高等学校1年国語I(古典 ゆく河の流れ)指導案 盛岡第二高等学校 用紙は B4 縦  1行 110字(半角) 1ページ 66行に設定してください。        「 国 語 T 」 古 文  学 習 指 導 案                                              指導者  藤原 正義  一 指導日時   平成二年八月二七日(月)第二校時 二 指導対象   第一学年F組(女子四六名) 三 使用教科書  筑摩書房「国語T」                                      四 単元名    「古典」(二)==-- 中世の随筆 --==                             五 教材名    「ゆく河の流れ」(『方丈記』)                                六 教材について                                                   この作品は、『枕草子』『徒然草』と並んでわが国古典文学の三大随筆の一つに数えられており、「国語T」の教    科書は各社とも取り上げている。    未習の教材であることから、ほとんどの生徒は作品の内容に立ち入った知識はないものの、作品名・作者名は知っ    ていると思われる。特にも、「ゆく河の流れは絶えずして・・・」で始まる冒頭部分は格調高い和漢混交文で口調も    よく、古来、古典文学の名文の一つとして知られている。    本教材「ゆく河の流れ」には、『方丈記』の全編を貫く思想、無常観が示されている。わが国中世文学にほぼ共通    して見られる仏教思想に基づくこの無常観は、作者・長明が中古から中世を生きた動乱の時代に身をもって体験した    「世の不思議」(大火・大風・遷都・飢饉・地震の五大事件)によって裏付けられた思想である。    第一段には『方丈記』の主題が述べられている。長明は「ゆく河の流れ」に生死を繰り返すはかない人間の姿を見    ている。そして第二段では具体的に都に、さらにそこに住む人間にと眼を向ける。この世にある人とすみかを河の流    れとうたかたに、朝顔と露の関係にたとえるなど比喩の巧みさもさることながら、説得力に富み、内容・表現ともす    ぐれた作品である。対句的表現や比喩表現を、単に知識として学ぶのではなく、論理を支える上で有効に働いている    ことに着目させて文体の特徴についても理解させる。    随筆とは言え、論理的構成がしっかりした評論的な、極めて自照性の強い文章を読み、長明の生きた時代背景を通    して、長明のものの見方や考え方を学ぶことにより、併せて生徒一人一人自身の生き方について考察を深めさせる契    機としたい。 七 指導目標        和漢混交文としての随筆をよみ、作者の意図や思想を明らかにさせて作者のものの見方・考え方を読み取ら        せる。併せて、生徒一人ひとり自己の人生について考える態度を身につけさせる。 八 指導計画    第一時 作品・作者について概説し、文学史における位置を確認させる。        通読後、初発の疑問や課題を書き取らせ、学習の手掛かりを持たせる。        語句の意味や文法事項をふまえながら、通釈させる。(本時)    第二時 前時の通釈による読み取りをもとに、疑問や課題を解決に向かわせる。さらに自分の考え方とのかかわりで        先の疑問や課題をとらえなおさせる。        主題をまとめ、作者のものの見方や考え方を読み取らせる。     九 本時の指導                                                   (1)本時の目標                                                   @『方丈記』を文学史で確認し、作品・作者の概略をつかませる。      A本文を通読した後で初発の疑問や課題を学習シ−トに記入させ、学習の手掛かりを得させる。      B語句の意味や文法事項をふまえながら、文章に即して内容を正しく理解させる。   (2)指導過程                                               +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ | 段階| 時間|     指 導 内 容      |   生 徒 の 学 習 活 動 |  指 導 の 留 意 点| +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ |   |   | 1 これまでに学習した古文の作品を| ・古文の作品及び作品内容を想起す| ・学習の準備、導入の心構| | 導入| 7分|  想起させるとともに、本時の学習内|  る。本時の学習内容を確認する。|  えの確立をはかる。  | |   |   |  容を確認させる。(シ−トの使用)|                 | ・学習シ−トの使用につい| |   |   |                  |                 |  て説明する。     | |   |   | 2 『方丈記』に関する既有知識の状| ・『方丈記』に関する既有知識を想| ・時代の概観について、解| |   |   |   況を把握する。        |  起し、発表する。       |  説を加えるが、深入りし| |   |   |   作品と作者・時代背景について概|                 |  ない。詳細については | |   |   |   説する。           |                 |  図書館などで各自調べて| |   |   |                  |                 |  おくよう指示する。  | |   |   | 3 本文を音読させる。      | ・句読点や古語に注意して本文を音| ・誤読はその都度訂正する| |   |   |                  |  読する。           | ・音読によって文章のリズ| | 展開| 40分| 4 本文を読み取る上での疑問や課題|                 |  ムを体得させる。   | |   |   |   を別紙シ−トに書き取らせる。 | ・学習シ−トに書き取る。    |             | |   |   |                  |                 | ・机間巡視により、シ−ト| |   |   | 5 疑問や課題を指名により発表させ| ・挙手及び指名を受けて発表する。