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岩手県教育研究発表大会
授業改善を問う
 さる2月9日(火)・10日(水)に、花巻温泉、総合教育センター及び生涯学習推進センターを会場として、第59回岩手県教育研究発表会を開催いたしました。例年になく暖かい日よりの中、県内外から2日間でのべ3,000名を超える参加者を迎えての開催となりました。 今年度のテーマは「授業改善の深化」としました。『授業改善』をキーワードとした3年目の最終年度です。現在まで取り組んできた授業改善の方法や内容について振り返り、その成果を確かめ、さらに深く共有して一人一人の授業を見直すための機会となりました。

 1日目の午前中は、開会行事(主催者挨拶 八重樫勝 教育委員長、アピール 大林裕明 首席指導主事兼生徒指導課長)、全体会では講演会(講師 銭谷眞美 東京国立博物館館長)と授業改善実践発表(提案授業 県立一関第一高等学校附属中学校 右京久里子 教諭、同校生徒)を行いました。全体会の講演会では、銭谷眞美館長より、よき教師への出会いがその子の財産となる、子どもへの声がけの内容を吟味して欲しいことをお話しいただきました。授業改善実践発表では、県立中学校1年英語科の提案授業が行われました。「話すこと」に主眼を置いた授業を提案いただきました。午後は、「知・徳・体」を柱とした特設分科会1「確かな学力(知)」、特設分科会2「豊かな心(徳)」、特設分科会3「健やかな体(体)」、そして、「教員の人材育成」分科会、「幼児教育/幼小接続」分科会を開催しました。

 特設分科会1「確かな学力(知)」では、「中学校の学力保障の取組」に焦点を当て、学年や教科を超えた学校全体としての組織的な取組について発表が行われ、2校から発表をいただき、その後、パネルディスカッションを行いました。

 特設分科会2「豊かな心(徳)」では、滝沢市立一本木中学校の実践発表が行われ、その後、東京学芸大学大学院の永田繁雄教授のご講演をいただきました。

 特設分科会3「健やかな体(体)」では、児童生徒の望ましい生活習慣・運動習慣の定着の意義と学校における取組の在り方について考える機会となりました。

 開会行事・全体会には631名、特設分科会1: 205名、特設分科会2: 127名、特設分科会3: 91名、「教員の人材育成」分科会は87名、「幼児教育/幼小接続」分科会は94名の参加者を得て、大変充実した内容となりました。

 2日目は、各教科領域等15分科会において、80主題の授業実践、研究成果が発表されました。それぞれの分科会ではパネルディスカッションやワークショップなどを取り入れたり、講演会を実施したりと運営に工夫を凝らし、興味深い発表や活発な協議をする場になりました。それぞれの発表の成果が、これからの岩手の教育に実際に活用されることを期待しています。

 ご多用の中、コーディネーターや講演講師、シンポジストを務めていただいた先生方、研究発表された先生方、また、発表者を推薦してくださいました関係各機関、企画展に出品していただいた関係各位、さらに、開催にあたってご支援、ご協力を賜りました花巻温泉のスタッフをはじめ関係各位、皆さまに心から感謝を申し上げます。
開会行事
主催者挨拶
県教育委員会 八重樫 勝 委員長
 八重樫委員長は、挨拶の中で、「震災からの教育の復興」を優先課題と捉え、「子どもたちの心のサポートの充実」、「安全で安心な教育環境の確保」に努めていくこと、「いわての復興教育の推進」に全力で取り組み、今回の被災体験を風化させることなく、本県の復興・発展を担う「人づくり」を進めていることを述べました。
 さらに、「希望あふれる岩手」の実現を目標に、県内全ての学校や教育機関が一体となった「チーム岩手」として、「知・徳・体」の調和のとれた人間形成と確かな学力を目指した教育活動を推進し、岩手の復興・発展を担う子どもたちの育成を目指したいと述べました。
 最後に、本研究発表会での熱い研究協議が授業改善に係る目標の確認と今後の取組につながることへの期待を述べました。

アピール
大林 裕明 首席指導主事
兼生徒指導課長
 大林裕明首席指導主事兼生徒指導課長は、「安全・安心な学校づくり」と題して、いじめ根絶に向けて、教職員と児童生徒、児童生徒同士及び教職員と保護者等が人間関係をどう築いていくかということを学校経営の基軸に据え、学校が一丸となって、心の通い合う教育実践をより一層充実させていく必要があることを述べました。
全体会(講演会、授業実践発表)
講演会
東京国立博物館 銭谷 眞美 館長
 東京国立博物館の銭谷眞美館長(元文部科学事務次官)からは、今後の社会において求められる能力として、「”答えのない課題”に最善策を導くことができる能力」、「分野横断的な幅広い知識・俯瞰力」をあげられ、教育は「人をつくり、社会をつくる」ことができ、良き師との出会いは「生涯の財産」であることを述べ、これからの子どもたちを育てていく視点をお話しいただきました。

