高等学校 理科(化学1B)学習指導案 

場 所 岩手県立不来方高等学校
生 徒 3年○組 (化学選択者:男子11名、女子5名、計16名)
指導者 山  平   清  人

○ 高等学校化学「有機化合物」の学習において応用力を高める指導に関する指導試案

(1) 指導試案の概要

ア 目  標

・有機化合物を日常生活と結びつける意識を育てる。
・学習で得た知識をあてはめて利用する応用力を高める。

イ 内  容

「銀鏡反応」の基礎的な概念や原理・法則を確認したところで、その知識を他の物質や日用品にあてはめ応用する。さらに、実験によって確かめられ他データを利用して平面鏡づくりに発展させる。

ウ 指導時間 5時間

エ 対  象 岩手県立不来方高等学校 3年○組(化学選択者:男子11名、女子5名、計16名)

(2) 指導の展開

【表−1】高等学校化学「有機化合物」の学習において応用力を高める指導に関する指導試案
段階 <学 習 活 動> 形態 指導上の留意点 使用教材
基礎
知識
確認
<今回考えを深めようとする化学的な
概念や原理・法則を確認する>
・学習で得た知識から発想できる反応物質を考える。
個人学習 ・アンモニア性硝酸銀水溶液は、放置すると雷酸銀などが生成され、乾燥後に爆発が起きるので余った液は捨てさせる。
・試験管はきれいなものを使う
・身の回りにある材料をいくつか持ってくるよう指示する。
・アンモニア性硝酸銀水溶液
・水酸化ナトリウム水溶液
・試薬(メタノール、ホルマリン、蟻酸、グルコース、スクロース等)
・実際に考えた物質を用いて実験をしてみる。(実験操作の確認)
・学習で得た知識から発想できる物質を含む日用品を考える。
2人1組の生徒実験




<日用品のなかに含まれる還元性のある官能基を含む有機化合物探し>
・持参した日用品を用いて実験をしてみる。
・いろいろな実験条件(薬品、温度、攪拌など)のデータ収集をする。
・応用力を高めるため、提示された課題について、実験方法(使用素材、条件、理由等)をレポートに書いてくる。
2人1組の生徒実験 ・身の回りにある材料を使う
・持ってきたものの濃度、暖める温度、攪拌の度合い、水酸化ナトリウムの添加などについてアドバイスをする。
・データをきちんと整理するように呼びかける。
・教科書にある銀鏡反応の実験のパターン
・アンモニア性硝酸銀水溶液
・水酸化ナトリウム水溶液
・試薬(ジュース等飲み物、しょうゆ等調味
料、食器用洗剤など数種類)
・課題実験計画プリント




<提示された課題を解決する>
・課題について、使用素材、方法、工夫、理由を書き公開し、他の班の情報を得る。
・きれいに反応が起こる条件を見つける。
同上 ・使用素材、方法、理由を書かせ公開し、他の班の情報を得るようにする。
・ガラスはきれいなものを扱う。
・教科書にある銀鏡反応の実験に準ずる
・手袋、新聞紙、白ラッカー
・スライソガラス、ガムテープ、ハサミ
・アンモニア性硝酸銀水溶液
・水酸化ナトリウム水溶液
・試薬(各班で考えた日用品から)
・実験装置の考案と組立。
・実験条件の整理
同上 ・使用する液体が極力少なくなるようアドバイスする。
・お湯の中でも耐えられる装置にさせる。
・課題実験のまとめ 全体 ・実験結果を表示して、今回の実験についてまとめさせる。  