|  の記載状況と予習状況を| |   |   |   る。             |                 |  点検する。      | |   |   |                  |                 |             | |   |   | 6 重要語句・難解語句に留意させな| ・辞書や予習したノ−トを用いて通| ・難解な語句は辞書を引い| |   |   |   がら通釈させる。       |  釈する。           |  て意味を確認させる。 | |   |   |                  |                 |             | |   |   | うたかた・かつ〜かつ・かくのごとし| ・教科書の脚注や辞書を活用する。| ・文脈に即して考える。 | |   |   | たましきの・これ・これ・仮の宿り・|                 |             | |   |   | 無常を争ふ・対句・倒置法・擬人法 |                 | ・時間がない場合は次時に| | 終結| 3分|                  |                 |  まわす。       | |   |   | 7 本文を読み取る上での疑問や課題| ・本時の学習に関し、不明な点を質|             | |   |   |   を別紙学習シ−トに書き取らせる|  問する。           | ・学習シ−トを回収する。| |   |   |                  |                 |             | |   |   | 8 本時のまとめと次時の予告   |                 | ・課題の指示と次時の予告| +-----+-----+--------------------------------+------------------------------+------------------------+ |  評 価 |   本時の目標が達成できたか。                                | +-----------+----------------------------------------------------------------------------------------+        「 国 語 T 」 古 文  学 習 指 導 案                                     一 指導日時   平成二年八月二八日(火)第一校時 二 指導対象   第一学年F組(女子四五名) 三 使用教科書  筑摩書房「国語T」                                      四 単元名    「古典」(二)==--==中世の随筆==--==                             五 教材名    「ゆく河の流れ」(『方丈記』)                                六 教材について                                                   この作品は、『枕草子』『徒然草』と並んでわが国古典文学の三大随筆の一つに数えられており、「国語T」の教    科書は各社とも取り上げている。                                          未習の教材であることから、ほとんどの生徒は作品の内容に立ち入った知識はないものの、作品名・作者名は知っ    ていると思われる。特にも、「ゆく河の流れは絶えずして・・・」で始まる冒頭部分は格調高い和漢混交文で口調も    よく、古来、古典文学の名文の一つとして知られている。    本教材「ゆく河の流れ」には、『方丈記』の全編を貫く思想、無常観が示されている。わが国中世文学にほぼ共通    して見られる仏教思想に基づくこの無常観は、作者・長明が中古から中世を生きた動乱の時代に身をもって体験した    「世の不思議」(大火・大風・遷都・飢饉・地震の五大事件)によって裏付けられた思想である。             第一段には『方丈記』の主題が述べられている。長明は「ゆく河の流れ」に生死を繰り返すはかない人間の姿を見    ている。そして第二段では具体的に都に、さらにそこに住む人間にと眼を向ける。この世にある人とすみかを河の流    れとうたかたに、朝顔と露の関係にたとえるなど比喩の巧みさもさることながら、説得力に富み、内容・表現ともす    ぐれた作品である。対句的表現や比喩表現を、単に知識として学ぶのではなく、論理を支える上で有効に働いている    ことに着目させて文体の特徴についても理解させる。    随筆とは言え、論理的構成がしっかりした評論的な、極めて自照性の強い文章を読み、長明の生きた時代背景を通    して、長明のものの見方や考え方を学ぶことにより、併せて生徒一人一人自身の生き方について考察を深めさせる契    機としたい。                                                七 指導目標        和漢混交文としての随筆を読み、作者の意図や思想を明らかにさせて作者のものの見方・考え方を読み取ら        せる。併せて、生徒一人ひとり自己の人生について考える態度を身につけさせる。            八 指導計画    第一時 作品・作者について概説し、文学史における位置を確認させる。        通読後、初発の疑問や課題を書き取らせ、学習の手掛かりを持たせる。        語句の意味や文法事項をふまえながら、通釈させる。    第二時 前時の通釈による読み取りをもとに、疑問や課題を解決に向かわせる。さらに自分の考え方とのかかわりで        先の疑問や課題をとらえなおさせる。        主題をまとめ、作者のものの見方や考え方を読み取らせる。(本時) 九 本時の指導                                                   (1)本時の目標                                                   @初発の疑問や課題を自分の考え方とのかかわりでとらえなおさせる。      