岩手県立総合教育センター研究集録(2000)


小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方に関する研究

−体育科の合同学習における学び合いの活動をとおして−

釜石市立栗林小学校 教諭 鈴木 崇


T 研究目的

 複式・小規模校においては、少人数であるという特性を生かして、教師や友達と心を通わせ、助け合って学習していくという深い人間的接触を基盤としながら、児童一人一人のよさを伸ばす教育の推進が求められている。特に複式・小規模校の特質の一つである互いの差異を尊重しながら活動する異年齢集団による学習では、児童は個々の特性を十分に発揮し合うことができ、集団としての目標達成にむけて効果的に活動することができると考える。
 しかし、本校児童の実態をみると、集団での活動場面において積極的に仲間とかかわろうとする意識が低く、自分のもっている力を発揮しきれない傾向が見受けられる。これは、児童が就学前から同一の集団で生活を共にしてきたために、切磋琢磨し自己を向上させようという意識が薄れていることや、教師が互いに協力しながら目標に向かって取り組んでいく活動を十分に取り入れてこなかったことが要因であると思われる。
 このような状況を改善するためには、児童が学級の枠を越えた新しい集団のもとで活動できる体育科の合同学習において、基本的な技能や動きを学び合ったり、集団の課題達成にむけて個々の役割を分担しながら学び合ったりする活動を行わせることにより、仲間とかかわり学び合うことのよさを味わわせ、集団のなかで進んで伸びようとする意識を高めていくことが必要であると考える。
 そこで、この研究は、体育科の合同学習における学び合いの活動をとおして、小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方を明らかにし、複式・小規模校教育の充実に役立てようとするものである。

U 研究仮説

 体育科の合同学習において、学級の枠を越えた新しい異年齢構成のグループを組織し、次のように学び合い活動を行わせれば、児童の集団のなかで伸びようとする意識が高まるであろう。
 @ 自分やチームに適した課題及び課題達成に向けての練習や役割を話し合う学び合い活動
 A 上学年児童を中心に、協力して基本的な技能や動きを教え合う学び合い活動
 B 自分やチームの活動を振り返り、お互いのよさを認め合う学び合い活動

V 研究の内容と方法

1 研究の内容
 (1) 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方に関する基本構想の立案
 (2) 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方に関する実態調査及び調査結果の分析と考察
 (3) 体育科の合同学習の指導過程に学び合い活動を取り入れた指導試案の作成
 (4) 指導実践及び実践結果の分析と考察
 (5) 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方に関する研究のまとめ

2 研究の方法
 (1) 文献法 (2) 質問紙法   (3) 指導実践

3 指導実践の対象
 釜石市立栗林小学校 第4・5学年  男子 4年4名 5年4名 6年6名
               第 6 学年   女子 4年3名 5年5名 6年3名  計25名

W 研究結果の分析と考察

1 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方に関する基本構想

(1) 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方についての基本的な考え方

ア 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高めることの意義
 小規模校においては、児童が固定化された人間関係のもとで生活してきたことから、集団活動における生活経験や集団思考等の学習経験が不足していることが共通の課題となっており、児童の向上心や学習意欲にも影響を及ぼしている。そこで、個に応じながらも、集団で考えを練り合わせることによる思考力や、集団での活動を通じての協調、適応などの社会性を、集団のなかで仲間とかかわり合うことによって伸ばすことが重要であると考える。このような考えに基づき本研究では、児童の能力のよりよい伸長を図るために、上学年児童をリーダーとして集団の共通目標達成に向けて取り組む「学び合い活動」において児童の「集団のなかで伸びようとする意識」を高めていくことを目指している。
 本研究における「集団のなかで伸びようとする意識」とは、集団における自分の役割がわかり、集団の共通目標の達成に向けて自己の能力を高めようとする心のはたらきであるとらえた。また、「集団のなかで伸びようとする意識」を構成する要素を、【表−1】のように「課題意識」「役割意識」「共同意識」ととらえた。

