印刷用紙:A4縦 1ページの行数:55 1行の文字数(半角で):108 高等学校/農芸科学科/1年 理科/物理IA        電 波 に よ る 情 報 の 伝 達                                       小林 晃  岩手県立大船渡農業高等学校 1.日時・場所 平成6年10月1日(土)1〜3校時 物理実験室   2.対象生徒  岩手県立大船渡農業高等学校 農芸科学科 1年B組34名(男子14名、女子20名) 3.教科書   物理の世界IA(東京書籍) 4.単元   「情報の伝達」(教科書では「1地球に広がる通信網」)/大単元「情報とその処理」(第2編 情報) 5.単元の構想   物理IAは日常生活に関係の深い事象を題材に、観察や実験をとおして物理の原理や法則及びその応用について理解  させ、科学技術の進歩と人間生活とのかかわりについて認識させる点に特色を持つ科目である。この「情報の伝達」の  単元では通信を題材に音、光、電流、電波の基本的な性質が通信技術の原理に応用されていることを理解させ、その認  識を深めさせることをねらいとしている。   しかし、生徒の多くは物理の学習で要求されるような言葉や数式による抽象的で論理的な思考が苦手であるため、従  来のように講義中心の授業では学習内容がなかなか理解されず、日常的な素材を取り上げていても興味や関心が持続し  にくい面がある。その一方で、職業高校という性格からか、具体的な観察や実験、作業や実習などの体験的な学習を好  む傾向にある。また、生徒たちは日常生活の中にある通信装置を物理とのかかわりでとらえたことが無いように思われ  る。   そこでこのような生徒たちの実態に合わせ、日常生活との関連で物理のおもしろさを伝えるために、この単元の指導  を次の2つのことを大きな柱として考えた。  (1)観察や実験を主体とした授業の構成にする。しかも、それによって学習内容の理解が無理なく体験的に進められ     るようにする。  (2)生徒自身による通信装置の製作を授業の中に取り入れる。これによって物理的な視点から日常生活の中にある通     信装置に主体的にかかわり、興味や関心を高め認識を深めさせる。   このため、次の指導計画に示すように、開発した製作教材を含め、できるだけ生徒一人一人の直接体験となるような  観察や実験を選び、単元の構成と展開を考えた。 6.単元の指導計画 +−−−−+−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 過程 | 項目 |時間| 指  導  内  容  |     展  開(教材・教具、実験等) | +−−−−+−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |波動の |音に |1時|・音が波(空気振動の伝搬)|・大型のつるまきばねによる演示   | |基本事項|よる | | であること |・まとめプリント | |の理解 |情報の| |・波の要素 |・パソコンを用いた音声波形の表示と再生実験 | | |伝達 |2時|・音の3要素 |・ピアニカによる演示 | | | | |・波の要素との関係 |・パソコンで確認実験 | | | | |・波長と振動数の関係 |・まとめプリント | | | | |・波の伝わり方の一般的性質|・パソコンを用いて自分の音声波形の観察と再生実験 | +−−−−+−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |通信原理|電流に|3時|・マイクロフォンの原理 |・ウォークマンとラジカセにコイルをつなぎ、誘導電流 | |の理解 |よる | |・電磁誘導 | による通信の演示実験     | | |情報の| | |・まとめプリント | | |伝達 | | |・ラジカセにコイルとフェライト磁石をつなぎ確認実験 | | | |4時|・スピーカーの原理    |・マイクをスピーカーにする演示実験 | | | | |・コイルに流れる電流と磁界|・まとめプリント | | | | | との関係 |・コイルとフェライト磁石で紙コップスピーカーを作り | | | | | | ラジカセから音を聞く実験 | | | | | |・クリスタルイヤホンをつないで通信実験 | +−−−−+−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |通信技術|電波に|5時|・電波の発見の歴史 |・ヘルツの実験の演示    | |の理解と|よる | 〜 |・電波の基本的な性質 |・まとめプリント | |経験 |情報の|7時|(電界、磁界、電磁波) | | | |伝達 | |(反射、屈折、回折) | | | | | 本 |・電波による通信 |・通信装置の製作と実験 | | | | 時 |(コイル、コンデンサー、 |・製作のためのプリント | | | | | トランジスタ) | | | | | |(増幅、変調、発振、共振) | | +−−−−+−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |日常生活|映像の|8時|・映像を電気信号に変える |・演示によるTV画面の原理の説明 | |と物理の|伝達と| | しくみ |・通信についてのまとめ | |かかわり|まとめ| |・通信衛星 | | |の理解 | | |・まとめ |・日常生活と物理のかかわりについてのまとめ | +−−−−+−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 7.本時の目標 (1)電波の基本的性質や電波による通信の歴史を知る  (2)通信装置の製作や実験をとおして、電波による通信に物理の原理や法則が利用されていることを理解する。 8.