A本教材の主題である無常観を作者のものの見方や考え方との関連で読み取らせる。      B論理的構成・対句表現・比喩などに着目させ、文体の特徴を理解させる。   (2)指導過程                                               +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ | 段階| 時間|     指 導 内 容      |     学 習 活 動     |     留意点     | +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ |   |   | 1 前時の学習内容の想起と本時の学| ・ノ−トや学習シ−トを見ながら前| ・学習の準備と心構えを確| | 導入| 5分|   習内容の確認。        |  時の学習内容を述べる。    |  立させる。      | |   |   |                  |                 |             | |   |   |   ・前時の学習内容を想起させる。| ・前時の学習内容の疑問点を質問す| ・前時に発言しなかった生| |   |   |   ・前時にひき続き残りを通釈させ|  る。             |  徒を中心に指名する。 | |   |   |    ることを知らせる。     |                 |             | |   |   |   ・修辞法(対句・比喩や文体)を| ・本時の学習内容を確認する。  |             | |   |   |    理解させる。        |                 |             | |   |   |   ・主題をまとめ、作者のものの見|                 |             | |   |   |    方や考え方を読み取らせる。 |                 |             | |   |   |                  | ・句読点や古語の読み方に注意して| ・文章のリズムを体得させ| | 展開| 40分| 2 本文を音読させる。      |  音読する。          |  るとともに正しく読ませ| |   |   |                  |                 |  る。         | |   |   | 3 重要語句・難解語句に留意させな|  重要語句・難解語句に留意して通| ・辞書を活用させる。  | |   |   |   がら通釈させる。       |  釈する。           |             | |   |   |                  |                 |             | |   |   | 4 学習シ−トに疑問や課題を整理さ| ・学習シ−トに記載する。    | ・机間巡視により、記載状| |   |   |   せる。            |                 |  況の点検をする。   | |   |   |                  |                 |             | |   |   | 5 修辞法(対句・比喩や文体)につ| ・修辞法(対句・比喩や文体)につ| ・プリントで整理させる。| |   |   |   いて理解させる。       |  いて理解する。        |             | |   |   |                  |                 | ・学習シ−トを回収する。| |   |   | 6 時代背景とのかかわりで、主題を| ・主題をまとめる。       |             | | 終結| 5分|   考え、まとめさせる。     |                 | ・第一段が全体の主題にな| |   |   |                  |                 |  っている。      | |   |   | 7 学習シ−トに記載させる。   | ・学習シ−トに記載する。    |             | |   |   |                  |                 |             | |   |   |   本時のまとめと次時の予告   |                 | ・次時の予告をする。  | +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ |  評 価 |   本時の目標が達成できたか。  疑問や課題が解決したか。                  | +-----------+----------------------------------------------------------------------------------------+ 高等学校1年国語1(古典 養和の飢饉)指導案 盛岡第二高等学校 用紙は B4 縦  1行 110字(半角) 1ページ 66行に設定してください。        「 国 語 T 」 古 文  学 習 指 導 案                                               指導者  藤原正義  一 指導日時   平成二年八月二九日(水)第三校時 二 指導対象   第一学年 F組(女子四五名) 三 使用教科書  筑摩書房「国語T」                                      四 単元名    「古典」(二)==--==中世の随筆==--==                             五 教材名    「養和の飢饉」(『方丈記』)                                 六 教材について                                                   この作品は,『枕草子』『徒然草』と並んで、わが国古典文学の三大随筆の一つに数えられている。また,「ゆく河   の流れは絶えずして・・・」で始まる冒頭部分は格調高い和漢混交文で口調もよく,古来,古典文学の名文として知ら   れている。    本教材「養和の飢饉」は作者・長明が中古から中世を生きた動乱の時代に身をもって体験した「世の不思議」として   あげた「五大事件」(大火・大風・遷都・飢饉・地震)の一つである。