岩手県立総合教育センター研究集録(2000)


主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方に関する研究

−コンピュータを用いたシミュレーション教材「株主体験ソフト」の開発をとおして−

大船渡市立第一中学校 教諭 佐々木 哲


T 研究目的

 中学校社会科では、自ら学ぶ意欲の育成や、思考力、判断力、表現力などを重視した学習を推進することが求められている。そのためには、社会的事象に対する興味・関心を高め、主体的に課題を追究する態度を育てることが重要である。このことにより、自ら学ぶ力が高まり、社会的事象への認識が深まることが期待され、社会の変化に主体的に対応する能力の育成につながるものと考えられる。
 しかし、生徒の実態は、課題を追究する過程より結論を重視する傾向がみられ、主体的に課題を追究していこうという態度は十分とはいえない。その要因として、生徒の社会的事象に対する興味・関心が薄れていることや、様々な要素が複雑に絡み合う社会的事象をわかりやすく身近に感じさせ、課題を追究する意欲を喚起させるような教材が少ないことがあげられる。
 このような状況を改善するためには、様々なデータから擬似的な世界を作り出すことができるコンピュータのシミュレーション機能を生かして、社会的事象をわかりやすく身近なものとして擬似体験させ、社会的事象に対する興味・関心を高めさせる指導をすることが有効であると考える。
 そこで、本研究は、中学校社会科公民的分野「生活と経済」の指導において、生徒がコンピュータのなかで擬似的に株主となって興味・関心をもちながら意欲的に活動できるシミュレーション教材を開発し、授業実践をとおして、主体的に課題を追究する態度を育てる指導の在り方を明らかにし、中学校社会科の学習指導の充実に役立てようとするものである。

U 研究仮説

 公民的分野「生活と経済」の指導において、次のようなコンピュータを利用したシミュレーション教材を開発し授業に用いれば、生徒の主体的に課題を追究する態度が育つであろう。
 (1) 社会的事象に対する興味・関心、学習に対する意欲を高め、事実を的確に捉えて課題を設定できる
 (2) 課題に対して、様々な情報から自分なりの予想ができ、現実の経済の動きを時系列に沿って擬似体験できる

V 研究の内容と方法

1 研究の内容
 (1) 主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方についての基本構想の立案
 (2) 基本構想に基づく指導試案の作成
 (3) 基本構想に基づくコンピュータ教材の開発
 (4) 授業実践と実践結果の分析と考察
 (5) 主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方についてのまとめ

2 研究の方法
 (1) 文献法  (2) 質問紙法  (3) 授業実践

3 授業実践の対象
 大船渡市立第一中学校  第3学年 4学級

W 研究結果の分析と考察

1 主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方についての基本構想

(1) 主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の基本的な考え方

ア 主体的に課題を追究する態度の意味
 主体的に課題を追究するとは、自分なりの方法、考えで社会的事象のもつ意味を解き明かそうと、自ら進んで学習に取り組むことである。また、ここでいう課題とは生徒が社会的事象に接するなかで生まれた疑問や問題意識から、解決すべき問題として設定される学習課題のことである。
 社会科における態度には二つの側面がある。ひとつは社会的事象に対して興味・関心をもち、それを意欲的に調べようとする態度、すなわち学習態度という側面。もうひとつは社会の一員として自覚をもって責任を果たそうとする態度、すなわち社会的態度という側面である。この二つの側面は互いに深いかかわりをもち、一体のものとしてとらえることができるが、本研究では主に学習態度の側面から態度をとらえることとする。よって、本研究における目指す生徒の姿は、「社会的事象に興味・関心をもち、自分なりの方法や考えにより、社会的事象のもつ意味を解き明かすことに向かって、進んで学習に取り組む」とする。そして、育成するうえで、【表−1】に示すとおり「受け入れ」「反応」「価値付け」の三つの要素を高めていくことが大切であると考える。

イ 主体的に課題を追究する態度を育てることの意義
 中学校社会科の学習内容には事実認識に関するものが少なくない。今日のように事実が刻々と変化する社会における事実認識は、刻々と変化する事実をどのようにとらえて理解するか、事実認識の仕方を身につけ磨くことが大切となる。そのような能力を育成するうえで社会的事象に興味・関心をもち、自分なりの方法、考えで社会的事象のもつ意味を解き明かすことに向かって、進んで学習に取り組む態度を育てることは大切なことと考える。