イ 小規模校における体育科の合同学習で学び合い活動を行うことの意義

(ア) 小規模校において体育科の合同学習を行うことの意義
 小規模校における体育科の学習では、学級が少人数であることから一人一人の活動の場面が増え運動技能の習熟を図りやすいよさがある反面、学習活動を行うために一定の人数を必要とするゲームやボール運動などにおいては、どうしても効果的な学習集団が成立しにくいという問題がある。したがって、学習集団の規模の適正化を図るために、いくつかの学年が一緒になって授業を行う「合同学習」を積極的に取り入れることが重要であると考える。そこで、本研究では、下記の二点をねらいとして合同学習を実施することとする。

・学級の枠を越えた異年齢構成のグループを組織することにより、集団のなかで自分のもっている力を生かそ うとする意欲を喚起すること
・学習に必要な人数を確保し、少人数では味わえないボール運動の特性にふれた楽しさを味わわせること

(イ) 合同学習における学び合い活動の意義と手だて
 学び合い活動とは児童が個人と集団とのかかわりのなかで、互いのものの見方や考え方、表現の仕方や動き方などの違いを認め合い、相互に影響しながら学習する活動である。合同学習においては、年齢、能力、興味・関心などにおいて大きな個人差のある児童が共に学ぶために、児童同士が対等の立場で競争するという意識は比較的薄く、学び合い活動もお互いの特性を尊重しながら展開されることが多い。
 本研究の体育科の合同学習における学び合い活動は、運動の楽しさや喜びを味わうことを大切にしながら、そのために必要な技能を身に付けさせることや、友達とかかわるなかで責任、公正、協力といった社会的な態度を育成することを目的として行うこととする。
 本研究の主題である「集団のなかで伸びようとする意識」は、学び合い活動において、友達とかかわり合うことのよさをくり返し感じることにより、構成要素である「課題意識」「役割意識」「共同意識」が育っていくと考える。さらにそのよさをくり返し感じながら活動することが、体育科のねらいにつながる基本的な技能の習得や社会的な態度の育成、さらには運動することの楽しさや喜びを感じたとき、「課題意識」「役割意識」「共同意識」が相互にかかわり合いながら高まっていくと考える。また、本研究では集団のなかで伸びようとする意識を高めるための単元の活動の段階として、「つかむ」「ためす」「たかめる」の3段階を設定し、それぞれの段階で【図−1】のような学び合い活動を行うこととした。各活動段階における意識の高まりについては、主に「課題意識」はためす段階、「役割意識」はためす段階からたかめる段階、「共同意識」についてはたかめる段階で高まるととらえている。
 各単位時間においては、「話し合う⇒教え合う⇒認め合う」という流れで学び合い活動を行うこととする。

(2) 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方に関する基本構想図
 これまで述べてきた小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方についての基本構想図を次頁【図−2】のように考えた。

2 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方に関する実態調査及び調査結果の分析と考察
 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方に関する基本構想に基づき、体育科の合同学習に学び合い活動を取り入れた指導実践を行ううえでの問題点と課題を明らかにするために7月中旬に実態調査を実施した。その結果明らかになった課題は次の四点である。

ア 課題を決める話し合いの場を設定し、自分にあった課題を決めたり、課題解決のための活動を計画させたりする必 要があること
イ 基本的な技能の要素やそれを身に付けるための練習方法及びよい動きなどを理解させる場の設定が必要であること
ウ ボールの動きや友達の様子をとらえて今後のボールゲームに生かすような教え合いの場を設定する必要があること
エ 活動を振り返る場を位置付け、友達のよさを具体的にとらえさせる必要があること

3 体育科の合同学習の指導過程に学び合い活動を取り入れた指導試案

(1) 体育科の合同学習の指導過程に学び合い活動を取り入れた指導試案作成の観点
 実態調査の分析から明らかになった小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方に関する課題を解決していくために、@つかむ段階において学習に対する見通しをもたせる、Aためす段階において学年差を考慮し個に応じた課題に対応するための学習形態や、ボールの動きから自他の動きをとらえさせ、自分たちの動きに生かそうとする教え合いをさせる、Bたかめる段階において活動を振り返り友達のよさを具体的にとらえさせるという三つの観点から、体育科の合同学習の指導過程に学び合い活動を取り入れた指導試案を次頁【図−4】のように作成した。

4 指導実践及び実践結果の分析と考察

(1) 指導試案に基づく指導計画の概要
 【表−2】は、指導試案に基づき、「つかむ」段階2時間、「ためす」段階5時間、「たかめる」段階3時間の 合計10時間で作成した指導計画の概要である。

