印刷用紙   :B4 縦 1ページの行数:30 1行の文字数 :114     「  国  語  」  学  習  指  導  案                                                      指導者  藤 原 正 義  一 単元名   〔少年の日々〕==−==人物の心情を読み味わい,作品の主題にせまる==−==              二 教材名   「少年の日の思い出」ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳                        三 教材観                                                      この作品は,「わたし」と「友人」がわたしの書斎で,少年時代の思い出を語ろうとする現在の場面と,友人が少年   時代に熱中したちょうの収集にまつわる思い出を語る過去の場面からなる。思い出を語る場面の主人公である「僕」の   年齢が生徒と近いことと,子供特有の知的好奇心・収集欲につながるちょう集めに似たような経験が多かれ少なかれ,   どの生徒にもあることなどから,生徒にとって親近感がもてる教材であると考える。    この作品は,単に少年のちょう集めを思い出としたものではなく,本の挿絵でしか見たことのないクジャクヤママユ   を見て,その美しさと珍しさに心引かれ,やがてはそれを手に入れたいという誘惑に負けて生まれて初めて盗みを犯す   少年の心理やその後母に打ち明けた結果,盗んだことを正直に告白するように勧められて許しを願い出たが,エーミー   ルはゆるしてはくれなかったことから「一度起こしたことは,もうつぐないのできないものだということを悟」った少   年の心情を鋭く描いたものとなっている。    クジャクヤママユにまつわるこの苦い思い出は,大人になった現在も人には「話すのも恥ずかしいこと」として心の   奥に残っていることが,現在の場面を描いた前半部分からよく理解することができる作品構成となっている。    人間の心情を鋭く描くとともに,その心情表現を支えるすぐれた情景描写を味わうことによって自己をみつめ,人生   を考える契機とさせたい。                                          四 指導目標                                                     1. 情景や心情の描かれているところを指摘するとともに,読み味わうことができるようにさせる。           2. 語句の意味を正しく理解するとともに,文章表現に即して主題をとらえることができるようにさせる。        3. 作者の表現意図を正しく理解するとともに,自分の感想や考えをもつことができるようにさせる。                                                               五 指導計画                                                     第一時  本文を通読し,新出漢字の正しい読みや難語句を確認させる。                            通読後に書かせた感想を話し合わせて,作品のイメージを豊かにさせる。                       全文を七つの場面に分けて,作品構成を理解させる。                                                                                   第二時  第一場面を読み,登場人物の置かれている状況を読み取らせる。                           「わたし」と「友人」の,ちょう集めについ読み取らせる。                             学習シートを使用して,複数の表現を指摘させたうえで,その違いを明らかにさせる。                                                                    第三時  第二場面から,「僕」がちょう集めに熱中する様子を読み取らせる。                         第三場面から,コムラサキにまつわる思い出と,先生の息子に対する「僕」の気持ちを読み取らせる。                                                             第四時  第四場面から,クジャクヤママユにまつわる思い出を読み取らせる。                         第四場面から,生まれて初めて盗みを犯す「僕」の気持ちを読み取らせる。                      学習シートを使用して,複数の表現を指摘させたうえで,その違いを明らかにさせる。                                                                    第五時  第五場面から,「僕」がちょうを持ち出す場面と良心に目覚める「僕」の気持ちを読み取らせる。            第五場面から,クジャクヤママユをつぶしてしまった「僕」の気持ちを読み取らせる。                                                                    第六時  第六場面から,母に打ち明け,エーミールに謝罪する彼の気持ちを読み取るらせる。             (本時) 学習シートを使用して,複数の表現を指摘させたうえで,その違いを明らかにさせる。               第七時  第七場面から,「一度起きたことは,もうつぐないのできないものだということを悟った。」,「ちょう         を一つ一つ取り出し,粉々に押しつぶしてしまった。」の記述をもとに,作品の主題をまとめさせる。                                                             第八時  主題をもとに,生徒自身の感想や考えを発表させる。                                学習後の感想を書かせる。 六 指導展開案(第6時)                                             +−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+  |段階| 指 導 内 容 |主 発 問 及 び 教 師 の 活 動|予 想 さ れ る 生 徒 の 活 動|  +−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+  |  |1 前時の学習内容|1 前の時間に学習した内容を,思い出し|・ 「僕」が,エーミールの部屋から,ク|  | 導| の想起と整理  | てその要点を説明してください。   | ジャクヤママユを盗んで持ち出した。 |  |  |         |                   |・ 良心に目覚めて,クジャクヤママユを|  | 入|2 本時学習範囲と|2 今日の学習内容は,第6場面の「僕」| 返しに行ったが,つぶれてしまった。 |  |  | 学習内容の提示 | の行動をもとにして,「僕」と他の人物|                   |  |5分|         == の気持ちを読み取っていくことです。 |                   |  +−−++−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−==−−−−+|・ 板書した,本時の学習の課題をノート|  |  ||※エーミールの部屋からちょうを持ち出した「僕」の行動を|| に視写する。            |  |  || もとにして,「僕」の気持ちがどのように変化したかを読||                   |  |  || みとるとともに,登場人物の気持ちを読み取る。    ||                   |  |  |+−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|                   |  |  |         |                   |                   |  |  |3 本時の学習範囲|3 本時の学習範囲を指名して,4名に音|・指名された生徒は,それぞれ音読する。