印刷用紙:B5縦 1ページの行数:35 1行の文字数(半角で):74 高等部「作業学習(木工)」指導案 日 時 平成2年12月18日(火) 3,4校・ 場 所 木 工 室 指導者 及川 求(T1) 東 信之(T2) T 題材名 コースター、写真立ての製作 U 題材設定の理由 1 生徒について   木工作業班は、高等部の教育課程におけるコース制において、Aコースの  班であり、卒業後一般就労が可能と思われる生徒、10名(男子6名、女子  4名)が所属している。木工作業の経験について見ると、前年度からの継続  6名(2年生2名、3年生4名)、今年度から新たに所属した者4名(2年  生3名、1年生1名)という構成である。   4月からこれまでの学習の様子を見ると、将来の進路を想定した「木工班  は会社である」という言葉による意識づけや、附養祭、高等部パーティーで  の実際の販売の実践等を通じて、「より良い物を作ろう」という意欲や「頑  張れば自分たちの製品がきちんとした評価を得られる」といった自信が班全  体のものになってきている。   これらの意欲や自信は実際の製作の場面では、糸鋸盤での切り出しに際し  て型紙に重ねてみて作業の成否を自分で判断しようとすること(例−AJ)  や、木口削りで1本ずつ両端を削るのでなく何本かまとめて片側を削ってか  らもう一方の端を削ること(例−TN)などの、指導者の予期しない、生徒  自身の創意工夫となって現れたりしている。   しかし、班全体としては一連の作業の流れが一見スムーズに進んでいるよ  うに見える中にも、個々の生徒の状況にはまだまだ課題が多い。   例えば、@作業に取り組む上での能動性の問題−与えられた作業内容や  作業量はこなすが、一連の製作過程の中で自分が担当する工程がはたす役割  についての把握があいまいである。製作の過程での作業内容や工程の変更の  指示にスムーズに対応できない。なぜ目標作業量が設定されているかについ  て実感として分からないまま作業している。A判断力の問題−自分の作業  結果の成否について自分では判断が難しく一個一個指導者に確認を求めない  と次に進めない。B課題意識の問題−自分の作業の失敗を笑って済まそう  とする。「できない」とすぐあきらめる。C職場環境としてとらえたときの  対人関係の問題−仲間の失敗を笑う。きつく非難する。など。   特にも、卒業を間近に控えた3年生においては、現状の課題をもう一度整  理しながら、改善の方向を探る必要がある。 2 題材について   今年度の木工班での取り組みは以下の3つの時期に分けることができる。  @ 昨年度からの経験を生かし、いわば今年の木工班の「主力製品」を製作   してきた時期(なべしき、組み木、ゲーム盤の製作−5〜11月前半)  A 本題材による指導の時期(11月後半〜1月前半)  B 1年のまとめの時期(自由製作、学習のまとめ−1月後半〜3月)   こうしたとらえ方から、本題材の設定に当っては、  ○ 今年度のこれまでの指導の中で経験してきた基本的な技能を応用でき、   同時に、来年度以降の製作にも継続性を持たせられるものであること。  ○ 3学期での「自由製作」や卒業生への記念品製作に向けて、今後、生徒   の発想を取り入れて製品の形を変えていきやすいものであること。  を考慮した。    −コースターについて−   茶託との比較によって、生徒にもその利用の仕方が考えやすく、親しみを  もって製作に取り組ませることが可能な題材である。これまでの糸鋸盤の操  作の学習経験を生かしていろいろな形を工夫できるほか、中心部に絵柄をプ  リントしたコルク板を貼り付けることでさらに製品としての完成度を高める  ことができる。(今回は、輪郭をりんごの形に、コルク板には高等部の1年  間の主な行事をあしらった絵柄をプリントし、一層生徒の親しみ、製作と販  売に向けた意欲を高めることをねらった。)また、絵柄から6枚を1セット  として販売できることを知らせ、あわせて、コースタースタンドを同時に製  作することを意義づけた。   これまで題材として扱ってきた「ゲーム盤」等のようにいくつかの分担作  業の結果作られる部材を合わせてひとつの製品に組み上げられる製品とは違  い、1枚の板をめぐって各工程で少しずつ手を加え製品に仕上げていくこと  が可能であり、各生徒に完成までの自分の役割を比較的明確に考えさせやす  いという特長がある。    −写真立てについて−   製品の利用のされ方が極めて明確であり、生徒にも「自分でも使いたい」  という意欲を持たせることができる。家庭での利用や、卒業生へのプレゼン  トとしての利用を考えさせやすいほか、形が単純であることから、塗装の良  否など、より良い仕上がりを意識させることも可能である。   コースターの製作で使用する道具(ルーター、糸鋸盤等)や塗料を用いて  製作することから、コースター製作の技能の応用として同時に並行して製作  に取り組ませることができる。   3 指導について @ 指導に当っては、題材の特長を生かし、流れ作業という作業形態が持つ特  長を生かしながら、生徒の課題の達成に迫りたい。 @ 流れ作業では一定時間内の目標完成個数を設定し、そこから必然的に各   工程での達成すべき作業量が決定される。