岩手県立総合教育センター研究集録(2000)


自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方に関する研究

−生徒一人一人に進路選択の規準を考えさせる活動をとおして−

花巻市立西南中学校 教諭 牛崎 文子


T 研究目的

 中学校の進路指導では、生徒一人一人が自分の将来の生き方を主体的に考えながら、進路選択できる力を育てていくことが求められている。そのために、教師は、生徒が進路の問題を自分自身の問題として受け止め、解決する過程を経ながら、自分の意志と責任で選択・決定できるように指導・援助することが大切である。
 しかし、生徒のなかには、進路学習の場において消極的な姿勢を示したり、友人に倣った安易な判断を下したりする状況が見られ、進路選択の場面で自らの判断による決定ができないでしまうことが懸念される。これはひとつに、生徒が自分の長所や進路における幾通りもの選択肢に気付いていないことが考えられる。また、生徒に自分の特性を十分理解させ、自分なりの価値観をもって生き方を考えさせる教師の指導の手だてが十分でなかったことによるものと考えられる。
 このような状況を改善するためには、学級活動のなかに、肯定的な自己理解を深める啓発的な体験活動を取り入れ、その活動で気付いたことをもとに生徒一人一人に自分としての進路選択の規準を考えさせる活動を行う必要がある。そのことによって、生徒は自分の多様な進路選択の可能性を見いだし、自分の進路は自分の意志で決定しようとする意欲が高まっていくものと考えられる。
 そこで、この研究は、中学校の進路指導において、生徒一人一人に自分としての進路選択の規準を考えさせる活動を工夫することにより、自分の進路は自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方を明らかにし、進路指導の充実に役立てようとするものである。

U 研究仮説

 中学校の進路指導において、肯定的な自己理解を深める啓発的な体験活動で気付いたことをもとに、生徒一人一人に自分としての進路選択の規準を考えさせる活動を次のように行えば、生徒は自分の多様な進路選択の可能性を見いだしながら、自分の進路を自分で意志決定しようとする意欲が高まるであろう。
 (1) それぞれの進路選択の規準の意義を話し合う。
 (2) 自分としての進路選択の規準を決め、互いに交流し合う。
 (3) 進路設計することにより、自分としての進路選択の規準を問い直す。

V 研究の内容と方法

1 研究の内容
 (1) 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方に関する基本構想の立案
 (2) 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方に関する実態調査及び調査結果の分析と考察
 (3) 生徒一人一人に進路選択の規準を考えさせる活動についての指導試案の作成
 (4) 指導実践及び実践結果の分析と考察
 (5) 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方に関する研究のまとめ

2 研究の方法
 (1) 文献法   (2) 質問紙法  (3) 指導実践

3 指導実践の対象
 花巻市立西南中学校 第2学年 1学級(男子15名 女子14名 計29名)

W 研究結果の分析と考察

1 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方に関する基本構想

(1) 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導についての基本的な考え方

ア 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の意義
 中学校における進路指導では「社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を重視するとともに、生徒が自らの生き方を考え、将来に対する目的意識をもって主体的に自己の進路を選択決定し、生涯にわたる自己実現を図っていくことができるような能力や態度を育成する」(中学校学習指導要領解説 総則編 文部省)ことが重要視されている。
 生徒に自らの生き方を考えさせ、「主体的に自己の進路を選択決定させる」ためには、生徒が進路の学習を自分の大切な問題として受け止め、問題解決する過程を経ながら、自分の将来に多様な進路選択の可能性を見いだし、自分の進路は自分で意志決定しようとする意欲が高まっていくように、教師が指導・援助していくことが重要である。生徒は自分の意志で選択決定することにより自分の進路に責任をもち、進路先での適応を可能にし、自己実現を図っていけるものと考える。
 そこで、本研究では、第2学年の進路指導において、自分で意志決定しようとする意欲を高める指導に焦点を当てて、研究を進めていくものとする。

