岩手県立総合教育センター研究集録(2001)


小学校理科「水溶液」の学習において自然事象の理解を深める指導の在り方に関する研究

−酸性雨を素材とした実験教材の工夫をとおして−

江刺市立稲瀬小学校 教諭 三 浦 秀 行


T 研究目的

 「水よう液の性質とはたらき」の単元は、水溶液の変化や働きをその要因と関係付けながら調べ、見いだした問題を多面的に追究する活動をとおして、水溶液の性質や働きについての見方や考え方を養うことを目標としている。そのためには、身近な現象に問題意識をもち、主体的に事象とかかわろうとする態度の育成を図ることによって、自然事象についての理解を深めることが大切である。
 しかし、実際は、観察や実験に興味をもつが、問題意識をもたずに学習に取り組んでいるため、水溶液のもつ性質や働きについて積極的に追究しようとする意識が乏しく、学習内容を十分に理解していない状況にある。これは、この単元での学習内容である「水溶液の性質」「気体の溶解」「金属の変化」などの事象を、実験室内での特殊な現象ととらえ、身の回りの自然界でも同様な現象が起こっていることに意識を向けさせる実験教材の工夫やその指導法が不十分な点に原因があると思われる。
 このような状況を改善するためには、児童にとって身近で、興味・関心の高い素材を取り入れることが必要である。特に、近年環境問題として取り上げられている酸性雨は、児童の関心も高く問題意識を高める素材に適していると考える。さらに、酸性雨と関連付けながら水溶液の学習を進めることができるような実験教材を工夫することで、児童の主体的な観察や実験活動を促し、学習内容の理解が深まると考える。
 そこで、この研究は「水溶液」の学習において、酸性雨を素材とした実験教材を工夫し、自然事象についての理解を深める指導の在り方を明らかにすることによって、小学校理科「水溶液」の指導改善に役立てようとするものである。

U 研究仮説

 小学校理科「水溶液」の学習において、児童にとって興味・関心の高い酸性雨を素材とした実験教材を工夫し、それを用いて身の回りの自然界で起きている現象と関連付けた学習活動をすれば、児童は主体的に観察や実験に取り組むようになり、自然事象についての理解が深まるであろう。

V 研究の内容と方法

1 研究の内容
 (1) 自然事象の理解を深める指導の在り方に関する基本構想の立案
 (2) 基本構想に基づく指導試案の作成
 (3) 基本構想に基づく実験教材の工夫
 (4) 授業実践及び実践結果の分析と考察
 (5) 自然事象の理解を深める指導の在り方に関する研究のまとめ

2 研究の方法
 (1) 文献法   (2) 質問紙法   (3) テスト法   (4) 授業実践

3 授業実践の対象
 江刺市立稲瀬小学校 第6学年 1学級(男子12名 女子23名 計35名)

W 研究結果の分析と考察

1  自然事象の理解を深める指導の在り方についての基本構想

(1) 自然事象の理解を深めることについて

ア 自然事象について
 本来、「自然事象」は広範な意味をもつ。「自然」とは広辞苑によると「おのずからそうなっているさま。天然のままで人為の加わらぬさま」とあり、リッケルトはその著「文化科学と自然科学」の中で「自然物はひとりでに発生したもの、生まれたものおよび、自らの成長にまかされたものの総体である。」と定義している。
 児童は普段様々な自然事象に触れているのだが、注意深くそれらを観察することが少ないと思われる。その無意識に接している自然事象に目を向けさせ、問題を見つけださせるためには、広範な意味をもつ自然事象を、焦点化、具体化して取り上げ、児童の問題意識を高めることが必要であると考える。
 そこで本研究では、「自然事象」を小学校理科「水よう液の性質とはたらき」の単元の学習内容にかかわる自然の事物・現象ととらえることにした。具体的には本単元の学習内容である「水溶液の性質」「気体の溶解」「金属の変化」などの事象、また、身の回りの生活に関連する現象として酸性雨が降る成因とその結果もたらされる影響などを指している。