使用教材・教具、  ・ヘルツの実験の自作教材(誘導コイル、アルミ板、針金を輪にしてネオン管をつけたループアンテナで構成)  ・まとめプリント(電波の発見の歴史、電波の基本的性質、電波の発生、電波による通信で構成)  ・ラジカセ 2台  ・開発した通信装置の製作教材(トランジスタ1個と数点の部品で構成したFM変調の送信機でトリマコンデンサーの   つまみと自作コイルの形状で発振周波数が可変。各自の名前を焼き付けたプリント基板と部品をセットにした)  ・製作と実験のためのプリント3枚   (「部品とそのはたらき、回路のおよそのはたらき」「製作の手順」「送信実験、発振する電波の周波数がコイルと    コンデンサーで決まるしくみ」)  ・はんだごて等電子工作用の工具 1人1セット 9.本時の展開 +−+−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+ | | 生徒の学習活動  | 学習内容・教材   | 教師の指導・留意点  | 準備物・備考  | +−+−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+ |導|・演示を見て目には見え|【演示実験】ヘルツの実験 |・ヘルツの実験の説明 |・教卓の上に自作した| | |ないが、電気的な振動が|−誘導コイルを用いて火花発振|装置の説明(誘導コイル→|ヘルツの実験教材を設| |入|空間を伝わる電波の存在|を行い発生した電波をアンテナ|高電圧発生 ライターやプ|置しておく | | |について光や音で知り、|につけたネオン管が光ることで|ラグなど身近なものの例)|・教室の後方にAMの| | |意識する |電波の存在を確認− |・火花発振→離れた受信ア|周波数帯に合わせたラ| | |・身近な電波の発生例を|−AMラジオでも受信 |ンテナのネオン管が光る |ジオを用意しておく | | |知る | |・送信アンテナと受信アン|・生徒の机上にはまと| | |・電波の伝わり方に特徴| |テナを垂直、平行にしたと|めプリントを配布して| | |(横波)があることを知る| |きの違い |おく | |1|・教科書を見ながら電波|(予習)(まとめプリント) |・AMラジオで火花発振に|[装置を片づける間に| |5|について予習しプリント|−電波の基本的な性質の部分 |よる(雑音)電波を受信 |プリントをまとめさせ| | |にまとめる | |(雷、天候の予測などの例)|る] | +−+−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+ |展| |<講義>(まとめプリント) | | | | |・説明を聞きながらプリ|・電波の発見の歴史 |・導入で演示・説明したこ|・展開の順序に従って| |開|ントにまとめていく | ファラデー、電磁誘導 |とや身近な例をあげながら|まとめプリントの内容| | |・身近にありながら特に| マクスウェル、電気的振動  |説明する。 |を黒板に板書しておく| |1|意識していなかった電波| ヘルツ、マルコーニ |また、前時までの学習事項| | | |とそれを用いた通信の基|・電波の基本的性質 |である音や電磁誘導などと| | | |礎について知る。 | 電界、磁界、電磁波  |関連させて、具体的なイメ| | | | | 電波の伝わり方 |ージが少しでも持てるよう| | | | |・電波の発生 |にする。 | | | | | 電流の変化、電子の振動 | | | | | | 雑音電波と放送電波 |・答えられる部分は生徒に| | | | |・電波による通信(送信) |発問し、説明が一方的にな| | |3| | トランジスタ、コイル |らないようにする。 | | |5| | コンデンサー、共振回路 | |[休憩時間の間にプリ| | | | 変調 | |ント、部品を配布] | +−+−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+ |展| |<製作と実験> | | | | |・電子回路の部品の実物|(製作と実験のためのプリント|・部品を配布し、実物を示|・生徒の名前を焼き付| |開|を見ながら、名前やはた|【通信装置の製作】 |しながら簡単に説明を加え|けたプリント基板と部| | |らきを知る |・部品とそのはたらき |る。 |品をセットにしたもの| |2|・通信装置を製作しなが|・回路のおよそのはたらき |・はんだごての使い方を取|を用意しておく。 | | |ら、プリントで回路のは|・製作の手順 |り付けが面倒なコイルとア|・はんだごて等電子工| | |たらきや動作原理を知る| |ンテナ線を例に一斉指導し|作の工具はあらかじめ| | |・自分で製作した装置を|【送信実験】 |後はプリントに沿って各自|生徒の机上に据え付け| | |使い、声を送信・FMラ|−トリマーコンデンサーのつま|行わせる。個々の生徒に机|ておく | | |ジオで受信することで共|みを調製して発振周波数を90|間巡視しながら指導する。|・ラジカセを1台教卓| | |振、変調や電波の性質な|MHzに合わせ、自分の声を送 |・送信実験の仕方を演示し|に用意してあらかじめ| | |ど通信技術を体験的に理|信する。 |てみせ、うまくいかない場|周波数を90MHz付| | |解する |−送信アンテナと受信アンテナ|合のチェック項目を指示 |近にあわせておく | | | |の位置関係によって受信感度が|・製作が終わった者には乾| | |9| |どうなるか調べる。 |電池を与え、実験させる。| | |5| | |・うまくいかなかった者に|[家でも試してみるよ| | | | |は放課後対応する。 |う勧める] | +−+−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+ |5| |本時のまとめと次時の予告 | | | +−+−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+