した活動の各段階における自ら活動しようとする意識の具体的な姿
 考えを交流し合い、ともに活動を創ることは、「活動の意欲」「活動の理解」「活動の技能」を高め、【図−2】のように、係活動の各段階での自ら活動しようとする意識に作用していくものと考える。このような作用が係活動の各段階で効果的におこるように「係コーナー」を工夫しながら、自ら活動しようとする意識を高めていきたいと考える。

(2) 自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方についての基本構想図
 これまで述べてきた基本構想についてまとめたものが、【図−3】の基本構想図である。

2 自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方に関する実態調査及び調査結果の分析と考察
 児童の実態調査の結果、明らかになった課題は、次の三点である。

 (1) 児童の発想を生かした係をつくり、活動を柔軟に組み立てながら取り組ませるような手だてが必要であること
 (2) 係活動に必要な連絡をしたり、考えを伝え合ったりできるような支援が必要であること
 (3) 児童が活動における有用感を実感できるような手だてが必要であること

3 考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」を活用した係活動の指導試案

(1) 考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」を活用した係活動の指導試案作成の観点

 ア 児童が自分の意思で取り組む係を決定、組織し活動を開始できるよう、発想を交流し共通理解を図るために「係コーナー」の活用を工夫すること
 イ 活動計画や活動状況、互いの活動についての考えを交流しながら、活動を高めていくために「係コーナー」の活用を工夫すること
 ウ 活動の成果を確かめ合い、次の新たな活動につなげることができるような振り返りをするために「係コーナー」の活用を工夫すること

(2) 考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」を活用した指導試案

ア 「係を決める」段階での活用

 (ア) 【資料−1】のような「PRカード」につくりたい係の目的、内容を書かせ、「係コーナー」に掲示する。
 (イ) 「PRカード」をみて、同じ係をつくりたいという考えやPRカードについての意見を自由に掲示する。
 (ウ) 朝の会や帰りの会の時間の「係コーナー」で、「PRカード」の活用を促したり、掲示上の表現で説明が必要な点について、話し合いをさせたりする。
 (エ) 学級活動の時間につくりたい係について話し合い、それぞれの係を決定し、活動の方針や計画について、明確にする。

イ 「活動に取り組む」段階での活用

 (ア) 1週間程度の活動予定が明確になるように計画を掲示する。
 (イ) 係活動についての感謝や意見などを伝える掲示として【資料−2】のような「係レター」を活用する。
 (ウ) 朝の会や帰りの会の時間の「係コーナー」を活用し、よせられた「係レター」についての回答や活動についての考えを発表する。
 (エ) 「係レター」の意見によって、活動を見直したり広げたりしたことについて表現し、掲示する。

ウ 「活動をまとめる」段階での活用

 (ア) 係活動を振り返り、まとめの係新聞やポスターを掲示する。
 (イ) 他の係の活動のよさについてみつけたことを表現し、掲示する。
 (ウ) 「係コーナー」の掲示物を活用して係活動のまとめをし、成果を振り返る集会活動を行う。

 これまで述べてきたことをもとにして、考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」を活用した係活動の指導試案を【図−4】のように作成した。

4 指導実践及び実践結果の分析と考察

(1) 指導試案に基づく指導計画 (省略)