イ 自然事象の理解を深めるとは
 子どもの理解の段階は、次の三つのレベルに大別されるとされている(理科教育学講座2発達と概念形成より)。一つ目は、何かで読んだり人から聞いたりして自然をただ「知っている」段階(I knowレベル)である。二つ目は、自然を「理解する」段階(I understandレベル)である。そして、最後は自然の妙趣を「感得する」段階(I appreciateレベル)である。
 また、指導要領では小学校理科の目標の中で「自然事象の理解を図り」と示しているが、このことについて、小学校新教育課程の解説 理科(角谷、1999)では、次のように述べている。
 「自然の性質や規則性の理解とは、子どもの既有のイメージや概念などと深いかかわりがあり、子どもの既有するそれらの体系と、問題解決によって得られた情報とを結び付けて意味付け関係付けし、自然に関する新しい体系を構築していく過程とその結果であるといえよう。」
 これらから、ただ「知っている」段階(I knowレベル)から、「理解する」段階(I understandレベル)までに深めるためには、主体的な問題解決によって得た情報を児童の既有の知識や概念と照らし合わせて、意味付けして整理する力が必要であると考える。さらに、「理解する」段階(I understandレベル)から、より深い理解の状態である「感得する」段階(I appreciateレベル)にするためには問題解決によって得られた情報を、既有の知識や概念などと総合的に関連付け、自然に対する新しい体系を構築し、多面的に物事をとらえる力が大切であると考える。具体的に各段階で形成させたい力ととらえさせたい学習内容についてまとめると次のようになる。

 この研究では「意味付ける力」「関係付ける力」が高まることによって、自然事象の理解が深まるものと考え、研究を進めていくこととする。

(2) 自然事象の理解を深める指導の在り方についての基本的な考え方

ア 自然事象の理解を深める指導について 
 小学校の理科の目標を新学習指導要領では次のように表記している。

 自然に親しみ、見通しをもって観察、実験を行い、問題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を図り、科学的な見方や考え方を養う。

 問題解決能力や科学的な見方や考え方を培うためには、子どもが意図的に観察や実験を行うことが大切であるとされている。意図的な観察や実験とは、子ども自身が予想を立て、予想のもとに実験方法を立案し、結果を構想し、観察や実験を行うことである。このような学習の流れは一般に問題解決的な学習といわれ、問題解決の過程の大筋は【図―1】のようになる。問題解決の過程を基にして作成した学習過程が【図―2】のとおりである。

 これは、基本的に1単位時間の授業の学習過程であるが、理科という教科の特性を考えると、毎時間このとおりの授業が展開できるとは限らないと思われる。1時間以上実験に費やさなければならない場合もあるだろうし、45分間かけて問題把握をするという場合も考えられる。この学習過程はあくまでも基本であって、指導計画に応じて柔軟に扱うことが大切であると考え、指導試案及び指導案を作成した。

イ 学習過程における実験教材の位置付け
 酸性雨を素材とした実験教材を、学習過程の次の場面において活用していく。

(ア) 事象提示(つかむ段階)で活用する教材の工夫
 学習過程を問題解決的な学習の流れに合わせて設定した場合、最も重要になる場面が問題意識をもつ段階だと考える。この場面で酸性雨との関連で学習していくという目的意識や、なぜそのような事象が生じるのか、といった問題意識をもたせるような教材を工夫し、事象提示を行う。

(イ) 観察・実験の場(たしかめる段階)で活用する実験教材の工夫
 観察・実験活動において、児童の学習活動を主体的なものにさせ、理解が深まるような実験教材の工夫を行う。

(ウ) まとめの演示実験(ふかめる段階)で活用する実験教材の工夫
 学習過程の終末における「ふかめる」段階で、学習を振り返ったり、学習したことを身の回りの自然事象と関連付けたりすることによって、さらに理解が深まるような実験教材の工夫を行う。

(3) 自然事象の理解を深める指導の在り方についての基本構想図
酸性雨を素材とする実験教材を工夫し、自然事象の理解を深めるための指導についての基本構想図は、【図−3】のとおりである。