(2) 主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導においてコンピュータを用いたシミュレーション教材を用いる意義
 シミュレーション教材を社会科の授業に用いることの教育的効果について、山口幸男は、「社会的事象に対する興味関心を高める」「生徒の主体的活動によって授業が展開する」「学習内容について、より実感的理解が可能になる」「意志決定力の育成に関与することができる」と述べている。(山口幸男著、「シミュレーション教材開発と実践」、古今書院、1993、p.10〜11)これらの教育的効果はそれぞれ,「受け入れ」の意識を高め、より実感的な疑問・課題意識を抱かせること,「反応」を促し、生徒それぞれの思考・判断による主体的な課題追究活動が展開されること,より強い「価値付け」を与えることに有効であると考える。
 さらにコンピュータを利用することにより、シミュレーションのルールや操作が単純化できる。映像、音声、文字などさまざまなメディアを組み合わせて利用できる。さらに、生徒のはたらきかけに対し、瞬時に反応が返ってくる等の利点があり、教育的効果をさらに高めると考えられる。また、データのグラフ化等教材化の面でも利点があると考える。
 以上のような特色をもつコンピュータを用いたシミュレーション教材を授業に取り入れることは、主体的に課題を追究する態度を育てることに有効であると考える。

(3) 主体的に課題を追究する態度を育てる指導におけるコンピュータ教材の在り方
 主体的に課題を追究する態度を育てるために、次のようなコンピュータを使ったシミュレーション教材が有効であると考える。

ア 課題意識や、課題追究に対する意欲を喚起できる教材
 対象となる社会的事象に対して、生徒が自らの思考、判断によってはたらきかけることができ、また、そのはたらきかけの結果が見える教材。
イ 生徒自らの力で課題を追究できる教材
 学習が生徒の作業によって進行し、しかもその作業的活動に明確な目標を設定し、意欲をもって課題追究に向けて取り組むことができる教材。
ウ 課題を追究することに価値を感じることができる教材
 実際のデータに基づいて再現された状況の中で、学習によって獲得した知識をもとに、自分なりの思考や判断によって行動することで、社会とのかかわりを感じることができる教材。

(4) 主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方についての基本構想図
 主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方についての基本構想図を【図−1】に示す。

2 主体的に課題を追究する態度を育てるコンピュータ教材の開発
 基本構想をもとに、主体的に課題を追究する態度を育てるコンピュータ教材の開発を以下のように行った。

(1) コンピュータ教材開発の目標と留意点
 ア 現実性を感じさせる教材
 イ 自分なりの思考や判断により売買できる教材
 ウ 売買結果を振り返ることができる教材
 エ 操作性の良い教材

(2) コンピュータ教材の概要
 コンピュータ教材開発の目標及び留意点をもとに開発したコンピュータ教材の画面構成を【図−2】に示す。
 なお、本コンピュータ教材はMicrosoft Visual Basic6.0で開発したものである。

(3) コンピュータ教材の内容

ア メニュー画面
 メニュー画面には「初期設定」「スタート」の二つのボタンがあり、「初期設定ボタン」をクリックすると「初期設定画面」が表示される。初期設定終了後「スタート」ボタンをクリックすると「株式申込画面」が表示される。
イ 初期設定画面
 「初期設定画面」では「データファイル名」「初期資産額」「インターバル(一日を何秒に縮めて表示するか)」を設定する。
ウ 株式申込画面(【図−3】)
 購入できる銘柄は3社である。@の「申込」ボタンをクリックするとAの「銘柄名」に購入できる銘柄名が表示され、銘柄を選択しボタンをクリックするとBの「銘柄名」に表示される。Cの「購入金額」は直接入力する。購入金額が入力されるとDの「株数」が自動的に計算され表示される。Eの「申込完了」をクリックすると「株式売買画面」が表示される。入力に不備があると「入力し直してください」というメッセージボックスが表示される。
エ 株式売買画面(【図−4】)
 @の「資産状況」には銘柄名、現在の株価、時価総額、その時点での利益、損失額が表示される。購入時より株価が上昇している銘柄は青色、下降している銘柄は赤色で表示される。Aの「株価変動グラフ」には1日ごとの株価の変動が表示される。Bの「情報BOX」にはその銘柄の株価に影響を与えた出来事が映像やテキストで表示される。映像はシミュレーション上の5日間で消えるがテキストは残り、売買の反省に用いることができる。また、同時にDのように日付とラインがグラフエリア上に示される。Eの「カレンダー」はシミュレーション上の「今日」を示す。Fの「STOP」ボタンをクリックするとタイマーが停止し、Bの「情報BOX」に替わりCの「売却画面」が表示される。売却したい銘柄のGの「売る」ボタンをクリックすると、売却された株のグラフエリアはHのように変わり、売却日、売却価格が表示され、表示色は黄色になり売買することができなくなる。Iの「再スタート」ボタンをクリックすると、Cの「売却画面」に替わり再びBの「情報BOX」が表示される。最終日になると終了となり「売買結果画面」が表示される。
オ 売買結果画面(【図−5】)
 @の「集計」ボタンをクリックするとAの「銘柄名」、Bの「購入金額」、Cの「売却金額」、Dの「利益・損失額」、Eの「資産総額」が表示される。Fの「振り返ろう」ボタンをクリックすると「株式売買画面」にもどり、「情報ボックス」や「株価変動グラフ」などを見て売買を振り返ることができる。反省終了後「株式申込画面」から一回目の売買後の総資産をもとに再び売買をすることができる。

