印刷用紙:B4縦 1ページの行数:63 1行の文字数(半角で):90 第5学年 図画工作科学習指導案 指導者 柳 村 栄 T.題材名  これから始まるおもしろレース(つくりたいものをつくる) U.題材ついて   5年生の子どもたちは,客観的な見方が育ってきて,製作の手順を考え計画に基づいて製作に取 り組んでいけるようになる反面,中学年の子どもたちに見られるような子どもらしい豊かな想像力 は次第に影を潜めるようになってしまう。また,一人一人の子どもの特性が目立ち始め,自分の感  じ方や考え方など個性的な面も育ってくるが,それを生かしながら創造的に表現製作するなどの適  切な場や機会がないとしぼんでしまうことになる。したがって,一人一人の子どもたちの見方や感  じ方,表し方などの特性に応じた指導の工夫をし,低・中学年の経験を十分に生かしながら主体的  に活動できるようにすることによって,自分の表現製作に自信をもたせるようにするとともに,子  どもらしい豊かな想像力や個性的で創造的な表現の能力を伸ばすようにしていかなければならない。   5年生の「つくりたいものをつくる」ことの目標は,「生活を楽しく豊かにするものなどを,用  途や美しさを考え構想を練ってつくり,デザインの能力や創造的な工作の能力を高める。」ことで  ある。また,その内容として@「つくるもの用途や美しさ,楽しさを考えて,形による動きの感じ,  色の強い弱い感じ,材料の感じなどに関心をもってつくること」,A「つくるものを絵や図にかい  たり,必要に応じて試作したりするなどして,形や丈夫な組み立て方,動くおもしろさの生かし方  などの構想を練り,計画的につくったり,材料の特徴から発想してつくったりすること」,B「つく  るものに合わせて糸のこぎりや前の学年までに経験した材料や用具などから適切なものを選んで使う  とともに,それらの扱いになれること」の3項目が示されている。   本題材は,ゴム動力のプロペラを使って走る車をつくるものである。従来の年間計画で『はしる 車』として扱ってきたものを内容的に発展させ,子どもたちに親しみやすいように,題材名も『こ れからはじまるおもしろレース』としたものである。基本的な材料として扱うものは,車台にする 板材とゴム動力の部分であり,この点については従来通りであるが,外装の部分の材料に広がりを もたせ,空容器などの身辺材を子どもたちの思いよって走る車の外装として自由に使用できるよう にした。手などの働きが力強さと巧みさが増し,ものをつくったりするに当たって新しい試みをす ることができるようになるこの時期に板材の曲線加工を扱うこの題材は,子どもたちに適度な手ご たえを与えると同時に,身辺材の自由な活用は子どもたちの新しい試みを促してくれるに違いない。  動くものをつくることじたいとても楽しい活動であるが,それに加え,外装が子どもたちの思いに  まかせられることや,完成したプロペラ車でおこなうレースを自分たちで考えられることから,子  どもたちが意欲的にこの題材に取り組み,創意工夫をこらしながら楽しく活動していくことが期待  できる。そして,この活動を通して,デザインの能力を高めるとともに,創造的な工作の能力を高  めていくことができると考える。   導入の段階で車台と動力部分の材料については条件を示すが,車体や車輪の部分については自由  にできることを伝え,子どもたちの創意工夫にゆだねたい。そして,その子なりの考えで身の回り  の空容器など材料を集めさせ,アイディアスケッチの段階ではその材料と教師からの材料を操作し  ながら車体のイメージをもたせ構想を練らせたい。アイディアスケッチは,精密なものでなくてよ  いが,製作の見通しがつくものにさせたい。本題材で扱う電動糸のこぎりは子どもたちが初めて使  用するものである。安全面について確実に指導するとともに,子どもたちがある程度自信をもって  製作に望めるように板切れを準備しておき,切る経験を積めるようにしておきたい。車台に車輪と  動力部分を取り付けたあとの改良修正の手順やその方法については,子どもたちの考えを大切にし,  子どもたちの必要に応じていつでも試走をしながら作業が進められるような場を設定しておきたい。  また,思い通りの走りや車体の装飾を追究させながら,どんなレースにしたいかも考えさせレースへ  の期待感を強めていきたい。   本題材は子どもたちが自分たちのつくりたいものに対する思いに従い,新しい試みに挑戦しじっ  くり活動に取り組めるようにするために12時限という長い時間を設定した。そのため,作業進度  にかなりの差が予想される。そこで,早く終わった子には,楽しいレースのルールを考えさせたり,  別の材料で車体や車輪を製作させ,レースに応じて取り替えることができるようにさせたりするなど  の工夫を考えさせたい。 V.目 標  1.