特にコースターの製作では、ほ   とんど全員の生徒に「目標完成個数=自分の分担する工程での目標個数」   という形での目標の立てさせ方が可能である。   各工程ごとの材料箱を工夫するなどのてだてを加えながら、自分から目   標を明らかにし、進んで作業に取り組もうとする態度を育てていきたい。  A 流れ作業では自分の担当する工程と前後の仲間の工程との関係が実感と   して把握されやすく、一連の作業工程全般について個々の生徒に把握させ   ることが比較的容易である。また、前述のように、各生徒の目標作業量を   一定に設定できることから仲間の作業の進行の状況にも目を向けさせやす   い。   工程図の工夫等のてだてを加えながら、一人ひとりの生徒に工程全般に   ついての見通しをより明確に持たせるとともに、仲間の作業の遅れには進   んで手伝おうとする態度を育てるなど、班員が一体となってよい製品を作   ろうとする作業への積極的な参加態度を育てていきたい。  B 流れ作業では各行程ごとの作業結果の良否が次の工程での作業に直接影   響することを実感として理解させやすい。   工程ごとの作業見本の呈示や定規、型紙などの工夫を図ることを通じ、   作業結果の良否について自分で判断しながら作業を進められるようにさせ   ていきたい。  また、これらのほかに、  C 安全への意識を高めるなど、職場環境を想定した適度な緊張感を持ちな   がら学習に臨むことができるように声がけなどの働きかけを工夫する。  D 本題材指導期間の中盤に行われる行事「高等部パーティー」での販売に   製品を出品することで製作にかかわる意欲の向上を図る。  といったことも指導の中に取り入れていきたい。   A なお、流れ作業という作業形態の定着については、本題材による指導の最  終段階の目標としておさえ、指導の過程では、  @主要な工程を全員で経験する段階。  A目標個数を前面に出さず、各自の技能の定着を図る段階。  B流れ作業の前段階として、各工程ごとの安定した作業量を求める段階。  C実際の流れ作業のラインに乗って作業させる段階。  といった、いくつかの段階をおさえながら指導していきたい。 V 指導目標 1 工程全体のかかわりをよく理解させ、協調して作業できるようにさせる。 2 工程全体の中に占める自分の役割を自覚させ、責任をもって作業させる。 3 製作過程から販売までの見通しを持たせ、作業結果の良否や作業量につい て自分で判断して作業を進めることができるようにさせる。 W 指導計画 (総時数 36時間) @ オリエンテーション:「新製品に挑戦」 ・・・・・2時間 (作業工程、分担の確認、練習) A 製作(第1期):コースターの製作 ・・・・・14時間 B 製作第1期のまとめと写真立て製作の導入 ・・・・・2時間 (作業工程、分担の見直し・確認、練習) C 製作(第2期):コースターと写真立ての製作・・・16時間(本時11,12/16) D まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2時間 X 題材における個人の指導目標・・・・・・・・別掲 P8,9参照 Y 本時の指導 1 本時の指導に当たって   生徒はこれまでに、2つの製品について全員で主要な工程を経験したり、  分担作業の形態を取って各工程ごとの基本的な技能の定着を図る段階を経て  きており、毎回の作業時間ごとにある程度安定した製品の完成個数を見るよ  うになってきている。これを受けて前時からは、「今日の目標完成個数」を  提示して、そこから各工程ごとの目標作業量を逆算させ、それぞれの生徒に  把握させながら作業に取り組ませている。これらの流れを受け、本時では、  @ 作業に入る前に「今日の目標完成個数」を知らせ、それぞれの材料箱の   中に的確な数の部材が収められているかを確認させる。  A 「より良い製品をめざす」ことを全員に確認させ、作業の中で定規や型   紙などを活用させながらより正確・丁寧な作業を心がけさせる。  B 工程図の活用等を図り、班全体としての作業の流れを理解させ、作業の   遅れている仲間への手伝い等にも積極的に参加させる。  C 作業における安全への意識、職場にふさわしい規律ある態度についても   作業を進めながら随時指導を加える。 2 本時のねらい @ 共通のねらい ・工程全体を理解し、仲間と協調しながら作業に取り組むことができる。 ・今日の目標個数を共通理解し、責任を持って作業することができる。 ・作業への見通しを持ち、安全に手早く丁寧な作業を行うことができる。 3 本時の展開 +-------------------+-------------------------------+---------------------------------------------------+----------------+ | 学習内容(分) | 学 習 活 動 | 指導上の留意点 | 教 具 等 | +-------------------+-------------------------------+---------------------------------------------------+----------------+ | 1 出欠確認 | ・作業室に来た順にタイムレコー | ・タイムレコーダーを押しながら作業の終了時間について | タイムレコーダー | | | ダーを押す。 | も確認させる。 | | | 2 作業準備、 | ・自分で使う用具の準備及び安全 | ・手早く用具の準備をさせる。安全点検後は点検板の札を | 安全点検板 | | 安全点検 | 点検をする。 | 裏返し(緑)にさせる。 | | | 3 挨 拶 | ・班長のIHの号令で集合、挨拶 | ・職場にふさわしい態度を取らせるように働きかけ、揃っ | | | | をする。(黒板前) | て元気よく挨拶させる。 | | | 4 作業内容、 | ・本時の作業での注意点について | ・前時での作業の進行状況を受け、本時での注意点につい | 作業工程分担表 | | 注意点の確認 | T1、T2から聞く。 | て簡潔に確認させる。 | | | (15)| | ・各工程の材料箱の中の部材の数を確認させる。 | 材料箱 | +-------------------+-------------------------------+---------------------------------------------------+----------------+ | 5 作 業 | ・作業をする。 | <個への指導上の留意点> <全体への | | | +-----------------------------------------------+ | | 留意点>| | | | <コースター>| <写真立て> | | ・ 最初の部材の数が違うと全員の作| ・原則として| 材料箱 | | | +---------+ +-------------+-------------+ | | 業が滞ることを分からせ、責任をも| T1は機械操 | | | | | 板材の | | コースター3セット分、写真立て5個 | | | って数を確認させる。 | 作等を中心に| | | | | セット| | 分の板材を材料箱に揃える。 | | | ・ 安全面に特に注意させ、刃の回転 | T2は塗装、組| ルーター | | | +---------+ +-------------+-------------+ | | が完全に停止するまでルーターを台| 立てを中心に| ルーター加工台 | | | | ルーター| | 表面を加工、 | 表面、裏面の | | | から離さないようにさせる。 | 指導するが、| | | | | 加 工| | 中心に丸く凹 | 順に加工、写 | | | ・ 予定の個数を加工した後は、指導| 互いに指導の| | | | | | | 面を彫る。 | 真の穴を彫る | | | 者に報告させ、速やかに、塗装作業| 位置を確認し | | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | に移らせる。 | 合いながら、 | | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | | 全体を指導す| | | | | | | コースター・・・定規| 裏面に定規を | | | ・ スタンドの線引きでは忘れずに定| る。 | 型定規(スタンド) | | | | 糸 鋸| | で輪郭を描き | 当て、穴の位 | | | 規の表裏を使い分けさせ、正確に2| | 型 板(楕円) | | | | ボール盤| | 切り出す。 | 置を印付けし | | | 対の部材を切り出させる。 | ・常に生徒自 | 穴位置定規(写真 | | | | 加 工| | スタンド・定規で| ボール盤で穴 | | | ・ ボール盤の使用に当っては指導者 | 身にもできば | ボール盤 立て)| | | | | | 線を引き、穴| をあける。 | | | に忘れずに報告させる。 | えを確認させ | 電動糸鋸盤 | | | | | | あけの後糸鋸| 背板を糸鋸で | | | | ながら、賞賛 | | | | | | | で切り出す。| 切り出す。 | | | ・ りんごの柄の方向を一定に線引き | などの声がけ | | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | させ、急がず丁寧に作業させる。 | をする。 | 型取り定規(りん | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | ・ はっきりと、丁寧に報告させる。| | 電動糸鋸盤 ご)| | | | ベルトサ| | 表裏、切断面 | 各面の磨きお | | | | ・安全には特 | | | | | ンダーに| | を丁寧に磨き | よび、面取り | | | ・ 磨きの良否が製品の良否に直結す| に留意する。 | ベルトサンダー | | | | よる磨き| | 形を整える。 | 加工をする。 | | | ることを意識させ、丁寧に作業に取 | | サンダー | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | り組ませる。 | | 型見本(写真立て) | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | | | 防塵マスク | | | | 紙やすり| | 軽く面取り程 | 表面のルータ | | | ・ 無駄な力を入れ過ぎて表面に傷を| | | | | | での磨き| | 度に磨く。 | ー加工面を丁 | | | つけないように注意させる。 | | 紙やすり | | | | | | | 寧に磨き、丸 | | | ・ 予定数加工後は忘れず報告させる| | 作業見本 | | | | 丸棒切断| | 丸棒を一定の | みをつける。 | | | | | 丸棒切断台 | | | | | | 長さに切る。 | | | | ・ 目標個数を意識させ、手早く作業| | 胴付き鋸 | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | を進めるように働きかける。 | | | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | | | | | | | オイルス| | 切断面、平面の順に丁寧に2 | | | ・ 塗料の量、塗りむらに注意させる | | オイルステイン | | | | テインに| | 度塗りする。 | | | ・ 目標個数を意識させ、集中して手 | | 刷毛 | | | | よる着色| | | | | 早く作業するように働きかける。 | | | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | ・ 予定数加工後は忘れず報告させる | | | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | | | | | | | 水性透明| | 切断面、平面の順に丁寧に仕 | | | ・ 塗りむらが生じないように、刷毛 | | 水性透明ニス | | | | ニスでの| | 上げ塗装をする。 | | | の方向を一定に運ぶように注意させ | | 刷毛 | | | | 仕上塗装| | | | | る。 | | | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | ・ 乾燥の状態をよく見極めさせ、台 | | | | | +---+-----+ +-------------+-------------+ | | の上や部材どうし接着しないように | | | | | | 組立て | | コースター・・・コル | 塩ビ板、台紙| | | 注意させる。 | | | | | | 仕上げ | | クを鋏で切り | を鋏で切る。 | | | | | 型板(楕円) | | | | | | 貼り付ける。 | 塩ビ板、台旨 | | | ・ きれいな仕上がりを意識させ、傷 | | はさみ | | | | | | スタンド・・・丸棒 | 背板を入れ、| | | やほこりを付けないように注意させ | | ドライバー | | | | | | を差し込み、 | トンボをネジ| | | る。 | | 接着剤 | | | | | | 組み立てる。 | で止める。 | | | ・ 複数の作業内容の進度のバランス | | プラスティックハンマー | | | | | | | 支柱を差す。 | | | を考えさせ、効率的に作業を進める | | | | | +---------+ +-------------+-------------+ | | ように働きかける。 | | | | | | | | | | | +-----------------+-----------------------------+ | | | | | 6 片付け、清掃、 | ・各自の作業を終了し、片付け、 | ・使用した用具等を所定の場所に片付けさせる。 | 清掃用具 | | 安全確認 | 清掃、機器の安全確認をする。 | ・清掃は全員で協力して行わせる。 | 安全点検板 | | (70)| | ・安全確認後は点検板の札を裏返し(赤)にさせる。 | | +-------------------+-------------------------------+--------------------------------------------------+-----------------+ | 7 作業の確認と | ・全員黒板前に集合し、本時の作 | ・各工程の本時の作業の進行状況を確認、報告させる。 | 作業工程分担表 | | 反 省 | 業について確認・反省をする。 | ・良かった点、反省点等について説明し、気付かせる。 | 材料箱 | | 8 挨 拶 | ・班長の号令で挨拶する。 | ・本時が2学期最後の作業であることを確認させ、3学期 | | | | ・作業日誌を受け取る。 | での学習に意欲を持たせる。 | 作業日誌 | | 9 終了確認 | ・タイムレコーダーを押し、退室 | ・元気よく、はっきりと挨拶させる。 | タイムレコーダー | | (20) | する。 | ・タイムカードを忘れずに押させる。 | | +-------------------+-------------------------------+--------------------------------------------------+-----------------+