印刷用紙:A4縦 1ページの行数:54 1行の文字数(半角で):86 高等学校 物理1B コンピュータを利用した運動の解析 岩手県立総合教育センター 理科教育室 互野 恭治 1 単元と使用教材  この指導案は、平成6年度に研究開発した「開発教材4 光センサを用いた速さ測定器」と「 開発教材6 新・超音波を使った運動の解析装置」を用いて、「物理1B」の「(1)運動」「ウ 運動に関する探究活動」の指導を行うものである。  この単元について指導要領では、「運動に関する学習活動と関連させながら観察、実験を行わ せるとともに、観察、実験を通して、仮説やモデルの設定、推論、条件制御、数的処理、データ の分析・解釈、法則性の発見など、物理学的に探究する方法を習得させる。・・・また、解決す べき課題についての情報の収集、検索、測定、結果の処理など、探究の方法を駆使するに当たっ て、必要に応じて、コンピュータ等を活用させる。」となっている。  このことは、本教材の開発構想とねらいがほぼ一致している。つまり、「生徒にとって理解し やすいデータに加工して提示できる生徒実験」を基に、生徒自身が実験の概要を把握し、結果を ある程度予測し、意欲をもって実験に取り組む実験という点である。 2 単元のねらい  「(1)運動」の内容は、右表のような構成と <表> 物理1Bの「(1)運動」の内容 なっている。また、探究活動について指導要領 +−−+−−−−−−+−−−−−−−−−+では、「学習項目と関連させながら観察、実験 | |    |(ア)力のつり合い|を行い、観察、実験をとおして・・・物理学的 |(1)|ア 力と運動|(イ)運動の表し方|な探究する方法を習得させること、適宜コンピ | |   |(ウ)運動の法則 |ュータの活用を図ること」となっている。 | 運 |   |(エ)落体の運動 | 「ウ 運動に関する探究活動」は、運動の法 | +−−−−−−+−−−−−−−−−+則や運動量などを学習したのちの単元であり、 | |イ 運動量 |(ア)運動量と力積|学習項目としては速度、加速度、力の概念や衝 | 動 |  |(イ)運動量の保存|突における力の変化などがあげられる。したが | +−−−−−−+−−−−−−−−−+って、これらを探究活動をとおして総合的に理 | |ウ 運動に関する探究活動 |解させ、さらに演繹的に運動の現象を把握でき +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+る力をつけることが単元のねらいと考える。 3 単元の指導の概略 (1)速さの絶対量の把握  物理においては、ともすれば法則性にのみ目を向けがちである。そのため、実体を伴わない理 解が多い。速さについても意外と認識がうすい。例えば、歩く速さや走る速さ、投げたボールの 速さなど人の回りの速さについても的確に答えられる生徒は少ない。  そこで、「開発教材4 光センサを用いた速さの測定器」を利用して台車の速さや振り下ろし た手の速さを提示してみせることにした。 (2)運動の法則をイメージとしてとらえる  一般に、物理を履修した後の生徒であっても、位置の変化と速さの変化を区別できるが、速さ の変化と加速度の変化を明確に区別できる生徒は少ない。さらに、力が運動に及ぼす影響となる と的確に述べれる生徒の数は少なくなる。  これは、位置の変化が速さになり、速さの変化が加速度になり、加速度を生み出すものは力で あるということは頭の中でわかっていても、繰り返しそのような事象を見せない限り、納得する ことができない概念だからである。  そこで、「開発教材6 新・超音波による運動の解析装置」を使って、いろいろな運動につい て、位置の変化、速さの変化、加速度の変化、力の変化の四つの側面から生徒自身に探究させる ことにした。  学習指導展開案 (2時間) +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−+ | | 学 習 内 容 | 学 習 活 動 |時間|  留 意 点 | +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−+ |導|「(1)運動」で学習し |・「速さ、加速度、力」の定義につ| 5 | | | |たことがらを振り返っ| いて復習する。 | | | |入|てみる。 | | 分 | | +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−+ | |【演示実験】 |・台車の速さの測定 | |・動く距離や時間| |展|速さの絶対量の把握 |  生徒に台車を動かして見せ、そ | |から、ある程度正| | | | の速さを予想させ実験する。 | |確な値を予想させ| |開|「開発教材4 光セン| (0.5m/s〜0.7m/s程度) |15|る。 | | | サを利用した速さ測|・手を振り下ろす速さの測定 | |・自動車の速さが| |1| 定器」を利用 | 生徒に手を振り下ろさせ、その | |いかに危険なスピ| | | | 速さを比べる。 | 分 |ードであるかを話| | | | (5m/s〜20m/s程度) | |す。 | +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−+ | |【生徒実験】 |・装置の説明 | |・グループは3人 | | |運動の法則をイメージ| 原理、測定方法、表示方法、実験| |1組とする。 | |展|としてとらえる |の進め方について説明する。 | | | | | | | |・装置は10セット | | | |1.静止している台車の運動 | |用意するが1セッ | |開| +−−−−−+ |(台車をレールの中央で静止させ、| |トは予備とする。| | | | 課題実験 | | 3秒間ぐらい記憶させる) | | | | | +−−−−−+ |2.等速運動する台車の運動 | |・装置の説明は実 | |2| |(台車を手で押し、レールの隅に到| |際に装置を動かし | | | | 着する直前までの運動) | |ながら行う。 | | | |3.斜面を下りる台車の運動 |50| | | |   |(ゆるい斜面上で台車を動かしたと| |・実験を行う前に | | | | きの運動) | |必ずグラフを予想 | | |展開2及び展開3は、|4.ゴムひもで引くときの台車の運動| |させる。 | | |「開発教材6 新・超|(ばね定数の小さいゴムで引いたと| | | | | 音波による運動の解| きの運動) | 分 |・実験の予想及び | | | 析装置」を利用 |5.水平面で往復する台車の運動 | |結果については学 | | | |(台車を手で押し、壁に反射させ、| |習シートを利用す | | | | 戻ってくるまで記録) | |る(学習シートに | | | |6.斜面を上って下りる台車の運動 | |ついては資料編を | | | |(ゆるい斜面で台車を手で押し、上| |参照)。 | | | | って戻るまでの運動) | | | +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−+ | |【生徒実験】 | グループごとに自由に実験させる| |・s-tグラフより | |展|運動の法則をイメージ|台車を用いても、利用しなくてもよ| |予想どおりの結果 | | |としてとらえる |い。 | |が出ているかを判 | |開| +−−−−−+ | |20|断させる。 | | | | 自由実験 | |台車を用いない例 | | | |3| +−−−−−+ |例1・・・送信器を手で持ち、常に受 | 分 | | | | | 信器の方へ向けながら回転する。| | | | | |例2・・・例1の運動(回転)をしな | | | | | | がら、遠ざける。 | | | +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−+ |終|実験のまとめ | 位置、速さ、加速度及び力の働き|10| | |結| |についてまとめる。 | 分 | | +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−+