3 授業実践と実践結果の分析と考察

(1) 結果の分析と考察
 検証計画に基づいて実施した調査結果の分析と考察について以下に述べる。

ア 主体的に課題を追究する態度の変容状況の調査結果
 主体的に課題を追究する態度の変容状況を以下の5点から検討する。

(ア) 学習への意欲について
 学習への意欲について意識調査の結果を【表−2】に示す。
 調査結果から、プラス傾向を示す生徒が50人(43%)から74人(64%)となり、χ2検定においても有意差が認められ、以前よりも学習に意欲的に取り組むようになったと感じていることがわかる。設問1についての自由記述の内容には、コンピュータを使った授業は「楽しい」、「わかりやすい」と肯定的な内容が多く見られた。
 授業への参加態度についての自己評価の結果を【図−6】に示す。
 調査結果から、どの時間も授業に意欲的に参加しているといえる。特に第3時の授業では、94%の生徒が意欲的に参加したと答えている。
 これらのことから、開発したコンピュータ教材が、株式という学習対象をわかりやすく感じさせたことや、ゲーム性が授業を楽しいものと感じさせたことによって、学習に対する意欲を喚起し、授業にも積極的に参加させたものと考える。
 事後調査でマイナス反応の生徒の記述のうち、意欲的になれない理由の半数以上が「難しい、わからない」「興味がない」という理由であった。これは、コンピュータ教材を用いた授業に対する傾向ではなく、社会科の学習全般についての傾向であるが、学習のまとめの工夫などさらに考えていく必要がある。

(イ) 社会的事象に対する興味・ 関心について
 社会的事象に対する興味・関心についての意識調査の結果を【表−3】に示す。
 プラス傾向を示す生徒が67人(58%)から83人(72%)となり、χ2 検定においても有意差が認められ、以前よりも社会的事象に対する興味・関心が高まっていると考えられる。
 設問2についての自由記述のなかには、事前調査では「生活に関係ない」「覚えても役にたつかわからない」等社会の学習について価値を感じることができなかった生徒が、事後調査では「かかわりがありそう」「知っておいた方がよい」等社会科の学習や、社会的事象に対して価値を感じられるようになったことが見受けられる記述が見られた。
 さらに、授業実践1時間ごとに行った株式への興味・関心の変容を【図−7】に示す。
 株式への興味・関心は、第1時の授業において高められ、第2時、第3時と学習が進むにしたがって徐々に高まっていったことがわかる。授業後の感想にも興味・関心の高まりがうかがえる記述が多く見られ、その理由として開発したコンピュータ教材を用いたことをあげている。
 以上のことから、開発したコンピュータ教材を用いた学習を展開したことが生徒の社会的事象に対する興味・関心を高めることに有効に作用したと考えられる。