二年間にわたって続いた飢饉は、それまでの大   火・大風・遷都による人々の不安にさらに追い打ちを掛けるものであった。人々は生きる気力を奪われてしまった。そ   こには、先に学習した「ゆく河の流れ」に示される無常観が具体的に説かれている。人々の生活を奪う度重なる事件は   、人々のあらゆる祈祷も秘法も及ばなかった。人間は一度生死をさまようと、それまでのあらゆる倫理観も価値観もそ   の前にはまったく無力を暴露してしまう。    飢饉に続いて疫病までもが流行し、死臭が満ち、生きようとして仏具にまで手をつける者が現れ、そこはさながら末   法の世の悲惨な様相であり、地獄絵そのものであった。しかしそこには餓死寸前の極限状況下における人間愛の美しさ   も描かれている。人生について思索的な目を開こうとする高校一年生の時期にあって、本教材の学習を通じて長明のも   のの見方や考え方を学ぶことにより、併せて生徒一人一人自己の生き方について考える契機とさせたい。                                                               七 指導目標         作者の意図や思想を明らかにさせて作者のものの見方・考え方を読み取らせ、併せて生徒一人一人自己の        人生について考える態度を身につけさせる。 八 指導計画                                                     第一時 長明が体験した五大事件の概要を解説し、「養和の飢饉」の描写が無常観の実証であることを理解させる。    (本時)「養和の飢饉」の惨状を思い描きながら本文を通読させ、初発の疑問や課題を学習シ−トに書き取らせる。                                                            第二時 前年の飢饉の惨状に加え、人心が荒廃する極限状況における人間の生き方について考察させる。             辞書や教科書の脚注等を手掛かりにして、文章に即して飢饉の惨状と人間の生き方を正しく読み取らせる。        学習シ−トに記述した先の疑問や課題を通釈後に解決に向かわせることによって学習の手掛かりを与える。    第三時 『方丈記』の主題や鴨長明の人生観について、これまでの学習をもとに話し合わせて考察を深めさせる。         学習シ−トに記述した先の疑問や課題をとらえなおさせ、鴨長明のものの見方や考え方をまとめさせる。                                         九 本時の指導                                                   (1)本時の目標                                                  @ 別紙配布資料により,教科書の未収部分のあらすじを把握させる。                        A 飢饉の惨状を読み取り、極限状況下に置かれた人間の生き方について考察させる。     B 本文を通読した後で、長明のものの見方・考え方に関する疑問や課題を学習シートに記述させる。                                                              (2)指導の展開案                                             +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ | 段階| 時間|     指 導 内 容      |     学 習 活 動     |     留意点     | +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ |   |   | 1 前時の学習内容の想起と本時の学|                 | ・学習の準備と心構えを確| | 導入| 5分|   習内容の確認。        | ・ノ−トや学習シ−トを見ながら前|  立させる。      | |   |   |  @前時の学習内容を想起させる。 |  時の学習内容を述べる。    |             | |   |   |                  |                 | ・前時に発言のない生徒を| |   |   |  A長明が体験した五大事件の概要を|                 |  中心に発言させる。  | |   |   |   とらえることを知らせる。   |                 |             | |   |   |                  |                 |             | |   |   |  B「養和の飢饉」の通読と疑問や課|                 | ・記述時間を生徒の実態に| |   |   |   題のシ−トへの記述を指示する。|                 |  合わせる。      | |   |   |                  |                 |             | |   |   | 2 五大事件をプリントで解説する。| ・ノ−トをとりながら五大事件の概| ・二年続きの飢饉とその惨| | 展開| 40分|   方丈記における「養和の飢饉」の|  要について理解する。     |  状について留意させる。| |   |   |   位置を確認させる。      |                 |             | |   |   |                  |                 |             | |   |   | 3 音読させる          |  句読点や難解な語句に注意しなが| ・誤読については、その都| |   |   |   ・指名音読          |  ら正しく読む。        |  度訂正する。     | |   |   |   ・斉読            |                 |             | |   |   |                  |                 |             | |   |   | 4 疑問や課題をシ−トに記述させる| ・前時の要領でシ−トに疑問や課題| ・机間巡視をして記述状況| |   |   |                  |  を記述し学習の手掛かりにする。