(2) 指導試案に基づく指導実践の概要

ア つかむ段階の学び合い活動
 つかむ段階では、児童一人一人が、今身に付けている力で楽しむことのできる単元のはじめのゲームをもとに、学習の見通しをもつ学び合い活動を【図−3】のような流れで行った。

イ ためす段階の学び合い活動
 ためす段階では、個々の課題とする基本的な技能の習得を図ることをねらいとした学び合い活動を行った。
 はじめにゲームに必要な基本的な技能の要素や、技能を身に付けるための練習方法及びよい動きなどを理解させる「ボールの扱い方を知ろう」という分習の時間を設定し、4年生グループが簡単なルールや技能、5・6年生グループが基本的な技能の要素や練習方法の学習を行った。
 第4時からは、自分に適した課題をもち、課題達成に向けて上・下学年児童が計画的に練習し、よい動きを知る学び合い活動を【図−5】  のような流れで行った。
 課題を決める場である「話し合う」活動においては、より自分に適した課題を設定するために、上学年児童を中心に、課題を決める観点や課題達成のための練習計画について検討しながら課題を決めた。次に課題達成に向けての練習計画を立て、各自の課題や練習計画については、バスケット学習ノートに記録をした。
 「教え合う」活動においては、課題達成に向けて、上学年児童と下学年児童がペアになるなどチームをさらに小グループ化し、協力して練習を行った。また、集団の特性を生かした動きや自分自身の動きをとらえるためにボールの動きを記録し、ゲームの前半終了後に「教え合う」活動を行い、前半のボールの動きの記録をもとにチームで各自の動きを話し合わせ、後半のゲームに生かすようにした。
 「認め合う」活動においては、自分やチームの活動を振り返ること、友達のよさを見つけることをねらいとした。特に友達のよさについては、具体的に気付くことができない児童が多いことから、取り組みのよさや友達のよいプレーについてバスケット学習ノートに記録し、チーム内で発表する活動をした。

ウ たかめる段階の学び合い活動
 たかめる段階では、チームの課題や作戦を考え、対戦相手を変えてゲーム1、ゲーム2の2試合を行うこととし、集団の課題達成に向けて協力し、互いのよさを認め合う学び合い活動を【図−6】のような流れで行った。

(3) 実践結果の分析と考察

ア 学び合い活動の各活動における意識の状況

(ア) 「話し合う」活動における意識の状況
 「話し合う」活動においては、自分やチームの課題と作戦を決めたり、役割を考えたりすることが中心となるので、「課題意識」「役割意識」について分析していくこととする。



@ 課題意識の状況(自分に適した課題を設定しようとする意識)
 【表−3】は、つかむ段階で児童がバスケット学習ノートの課題としたいことの欄に記述した内容をまとめたものである。
 この表をみると、多くの児童は動きに着目しているが具体的な動きをとらえて課題を考えてはいないことがわかる。
 【表−4】は、ためす段階の第4時からたかめる段階の「話し合う」活動において決めた児童の課題の記述例から、自分に適した課題を設定しようとする意識の状況をまとめたものである。
 この表をみると、具体的な場面での動きを意識した課題を設定した児童の数はためす段階の第7時からたかめる段階において増加したことがわかる。これは、上学年児童を中心に自分やチームの課題を考え、検討させることにより、ためす段階、たかめる段階と進むにつれて自分の課題が明確になったことによると思われる。
 以上のことから、「話し合う」活動を行わせることは、児童に自分に適した課題を設定しようとする意識をもたせるうえで効果があったと考える。
A 役割意識の状況(集団のなかでの自分の役割をわかろうとする意識)
 前頁【表−3】から役割意識にかかわる記述をみると、つかむ段階における児童の意識のなかには、集団のなかでの自分の役割をわかろうとする意識があまりみられない。
 【表−5】は、ためす段階、たかめる段階の「話し合う」活動において決定した児童の課題の記述例と、集団のなかでの自分の役割をわかろうとする意識の状況をまとめたものである。
 この表をみると、集団の課題達成や作戦に向けた自分の役割を意識している記述をした児童は、たかめる段階の第8時から増加したことがわかる。これは、たかめる段階の「話し合う」活動において上学年児童を中心にチームの課題や作戦を考え、検討させることをとおして、チームの課題達成や作戦に向けた自分の役割が明確になったことによると思われる。
 以上のことから、「話し合う」活動を行わせることは、児童に集団のなかでの自分の役割をわかろうとする意識をもたせるうえで効果があったと考える。