(ウ) 課題意識について
 課題意識に関する調査の結果を【表−4】に示す。
 プラス反応を示す生徒が63人(54%)から84人(72%)となり、χ2 検定においても有意差が認められ、以前よりも学習事項に対する課題意識が高まっていると考えられる。コンピュータ教材を用いたことにより、より実感的な矛盾や驚き、疑問を感じさせ、課題意識を抱かせたものと考えられる。
(エ) 課題追究への意欲・方法について
 課題追究への意欲・方法に関する意識の変容を【表−5】に示す。
 設問5ではプラス反応を示す生徒が42人(36%)から56人(48%)となり、χ2 検定においても有意差が認められた。このことから、先生や友達に頼らず、自分の力で課題を追究していこうという意識が高まっていると思われる。また、設問7では、プラス傾向を示す生徒が25人(22%)から36人(31%)となり、少数ではあるが、資料を積極的に活用して課題を追究しようとする生徒が徐々に増えてきたといえる。設問7についての自由記述には、資料を活用することについて「面倒」「大変」「見てもわからない」「つまらない」というマイナス傾向をもっていた生徒が、「調べればわかるようになる」「調べてわかるようになることは大切なことである」という考えに変容した記述が多く見られた。これらのことは、開発したコンピュータ教材が、生徒自らの力で調べることができ、調べてわかったことが、現実の社会でも役に立つという意識をもたせ、資料活用への意欲を高めたことによるものと思われる。しかし、設問4、設問6において、有意差は認められなかった。本授業実践においては、自らコンピュータを用いて課題を追究することを手だてとしているので、先生や友達と相談して解決していこうという意識まで高めることができなかったものと思われる。
(オ) 価値付けについて
 価値付けに関する意識の変容を【表−6】に示す。
 設問8、設問9ではχ2 検定で有意差がみられなかった。これは、事前調査の段階ですでに多くの生徒が課題を追究することや、社会の学習で学んだことは大切であるという意識をもっていたからといえる。
 設問10では、プラス反応を示す生徒が38人(33%)から61人(53%)となりχ2 検定で有意差が認められた。設問10についての自由記述にも、より深く課題を追究することへの意識が高まっている様子がうかがえる記述が多く見られた。
 これらのことから、課題を追究することや、社会の学習で学んだことは大切で、生活にも役立つことであると思いながらも、課題を深く追究することには価値を見いだすことができずにいた生徒が、開発したコンピュータ教材を用いた授業を展開したことにより、課題を深く追究することに価値を見いだすことができるようになったと考えられる。
(カ) 価値付けについて
 価値付けに関する意識の変容を【表−6】に示す。
 設問8、設問9ではχ2 検定で有意差がみられなかった。これは、事前調査の段階ですでに多くの生徒が課題を追究することや、社会の学習で学んだことは大切であるという意識をもっていたからといえる。
 設問10では、プラス反応を示す生徒が38人(33%)から61人(53%)となりχ2 検定で有意差が認められた。設問10についての自由記述にも、より深く課題を追究することへの意識が高まっている様子がうかがえる記述が多く見られた。
 これらのことから、課題を追究することや、社会の学習で学んだことは大切で、生活にも役立つことであると思いながらも、課題を深く追究することには価値を見いだすことができずにいた生徒が、開発したコンピュータ教材を用いた授業を展開したことにより、課題を深く追究することに価値を見いだすことができるようになったと考えられる。

ウ コンピュータ教材の有効性
 コンピュータ教材の有効性を株主体験ソフトの有用感、シミュレーションソフトを用いた学習への意識から考察する。
 事後の意識調査の結果、94%の生徒が株主体験ソフトが株式の学習の役に立ったとソフトの有用性を感じており、98%の生徒がコンピュータを利用したシミュレーションソフトを用いた学習をまたしてみたいと考えている。そこで、さらに詳しく見るために、株主体験ソフトを使用した授業に関する感想より分析し考察する。前頁【表−7】を見ると、ほとんどの生徒が好意的な感想をもっている。特に「学習の充実感」に関する記述をした生徒は90%、「学習内容の理解」に関する記述をした生徒は72%にのぼっている。このことは、株主を擬似体験することにより、より深い課題意識や疑問をもつことができたことや、ゲーム的な要素を取り入れることによって楽しみながら課題追究に取り組むことができたことによるものと思われる。
 しかし、「知識理解面で不十分」「時間がかかる」という否定的な意見もある。このことは、コンピュータルームではノートを開くスペースもなく、モニタが障害となり黒板等が活用しにくいことや、コンピュータを使うとどうしても通常の授業に比べ時間がかかるということなどから、学習内容のまとめや、時間の使い方が通常の授業と異なっていたためと思われる。今後は、画像転送装置や、学習プリント等の活用などを工夫していく必要があると考えられる。

ウ 学習内容についての習得状況の調査
 【表−8】は「株式会社の仕組み」の学習内容について、事前事後に実施したテストの結果を比較したものである。有効度指数は50である。株価変動に関する問題で、株価変動の理由を自分なりの考えで答える生徒が多く見られた。これは、擬似的に株売買を体験したことにより、株価変動に関してより実感的な理解ができたからと考えられる。しかし、基本的な語句の定着に不十分な面も見られた。これは、コンピュータ室という環境のもとでは、普通教室と同等に板書や教科書、ノート等を活用できなかったことや、定着のための時間が十分に確保できなかったためと思われる。