ゴムの力でプロペラを回転させる仕組みを使い動くおもちゃをつくって遊ぶ楽しさを味わう。 2.車軸と車体のつけ方,ゴムの長さや張り方,車輪のつけ方等を工夫し,よりよく走る車の構造    を考える。  3.電動糸のこぎり機,キリ等の用具の扱いに慣れ丁寧に仕上げる。 W.学習計画と学習内容     第1次(1)本時      ・参考作品の鑑賞                    参考作品や作例を見な   ・プロペラ車の仕組みの理解                  がらプロペラ車の仕組   ・製作手順の見通し                  みを話し合う。       ・使用材料の見通し                               ・製作のめあてづくり                                                第2次(2)        ・車体の形の構想                  集めた材料をもとにア   ・プロペラの位置の検討                  イディアスケッチをし   ・車輪の形,数の検討  全12時限扱い         て,プロペラ車の形を   ・車台の形の構想                    決める。          ・アイディアスケッチ    板材の車台と,身辺材を                      利用した車輪,車体を工    第3次(3)        ・電動糸のこぎりで車台づくり  夫してゴム動力で動くプ     車台,車輪等をつくり   ・やすりがけ    ロペラ車をつくる活動を     組み立てる。       ・材料を生かした車輪づくり  通し,デザインの能力や                  ・動力部の取りつけ  創造的な工作の能力を高    第4次(3)                  める。             よりよく走るように工   ・試走  ・原因の解明                  夫したり改良したりす   ・修正改良によるよりよい走りの                  る。            追究                                                           第5次(2)        ・画用紙や身辺材を利用して車台                  画用紙や身辺材等を活    づくり                    用して車体をつくる。   ・試走                               ・修正改良による車体の追究                   第6次(1)                                プロペラ車を完成させ   ・レース内容の検討                  レースをしながら鑑賞   ・プロペラ車の『おもしろレース』                  し合う。         ・友だちの作品のよさの発見  X.準 備   教 師:板材(3×120×220ミリ),プロペラ,コメタル,プロペラシャフト,ニューム管,ビー・Y,       ヒートン,角材(5×5×300ミリ),ラジオペンチ,紙やすり,きり,カッターマット, 竹ひご,セロテープ,画用紙,色画用紙,色厚紙 等   児 童:車輪や車体なる身近な材料,はさみ,定規,カッターナイフ,ボンド,等 Y.本時の指導  1.題材と子ども   学級の子どもたちは,図画工作が好きであるという子が多い。特に「つくりたいものをつくる」  ことを好む子が多い。これは,「つくりたいものをつくる」は「絵に表す」と違って,写実性を気  にすることが少なく,自分の思いによって手指を働かせて自由につくれる場合が多いこと,そして,  つくったあとはそれを活用できるということが理由として考えられる。しかし,つくることが好きで  ある反面,計画性については必ずしも育っているとは言えない。1学期題材の『わたしを見つめる守  り神』(張り子のお面)では見通しの甘さから失敗してしまうことも多く見られた。そこで,本題材  は,特に計画的な作業に重点を置いて指導していきたいと考える。   本時においては題材の導入部分を扱う。作例鑑賞や構造の理解,そして作例をグループ毎に走ら せてみる活動を組み込んで,製作に必要な材料,組み立て方,走りのイメージ等をしっかりと把握 させたり,互いの考えを交流させる中で製作の見通しをたてさせたい。   本時授業を進めるにあたっては,計画性という面から次の子どもに注目していきたい。  S・R   製作に対する興味関心が強く意欲的に製作活動に取り組むが,見通しを立てずに作業  (男)  を進めてしまうために失敗をしてしまうことが多い。活動的な特性を生かし,作例の試       走の中で動く仕組みや外装のイメージをつかみ製作の見通しが立てられるか見守ってい       きたい。 