イ 自分で意志決定しようとする意欲のとらえ方
 生徒が自分の進路を自分で意志決定することは、自分の選択した進路に責任をもち、少々の困難は自ら克服し、進路先で適応しながら自己実現を図るために重要な意味をもっている。
 本研究では、進路指導における「意志決定」を次のようにとらえた。
 ○ 意志決定・・・自分の希望や職業観に基づいて進路選択する際に、将来、困難があっても最後までやり抜こうとする強い意志を働かせて決定すること。進路先での適応・自己実現を図る礎となるもの。
 また、「自分で意志決定しようとする意欲が高まった生徒像」を「将来の自分の生き方に希望を抱き、多様な選択可能性のなかから自分の特性を生かす進路を自分の意志で決定しようとする生徒」とおさえた。そして自分で意志決定しようとする意欲の構成要素を【表−1】のように、進路学習における「興味・関心」「課題意識」「自己理解」「追求意識」「方法理解」「到達意識」ととらえた。
 まず、進路学習を進めるにあたって自分の将来の生き方や進路学習に「興味・関心」を抱かせるとともに、何のための進路学習かという「課題意識」をもたせることが大切である。この「興味・関心」「課題意識」に進路 学習についての肯定的な「自己理解」が加わり、その三つの要素のうえに中心となる活動が展開されることによって課題の「追求意識」が高まり、ついで進路選択の「方法理解」が可能になる。課題追求や方法の理解により、生徒は進路の選択枠の広がりを自覚し、将来への期待感とともに自分の進路を自分自身で選択決定しようという「到達意識」の高まりを実感するであろうと考えた。

ウ 肯定的な自己理解を深める啓発的な体験活動の意義
 第2学年の進路学習計画に位置付いている職場体験学習を、肯定的な自己理解を深める場ととらえ、そこで自分のよさや働くことの喜びを再発見させる必要がある。さらに、そこに働く人の仕事への姿勢やお話などから得られた感動を、報告会で共有させることによって、次の「進路選択の規準を考えさせる活動」への大きな意欲付けができると考える。そのような肯定的な自己理解が深まることにより、職場体験学習はより啓発的な体験活動となるであろうと考えた。
 本研究では、進路指導における「肯定的な自己理解」について、次のようにとらえた。
 ○ 肯定的な自己理解・・・生徒が自尊感情や自己有用感を抱くように、自分の興味・関心のありようや自分のよさを理解すること。本研究では働くことの意義を再発見し、自分のよさを進路選択に反映できるような理解ととらえた。

エ 生徒一人一人に進路選択の規準を考えさせる活動の意義
 進路選択の規準は、個人的・環境的な要因によって形成される職業観と深くかかわるものであり、それは、既に生育環境の中で培われたものとして、生徒一人一人の意識のなかに存在すると考えられる。それを、生徒は啓発的な体験学習をとおして意識化することができると考えられる。
 このような肯定的な自己理解に支えられた自分としての進路選択の規準を、多角的に考え、深め、明らかにする活動を取り入れる。それによって、生徒は自分の多様な選択可能性を自覚し、自分の規準に照らして選択する自分の将来をかけがえのない大切なものととらえ、自分の進路は自分の意志で決定しようという意欲が高まっていくであろうと考えた。
 本研究では、「進路選択の規準」について、次のように考えた。
 ○ 進路選択の規準・・・生徒の発達段階に応じた、一人一人のよりよい生き方を志向するときの価値規準、よりどころ。将来の仕事を選ぶうえで特に重視したいと思うことがら。

(2) 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導についての基本構想図
 これまで述べてきた基本構想についてまとめたものが、右の【図−1】の基本構想図である。

2 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方に関する実態調査及び調査結果の分析と考察 (省略)

3 生徒一人一人に進路選択の規準を考えさせる 活動を取り入れた指導試案

(1) 生徒一人一人に進路選択の規準を考えさせる活動を取り入れた進路指導の指導試案作成の観点
 実態調査の分析から明らかになった課題を解決していくために、次の観点から指導試案を作成していくことにする。