4 主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方についてのまとめ
 主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方について、コンピュータを用いたシミュレーション教材「株主体験ソフト」を開発し、授業実践をとおして明らかになったことは、以下のとおりである。

(1) コンピュータを用いたシミュレーション教材を用いた指導をすることにより、生徒にとって楽しくわかりやすい授業を展開することができ、その結果「受け入れ」の意識を高め、学習に対する意欲が喚起されること
(2) コンピュータを用いたシミュレーション教材を用いた指導をすることにより、生徒はより実感的な疑問や矛盾、驚きを感じることができ、学習事項に対する課題意識が高まること
(3) コンピュータを用いたシミュレーション教材を用いた授業は、ゲーム性を備えた擬似体験を中心に展開されるので、「反応」することを促し、資料を活用して自分の力で課題を解決しようとする意識を高めること
(4) コンピュータを用いたシミュレーション教材を用いた指導をすることにより、社会的事象と自分とのかかわりの深さを感じることができ、学習することへの「価値付け」がなされ、社会的事象への興味・関心、課題追究への意欲が高まること
(5) コンピュータ室では、黒板や教科書、ノートといった基本的な教材・教具を活用することが難しいので、コンピュータ室という環境を考慮した授業の展開、学習方法等を工夫する必要があること
(6) ネットワークを利用して、広く情報を収集したり生徒間の情報交換を活発化させる等、課題追究活動の多様化を図る必要があること

 以上のことから、中学校社会科の指導において、コンピュータを用いたシミュレーション教材を活用することは、主体的に課題を追究する態度を育てるうえで有効であると考える。

X 研究のまとめと今後の課題

1 研究のまとめ
 この研究は、コンピュータを用いたシミュレーション教材「株主体験ソフト」を開発し授業で活用することをとおして、主体的に課題を追究する態度を育てる指導の在り方を明らかにし、中学校社会科の指導の改善に役立てようとするものである。
 この研究をとおして、主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方についての基本構想に基づき、中学校社会科公民的分野における、「株主体験ソフト」を活用した指導試案を作成し、授業実践を行った。そして、この授業実践の結果に基づいてコンピュータを利用したシミュレーション教材の有効性を検討し、主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方についてまとめることができた。

2 今後の課題
 この研究では、主体的に課題を追究する態度を育てる中学校社会科の指導の在り方について「株主体験ソフト」の開発、活用をとおして明らかにすることができた。
 さらに、他の分野、単元でも活用できるコンピュータソフトを開発し授業実践をとおして主体的に課題を追究する態度を育てる指導の在り方を検討していく必要があると思われる。


【引用文献】
山口幸男著 「シミュレーション教材開発と実践」 古今書院 1993年 p.10〜11

【主な参考文献】
授業技法研究会編 「授業研究双書1指導プログラムの理論と作成(T)」 才能開発教育財団 1986年
授業技法研究会編 「授業研究双書2指導プログラムの理論と作成(U)」 才能開発教育財団 1986年
文部省 「中学校社会科指導資料/作業的,体験的な学習の充実」 慶應通信 1993年
文部省 「中学校社会科指導資料/指導計画の作成と学習指導の工夫」 大阪書籍 1991年
澁澤文隆・佐伯眞人・大杉昭英著 「改訂中学校学習指導要領の展開/社会科編」 明治図書 2000年
中野重人著 「社会科評価の理論と方法」 明治図書 1985年
澁澤文隆著 「新学力観に立つ社会科の授業改革」 明治図書 1994年
小関洋治編 「情報活用能力を育てる学習」 明治図書 1990年
茂木 喬編 「資料の収集・選択・活用を図る公民学習」 明治図書 1993年
北 俊夫編著 「社会科「関心・意欲・態度」の評価技法」 明治図書 1993年
川口輝久・河野 勉著 「かんたんプログラミングVisual Basic6 基礎編」 技術評論社 1999年
川口輝久・河野 勉著 「かんたんプログラミングVisual Basic6 コントロール編」 技術評論社 1999年
河西朝雄著 「Visual Basic6 初級プログラミング入門上・下」 技術評論社 2000年

【参考ホームページ】
野村証券 URL http://www.nomura.co.jp/
FINANCE@nifty URL http://finance.nifty.com/
株価データ倉庫 URL http://www.asahi-net.or.jp/~xq7m-endu/
毎日新聞 URL http://www.mainichi.co.jp/



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