(3) 指導試案に基づく学習指導案

指導試案に基づいた授業実践前の事前調査P1実施案を以下に示す。

ア 主  題 「生徒の有機化合物に対する意識調査」

イ 指導目標 本来の生徒の状況が把握できるように、リラックスさせ自分の意識を認識させる。

ウ 行動目標 本来の生徒自身の意識状況を思い起こし、スムーズに記入することができる。

エ 下位目標 ・日常生活を意識する。・学習内容を意識する。・日常と学習事項の接点を見つける。

オ 学習過程 以下の通り

【表−2】指導試案に基づいた事前調査P1実施案
段階
時間
主な学習内容 学習過程 教 材 ・ 教 具 と 留 意 事 項
導入



研究や資料の説明   ・リラックスして臨むように指示する。
展開




有機化合物の実験の認識
既習知識の確認
日用品に対しての関連
意識調査  高校化学「有機化合物」に関する調査(1−A)
●「有機化合物」の実験についてどう考えていたか(印象など)
●教科書で習った「還元性のある官能基」を含む有機化合物を名称または化学式(構造式や示性式)で、できるだけたくさんあげなさい。(基礎知識の確認)
●日常生活のなかで「還元性のある官能基」を含む有機化合物を含んでいる製品をできるだけあげなさい。 (習った有機物を日常のなかに見出すことができているかの確認)
日用品に対しての関連
既習知識の確認
 高校化学「有機化合物」に関する調査(1−B)
●次にあげる物質の水溶液で、還元性を示すものを○で囲みなさい。(選択肢を設け、基礎知識の確認)
●次にあげるものの水溶液で、還元性を示す成分を含んでいると思われるものを○で囲みなさい。(選択肢を設け、習った有機物を日常のなかに見出すことができているかの確認)
既習知識の確認

既習知識の応用
確認テスト  高校化学「有機化合物」に関する調査(2)
●銀鏡反応を起こさせる条件や方法を化学反応式や物質名を具体的にあげて答えなさい。(化学反応をしっかり説明できるかの確認)
●実際に、きれいに銀鏡反応が現れるかどうかを左右するポイントとは、どんなことだと思いますか。また、どうあれば良いと思いますか。 (銀鏡反応のメカニズムを理解しているかの確認)
●銀鏡反応をどんなことに利用できると思いますか。簡単な例をあげなさい。 (応用例の発想)




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身の回りの有機化合物の認識 意識調査  高校化学「有機化合物」に関する調査(3)
●次の質問に(ア とても、イ まあまあ、ウ あまり、エ ほとんどない)のいずれかで答えなさい。(日常生活に授業で習った知識を結びつけようとする意欲の確認)
●授業で習った有機化合物を日常生活のなかに見出し、学習で得た知識をあてはめて利用するような、応用力を高める実験を考え、その例をあげなさい。 (自分が取り組んでみたい課題実験例のようなものの発想)

指導試案に基づいた第1時間目の学習指導案を以下に示す。

ア 主  題 「ある有機化合物の性質を確認しよう」

イ 指導目標 銀鏡反応から還元性の官能基の存在を考察することができる。

ウ 行動目標 積極的に実験に参加し、基本操作が身につく。

エ 下位目標 銀鏡反応のしくみを理解する。

オ 学習過程 以下の通り

【表−3】指導試案に基づいた第1時の学習指導案
段階
時間
主な学習内容 学 習 過 程 教 材 ・ 教 具 と 留 意 事 項
導入
5分
有機化合物の特徴 ・有機化合物の還元性につ
いて
・教科書で復習
展開

35
有機化合物の性質を使った反応 実験T 生徒実験[基本]
・教科書にある銀鏡反応の実験
・実験Tプリントを配布する。
・アンモニア性硝酸銀水溶液・・・・放置しておくと爆発物が生成するので注意させる。
・水酸化ナトリウム水溶液
・試薬(メタノール、ホルマリン、蟻酸、グルコース、スクロース等)
・試験管、ビーカー、三脚、金網、スポイト、温度計、ガスバーナー
・試験管はきれいなものを使わせる。
・銀溶液の液性、水酸化ナトリウム添加の有無を分類してデータを取らせる。



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授業に対する各自のまとめ ・今回の実験で得た知識から同じ性質を含む日用品を考える。
感想文
・身の回りにある材料をいくつか持ってくるよう指示する。
・授業で気がついたこと、知りたいこと、感想を書かせる。

指導試案に基づいた第2時間目の学習指導案を以下に示す。

ア 主  題 「還元性の官能基を日用品のなかに見出そう」

イ 指導目標 日常生活のなかにも学習した物質の存在を見出せる。

ウ 行動目標 積極的に材料を持ちより、実験に取り組む。

エ 下位目標 ・持ってきた材料の性質を推察できる。・実験で確かめることができる。

オ 学習過程 以下の通り

【表−4】指導試案に基づいた第2時の学習指導案
段階
時間
主な学習内容 学 習 過 程 教 材 ・ 教 具 と 留 意 事 項
導入
5分
有機化合物の特徴 ・前回の実験データからの考察 ・黒板に前回のデータからはっきりしたことを書く。
展開
35
有機化合物の性質使った反応 実験U 生徒実験[応用]
・教科書にある銀鏡反応の実験に準じて持ち寄った日用品で実験してみる。
・データをきちんと整理する
・実験Uプリントを配布する。
・アンモニア性硝酸銀水溶液・・・・放置しておくと爆発物が生成するので注意させる。
・水酸化ナトリウム水溶液
・試薬(ジュース等飲み物、しょうゆ等調味料、食器用洗剤など数種類)
・試験管、ビーカー、三脚、金網、スポイト、温度計、ガスバーナー
・試験管はきれいなものを使わせる。
・各試薬の濃度、水酸化ナトリウム添加の有無の効果に注目してデータを取らせる。