2.ねらい   参考作品や作例を見ながらプロペラ車の仕組みについて話し合い題材の方向性をつかむ。 3.展 開     学  習  活  動        指  導  上  の  留  意  点                     1.一斉                    作例1をみて感じたことや構造   ・参考作品を見せながら,思いのままに感じたことを発表   について話し合う。        させる。その中から,プロペラを使って動く車への方向づ                     けをしていく。ここでは,車体は画用紙に色を塗って作                     していること,車輪はビンのふたを使用していることなど                     使用している材料をしっかり押さえさせたい。                    ・車体をはずし,中の構造と使用している材料を確認させ                    プロペラ飛行機と同じ動力であることに気づかせる。                    今後の共通の話し合いのために,プロペラ車の部位を「車                 台」「車輪」「車体」「動力部分」というよび方にするこ 2.一斉 とを確認する。   作例2をみて作例1と材料や構   ・作例2を見せながら,同じプロペラがついているが車体   造の違いに気づく。        や車輪をつくっている材料が作例1と異なることに気づか                     せ材料の広がりを感じ取らせる。                    ・車台や動力部分に使用する材料は同じであるが,加工の                    仕方によって中の構造についても作例1と異なることに気                     づかせる。また,なぜこのような構造にしたのか作者の                     図を考えさせることによって,自分たちが製作するときに  3.一斉              も意図をもって加工することの意識づけをさせたい。   プロペラ車の構造や材料につい   ・これからつくるプロペラ車は,車台や動力部分にする材   てまとめる。           料は同じものを使用し加工の仕方を工夫すること。また,                    車体や車輪にする材料は自分たちの創意工夫によって自  4.小集団              に選択できることを確認させる。   作例を走らせてみて走りのイメ   ・グループ毎に作例を自由に走らせてみさせ,プロペラ車   ージをつかむ。          の走りのイメージをつかませるとともに,プロペラの巻き                     方によって走る向き,走る速度や距離が異なってくること                    に気づかせる。また,自分ならどのようにつくりたいかと  5.個別               いう製作のイメージももたせたい。   自分だったらどんな材料でプ    ・自分だったらどんな材料でつくりたいか大まかな見通し   ロペラ車をつくるか考える。    を立てさせ図工カードに記入させる。                    ・その際,車台,動力の材料は示し,車輪,車体について                     は使えそうな材料を考えさせ材料集めの意欲づけを図る。                     また,考えた材料を発表し合うことによって材料の考え方 6.一斉                に広がりをもたせたい。   大まかな製作手順を考える。    ・これまでの学習を振り返りながらおおまかな製作手順を        教師評価          考えさせ,製作への見通しをもたせ,計画的に取り組んで   本時の学習をもとに製作の大ま いこうとする態度を育てるとともに製作への意欲づけを図 かな手順を考えることができたか。 らせたい。  7.個別   製作のめあてを考える。      ・全体を通しての製作のめあてを立てさせ製作への意欲づ                    けを図る。めあての観点は次の2点としたい。       教師評価             @今日の学習をもとにどのような車を       プロペラ車の大まかなイメージがもてたか。   つくりたいか。       態度面のめあてがたてられたか。       Aこれまでの図工の学習を振り返り,  8.一斉                         どのような態度で学習したいか。   めあてを発表しあい学習のまと   ・それぞれのめあてを発表しあい,自分の車に必要な材料 めとする。 を集めておくことを確認して本時のまとめとする。