(2) 指導試案に基づく指導実践

ア 係を決める段階
 新しく係を決めるにあたっては、児童が従来の係にこだわらずに考えられるように、学級活動の時間をつかって「係と当番の違い」や「学級の係としての基本的条件」について話し合った。「学級の係としての基本的条件」として、「学級やみんなの生活のために役立つ活動であること」「お金をつかわない活動であること」「休み時間など自由に使うことのできる時間内でできる活動であること」の三点を確認した。
 その後、それぞれの発想に基づいて、「PRカード」を用いたPR活動を行うようにした。「PRカード」では、29種類の係が提案され、「係コーナー」に掲示された。 「PRカード」は2日間掲示し、その間に係員の募集についての追加の掲示や提案に賛成の意思を表す賛成シールを自由にはってよいことにした。児童は、他の児童のカードをみて、提案の仕方が違っていても活動についての考えが似ているということに気付いたり、係について自分が思いつかなかった新しい考え方に気付いたりする様子がみられた。
 係の決定をするための話し合いは、学級活動の時間に行い、「PRカード」で提案された29種類のうち14種類の係が提案された。児童は、係の活動が「基本的条件」に合っているかどうかということや学級につくってほしい理由などについて意見交換をしながら、自分のなりたい係を決めた。話し合いのなかで、提案者自身が基本的な条件にはずれているということに気付いて取り下げたり、似たような内容の係がまとまって一つになったりして、最終的に10種類の係ができた。

イ 活動に取り組む段階
 活動に取り組む段階では、互いの活動を理解するとともに、一人一人が自分の活動について理解しながら、活動を進めていけるようにするために、活動の計画を具体的な表にし、個々の役割分担が他の人にもわかるように掲示した。それにより、予定どおりに活動が進まない係について、朝の会、帰りの会で質問や意見を述べ合ったり、「係レター」で、活動の要請を行ったりした。
 「係レター」は、他の係の活動についての感謝やプラスの評価の意見を書くための「ありがとうレター」と活動の要請や改善等の要望を書く「お願いレター」の用紙等を準備し、児童が考えを表現しやすいように配慮した。
 「係レター」は、朝の時間や休憩時間に自由に書き、自分で「係コーナー」に掲示した。「お願いレター」については、必ず、係が応答することとした。初めは、「ありがとうレター」が多く、児童は、活動を評価してもらえる「ありがとうレター」の数を喜んで数えるようになった。活動が進むに従って、次第に「ありがとうレター」とともに「お願いレター」も増えてきた。

ウ 活動をまとめる段階
 活動をまとめる段階では、まとめの係集会を設定し、活動の経過やみつけたよさ、活動の感想等を他の人にも分かるようにまとめ、発表することにした。会全体の運営には、「い きいき楽しみ係」(集会係)が中心になってあたり、それぞれの係がやりたい準備を申し出て行った。
 まとめの係集会では、発表のための資料として「係レター」を使って活動の流れを振り返りながら紹介する係、それまで活動で使った(作った)実物を用いて発表する係、「紙しばい」を作って発表する係等、それぞれの係の創意を生かした工夫がみられた。児童の感想には、互いの活動の工夫と共に発表の仕方の工夫について認め合う感想が多かった。係集会の発表のためにつくられた資料は、教室に掲示し、次の係活動につなげるようにした。

(3) 実践結果の分析と考察

ア 係活動の各段階における自ら活動しようとする意識の状況

(ア) 係を決める段階における児童の意識の状況

@ 活動の意欲の状況
 【表−1】から、約半数(17名)の児童が、今までなかった新しい係を提案し、9名が今まであった係の活動内容を工夫し、新しい活動内容を含む係を提案していることがわかる。このことから、「PRカ ード」で自分のつくりたい係をPRする手だては、児童に新しく係をつくることに興味をもたせ、今まであった係にとらわれずに学級に必要な係について自分なりに考えてつくろうとする意欲を高めるうえで効果があったと考えられる。
A 活動の理解の状況
 【表−2】から、ほとんどの児童は、「学級を楽しくするため」などのように、学級やみんなのためになる係をつくろうとしていることがわかる。このことから、「PRカード」は、自分がつくりたい係の目的や内容を理解させるうえで効果があったと考えられる。
B 活動の技能の状況
 【表−3】から、自分がPRした係をそのまま選択した児童は9名であり、似たような内容のものと統合して係をつくって選択した児童が7名、他の児童のPRカードをみて、なりたい係を変更した児童が15名であることがわかる。このことから、PRカードは、つくりたい係の目的や内容を他に適切にPRしたり、他の考えを取り入れたりして、係を決めるうえで、効果があったと考えられる。
 以上のことから、係を決める段階において、PRカードを活用し、つくりたい係をPRし合いながらなりたい係を決定させることは、活動の目的や内容について理解したうえで活動への興味関心を高めながら、積極的に係をつくろうとする意識や、自らの意思で活動を選択しようとする意識を高めるために効果があるのではないかと考えられる。