ア 「発見する」段階では、職場体験学習における取材の場で、書くための要件を明確にしたメモカードの内容と活用を工夫する。

イ 進路選択の規準を考えさせる活動の「つかむ」段階では、次の二点を工夫する。

 (ア) 職場体験学習で得たさまざまな職業観や自分の特性をもとに、身近な職業と結びつけながら進路選 択の規準を考えさせ、自分の希望職業と比べさせるような工夫をすること。
 (イ) 話し合い活動の事前指導の場で、自信をもって意見を言えるように、内容のまとめ方や話し方、聞 く態度に関する指導をすること。 

(2) 生徒一人一人に進路選択の規準を考えさせる活動を取り入れた進路指導の指導試案
 下の【図−2】は、前頁(1)の観点に基づき作成した指導試案である。また、次頁の〔資料−1〕は「交流活動」で使用するレーダーチャートであり、〔資料−2〕は「見直す活動」で使用する進路設計シートである。

4 指導実践及び実践結果の分析と考察

(1) 指導試案に基づく指導計画 (省略)

(2) 指導試案に基づく進路選択の規準を考えさせる活動を取り入れた進路指導の指導実践

ア 「発見する」段階の活動について

 職場体験学習オリエンテーションでは、体験学習の課題を達成するためにどうすればよいかを考えさせたが、生徒からは次のような意見が出された。



 次に、職場グループごとに仕事内容をイメージさせ、職場体験 への意気込みを兼ねた感想を書かせた。それには、次のような意欲的なものが多かった。



 生徒には左記の1〜4のシートを配付し、夏休み中の学習課題として取り組ませた。
 報告会は夏休み明けの8月30日に行われた。体験学習から約一カ月のブランクがあったが、生徒は各職場ごとに、職場の様子・資格や適性・働く人の生きがい、感想を中心にわかりやすく発表した。「報告会感想メモ」には次のような内容が多かった。


イ 「つかむ」段階の活動について

(ア) 『進路選択の規準を考えさせる話し合い活動』
 各班から出されたもので、特に多数を占めた規準の意義を、考えをまとめる時間をとったり、発表のよさを意思表示させたりし ながら、次のように話し合わせた。



 話し合いのなかで、多数の生徒が関心を示したのは収入、個性を伸ばす、やりがい、自分にあった仕事、働く環境などであったが、職場体験での学習のうえに立った意見もあった。
 学習シートに改めて自分としての規準を5〜6個書かせ、その重要度や理由を考えさせた。その後、規準と職業の関係を理解させるため、働く人に書いてもらったレーダーチャートと感想を示した。話し合うことによって、さまざまな規準や理由づけ、自分の気付かなかった価値を見つけた生徒もいた。

(イ) 『進路選択の規準を考えさせる交流活動』
 前頁の〔資料−1〕学習シートに、自分の定めた規準に基づきレーダーチャートや感想を書かせた。まず選択規準を再び検討させ、重要だと思う順に並べたうえで、グラフに書かせた。そして気付き欄に記入させる前に、書き方やグラフの読み方の例として高校の先輩や働く人に書いてもらったグラフを示した。生徒は、 自分の規準とグラフから多くのことをつかんでおり、その気付き 欄には、自分の価値観や職業観を考えたものやこれからの方向性 を見いだしたものなどが多かった。(次頁の〔資料−3〕参照)



 規準のとらえ方や着眼点のよい気付きなどに視点を当てて選ばせた班代表により、「私の未来コンパス」発表会を行った。その会の感想として書かせた「自分の未来コンパスを見直して」から は、生徒が規準をとおして将来の職業を真剣に考えている様子が伝わってくる。

ウ 「高める」段階の活動について
 まず、進路選択の規準を見直しながら進路設計の学習シート、「未来スケッチ」のなかの「T未来コンパスを見直そう」のレーダーチャートを再び書かせた。
 そして、「未来スケッチ 年表編」に入る前に、自分が将来どのような人生を送ろうとしているか、また自分の希望を実現させるために、これからどのような中学校生活を送ればよいか考えさせるために、「未来スケッチ 文章編」を書かせた。(下の〔資料−4〕を参照)
 「未来スケッチ 年表編」では、自分の希望職業に的を当て、遠い将来を見通すことをさせた。この学習で考えた進路選択の規準や職業は、自分のこれからの長い人生を考えるとき、更に重要性と現実味を帯びてくると思われる。特に「文章編」は、書くことによってそれまでの学習の足跡をたどれるような形式となっており、書かれたものを読むと、生徒が自分の進路は決して遠い将来のことではなく自分自身の現在と深くかかわる問題なのだと受け止めていることを確認できた。