B 共同意識の状況(協力して楽しく活動しようとする意識)
 【表−6】の自己評価の記録から協力して楽しく活動しようとする意識をみると、つかむ段階の第1時、第2時においては、「楽しく活動できた」と振り返った児童がともに16名いたが、ためす段階の第6時、第7時、たかめる段階の第9時には減少している。一方、「仲よく協力した」ととらえた児童はためす段階の第5時からたかめる段階にかけて増加している。このことは、バスケット学習ノートの振り返りの記述においても、つかむ段階においては、「楽しかった」という記述とともに「あまりパスがこなかった」という記述がみられることから、ボール運動の特性を生かしてチームとして取り組んではいない様子がうかがえる。ためす段階の第6時からは、「みんなが声を出していた」などゲームにおけるチームの様子を振り返る記述が増えてきた。チームの課題達成や作戦に向けて取り組みはじめた、たかめる段階の第8時からは、「ゴール前の三角パスがつながってよかった」というチームの具体的な動きや作戦にかかわる記述も増え、ボール運動の特性を生かしてチームとして取り組んだ様子がうかがえる。また、ゲームのなかの様子だけでなく、「練習で優しく教えられてよかった」というチームとしての取り組みを振り返った記述もみられた。これは、「今身に付けている力で楽しむ」ことをねらいとしたつかむ段階からためす段階、たかめる段階と学習が進むにつれて、個々の課題の達成やチームの課題や作戦の成否が「楽しさ」や「協力」にかかわってきたことから、「楽しさ」や「協力」のとらえかたが質的に変化し高まってきたことによると思われる。
 以上のことから、自分やチームの課題に向けて異年齢構成のチームで「教え合う」活動を行わせることは、児童に協力して楽しく活動しようとする意識をもたせるうえで効果があったと考える。

(ウ) 「認め合う」活動における集団のなかで伸びようとする意識の状況
 「認め合う」活動においては自分やチームの活動の様子を振り返ること、友達のよさを見つけることの二つの活動をするが、自分やチームの活動の様子を振り返ることからとらえた課題意識と役割意識については、前項の「教え合う」活動で分析した。この項では共同意識について分析していくこととする。
 【表−7】は、「認め合う」活動におけるバスケット学習ノートの「友達のよいところ見つけた!」の欄の記述から、互いのよさを認め、協力して楽しく活動しようとする意識の記述例と状況をまとめたものである。
 この表をみると、友達のよさを具体的に意識した記述をした児童の数はためす段階の第6時からたかめる段階にかけて増加した。内容も「逆サイドにパスをやった」という動きのよさを認めた記述、「s君がドンマイと声をかけていて、同時にアドバイスもしていた」というチームとしての協力のよさを認めた記述、「練習でしたようにシュートを決めていた」「4年生なのに審判としてみる目がすごい」などのゲームのなかだけでなく練習からの取り組み方や係活動にかかわるよさについて認めた記述がみられた。これは、発見した友達のよさを全体の場で発表させ、みんなで認め合ったことにより、児童が具体的なよさについて様々な視点から気付くようになったことによると思われる。
 以上のことから、チームで活動の様子を振り返り、取り組みのよさや友達のよさを「認め合う」活動を行うことは、児童に互いのよさを認め合い、協力して楽しく活動しようとする共同意識をもたせるうえで効果があったのではないかと考える。

イ 集団のなかで伸びようとする意識の状況
 【表−8】【表−9】【表−10】は、集団のなかで伸びようとする意識について、学び合い活動を取り入れた指導の事前と事後において調査した結果をまとめたものである。
 【表−8】は、課題意識にかかわる事前と事後の変容状況である。この表をみると、マイナス傾向からプラス傾向へ変化した児童が設問1では4人、設問2では3人みられ、プラス傾向の変化をした児童が設問1では8人、設問2では9人みられた。また++から+へ変化した児童もみられたが、バスケット学習ノートの記述をみると、「シュートのとき、前できなかった腕の伸ばしに気を付ける」などの具体的な課題を設定して取り組もうとしていた。