2 基本構想に基づく指導試案の作成

(1) 指導試案の概略
 基本構想に基づき、単元「水よう液の性質とはたらき」の指導試案を【表―1】に示す。

(2) 検証計画の概略
 実践の妥当性をみるために、【表−2】のような検証計画を作成し、事前と事後にテスト及び調査を実施し、検証を行う。

3 基本構想に基づく実験教材の工夫

(1) 水溶液の液性を測定するための指示薬と比色器
 水溶液の性質を測定する時の実験操作を簡略化するために、BTB溶液を目薬の容器に入れて児童に配ることにした。このことにより、児童はピペットなどを使うことなく、調べたい水溶液に指示薬を簡単に注入することができる。
 さらに、指示薬が反応した色をすぐ比色して性質を判定できるような比色器「水よう液の性質チェッカー」【図−4】を作製した。これはKH2PO4(リン酸二水素カリウム)とNa2HPO4(リン酸水素ニナトリウム)によって作られた緩衝液(pH4.49〜9.18の範囲で5段階)にBTB指示薬を混ぜ合わせて、色の変化の様子が分かるようにしたものである。この水溶液をストローの中にホットボンドで封入し、MDのケースに収め、簡単に比色ができる器具として開発した。

(2) 酸性雨のpHを測定するための指示薬と比色器

ア 酸性雨の測定に使用した指示薬
 酸性雨の測定に適していると思われる5つの指示薬【表―3】を、pH3.0〜7.0の範囲で0.5ずつ9段階に分けて作った緩衝液と反応させて、発色の様子を調べた。
 この結果、BCGとCPRの組み合わせが有効であることが分かった。薬品さえ手に入れば作り方が簡単で安価に製造することができるので、酸性雨調査の他にもpH3.5から6.5付近の液性を調べる指示薬として活用することができる。

イ 酸性雨チェッカー
 指示薬によるpHの測定には、一般的に印刷物による比色表を使用していた。しかし、印刷された色見本は色覚に誤差が多く明確な判断がつきにくいことがあった。そこで、pH3.5からpH6.5まで0.5ずつ7段階の緩衝液を用いて、実物の色で判定ができる比色器を作製した。
 緩衝液として、Na2HPO4(リン酸水素ニナトリウム)とC6H8O7・H2O(クエン酸)による緩衝液を用いた。容器はBTB指示薬の比色器である「水よう液の性質チェッカー」と同様のものである。携帯に便利で安価な比色器を作製した。

(3) 酸性雨発生モデル装置
 この装置は、水槽の中に水を沸騰させることで生じた水蒸気を送り込み、氷を用いた冷却部分でその水蒸気を冷やして水滴を落下させるものである。この水蒸気から水に凝結する時に水槽の中に排気ガスや二酸化窒素などの気体を入れると、気体は水の中に溶け込み、酸性雨と同じような原理で酸性の水溶液ができる。
 従来の装置(中島、徳島教育研修センターほか)では、雨の発生する部分を卵パックで製作しているものが多かった。この方法では安価に作ることができるのだが、耐久性がなく壊れ易いことと、雨が降るまでの時間がかかり過ぎてしまう欠点があった。
 そこで、この雨を降らせる部分に金属製のじょうごを使った。じょうごの形状が、すぐに水滴を落とすのに都合が良いためである。この結果、あまり時間をかけなくても雨が降るようになり、さらに、これらをアクリル板に固定することで耐久性のある実験装置になった。

4 授業実践及び実践結果の分析と考察

(1) 授業の計画

ア 対象 江刺市立稲瀬小学校 第6学年1学級 男子12名 女子23名 計35名

イ 能力群の編成
 指導試案に基づく授業実践前後の児童の変容を詳しくみるために、群を編成したものが【表−4】である。能力群の編成にあたっては、1学期に実施した単元テスト及び学期末テストの偏差値をもとに行った。その際、各群間の比較が行われるように、上位群と下位群の間の5名を除き、上位群と下位群15名ずつで編成した。

