印刷用紙:B5縦 1ページの行数:41 1行の文字数:76 ア コンピュータ計測を利用した「物体の運動と速さ」の指導プログラム (ア) 単元名 「物体の運動」 (イ) 単元設定の理由  本単元は、力の相互作用と、物体の運動についての観察、実験から、物体に働く力 と運動の関係を理解させ、自由落下運動や斜面にそった落下運動における力と速さの 変わり方の関係を定性的に見いださせるため設定をした。  特に、本単元を通して重点的に指導したいことは、物体の運動についての観察、実 験から、運動のエネルギーについての初歩的な見方や考え方ができるような探究的な 態度の養成を図ることである。 a 小学校の理科、力に関する学習について、第3学年では、「磁石に引きつけられ  るものと引きつけられないものがあること」、第4学年では「同じ重さの重りで、  てんびんとつりあわせること」を学習し、力について感覚的なとらえ方をしている。 b 第5学年では、「てこの支点、力点、作用点」「てこのつり合い」、中学校第1  学年では、「力の働き、大きさ、向き、作用点、重力、静電気」の学習により、重  力の概念、質量の概念を導入している。   ばねの学習では、加える力の大きさとばねの伸びの関係を調べ、力の単位や力の  三要素、力を矢印で表す方法などの表し方とともに、物体に働く力の大きさと物体  の変形の度合いの関係を学習している。 c また、中学校第1学年の「圧力」の学習で、小学校第3学年で学習した「閉じこ  められた空気や水に力を加えたとき、その手ごたえを感じさせること及び空気は押  し込縮められるが水は縮められない」ことなどを体験的に学習したことを発展させ、  圧力の定義・概念の学習、単位、水圧、大気圧を学習している。 d 力の学習における問題点は、生徒が直接経験し感覚的に力をとらえるような場合  は興味や関心を示すが、圧力、力の合成などのように抽象的な表現になると興味や  関心を示さなくなることである。 e 本単元は、視覚的、感覚的にとらえにくい観察、実験を扱い、処理のしかたも抽  象的になりがちなため、興味や関心の高まりがみられないのが実態である。そこで、  観察、実験にコンピュータ計測を導入することにより、物体の運動を視覚的にとら  え易く、容易に観察、実験の繰り返しを可能にすることにより、観察、実験に対す  る予想・仮説の設定・検証をさせ、物体の運動の様子に対する興味や関心を高め、  物体の運動と力、慣性の法則を理解させることを主なねらいとしている。 f 授業の展開は、はじめに、従来の記録タイマーによる方法で物体の運動の様子を  とらえさせ、次に、コンピュータ計測を利用して同じ観察、実験を行い、速さと時  間、移動距離と時間の関係をディスプレイ上に表示し、従来の記録タイマー利用に  よる観察、実験と同じ結果をえながら、観察、実験への取り組みやすさ、処理のし  やすさ、などコンピュータ計測に対する興味や関心を高める。   次に、コンピュータ計測を利用し、観察、実験の条件を変え次々に観察、実験を  繰り返し「移動距離と時間」「速さと時間」の関係を観察、実験の中から見つけだ  させる。 g 物体の運動の様子を従来の記録タイマーを利用し調べる場合、観察、実験の内容  に生徒の発想を取り入れ行うことは容易でないが、コンピュータ計測を利用する場  合は、生徒の能力、適性に応じて行うことが可能なため、生徒の興味や関心を高め  ることができるものと考える。 h この単元の学習を通じ、「エネルギーの概念」形成の基礎を図るため、様々に条  件を変え観察、実験をさせ、等速直線運動や落下運動の法則性をを生徒自身に見い  ださせ、自然の事物・現象に対する興味や関心を高めさせたい。 (ウ)単元の指導目標 本単元のねらいは、次のとおりである。 a 物体の運動についての観察、実験を行い、運動には速さと向きがあることを理解  させる。 b 他から物体に力が働かない運動についての観察、実験を行い、その物体は等速直  線運動をする事を見いださせる。 c 慣性の法則について理解させること。 d 落下運動についての観察、実験を行い、物体に力が働く運動では、時間の経過に  ともなって速さが変わることを見いださせる。 e 速さが変わる割合は、物体に働く力の大きさや物体の質量により変わることを理  解させる。 (エ)単元の教材構造 省略 (オ)「物体の運動と速さ」各時の主題 内容ねらい +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ |第1時| 授業に関するアンケート調査   |                | |    | 事前テスト           |                | +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ |第2 |物体に力が働くとき、物体の運動は|物体に同じ大きさの力が働きつづ| | 3時|どのようになるか       |ける時、物体の運動がだんだ速く| |   |                |なる運動をする。 | | |        |落下運動は速さがだんだん速くな| |   |                |る運動である。 | +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ |第4時|物体に力が働かない時物体の運動は|物体に力が働かない時は、等速直| |   |どのようになるか        |線運動をする。        |                        慣性の法則を知る。   +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ |第5時|様々な条件下における物体の運動の|様々な条件で観察、実験を行い、| |   |様子               |単元のまとめを図る。 | +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ |第6時|授業に関するアンケート調査 | | |   |事後テスト | | +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ (カ)指導プログラム例(第2.3時の指導プログラム) a 主題「力が働くと運動はどのように変わるか」 b 指導目標  斜面上を下る台車の運動の様子から、物体の運動方向に働く力の大きさが変わると 運動のようすが変わることをとらえ、確かめようとする意欲を育てるとともに、科学 的に追求しようとする態度を養う。 c 目標行動  物体の運動方向に働く力の大きさにより物体の運動のようすが変わることを、斜面 を使って調べ、移動距離と時間、速さと時間をグラフに表し、説明することができる。 d 下位行動目標  1 記録タイマーを使い運動の様子を記録することができる。  2 運動の様子を移動距離と時間、速さと時間のグラフに表すことができる。  3 斜面上にある物体に働く力を説明できる。  4 斜面上にある物体を滑り落とそうとする力の大きさが斜面の角度により変わる  ことを説明できる。  5 記録タイマーにより斜面を下る台車の運動を記録することができる。  6 斜面を下る台車の運動は、速さが一定の割合で増加する運動であることを説明   できる。  7 コンピュータ計測を利用し台車の運動を記録することができる。  8 コンピュータ計測により、記録タイマーと同様の計測ができることを説明でき   る。  9 コンピュータ計測を利用し、斜面の角度を変えたときの運動の様子を記録でき   る。 10 斜面の角度を変えたときの運動の様子を移動距離と時間、速さと時間のグラフ   に表し、説明することができる。 11 コンピュータ計測を利用し、自由落下運動の様子を観察、実験により確かめる   ことができる。 12 自由落下運動の様子を移動距離と時間、速さと時間の関係のグラフに表し、説   明することができる。 13 コンピュータ計測を利用し、物体の質量を変えたときの落下運動の様子を観察、   実験により確かめることができる。 14 物体の質量を変えたときの落下運動の様子を移動距離と時間、速さと時間のグ   ラフに表し、説明することができる。 15 物体に一定の力が働くとき、物体の運動は速さが一定の割合で変化することを   説明できる。 16 速さが変化する割合は、物体に働く力が大きいほど大きくなることを説明でき   る。 17 自由落下運動をする物体には、常に一定の大きさの力が働いていることを説明   できる。 18 コンピュータ計測の結果のグラフから物体の運動の様子を説明できる。 e 形成関係図とグループ分け 省略 f 教授=学習過程(プロセスチャート) 第2時 +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ |時| | |教材・教具、教育機| |間|主な学習内容 |    教授=学習過程 |器と教育留意事項 | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | |<時間> |  ○はじめに |コンピュータによる| | |1前提条件 | | |シミュレーション | | |・斜面上の物体|□コンピュータ−◇ディネステスト|既習事項斜面上の物| |七| に働く力 ||でシミュレー | |体に働く力の様子 | | |・瞬間の速さ、||ン | | | |分| 平均の速さ ||教師が説明 | |速さの表し方 | | |2問題提示 ||−−−−−−−| | | | | 斜面上を下る| □主題のねらいの| | | |台車の運動の様| |把握 話し合い| | | |子はどうか | | | | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−|−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | |3主題確認 | □実験内容の説明|学習プリント、記録| | |<展開> | ▽斜面を下る台車|タイマー | | |・記録タイマー| |の実験 | | | | の操作方法 | □記録の処理の仕|学習プリント | | |・グラフの書き| |方の説明 |班毎に実験 机間指| |三| 方 | | |導 | |十| | ▽データを加工し|学習プリント | |三| | |グラフを書く |速さ、距離と時間 | | | | | | | |分| |□教師が説明−−◇グラフを作成で|テープの打点の取り| | | || |きたか |方、縦軸、横軸 | | |3評価 ||−−−−−− ▽グラフから台車|班毎に討議 | | | 速さと時間の|        |の運動について|班討議結果を学級で| | | 関係をいえる| |どのようなこと|検討 | | | |        |がいえるか | | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−|−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | |<まとめ> | ◇ポストテスト |学習プリント | | |1ポストテスト| | |速さと時間が比例 | |十| 斜面を下る台| | | | | | 車の速さと時| | | | |分| 間の関係をい| | | | | | える | | | | | |2次時の学習予| □次時の予告 |次時にはコンピュー| | | 告 | ○おわり |タ計測を利用するこ| | | | |とを話す | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ 第3時 +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ |時| | |教材・教具、教育機| |間|主な学習内容 | 教授=学習過程 |器と教育留意事項 | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | |<導入> | ○はじめ |学習プリント | | |1前提条件 |□教師が補足−−◇レディネステス|前時に学習した斜面| | |・斜面を下る台||説明 |と |下る台車の運動につ| | | 車の運動、時|| | |いて再確認する | | | 間と速さ、時||−−−−−−−| | | | | 間と移動距離| | | | | | の関係 | | |学習プリント | | |2課題提示 | ◇プレテスト |感覚的にとらえさせ| | | 斜面の角度を| | |る | | | 変えたときの| | | | | | 台車の運動の| | | | | | 様子 | □主題にねらい把|斜面の角度により力| | |3課題の確認 | |握 |の大きさが変わるこ| | | 斜面の角度を| | |とを再確認する | | | 変えたときの| | | | | | 台車の運動の| | | | | | 様子 | | | | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−|−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | |<展開> | | |実験器具、学習プリ| | |1問題提起 | □コンピュータ計|ント | | |・コンピュータ|        |測の方法 |コンピュータの扱い| | | 計測による測| | |方をしらせる | | | 定の方法 | | | | | |2コンピュータ| ▽コンピュータ計| | | | 計測による測|        |測による観察、| | | | 定 方法と役|        |実験方法 | | | | 割分担 | | | | | |評価1 |□教師補足説明−◇実験方法を説明| | | |コンピュータ計||       |できるか | | | |測による実験方||−−−−−−−| | | | |法はよいか | | | | | |3コンピュータ| ▽コンピュータ計|ディスプレイ上のグ| | | 計測による台| |測による台車の|ラフが記録タイマー| | | 車の運動の様| |運動の記録 |の記録と同様の物で| | | 子の記録 | | |あることを気づかせ| | |評価2 | ◇記録タイマーと|る | | |記録タイマーと| |同様の結果を得| | | |同様の計測結果| |たか | | | |を得たか | | | | | |4問題提示 | ▽斜面の角度を変|斜面の角度が大きい| | |・斜面の角度を| |えたときの台車|と台車すべらせよう| | | 変えたときの| |の運動の様子 |とする力が大きくな| | | 運動の様子 | | |ることに気づかせる| | |評価3 | | | | | |台車の運動の予| ◇結果を予想 | | | |ができたか | | | | | |5斜面の角度を| | | | | | 変え測定する| ▽角度を変え実験|生徒が自由に角度を| | |評価4 | | |変え、何度も実験を| | |角度の大小と運| ◇角度とグラフの|繰り返させる | | |動の違いがわか| |関係は | | | |る | | | | | |6問題提示 | □自由落下運動の|自由落下=斜面の角| | |・自由落下運動| |説明    |度が90度 | | | の時の物体の|□教師補足説明 ◇結果の予想 |学習プリント | | | 運動の様子 || ▽自由落下運動を|教師の演示実験 | | |評価5 ||−−−−−−−|する物体の運動| | | |斜面の角度が9| |の様子を測定 | | | |0度の時と同じ| | |学習プリント | | |ことをつかむ | | | | | |7課題 | ◇自由落下運動を|教師の演示実験 | | | 自由落下運動| |する物体に働く| | | | をする物体に| |力の様子 | | | | 働く力 | | | | | |評価6 |□教師補足説明 ◇物体に働く力の|グラフの様子から一| | |自由落下運動を|| |大きさが一定だ|定の大きさの力が働| | |する物体に働く||−−−−−−−|とわかる |いていることを想起| | |力の様子 | | |させる | | |8課題 | | | | | |自由落下運動を| ▽質量を変え自由| | | |する物体の質量| |落下運動の様子| | | |を変えたときの| |を記録 | | | |運動の様子 | | | | | |評価7 | | | | | |質量に変わりな|□教師補足説明 ◇運動の様子に変|教師が演示実験 | | |く運動の様子が|| |わりが見られな| | | |変わらない ||−−−−−−−|い | | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−|−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | |<まとめ> | | | | | |1ポストテスト| | | | | |物体に一定の大| ◇ポストテスト |自由落下運動をする| | |きさの力が働く| | |物体の運動 | | |時の運動の様子| | |距離と時間、速さと| | |2次時の学習予| □次時の学習予告|時間の関係をグラフ| | | 告 | | |に表すことができる| | | | ○おわり | | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+