(イ) 活動に取り組む段階における児童の意識の状況

@ 活動の意欲の状況
 【資料−3】は、活動に取り組む段階において、考えの交流が活動にどのように作用したかを示した例である。この資料から「係レター」や朝の会、帰りの会の係からの発言が「仲良しボランティア係」の活動を高めていることがわかる。他の係についても、同様な意欲の高まりがみられた。  このことから、「係レター」や朝の会、帰りの会で活動についての考えを伝え合うことは、他の考えを取り入れながら よりよい活動をしようとする意欲を高めるうえで効果があったと考えられる。

A 活動の理解の状況
 【表−4】から、活動が進むに従って、評価や要望を伝える「係レター」が増えていることがわかる。このことは、他の活動に対する関心や理解が活動を進めるにしたがって高くなってきたことの表れであると考えられる。 このことから、「係レター」で他の係への感謝や要望を伝えていくことは、互いの係活動への関心や理解を深め、自分たちの係活動のよさや問題点に気付くうえで、効果があったと考えられる。
B 活動の技能の状況
 【表−5】から、どの係も、活動を進めるとき、「係レター」や朝の会や帰りの会で伝えられる意見を意識し、工夫しながら活動していたことがわかる。このことから、「係コーナー」で考えを伝え合うことは、児童が他と考えを交流しながら、活動を高めるうえで効果があったと考えられる。

(ウ) 活動をまとめる段階における児童の意識の状況

@ 活動の意欲の状況
 【表−6】は、まとめの段階の係集会の発表内容にみられた児童の「活動の成果を確かめようとする意識」を表したものである。「自分たちがしたことで、仲良くなってニコニコしてくれたことがうれしかった。」(苦情しょり係)等の発表から、児童が自分の係の活動をとおして、学級や他の人に役に立ったということを感じ取っていることがわかる。
 このことから、まとめの係集会は、児童が、自他の活動の高まりを実感しながら、活動の成果を確かめようとする意欲を高めるうえで効果的であると考える。

A 活動の理解の状況
 【表−7】より、係活動が楽しくできた児童が25名であり、係活動により学級がよりよくなったと感じている児童が24名であることがわかる。
 このことから、児童は、下線部の記述のように係活動による学級の変容をとらえるとともに、係活動を楽しいと感じたり、係活動が学級をよりよくしたと感じたりしていることがわかる。
 【表−8】は、【表−7】で「楽しく活動できた」と回答している児童の理由を分類したものである。係活動に取り組むときになりたい係を選択できることや活動を工夫できること、他に喜ばれることが、「楽しい」と感じる根拠になっていることがわかる。
 このことから、係集会で互いの活動の成果を伝え合うことは、児童に、自他の活動を意味あるものととらえさせ、係活動が学級の向上に役立つことを理解させるうえで効果的であったと考える。

B 活動の技能の状況
 【表−9】は、まとめの係集会での発表方法や準備の様子にみられた「活動のよさを伝えよう」とする活動の状況を表にまとめたものである。児童は、準備のために与えられた時間だけでなく、休憩時間に話し合ったり、他の係を手伝ったりしながら作業を進めていた。係集会を行うのは、児童にとって初めてであるにもかかわらず、工夫しながら積極的に準備作業を進めたということがわかる。また、係の発表の方法は多様であり、それぞれの係は、創意工夫をし活動の成果や感想を発表し合うことができたことがわかる。係集会のなかでの感想では、「どの係も発表の工夫をしていて、仕事を一生懸命がんばっていることがわかった。」「いろんな活動をするようになって学級が明るくなってきた。」等の感想が出された。
 このことから、まとめの係集会は、みつけたよさを他に伝え、互いの活動を認め合えるような伝え方を工夫させるうえで、効果的であったと考える。
 以上のことから、活動をまとめる段階において、互いの活動の成果を伝えるための資料作成をし、発表し合う係集会を行うことは、学級の向上に役立つ係活動の在り方を理解し、みつけたよさを伝え合いながら活動の成果を確かめようとする意識を高めるうえで、効果があるといえる。

