印刷用紙:B5縦 1ページの行数:62 1行の文字数(全角で):40 美 術 科 学 習 指 導 案               日 時   平成6年11月25日(金) 4校時               学 級  3年(男子18名、女子16名 計34名)               指導者  佐藤 仁 1 研究主題 一人一人を生かす授業をどう組み立てるか      〜基礎基本の定着を中心に〜 2 研究主題設定の理由 美術の学習において育て、伸ばす能力や態度等は、創造的造形活動の基礎となるも のである。これらの能力や態度等の獲得の仕方は、一人一人の個性によって異なるも  のである。美術科の中での個性は、与えられるものではなく、生かし伸ばすものだと 考えている。一人一人の個性をどのように引き出し生かせば、充実感のある表現がで きるのかを考えていきたいと思っている。 3 美術科の研究主題 「一人一人の個性を生かしながら、創造力や表現力を高める指導のあり方」 4 美術科の研究主題へのせまりかた 表現活動は、人間が本来的にもっている表現欲求に根ざすものである。美術の表現  学習においては、生徒が自らの感性や創造力を伸ばし、一人一人が美術の直接体験を  通して主題を決め、計画的に構想し、主体的に自己を表現するように導くことが大切  であるといわれている。社会環境の急速な変化の中、社会に積極的にかかわることの  できる豊かな感性と知識を生かし、さらに応用・発展させて考えていくことのできる  創造性を備えた人間形成が期待されている。   美術科では、さまざまな表現材料との出会いを通して、基礎的基本的な技能・知識  を獲得させることにより自らの力を最大限に生かし個性に根ざした創造力や表現力を  高めていきたいと考えている。 5 題材名 「心の中の世界」 6 題材の目標 ・自己の内面世界を「心の風景」としてとらえて想像し、表現する。 ・独自の発想を生かして構想を練り、視覚的に表現する。 ・主題表現にふさわしい技法、構図、形、色を考えて、計画的に制作する。 7 本題材の指導の意図 (1)単元及び教材について 本来、純粋なものの見方や感じ方をするはずの中学生の心の状態は、昨今、不安定  な様相を示している。中学3年生にあっては受験の不安を抱え、柔軟な発想、よさや 美しさを感じ取ろうとする気持ちなどが忘れがちである。また自分自身をふり返る気 持ちの余裕もない、というのが現状である。そのような中、偽りのない自分自身を正  面から見つめさせ、独自の絵画表現をすることは大変意義深いことである。そういっ  た行為を通し、写生的な表現では味わえないよさ、独自の発想から自由に画面を構想  するおもしろさを味わわせたい。ひいては、意欲的な表現をさせながら、自分の存在  を再確認し、その価値を追求させていきたいと考え、本題材を設定した。 (2)生徒について   3年生は、1年生の時、色についての基本的な学習に取り組み、2年生で「いろい  ろな表現技法−モダンテクニック」のさまざまについて学んできた。アンケートの結  果は、「美術に対して好き」と答えたのは10名、「どちらともいえない」21名、  「嫌い」2名という結果になった。また、どのような気持ちで学習しているかについ  ては、「学習教科の中に美術があるから」24名、「美術が楽しいから」8名、「絵  を描くのが好き」7名(複数回答)となり、美術学習に積極的に関わろうとする生徒  が多い。しかし、作品制作には真面目に取り組んでいる生徒が多いが、造形的な面で  力を発揮しているとはいえない。また、創造的表現の要求される場面でも、練り上げ  が十分とはいえない作品が多かった。しかし、作品に集中的に取り組み、期日までに  作品を完成させようとする意欲は評価できる。「心の中の世界」では、個々の思いや  想像力を十分発揮しなければならない。また、さまざまな思いを一枚の作品に込めて  いくまでの練り上げや、表現にあったさまざまな技法を選んでいく活動が要求され、  学び合いや個別指導を中心としながら、練り上げていきたいと考えている。さまざま  な作家の資料や作品に対して関心を抱きつつある中で、超現実主義的作品などを提示  し、より関心を高め表現意欲にむすびつけていきたいと考えている。 (3)美術科の研究主題へせまるための具体的方法                   1)個を生かすための手だて ・学習プリントを用い、生徒の意図や構想の把握や個別指導をしながら表現した いものを表現できるようにするための援助をする。 ・何につまずいているか把握し、個に応じて支援・援助をする。 ・自分の表現にあった技法を身につけられるような一斉指導及び個別指導を重視     する。    2)基礎基本の定着のための手だて ・基礎基本を明らかにし何を表現しようとしているのか、個別指導により適切な     助言・援助をする。 ・制作の手順がわかり計画的に制作が進められるような助言・援助をする。 ・道具の適切な用い方を説明し、制作途中で確認しながら徹底を図る。 8 指導計画(12時間) ・授業内容を予告し、どんな作品や作家が何を表現しているのか調べる・・・1時間 ・参考作品を鑑賞しながら、授業のねらいを理解する・・・・・・・・・・・1時間 ・心の中にあるイメージをスケッチにより、メモ程度に描く・・・・・・・・1時間 ・主題をもとに構想を練り、イメージスケッチをする・・・・・・・・・・・1時間 ・主題の内容にあった表現方法を選び、下絵を描く・・・・・・・・・・・・2時間                      (本時1/2) ・主題を生かすような造形的な工夫をして、制作する・・・・・・・・・・・5時間 ・互いのよさを認め合い、それぞれの作品の鑑賞をする・・・・・・・・・・1時間 9 本時の指導 (1)ねらい 自分のテーマにあった表現方法を選び、下絵を描く。   (2)基礎的・基本的事項 ・モダンテクニックについて想起できる。 ・自分の心の中を素直に見つめ、意欲的に表現できる。 ・表現の意図に応じた技法、表し方を考えることができる。 ・次時の課題が理解できる。 (3)本時の展開 +−−+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ |段階|学習内容 | 学 習 活 動   | 支援上の留意点 | | | | | ◎評価     | | | | | ○個を生かす手だて | +−−+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | | | | | |・表現方法の|・これまで学習したさまざまな表現|・さまざまな技法の作品| | 導 |確認 | 方法、技法について確認し、どん| を見せる。 | | | | なところで使われたり使うと効果|   | | |       |  的か考える。 | | |  | | 作品の中でどのように使われてい|・学習プリントへの記入| | 入 | | るか鑑賞する。       |・鑑賞資料(生徒作品 | | | | | 等)の提示 | | |・学習課題の| |   | | | 設定 |・学習課題を把握する。 | | |(10)| +−−−−−−−−−−−−−−−−+ |   | | | | 自分のテーマにあった表現 | | | +−−+−−−+ 方法を考え、下絵を描く +−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | |・主題と表現|・主題と表現方法を確認する。 | | | |方法を考える |◎表現方法を決めている| | | | ・制作目標を設定する。 | | | | | ・一人一人がどのような主題でど| 生徒の人数を確認する | | | | んな表現方法を用いようとしてい| | | | | るのか発表する。 |・学習プリントへの記入| | 展 | |・OHPで作品と表現方法について| | | | | 検討する。 | | | | |・自分の作品にはどのような表現方|○進行状況の早い生徒に| | | | 法が適しているのか考える。 | 聞く。 | | | |・他の生徒からの支援、援助を得る|   | | | |・表現方法未決定の生徒は、アイデ|・学習プリントに記入す| | | | アスケッチを描きながら表現方法| る。 | | | | について考える。 |・進度の違う生徒への援| | 開 |・下絵を描く|・下絵を描く。 | 助         | | | | | | | | |・下絵を終了した生徒は、表現技法|○個別指導 | | | | を用いて計画的に制作を進める。|○学習プリントを用いて| |(30)| |・表現方法に応じた準備物の確認を| 自ら進んで制作を進め| | | | する。 | る。 | | | | |○個別指導 | | | | | | | | | |・必要な用具についての| | | | | 援助 | +−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | ・自己評価 |・学習課題及び制作目標が達成でき|○学習プリントへの記入| | 終 |  たか確認する。 | | | | |・自己評価カードへ記入| | 末 ・次時の予告 | ・次時の課題を理解する。 | | |(10) | |◎遅れていた生徒に発表| | | | させる | +−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ 4)評価の観点 ・モダンテクニックについて想起できる。 ・自分の心の中を素直に見つめ、意欲的に表現できる。 ・表現の意図に応じた技法、表し方を考えることができる。 ・次時の課題が理解できる。