印刷用紙   :B4 縦  1ページの行数:39 1行の文字数(半角で):106 第1学年 数学科学習指導案 日 時 平成5年9月24日(金)1校時 対 象 岩手県立一戸高等学校1年C組(男子15名 女子30名 計45名) 教科書 旺文社 数学1[三訂版] 1.単元名 「関数」 教材名「二次関数の応用」 2.単元・教材について ア.単元「関数」の指導の意義 われわれの周囲に広がる自然は調和と変化に満ちている。この自然現象の変化を記述し,追跡するために生まれたの が関数である。さらに,関数という概念が確立したところへ,座標という概念が導入され,静的な幾何学と動的な関数 が結びついてさらに関数は発達した。関数という概念を用いた思考を行えば未来を予見でき,因果関係を明らかにでき るから,科学は長足の進歩をした。なぜなら,科学は,予見する結果になるための原因を明らかにして,その原因を理 由として未来を予見するものであり,因果関係を明らかにするものだからである。そして,科学は人間の物質的生活を 豊かにしたから,関数を抜きに現代は語れない。そこで,関数をどう教えるかは数学教育のもっとも重要な問題の一つ である。時代によってその教え方の違いはあっても,その位置付けは今後も変らないであろう。 さて,中学校での関数の学習は,一次関数を中心に,反比例する関数,2乗に比例する関数,2乗に反比例する関数 などを表や,式,グラフで表わし,考察してきた。高校では,『数1』では関数記号f(x)を使ったりしながら,二次関 数を中心に,簡単な分数関数,無理関数,逆関数などの学習を通じて関数の概念を形成する。なお,指数関数,対数関 数,三角関数や三次,四次関数などの整関数は『基礎解析』で習い,関数の世界を一段と広げる。そして,理科系へ進 む生徒に対しては,これらの関数の特徴や性質を調べる解析の初歩としての教科『微分積分』を学ばせる。 イ.二次関数の指導の意義 自然現象や社会現象は動きや変化そのものといってもよく,これらを関数で表現することが望まれる。それは,厳密 に表現できればよいのだが,式が複雑過ぎてはその価値が半減する。関数はそれらの現象を,より正しく表現しかつ扱 いやすくする,できるだけ単純なモデルでなければならない。一方,われわれがこれらの現象を捉える場合,実際は線 形性で捉えていることが多い。すなわち,真っ直ぐとか,平らであるとみなしている場合が多い。これを表現するのに ふさわしいのが一次関数である。しかし,一次関数だけでは,一般の自然現象や社会現象を記述しきれない。そこで, 一次関数の発展としての二次関数を学習し,やや複雑な現象を記述したり解決したりできることを理解・体験させるこ とや,二次関数は既習のことがらから独立したものではなく,グラフを介して,既習の二次方程式や二次不等式を二次 関数と関連させて理解させることがこの指導の意義である。また,二次関数に関することがらを図形的に捉えることに よって直観的に考えさせ,場合によっては,直観の方が論理的な思考よりも問題の解決に役立つことがあることを経験 させることも指導の意義の一部にしたい。 ウ.「二次関数の応用」について 二次関数の最大・最小について考察し,関数の最大・最小の概念を獲得させること,二次関数のグラフが既習の二次 方程式や二次不等式の図形的意味の理解に役立つこと,また,二次関数が自然現象の表現や解明に役立つことを身近な 例や具体的な問題を通じて経験させ,二次関数の有用性を知らせることなどが本教材の指導のねらいである。なお,本 教材の指導方法は,従来の指導方法にプラスして,視覚化されたイメージを活用して指導する点が特徴である。したが って,イメージを目に見える形にしたり,さらに動きを伴わせたりしたグラフや図式などの「視覚化されたイメージ」 を作成できるパソコン用ソフトを活用して, (1) 概念や法則などの理解の場合は,「視覚化されたイメージ」と「言葉や記号や式など」の二つの手段を用いて説明 する指導を行って,再生的思考力の育成を図る。 (2) 応用問題などの解決の場合は,解決の計画を立てる段階で,条件を変えながら「視覚化されたイメージ」の作成を 繰り返させる指導を行って,生産的思考力の育成を図る。 ことも本教材の指導のねらいである。 3.指導目標 §1.二次関数 (1) 関数に関する基礎的な概念を形成させること。 (2) 関数とそのグラフの関係を理解させ,グラフから関数の属性を理解させること。 (3) 二次関数のグラフの書き方に習熟させることとそれにより二次関数という概念を形成させること。 (4) 与条件を満たす二次関数を決定できるようにさせること。 §2.二次関数の応用 (1) 二次関数の最大値・最小値の理解をさせることとその値を求めることができるようにさせること。 (2) 二次関数と二次方程式・二次不等式の関係を理解させること。 (3) 二次関数のグラフと直線の位置関係を判定できるようにさせること。 §3.分数関数・無理関数 (1) 分数関数のグラフの書き方に習熟させることによりその性質を理解させること。 (2) 無理関数のグラフの書き方に習熟させることによりその性質を理解させること。 (3) 逆関数を理解させること,与えられた関数の逆関数を求めることができることおよび逆関数のグラフをかくことが できるようにさせること。 4.指導計画(20時間扱い) §1.二次関数(6時間) §2.二次関数の応用(7時間)[本時は1時間目] §3.分数関数・無理関数(5時間) 問題演習(2時間) 5. 本時の指導[実践の1時間目] (1) 主題:二次関数の最大・最小(定義域が実数全体の場合) (2) 目標 1. 