|  |  | の指名による音読| 読させる。             |                   |  |  |         |                   |                   |  | 展|4 母に打ち明ける|4 母に打ち明けるまでの「僕」の気持ち|・ エーミールのクジャクヤママユをつぶ|  |  | までの「僕」の気| がどのように変わっていきましたか。 | したことで悲しくなり,どうしようかと|  |  | 持ちの変化   | ・悲しい気持ち(家に帰った)    | 迷っていたが,ついに母に打ち明ける決|  |  |         | ・迷い(夕方まで・・・腰かけていた)| 心をした。             |  |  |         | ・決心(ついに,一切を・・・した) |                   |  |  |         |5 母に打ち明けようと決心した「僕」を|・ 勇気があってえらいと思う。    |  |  |         | どう思いますか。          |・ 僕ならだまっているかも知れないが,|  |  |         |                   | 正直に話したのは勇気があってよい。 |  |  |         |                   | (男女とも同意見の発言が他にもあり)|  |  |5 正直に打ち明け|5 打ち明けられた母は,「僕」に対して|・ エーミールの所にあやまりに行くよう|  |  | た「僕」に対する| どうしましたか。          | に言った。             |  |  | 母の説得    |                   |・ 自分の持っているちょうをあげて許し|  |  |         |                   | てもらうように言って聞かせた。   |  |  |         |                   |                   |  | 開|6 母の説得に対す|6 母から,エーミールに謝りに行くよう|・ ぐずぐずして,行かなかった。   |  |  | る「僕」の態度 | に説得された「僕」は,その後どうしま|・ エーミールでなければ,すぐに謝った|  |  |         | したか。              | けれど,すぐに行こうとはしなかった。|  |  |         | ・なぜ,すぐ行こうとしなかったのか。|・ エーミールは僕のことを分かってくれ|  |  |         |                   | るような人間でなかったから。    |  |  |         |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|  |  |7 学習シートへの||※ここまで学習したことをもとにして,学習シート3.を使って5分程度で視写・書||  |  | 記入      ||き込みをする。シートには,「僕」と「エーミール」についての読みの視点にあた||  |  |         ||る部分の視写及び書き込みとする。教師は必要に応じて個別指導を行う。    ||  |40分|         |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|  |  |8 「僕」とエーミ|8 母に説得された「僕」は,エーミール|・ 正直に,自分がやったと言った。  |  |  | ールの会話にみら| にどのように謝りましたか。     |・ 正直に言うのは,いや(辛いの意味)|  |  | れる二人の気持ち|                   | だと思うけれど,勇気があると思う。 |  |  |         |                   |  (同じような発言が他にも数名)  |  |  |         |                   |・ 自分のおもちゃをみんなやると言った|  |  |         |                   |・ 自分のちょうをみんなやると言った。|  |  |         |                   |                   |  |  |9 「僕」の謝罪に|9 「僕」が必死になって謝罪したことに|・ 怒ったりしないで,低く「ちぇっ」と|  |  | 対するエーミール| 対して,エーミールはどうしたか。  | 舌を鳴らしていた。         |  |  | の言動     |                   |・ 冷淡に,軽蔑的に見ていた。    |  |  |         |                   |・ 「結構だよ」と言って,許してくれな|  |  |         |                   | かった。              |  |  |         |                   |(エーミールを批判する発言が多かった)|  |  |10 謝罪を拒絶され|10 必死に謝罪したのに,エーミールが許|・ 「あいつののどぶえに飛びかかるとこ|  |  | た「僕」の絶望 | してくれなかったことに対して「僕」は| ろだった」から,本当に悔しかったと思|  |  |         | どのような気持ちだったと思うか。  | います。              |  |  |         |  一方,エーミールはどんな気持ちだっ|・ どんなに謝っても許してくれないので|  |  |         | たと思いますか。          | もうあきらめるより仕方なかったと思い|  |  |         |                   | ます。               |  |  |         |                   |・ いっそうのこと,エーミールに叱られ|  |  |         |                   | た方が,気がすんだと思います。   |  |  |         |                   |・ 大切にしていたちょうをだいなしにさ|  |  |         |                   | れたエーミールのつらい気持ちも分かり|  |  |         |                   | ます。               |  |  |         |                   |                   |  |  |11 学習シートへの|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|  +−−+ 記入      || 学習シートの残りの部分を書かせることとし,教師は机間巡視をしながら,必要||  |  |         ||に応じて個別指導を行う(7分程度)。併せて,辞書やノート等の点検も行う。 ||  | ま|         |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|  |  |         |                   |                   |  | と|12 シートの回収 |12 学習シートを回収する。      | 学習シートを提出する。       |  |  |         |                   |                   |  | め| 本時のまとめ  |  本時のまとめと次時の予告をする。 | 本時のまとめをし,次時の予告を聴く。|  |  |  及び     |                   |                   |  |5分| 次時の予告   |                   |                   |  +−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+