|  を点検し、必要に応じて| |   |   |   記述内容を発表させる。    |                 |  指導する。      | |   |   |                  | ・指名により記述内容を発表する。|             | |   |   |   難解な語句の意味を辞典で確認さ|                 |             | | 終結| 5分|   せる。            | ・辞書の引き方に慣れる。    | ・学習シ−トを回収する。| |   |   |                  |                 |             | |   |   |   まとめと次時の予告      | ・本時全体について、質問する。 |             | +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+        「 国 語 T 」 古 文  学 習 指 導 案                                               指導者  藤原正義  一 指導日時   平成二年九月五日(水)第三校時 二 指導対象   第一学年 F組(女子四五名) 三 使用教科書  筑摩書房「国語T」                                      四 単元名    「古典」(二)==--==中世の随筆==--==                             五 教材名    「養和の飢饉」(『方丈記』)                                 六 教材について                                                   この作品は,『枕草子』『徒然草』と並んで、わが国古典文学の三大随筆の一つに数えられている。また,「ゆく河   の流れは絶えずして・・・」で始まる冒頭部分は格調高い和漢混交文で口調もよく,古来,古典文学の名文として知ら   れている。    本教材「養和の飢饉」は作者・長明が中古から中世を生きた動乱の時代に身をもって体験した「世の不思議」として   あげた「五大事件」(大火・大風・遷都・飢饉・地震)の一つである。二年間にわたって続いた飢饉は、それまでの大   火・大風・遷都による人々の不安にさらに追い打ちを掛けるものであった。人々は生きる気力を奪われてしまった。そ   こには、先に学習した「ゆく河の流れ」に示される無常観が具体的に説かれている。人々の生活を奪う度重なる事件は   、人々のあらゆる祈祷も秘法も及ばなかった。人間は一度生死をさまようと、それまでのあらゆる倫理観も価値観もそ   の前にはまったく無力を暴露してしまう。    飢饉に続いて疫病までもが流行し、死臭が満ち、生きようとして仏具にまで手をつける者が現れ、そこはさながら末   法の世の悲惨な様相であり、地獄絵そのものであった。しかしそこには餓死寸前の極限状況下における人間愛の美しさ   も描かれている。人生について思索的な目を開こうとする高校一年生の時期にあって、本教材の学習を通じて長明のも   のの見方や考え方を学ぶことにより、併せて生徒一人一人自己の生き方について考える契機とさせたい。                                                               七 指導目標         作者の意図や思想を明らかにさせて作者のものの見方・考え方を読み取らせ、併せて生徒一人一人自己の        人生について考える態度を身につけさせる。 八 指導計画                                                     第一時 長明が体験した五大事件の概要を解説し、「養和の飢饉」の描写が無常観の実証であることを理解させる。        「養和の飢饉」の惨状を思い描きながら本文を通読させ、初発の疑問や課題を学習シ−トに書き取らせる。                                                            第二時 前年の飢饉の惨状に加え、人心が荒廃する極限状況における人間の生き方について考察させる。         (本時)辞書や教科書の脚注等を手掛かりにして、文章に即して飢饉の惨状と人間の生き方を正しく読み取らせる。        学習シ−トに記述した先の疑問や課題を通釈後に解決に向かわせることによって学習の手掛かりを与える。    第三時 『方丈記』の主題や鴨長明の人生観について、これまでの学習をもとに話し合わせて考察を深めさせる。         学習シ−トに記述した先の疑問や課題をとらえなおさせ、鴨長明のものの見方や考え方をまとめさせる。                                         九 本時の指導                                                   (1)本時の目標                                                  @ 語句の意味や語法に注意させながら、前年の飢饉の惨状がさらに増大していく様子を正しく読み取らせる。     A 飢饉の惨状を読み取らせながら、極限状況下に置かれた人間の生き方について考察させる。     B 本文を通釈した後で、先に書かせた長明のものの見方や考え方に関する疑問や課題を心情を表す語句に注意さ      せながら、文章に即する観点から理解させ、解決に向かわせる。                                                           (2)指導の展開案                                             +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ | 段階| 時間|     指 導 内 容      |     学 習 活 動     |    指導上の留意点  | +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ |   |   | 1 前時の学習内容の想起と本時の学|                 | ・学習の準備と心構えを確| | 導入| 5分|   習内を確認させる。      |                 |  立させる。      | |   |   |                  |                 |             | |   |   |  @前時の学習内容を想起させる。 | ・ノ−トや学習シ−トを見ながら前| ・前時に発言のない生徒を| |   |   |                  |  時の学習内容を述べる。    |  中心に発言させる。  | |   |   |  A飢饉の惨状の惨状を正しく読み取|                 |             | |   |   |   ことを知らせる。       |                 | ・飢饉==疫病の発生==餓死| |   |   |                  | ・本時の学習内容を確認する。  |  者の増加==濁悪世の順で| |   |   |  B極限状況における人間の生き方に|                 |  惨状を把握させる。  | |   |   |   ついて考察することを知らせる。|                 |             | |   |   |                  | ・句読点や難解な語句に注意しなが| ・仏像を破壊し、信仰心を| |   |   | 2 音読させる。         |  ら正しく読む。        |  も失った荒廃した人心を| |   |   |                  |                 |  見た作者が、以下の描写| | 展開| 40分| 3 作者の心情を表す語句を手掛かり| ・心情を表す語句を手掛かりにして|  で人間の愛情に感動して| |   |   |   にして、作者のものの見方・考え|  ものの見方・考え方を理解する。|  いることに気づかせる。| |   |   |   方を理解させる。       |                 | ・法印の行為はしょせん、| |   |   |  ==あやしきこと・濁悪世・心憂し==| ・語句の意味を理解する。    |  死者の結縁にとどまり生| |   |   |  ==いとあはれなること・・・  ==|                 |  きる人間の救済となり得| |   |   |                  |                 |  ないことに気づかせる。| |   |   | 4 教科書の設問(問三〜六)を随時| ・設問に答える。        |             | |   |   |   解かせる。          |                 | ・語法と語句の意味   | |   |   |                  |                 |  副助詞「さへ」「だに」| |   |   | 5 隆暁法印の行動を読み取らせる。| ・隆暁法印の行動を読み取る。  |             | |   |   |                  |                 |  いはんや・あやしき  | +-==--+-----+ 6 本時の学習内容をもとにして、学| ・学習シ−トに記述する。    |  こぼちて・いとけなし | | 終結| 5分|   習シートに記述させる。    |                 |             | |   |   | 7 まとめと次時の予告      | ・まとめと次時の課題確認をする。| ・学習シ−トを回収する。| +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+        「 国 語 T 」 古 文  学 習 指 導 案                                               指導者  藤原正義  一 指導日時   平成二年九月六日(木)第三校時 二 指導対象   第一学年 F組(女子四五名) 三 使用教科書  筑摩書房「国語T」                                      四 単元名    「古典」(二)==--==中世の随筆==--==                             五 教材名    「養和の飢饉」(『方丈記』)                                 六 教材について                                                   この作品は,『枕草子』『徒然草』と並んで、わが国古典文学の三大随筆の一つに数えられている。また,「ゆく河   の流れは絶えずして・・・」で始まる冒頭部分は格調高い和漢混交文で口調もよく,古来,古典文学の名文として知ら   れている。    本教材「養和の飢饉」は作者・長明が中古から中世を生きた動乱の時代に身をもって体験した「世の不思議」として   あげた「五大事件」(大火・大風・遷都・飢饉・地震)の一つである。二年間にわたって続いた飢饉は、それまでの大   火・大風・遷都による人々の不安にさらに追い打ちを掛けるものであった。人々は生きる気力を奪われてしまった。そ   こには、先に学習した「ゆく河の流れ」に示される無常観が具体的に説かれている。人々の生活を奪う度重なる事件は   、人々のあらゆる祈祷も秘法も及ばなかった。人間は一度生死をさまようと、それまでのあらゆる倫理観も価値観もそ   の前にはまったく無力を暴露してしまう。    飢饉に続いて疫病までもが流行し、死臭が満ち、生きようとして仏具にまで手をつける者が現れ、そこはさながら末   法の世の悲惨な様相であり、地獄絵そのものであった。しかしそこには餓死寸前の極限状況下における人間愛の美しさ   も描かれている。人生について思索的な目を開こうとする高校一年生の時期にあって、本教材の学習を通じて長明のも   のの見方や考え方を学ぶことにより、併せて生徒一人一人自己の生き方について考える契機とさせたい。                                                               七 指導目標         作者の意図や思想を明らかにさせて作者のものの見方・考え方を読み取らせ、併せて生徒一人一人自己の        人生について考える態度を身につけさせる。 