 【表−9】は、役割意識にかかわる事前と事後の変容状況である。この表をみると、マイナス傾向からプラス傾向に変化した児童が設問3では12人、設問4では5人みられ、プラス傾向の変化をした児童が設問4では4人、設問5では7人みられた。また++から+へ変化した児童がみられたが、バスケット学習ノートの課題の記述をみると、「コーナーでパスをもらう」という自分の役割を意識して取り組もうとしていた。

 【表−10】は、共同意識にかかわる事前と事後の変容状況である。この表をみると、マイナス傾向からプラス傾向に変化した児童が設問5では10人、設問6では3人、設問7では6人みられ、プラス傾向の変化をした児童が設問5では5人、設問6では8人、設問7では7人みられた。また++から+に変化した児童がみられたが、これらの児童のバスケット学習ノートの記述をみると友達のよさを具体的にとらえており、全体の場で発表することができなかったことやチームが勝てなかったこと、欠席してしまったことが理由によるものと思われる。

 以上のことから、学び合い活動を取り入れた体育科の合同学習をとおして集団のなかで伸びようとする意識にかかわる「課題意識」「役割意識」「共同意識」が高まってきていると考えられる。

5 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方についてのまとめ
 小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方について、仮説に基づく指導実践によって明らかになったのは次の五点である。

(1) 体育科の合同学習において、学級の枠を越えた新しい異年齢構成のグループを組織し、自分やチームに適した課題及び課題達成に向けての練習や役割を話し合う学び合い活動を行わせることは、集団のなかで伸びようとする意識の自分に適した課題を設定しようとする課題意識、集団のなかの自分の役割をわかろ うとする役割意識を高めることに効果がある。
(2) 体育科の合同学習において、学級の枠を越えた新しい異年齢構成のグループを組織し、上学年児童を中心に、協力して基本的な技能や動きを教え合う学び合い活動を行わせることは、集団のなかで伸びようとする意識の課題達成に向けて努力しようとする課題意識、自分の役割を進んで果たそうとする役割意識、協力して楽しく活動しようとする共同意識を高めることに効果がある。
(3) 体育科の合同学習において、学級の枠を越えた新しい異年齢構成のグループを組織し、自分やチームの活動を振り返り、お互いのよさを認め合う学び合い活動をさせることは、集団のなかで伸びようとする意識の、互いのよさを認め、協力して楽しく活動しようとする共同意識を高めることに効果がある。
(4) 教え合う活動において、児童の課題達成に向けたより効果的な取り組みができるように、話し合う活動で具体的な練習内容や方法を計画させるなど、内容を工夫する必要がある。
(5) 認め合う活動において、互いのよさをより具体的に認め合う学び合い活動ができるように、対戦チーム同士で互いのよさを発表し合うなど、認め合う活動の方法や形態をさらに工夫・改善する必要がある。

 以上のことから、体育科の合同学習において学級の枠を越えた新しい異年齢構成のグループを組織し、課題や作戦を話し合う、基本的な技能や動きを教え合う、お互いのよさを認め合う学び合い活動をすることは、小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高めるうえで効果があるのではないかと考える。

X 研究のまとめと今後の課題

1 研究のまとめ
 この研究は、体育科の合同学習における学び合いの活動をとおして、小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方を明らかにし、複式・小規模校教育の充実に役立てようとするものである。
 そのために、小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方についての基本構想に基づき、体育科の合同学習の指導過程に学び合い活動を取り入れた指導試案を作成し、指導実践を行った。そして、この指導実践の結果に基づいて指導試案の有効性を検討し、小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方についてまとめることができた。

2 今後の課題
 この研究では、小規模校における集団のなかで伸びようとする意識を高める指導の在り方について、体育科の合同学習における学び合いの活動をとおし、実践的に明らかにできた。
 しかし、話し合う学び合い活動において、児童の課題達成に向けたより具体的な練習内容や方法を計画したり、認め合う学び合い活動において、より具体的に互いのよさを認め合うための方法や形態の工夫をしたりすることについては、さらに指導実践をとおして検討していく必要があると考える。


【主な参考文献】
成田 國英著 「『生きる力』を育てる異年齢集団活動の展開」 明治図書 1996年



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