イ 自ら活動しようとする意識の変容
 【表−10】は、児童の自ら活動しようとする意識の変容状況について、指導実践の事前と事後に調査したものをまとめたものである。
 設問@とAは「係を決める」段階、B〜Dは「活動に取り組む」段階、設問EとFは「活動をまとめる」段階での、「自ら活動しようとする意識」の「活動の意欲、理解、技能」の三要素にかかわる問いである。六つの設問で有意差がみられたが、Dではみられなかった。
 有意差がみられなかった設問Dの内容は、活動内容や方法 の理解にかかわるものである。事後調査で88%と大半の児童がプラス反応であったが、事前調査で−の反応を示していた児童に変化 がみられなかった。自分がしようとする活動について、目的や方法の理解が不十分な児童については、具体的に役割分担等をしたうえで活動に見通しをもたせることが必要だったといえる。

5 自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方についてのまとめ

 考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」の活用をとおして自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方について、仮説に基づいた指導実践によって明らかになったのは、以下のとおりである。

 (1) 「係を決める」段階において、「PRカード」や話し合いで、つくりたい係をPRし合わせながら、なりたい係を決定させることは、活動の目的や内容について理解したうえで活動への興味関心を高めながら、積極的に係をつくろうとする意識を高めることに効果がある。
 (2) 「活動に取り組む」段階において、「係レター」や朝の会、帰りの会で考えを伝え合うことは、活動のよさや問題点に気付き、学級のために役立ち認められるようなよりよい活動をしようとする意識を高めることに効果がある。
 (3) 「活動をまとめる」段階で、互いの活動の成果を伝えるための資料を作らせ係集会で発表し合わせることは、学級の向上に役立つ係活動の在り方を理解し、みつけたよさを伝え合いながら活動の成果を確かめようとする意識を高めることや、自分の活動が学級の役に立てたという有用感を実感させ、次の活動もよりよいものにしていこうとする意欲をもたせることに効果がある。
 (4) 「係を決める」段階で自分のなりたい係を決められない傾向のある児童は、「活動に取り組む」段階になっても積極的な活動ができにくいことから、「係を決める」段階で自分のなりたい係について十分考えさせ、活動に見通しをもたせるためのPRのさせ方やPRカードの工夫が必要である。

 以上のことから、係活動において、児童が互いの発想や工夫を交流しながら、それぞれの活動を認め合い高め合って、ともに活動を創りあげていくように「係コーナー」を活用させることは、自ら活動しようとする意識を高めるうえで効果があると考える。

X 研究のまとめと今後の課題

1 研究のまとめ
 この研究は、考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」の活用をとおして、自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方を明らかにし、小学校における学級活動の指導の充実に役立てようとするものである。
 そのため、自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方についての基本構想に基づき、考えを交流し合い、ともに活動を創る「係コーナー」を活用した係活動の指導試案を作成し、指導実践を行った。そして、この指導実践の結果に基づいて指導試案の妥当性を検討し、自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方についてまとめることができた。

2 今後の課題
 この研究においては、自ら活動しようとする意識が高まる係活動の在り方について、「係コーナー」の活用をとおして、事例的、実践的に明らかにすることができた。
 しかし、自分がやりたい係を決めることができない児童に活動の見通しをもたせるためのPRのさせ方については、今後さらに工夫していく必要があると考える。


【主な参考文献】

文部省 「小学校学習指導要領解説 特別活動編」 東洋館出版社 1999年
宮川 八岐・内藤 勇次 編著 「小学校新教育課程の解説 特別活動」 第一法規出版 1999年
児島 邦宏 著 「学校新時代特別活動の理論」 明治図書 1996年



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