八 指導計画                                                     第一時 長明が体験した五大事件の概要を解説し、「養和の飢饉」の描写が無常観の実証であることを理解させる。        「養和の飢饉」の惨状を思い描きながら本文を通読させ、初発の疑問や課題を学習シ−トに書き取らせる。                                                            第二時 前年の飢饉の惨状に加え、人心が荒廃する極限状況における人間の生き方について考察させる。             辞書や教科書の脚注等を手掛かりにして、文章に即して飢饉の惨状と人間の生き方を正しく読み取らせる。        学習シ−トに記述した先の疑問や課題を通釈後に解決に向かわせることによって学習の手掛かりを与える。    第三時 『方丈記』の主題や鴨長明の人生観について、これまでの学習をもとに話し合わせて考察を深めさせる。     (本時)学習シ−トに記述した先の疑問や課題をとらえなおさせ、鴨長明のものの見方や考え方をまとめさせる。                                         九 本時の指導                                                   (1)本時の目標                                                  @ 「養和の飢饉」の内容が、既習の「行く河の流れ」の論旨とどうつながっているかを考察させる。          A 鴨長明の生きたその時代背景と人生観について話し合わせ、「養和の飢饉」の感想文を書かせる。          B 鴨長明のものの見方・考え方を正しく読み取らせるとともに、自分の考え方とのかかわりでとらえさせながら      、主題を把握させる。                                                                                                   (2)指導の展開案                                             +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ | 段階| 時間|      指 導 内 容     |      学 習 活 動    |    指導上の留意点  | +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+ |   |   | 1 前時の学習内容の想起と本時の学|                 | ・学習の準備と心構えを確| | 導入| 5分|   習内容の確認を確認させる。  |                 |  立させる。      | |   |   |                  |                 |             | |   |   |  @前時の学習内容を想起させる。 | ・ノ−トや学習シ−トを見ながら前| ・前時に発言のない生徒を| |   |   |                  |  時の学習内容を述べる。    |  中心に発言させる。  | |   |   |  A作者のものの見方・考え方を読み|                 |             | |   |   |   取ることを知らせる。     | ・本時の学習内容を確認する。  | ・飢饉==疫病の発生==餓死| |   |   |                  |                 |  者の増加==濁悪世==男女| |   |   |  B主題の「無常観」について理解す|                 |  の愛==親子の愛==法印の| |   |   |   ることを知らせる。      |   |  行為の順で内容を整理。| |   |   |                  |      | | | 展開| 40分|  C学習をもとに主題を話し合わせ、|                 |   | |   |   |   感想文を書くことを知らせる。 |                 |             | |   |   |                  |                 | ・作者のものの見方・考え| |   |   | 2 作者の心情を表す語句を手掛かり| ・心情を表す語句を手掛かりにして|  方は作品全体からとらえ| |   |   |   にし、文章に即して、ものの見方|  ものの見方・考え方を理解する。|  させる。       | |   |   |   ・考え方を理解させる。    |      |             | |   |   |                  |                 | ・「ゆく河の流れ」の第一| |   |   | 3 主題を読み取らせ、理解させる。| ・主題を読み取り、理解する。  |  段落に示されている。 | |   |   |                  |                 |             | |   |   | 4 作者のものの見方・考え方を「学| ・学習シ−トに記述する。    | ・学習シ−トを回収する。| |   |   |   習シ−ト」に書かせる。    |                 |             | |   |   |                  |                 |             | |   |   | 5 『方丈記』の感想文を書かせる。| ・感想文を書く。        | ・感想は一般論や抽象論に| |   |   |                  |                 |  ならないよう指示する。| | 終結| 5分| 6 本時のまとめと次時の予告   | ・まとめと次時の予告を確認する。|             | |   |   |                  |                 | ・感想文を回収する。  | +-----+-----+--------------------------------+-------------------------------+-----------------------+