最大や最小を考えることの意義を学ばせること。 2. 二次関数の定義域が実数全体の場合の最大・最小という概念を獲得させること。 3. 二次関数の定義域が実数全体の場合の最大値・最小値の求め方を習得させること。 (3) 授業の構想 身近な雨どいを材料にして,その断面積を最大にするにはどうすればよいかを考えることにより,最大値に関する興 味をわかせ,日常の生活的概念の最大・最小を出発点として,最大・最小を数学的概念として修正・発展させながら獲 得させる。実態調査からも指摘されるように,生徒は線形性によって認識をする傾向があり,二次関数の場合でさえも 真っ直ぐと認識している割合がきわめて強い。この誤った認識を払拭するためには,関数の属性をグラフの側面から認 識させることにより,二次関数のイメージを形成させる必要がある。そのため本時は,二次関数の最大・最小を言葉や 記号や式だけによらず,グラフや図式などの視覚化されたイメージを活用して説明することにより,最大・最小の概念 を獲得させ,理解を深めさせ,定着を図ることが授業のねらいである。 (3) 指導の展開 (◎印部分が視覚化されたイメージを活用する場面,また,画面とはパソコン画面のこと) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 段階 指導内容|  学 習 活 動    指 導 上 の 留 意 点活 用 ソ フ ト −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 導  動機づけ|・雨どいの断面積の最大値を考え ◎深さをx,面積をyとして生徒の予測デー データを画面上        |る。「西洋紙を折って,雨どいの タをパソコンに計算させて画面に表示。   にプロットでき        |断面積の最大値を予想する。はっ ・放物線上にプロットされることから,二次 るソフト 入      |きりした値が分からない,どうす 関数の最大値の問題であることを直感させ          |ればよいか。」         る。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   表 範例提 ・二次関数y=2x^2-8x+5,     ◎関数は上に凸,下に凸の典型的な2つの  y=2x^2-8x+5, 展 象 示    〃 y=-x^2-2x+3      範例を選んで提示し,画面上で yの値の変  y=-x^2-2x+3   を     のそれぞれの表象を作る。    化を見せる。               の値yの変化を   作     ・それぞれの最大値・最小値を求 ・日常の生活的概念で決定させる。     見るソフト   る     める。             ・最大・最小について学習することを示唆         ・学習目標を設定する。     する。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   解 比較  ・表象と範例を比較しながら,最 ◎範例を比較しながら,生活的概念を基に  二次関数の値域   決     大・最小をどう定義すれば妥当か 数学的概念へと発展させる。        を表示するソフ   の     を考える。           ◎抽象することにより,関数の値域によっ  ト(y=2x2-8x+5,   計 抽象  ・試案「基本形に直してグラフを て最大・最小は決まることを示唆する。   y=-x2-2x+3   画     かき,値域を求めれば,最大・最 ・ yが±∞の場合についての扱い方につい  の値域を表示)         小が分かる。」を立てる。    て注意する。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   計 一般化 ・「二次関数y=a(x-p)^2+qは   ◎係数を自由に設定できるソフトを用いて  二次関数の値域   画      a>0ならば,x=pのとき最小値はq  二次関数の値域を提示し,一般化する。   を表示するソフ   の      a<0ならば,x=pのとき最大値はq」 ・係数 aの符号の違いで扱いが異なること, ト   実     であると定義すればよいことを理 また,最大・最小は存在にかかわることで   行     解する。            あり,そのときのxの存在を強調する。 開 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   検 復習  ・二次関数の基本形への変形の復 ◎基本形への変形の図形的意味をソフトを  基本形への変形   討     習をする。           活用して説明する。            を図式化したソ   と 適用  ・適用問題の反復練習をする。  ◎グラフをノートに書かせながら適用問題  フト   定                     を解かせることによって,最大・最小の概  二次関数の値域   着                     念の定着を図る。             を表示するソフト 終 まとめ   ・学習した重要事項を確認する。 ・本時のまとめをする。 末 次時の予告                 ・定義域が閉区間の場合などの最大・最小                         がどうなるかを考えることを予告する。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−