ウ 授業実践期間 平成13月9月5日〜9月26日

(2) 授業実践の概要
 授業実践は指導試案に従って行った。【図−7】は児童に「水よう液の性質チェッカー」を渡して、いろいろな水溶液の性質を調べている様子である。リトマス紙とは違い、指示薬を一滴垂らすだけで液性が瞬時に判断できるため、実験をスムーズに行うことができた。また、リトマス紙に反応しにくい弱酸性の水溶液でも明確に反応するため、液性の認識を深めるうえでも効果的であった。この学習の次の時間に「酸性雨チェッカー」を使い、学校周辺でも実際に酸性雨が降っていることを確かめる授業を行った。
 【図−8】は、児童が自動車の排気ガスをビニール袋に集めている様子である。排気ガスを安全で簡単に集められるように工夫した装置を用いて排気ガスを集めている。こうして集めた気体を、各グループで計画した実験方法によって気体が水に溶けるかどうか確かめた。その実験の様子が【図−9】である。集めた気体と水を激しく振って混ぜ合わせ、酸性雨チェッカーでその水のpHを測るとpH5.5程度の結果が出た。

(3) 実践結果の分析と考察

ア 自然事象の理解の深まりについて

(ア) 意味付ける力の変容状況について
 【表−5】は意味付ける力の伸びの状況について、学級全体と、上・下位群の能力群ごとに、事前、事後のテストの結果を、平均点、標準偏差及びt検定(平均の差の検定)を用いて表したものである。
 【表−5】から、意味付ける力の高まり状況についてはt検定の結果、学級全体、上・下位群とも有意差がみられた。
工夫した教材「水よう液の性質チェッカー」や「酸性雨チェッカー」などを一人一人に渡して、実験を個別に行うことができるようにしたこと、また、十分に実験する時間を確保したことが意味付ける力を高める上で有効であったと考える。

(イ) 関係付ける力の変容状況について
 【表−6】は関係付ける力の伸びの状況について、(ア)と同様に分析し、表したものである。このテストは概念地図法を用い、意味のある線(有効線)を得点化して事前と事後の変容の様子をとらえたものである。【表−6】から関係付ける力の高まり状況についてはt検定の結果、学級全体、上・下位群とも有意差がみられた。
 このことから、酸性雨と関連付けた学習活動をすることにより、児童は実験の結果と身の回りの事象を結びつけて考えながら学習を進めることができ、結果として自然事象の理解が深まっていったものと考える。

イ 単元で学習する内容の習得状況について
 【表−7】は単元「水よう液の性質とはたらき」で学習する内容の習得状況について、学級全体と上・下位群の能力群ごとに、事前と事後の単元テストの結果を、単元テスト全体及び観点別の正答率と有効度指数を用いて表したものである。知識理解の面では学級全体の有効度指数が72と学習内容の習得がおおむね図られたと考えられるが、科学的思考と観察・実験の技能及び表現の面で上位と下位の差が大きく開いてしまった。これは、実験器具の都合や安全面の都合上、グループ実験にしなければならない場面があり、上位と下位の児童が混在しているグループでは、下位の児童が実験に積極的にかかわることができなかったことが原因ではないかと考えられる。そのことを裏付けるように、学級全体の単元テストの結果を、学習内容ごとに分析してまとめた【表−8】を見ると、個人実験を促すように工夫した教材を活用した「水溶液の性質」「気体の溶解」の学習については有効度指数が高いのに対し、グループ実験が主だった「金属の変化」の学習では、有効度指数が42と低い数値を表した。

ウ 学習に関する意識の変容状況について

(ア) 授業の取り組みに対する意識の変容
 授業の取り組みに関する意識の変容状況について事前と事後のアンケートの回答をχ2検定(変化の検定)で表したのが【表−9】の@〜Cである。@ABで有意差があり、理科の学習に対する意識の向上がみられることが分かる。@の設問に対して、特に女子に見られた「理科が嫌い」という回答が無くなった。実験に主体的に関わることができて「理科が楽しい」と思える児童が増えたことがこの表から分かる。
 また、「なぜ、理科が楽しいか」と理由を聞くと「新しいことを知ることが楽しい」と回答する児童が29%から51%に増えており、このことから、ただ単に実験が楽しいからとか面白いから、という理由で理科が好きだと答えたのではない児童が増えたことが分かる。また、学習に対する意識の変容は、単元学習後の児童の感想からも読み取ることができた。

(イ) 自然事象や環境問題に対する問題意識の変容
 自然事象や環境問題に対する問題意識の変容について、事前と事後のアンケートの回答をχ2検定で表したのが【表−9】のD〜Fである。
 この結果をみると、有意差が現れたのはFの設問だけだが、D、Eの環境に関する意識は事前調査の段階から肯定的な回答の割合が高く、大きな変容が見られなかったことが原因として考えられる。