10
授業に対する各自のまとめ
・今回の実験で得たデータを分析する。
・感想文
・きちんと記録を取らせる。
・次回の予告を、課題実験計画プリントを配布し説明する。
・授業で気がついたこと、知りたいこと、感想を書かせる。

指導試案に基づいた第3時間目の学習指導案を以下に示す。

ア 主  題 「日用品を用いて確実な銀鏡反応をおこしてみよう」

イ 指導目標 データを分析し、提示された課題を解決するより確実な方法を見出せる。

ウ 行動目標 組み合わせを考え、不足のデータを収集する。

エ 下位目標 ・課題解決の方向性を自分の意見としてまとめられる。・他の意見を参考にできる。

オ 学習過程 以下の通り

【表−5】指導試案に基づいた第3時の学習指導案
段階
時間
主な学習内容 学 習 過 程 教 材 ・ 教 具 と 留 意 事 項
導入
5分
有機化合物の特徴 ・前回の実験データからの考察
・黒板に前回のデータからはっきりしたことを書く。
・各班の課題実験計画プリントの情報を黒板へ書く。
展開
35
有機化合物の性質を使った反応 実験V 生徒実験[応用]
・提示された課題「日用品を使って平面鏡を作ってみよう!」に取り組む。
・データをきちんと整理する。
・課題実験記録プリントを配布する。
・スライドガラス、ガムテープ、はさみ、手袋、白ラッカー、新聞紙で装置を作らせる。
・スライドガラスの表面に指紋をつけないよう注意する。
・アンモニア性硝酸銀水溶液
・水酸化ナトリウム水溶液
・試薬(各班で考えた日用品から)
・試験管、ビーカー、三脚、金網、スポイト、温度計、ガスバーナー



10
授業に対する各自のまとめ
・今回の実験で得たデータを整理する。
・感想文
・きちんと記録を取らせる。
・授業で気がついたこと、知りたいこと、感想を書かせる。

指導試案に基づいた第4時間目の学習指導案を以下に示す。

ア 主  題 「日用品を用いて確実な銀鏡反応をおこしてみよう」

イ 指導目標 制約された条件を解決できる方法を考えることができる。

ウ 行動目標 いろいろなアイディアを持ちより、試行錯誤を繰り返すことができる。

エ 下位目標 ・少しでもよい結果が得られる。・次につながるよう条件の設定を整理できる。

オ 学習過程 以下の通り

【表−6】指導試案に基づいた第4時の学習指導案
段階
時間
主な学習内容 学 習 過 程 教 材 ・ 教 具 と 留 意 事
導入
5分
前回の授業の確認 ・復習 ・ポイントである材料・薬品と装置について、全体で共有した情報等の確認をする。
展開
35
身近な材料を生かし平面鏡を作る
実験W 生徒実験[応用]
・提示された課題「日用品を使って平面鏡を作ってみよう!」に取り組む。
・データをきちんと整理する
・実験途中でも各班の試薬や装置のアイディアを公開し、情報を共有する。
・スライドガラス、ガムテープ、はさみ、手袋、白ラッカー、新聞紙などで装置を作らせる。
・スライドガラスの表面に指紋をつけないよう注意する。
・アンモニア性硝酸銀水溶液
・水酸化ナトリウム水溶液
・試薬(各班で考えた日用品から)
・試験管、ビーカー、三脚、金網、スポイト、温度計、ガスバーナー
・平面鏡が完成した班には白ラッカーで裏打ちをする。(教師)



10

授業に対する各自のまとめ ・今回の実験で得たデータを整理する。
・感想文
・きちんと記録を取らせる。
・課題実験記録プリント再を配布する。
・授業で気がついたこと、知りたいこと、感想を書かせる。