(3) 実践結果の分析と考察

ア 指導の各段階における自分で意志決定しようとする意欲の状況

(ア) 「発見する」段階の意識の状況
 次頁の【表−2】は、課題意識と興味・関心の状況をみるために、職場体験学習のオリエンテーション後に書かせた感想を分類したものである。
 多くの生徒が、体験しようとする職業への興味・関心を示している。また、具体的な課題をもつ生徒、教えてくれる人からいろいろ学びたいと考えている生徒等、課題意識をもって臨もうとしていることがわかる。しかし課題意識のやや消極的な記述も見られる。
 【表−3】は「自分のよさ」を選択規準に反映させ た状況である。生徒は多方向からとらえた自分のよさ を統括して「自分のよさベスト3」を決めており、そ れを11人の生徒が最も重要な自分の選択規準(規準T)に取り上げている。以下、規準の2位、3位も合わせ ると、19人の生徒が自分の規準の上位に取り上げたこ とから、生徒は肯定的な自己理解を進路選択に反映さ せる意義を理解していることがわかる。
 【表−4】は、自己理解の状況をみるために前述の4種類の学習シートの記述を分類したものである。 職場体験学習後、生徒は全員が自分のよい面を見い だしている。そこで、その自己理解が、さらに家の人、職場の人、そして友達のとらえ方を重ね、参考にする ことによって深まったかどうかをみた。特にも、周り の人のとらえとよく向き合ったと考えられるa、b、 cの23人は自分を多面的に見つめ、肯定的な自己理解ができたととらえられる。
 以上のことから、「発見する」段階において、生徒は進路について興味・関心をもち、課題意識をもって職場体験学習に参加し、それによって肯定的な自己理解を深めることができたと考えられる。

(イ) 「つかむ」段階の意識の状況
 【表−5】は、追求意識の状況をみるために、話し合い活動の後書かせた自分のレーダーチャートをながめての感想を記述したものである。8割の生徒が、自分の価値観や職業観に触れたり、進路の方向性を見いだし頑張ろうとしたりしている。また、「つかむ段階」の「話し合いの様子」からもわかる。
 次頁【表−6】は、方法理解の状況をみるために、班の代表によって行われたレーダーチャートの交流会の感想を分類したものである。22人の生徒が、他の生徒のグラフや選択規準のよさを認め、自分の選択規準や仕事について深く考えようとしている。また、11人の生徒は自分の選択規準や職業選択に自信をもち、さらに選択肢を広げたり自分のものを貫こうとしている。
 以上のことから、「つかむ」段階において、進路選択の規準を考えたり交流し合ったりすることは、追求意識を高め、自分の進路に関する考え方を広げたり深めたりすること、すなわち方法理解を深めるために効果があると考えられる。

(ウ) 「高める」段階の意識の状況
 次頁の【表−7】は、到達意識の状況をみるために、進路設計後の感想を分類したものである。
 個々の表現に違いはあるものの、ほとんどの生徒が、現段階で将来就きたい職業の輪郭をつかむことができていると考えられる。自分のとらえ方や考え方に自信をもち、「夢を実現させたい」という強い意欲を示した生徒も、多数いる。また、意欲を前面に出さないまでも、「じっくり見ていきたい」「学習を将来に生かしたい」と抑えた表現のなかに意欲を表す生徒もいる。〔資料−5〕はその感想例である。
 以上から、「高める」段階において、将来の進路設計をするなかで自分の進路規準を別な角度から見直す活動は、自分の価値観に自信をもち自分の意志で決定しようとする到達意識を高めるために効果があったと考えられる。