(ウ) 工夫した実験教材に関する評価
 実験装置に対する児童の評価について、授業実践を行った6年生35名に対して事後に行ったアンケートの結果をまとめたものが【図―10】である。「水よう液の性質チェッカー」「酸性雨チェッカー」に関しては、肯定的な反応が高い数値で現れた。やはり、一人一人が自分の手によって実験で【図−10】実験教材に関する児童の評価きたこと、どこでも手軽に実験ができたことが、児童の反応の高さにつながったと考えられる。また、「酸性雨発生モデル装置」については、楽しかったと感じた児童が97%だったことからも児童の印象に深く残る演示実験だったと思われる。

5 自然事象の理解を深める指導の在り方に関する研究のまとめ
 小学校理科「水溶液」の学習において、自然事象の理解を深める指導の在り方について、仮説をふまえ、授業実践によって明らかになったことは以下のとおりである。

(1)  身の回りの自然界で起きている現象と関連付けた学習活動を行うことにより、児童は学習内容をより身近な問題ととらえて観察・実験に取り組むことができた。また、実験の結果と身の回りの事象を結び付けて考えることができるようになり、自然事象の理解が深まった。
(2)  酸性雨を素材とした「酸性雨チェッカー」や「酸性雨発生モデル装置」などの実験装置を活用することにより、児童の興味・関心を高め、主体的な学習活動を展開させるうえで有効であった。
(3)  「水よう液の性質チェッカー」や「酸性雨チェッカー」は、児童でも操作が簡単に行えるような工夫をしたことにより、理科実験が不得意だった児童も抵抗感がなく、実験に取り組むことができた。さらに、これらの教材を使うことにより、実験の時間にゆとりが生まれ、体験を通した学習活動を十分に行うことができたため、自然事象の理解を深めることができたと考える。
(4)  小単元「金属の変化」の学習において、教材の工夫や学習活動の形態などについて検討を加え、さらに改善を加える必要がある。

 以上のことから、実験教材を工夫し、それを用いた身の回りの自然界でおきている現象を関連付けた学習活動を行うことが、児童の主体性を促し、自然事象の理解を深めるのに有効であったと考える。

X 研究のまとめと今後の課題

1 研究のまとめ
 本研究は、小学校理科「水溶液」の学習において、酸性雨を素材とした実験教材を工夫し、自然事象についての理解を深める指導の在り方を明らかにすることによって、小学校理科「水溶液」の指導改善に役立てようとするものであった。その実践結果を、意味付ける力・関連付ける力の形成状況、単元で学習する内容の習得状況、学習に関する意識の変容状況の三点から分析と考察を加えることにより、仮説の有効性の検討にあたってきた。その結果、次の点について明らかにすることができた。

(1)  身の回りで起きている現象と関連付けた学習活動は、児童にとってより身近な問題としてとらえることができ、自然事象の理解を深めるうえで有効であった。
(2)  本研究で工夫した「水よう液の性質チェッカー」、「酸性雨チェッカー」、「酸性雨発生モデル装置」などの実験教材は、児童の主体性を促し、自然事象の理解を深めるうえで有効であった。

2 今後の課題
 
小単元「金属の変化」での実験教材を工夫・開発していくことと同時に、学習を進めるうえでの効果的な実験の形態なども明らかにしていく必要がある。

【参考文献】
文部省 「小学校学習指導要領解説 理科編」 東洋館出版社 1999年
角屋重樹編著 「小学校新教育課程の解説 理科」 第一法規 1999年
日本理科教育学会編 「理科教育学講座2発達と科学概念形成」 東洋館出版社 1992年
化学実験ハンドブック編集委員会編 「第四版化学実験ハンドブック」 技報堂出版 1984年
リッケルト著、佐竹哲雄・豊川昇訳 「文化科学と自然科学」 岩波文庫 1939年
【参考URL】
酸性雨のしくみ実験装置 徳島教育研修センター  http://www.edu-center.pref.tokushima.jp/kensyu/nika/kankyou/sikumi_sanseiu.htm」


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