指導試案に基づいた第5時間目の学習指導案を以下に示す。

ア 主  題 「主体的に活動し、実験を進めよう」

イ 指導目標 情報を的確にとらえ、実験をすることができる。

ウ 行動目標 積極的に考え、よりよい成果が得られるように試行錯誤を繰り返すことができる。

エ 下位目標 ・少しでもよい結果が得られる。・条件を整理し、最善の方法を模索できる。

オ 学習過程 以下の通り

【表−7】指導試案に基づいた第5時の学習指導案
段階
時間
主な学習内容 学 習 過 程 教 材 ・ 教 具 と 留 意 事 項
導入
5分
前回の授業の確認 ・復習 ・今回もポイントである材料・薬品と装置について、全体で共有した情報等の確認をする。
展開
35
身近な材料を生かし平面鏡を作る 実験W 生徒実験[応用]
・提示された課題「日用品│を使って平面鏡を作ってみよう!」に取り組む。
・データをきちんと整理する
・実験途中でも各班の試薬や装置のアイディアを公開し、情報を共有する。
・スライドガラス、ガムテープ、はさみ、手袋、白ラッカー、新聞紙
・スライドガラスの表面に指紋をつけないよう注意する。
・アンモニア性硝酸銀水溶液
・水酸化ナトリウム水溶液
・試薬(各班で考えた日用品から)
・試験管、ビーカー、三脚、金網、スポイト、温度計、ガスバーナー
・平面鏡が完成した班には白ラッカーで裏打ちをする。(教師)



10
授業に対する各自のまとめ ・今回の実験で得たデータを整理する。
・感想文
・きちんと記録を取らせる。
・授業で気がついたこと、知りたいこと、感想を書かせる。

指導試案に基づいた授業実践後の事後調査P2実施案を以下に示す。

ア 主  題 「生徒の有機化合物に対する意識調査」

イ 指導目標 本来の生徒の状況が把握できるように、リラックスさせる。

ウ 行動目標 本来の生徒自身の意識状況を思い起こし、スムーズに記入することができる。

エ 下位目標 ・日常生活を意識する。・学習内容を意識する。・日常と学習事項の接点を見つける。

オ 学習過程 以下の通り

【表−8】指導試案に基づいた事後調査P2実施案
段階
時間
主な学習内容 学習過程 教 材 ・ 教 具 と 留 意 事 項
導入



研究や資料の復習   ・リラックスして臨むように指示する。
展開




有機化合物の実験の認識
既習知識の確認
日用品に対しての関連
意識調査  高校化学「有機化合物」に関する調査(1−A)
●「有機化合物」の実験についてどう考えていたか(忘れていたものを意識的に思い出したか)
●教科書で習った「還元性のある官能基」を含む有機化合物を名称または化学式(構造式や示性式)で、できるだけたくさんあげなさい。(基礎知識の確認)
●日常生活のなかで「還元性のある官能基」を含む有機化合物を含んでいる製品をできるだけあげなさい。 (習った有機物を日常のなかに見出すことができるようになったかの確認)
日用品に対しての関連
既習知識の確認
 高校化学「有機化合物」に関する調査(1−B)
●次にあげる物質の水溶液で、還元性を示すものを○で囲みなさい。(選択肢を設け、基礎知識の確認)
●次にあげるものの水溶液で、還元性を示す成分を含んでいると思われるものを○で囲みなさい。(選択肢を設け、習った有機物を日常のなかに見出すことができるようになったかの確認)
既習知識の確認

既習知識の応用
小テスト  高校化学「有機化合物」に関する調査(2)
●銀鏡反応を起こさせる条件や方法を化学反応式や物質名を具体的にあげて答えなさい。
●実際に、還元性の性質を含む日用品を利用して実験を行っても、きれいに銀鏡反応が現れない時には何が原因だと思いますか。
●銀鏡反応をどんなことに利用できると思いますか。簡単な例をあげなさい。




10
身の回りの有機化合物の認識
授業に対する各自のまとめ
意識調査

感想文
 高校化学「有機化合物」に関する調査(3)
●次の質問に(ア とても、イ まあまあ、ウ あまり、エ ほとんどない)のいずれかで答えよ。(日常生活に授業で習った知識を結びつけようとする意欲の確認)
●授業で習った有機化合物を日常生活のなかに見出し、学習で得た知識をあてはめて利用するような、応用力を高める実験を考え、その例をあげなさい。 (自分が取り組んでみたい課題実験例のようなもの)
授業に対する各自のまとめ 感想文 ・全体の授業で気がついたこと、知りたかったこと、感想を書かせる。