イ 自分で意志決定しようとする意欲にかかわる意識の変容状況
 次頁の【表−8】は、生徒一人一人に進路選択の規準を考えさせる活動を取り入れた指導によって、自分で意志決定しようとする意欲にかかわる意識が事前と事後においてどのように変容したか 〔資料−5〕到達意識の高まりが見られた感想例 を設問によって調べ、サイン検定でまとめたものである。この結果、設問3及び7以外には有意差がみられた。このなかで設問5及び8については事後にプラス方向に変わったものがそれぞれ12人及び13人おり、進路選択の規準を考えさせる活動による指導の手だてが生徒の意識に作用したものと考えられる。
 なお、「興味・関心」にかかわる設問3では、2人がプラス方向からマイナス方向に変化しているが、これは進路意識の高くない2人に対し、教師の細やかな個別指導が不足したことによるものと考えられる。
 また、「方法理解」にかかわる設問7では、3人がプラス方向からマイナス方向に変化している。しかし、前述のとおり、つかむ段階の意識の状況をみると、「方法理解」が深まったととらえることができる。さらに3人のうち2人は学習意欲も旺盛であり、他の設問でほとんど++に変化している。よって、2人の変化は、問いの主旨の読み違え、あるいは資料で調べたりせずに意志決定したことへの反省によるものではなかったかと考えられる。残る1人の変化は、やはり教師の個別指導不足によるものと考えられる。
 これらのことから、活動が一部の意識の変容には不十分だったという反省は残るものの、全体として、本研究の指導実践は、自分で意志決定しようとする意欲を高めるうえで効果があったと考えられる。

5 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方に関するまとめ
 自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方について、仮説に基づき、指導実践をしたことによって明らかになったのは、次のことである。

(1) 職場体験学習によって自分のよさや働くこと 【表−8】自分で意志決定しようとする意欲の事前・事後の変容の意義を発見し、その成果を交流させることは興味・関心や課題意識を高めたり肯定的な自己理解を深めたりするのに効果があること。
(2) 自分の進路選択の規準やその意義を話し合わせることは、自分にとっての働くことの意味を 考え課題追求の学習を努力してやり抜こうとす る追求意識を高めるのに効果があること。
(3) 進路選択の規準のとらえ方や考え方を交流させることは、自分の進路に関する考え方に自信 をもたせ、その考えを広げたり深めたりしよと する方法理解を深めるのに効果があること。
(4) 自分の進路選択の規準を見直して進路設計をさせることは、自分の人生をかけがえのないものととらえ自分の進路は自分で決定しようとする到達意識を高めるのに効果があること。
(5) 進路選択の規準と希望職業を結びつけるためにレーダーチャートを活用することは、視覚的であるため、進路選択の学習の理解を助け考えを深めさせるのに効果があること。
(6) 生徒個々の実態を理解し、生徒が将来をより積極的に考えられるように、方法理解をさらに深める指導や個に応じた支援をする必要があること。

 以上のことから、中学校の進路指導において、肯定的な自己理解を深める啓発的な体験活動で気付いたことをもとに、生徒一人一人に自分としての進路選択の規準を考えさせる活動を取り入れることは、自分の進路を自分で意志決定しようとする意欲を高めるために効果があるものと考える。

X 研究のまとめと今後の課題

1 研究のまとめ
 この研究は、生徒一人一人に自分としての進路選択の規準を考えさせる活動をとおして、自分の進路は自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方を明らかにし、中学校学級活動・進路指導の充実に役立てようとするものである。そのために、基本構想に基づき、指導試案を作成し、指導実践を行った。この指導実践の結果に基づき、指導試案の有効性を検討し、生徒が自分で意志決定しようとする意欲を高める進路指導の在り方についてまとめることができた。

2 今後の課題
 自己の進路選択の可能性を広げさせるためにも、生徒個々の実情に即した具体的な支援の在り方や、進路選択に関する方法理解の吟味、情報提供等、指導、支援の工夫を行っていく必要があると考える。


【主な参考文献】
鹿嶋研之助著 「進路指導を生かす総合的な学習」 実業之日本社 2000年



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