授業改善実践発表
県立一関第一高等学校附属中学校
右京 久里子 教諭、1年2組生徒
 県立一関第一高等学校附属中学校の右京久里子教諭と外国語指導助手による1年生英語科の提案授業をしていただきました。
 単元の目標をCAN-DOリスト(「話すこと」:場面に応じた質問や依頼を即興で話すことができ、また必要に応じて会話をつなげることができる)と関連付けて設定し、「話すこと」に主眼を置いた授業でした。
 英語科の授業を通して、指導と評価の観点から「児童生徒にどのような力を身に付けさせたいのか」、また「その力が身に付いているのか」について考える機会となりました。

特設分科会1「確かな学力(知)」
伊保内高等学校 岩渕 信義 校長
藤岡 宏章 首席指導主事
兼義務教育課長
 県の学力向上対策の一環として「確かな学び、豊かな学びプロジェクト」の推進に当たり、児童生徒への確かな学力保障に向けた学校の組織的な対応の強化を目的として取組を進めてきました。今年度の特設分科会1では、県立伊保内高等学校より2年間に渡る授業改革を中心とした組織的な学力向上の取組についての発表、続いて北上市立北上中学校と山田町立豊間根中学校の全校体制による学力向上の取組について発表を行いました。
 分科会の後半では、両中学校の校長と担当者及び県教育委員会義務教育課長をパネラーとしてパネルディスカッションを行いました。今年は「中学校の学力保障の取組」に焦点を当て、学年や教科を超えた学校全体としての組織的な取組について参会者全員で考える機会といたしました。

  <実践発表>
    課題解決に向けた主体的・協働的な学びの推進事業(文部科学省委託事業)
    「学力定着に課題を抱える学校の重点的・包括的支援に関する調査研究」
      伊保内高等学校 校 長  岩渕 信義

  <パネルディスカッション>
    「これからの中学校の学力保障」
     コーディネーター
         学校教育室 首席指導主事兼学力・復興教育課長  小野寺哲男
     パネリスト
         学校教育室 首席指導主事兼義務教育課長   藤岡 宏章
         北上市立北上中学校      校  長     上山 サダ子
         北上市立北上中学校      主幹教諭     石積 康弘
         山田町立豊間根中学校     校  長     青柳 清隆
         山田町立豊間根中学校     教  諭     舘林 志穂

特設分科会2「豊かな心(徳)」
東京学芸大学大学院 永田 繁雄 教授
 道徳教育に係る学習指導要領の一部改訂についての説明や、滝沢市立一本木中学校の実践発表を通して、これからの道徳教育の在り方や「特別の教科 道徳」の趣旨を踏まえた授業改善の方策について理解を深めました。
 講演では、東京学芸大学大学院 永田繁雄教授から道徳教育はどう変わるのか、「考え、議論する道徳」の授業の展開はどうあればよいか等について、具体的な実践につながるお話をいただきました。

<説明> 「道徳教育に係る小・中学校学習指導要領一部改訂のポイント」
   学校教育室 主任指導主事 田代 航

<実践発表> 「言語活動を活かした道徳授業の研究〜話合いの組織化の工夫を中心として〜」
  滝沢市立一本木中学校 教諭 佐藤 美紀子
  滝沢市立一本木中学校 教諭 田村 節子

<講演> 「これからの道徳教育と『特別の教科 道徳』の授業展開」
   東京学芸大学大学院 教授 永田 繁雄

特設分科会3「健やかな体(体)」
山梨大学 中村 和彦 教授
 学力や豊かな心の支えとなる「健やかな体」に焦点をあて、児童生徒の望ましい生活習慣・運動習慣の定着の意義と学校における取組の在り方について、小・中学校、特別支援学校の先進的な取組を通してその具体を共有するとともに、山梨大学 中村 和彦 教授から、「統一性・構造化・継続性」をキーワードに取組を推進する重要性についてご指導いただきました。

  <実践発表>
  1 「『知・徳・体』を総合的に兼ね備えた児童の育成」
     〜望ましい生活習慣・運動習慣の定着に向けて〜
         西和賀町立沢内小学校 教諭 渡邊 昌也

  2 「健康教育活動をとおして、気づき・つなげる・広げる健康づくり」
         一戸町立一戸中学校 養護教諭 伊藤 美保子

  3 「一関清明支援学校における健やかな体を育む教育活動の紹介」
     〜望ましい生活習慣と肥満指導の取組〜
         岩手県立一関清明支援学校 教諭 佐藤 裕子
 
  <講演>
  「望ましい生活習慣・運動習慣と今学校に求められる取組」
   講 師  山梨大学教育人間科学部長・大学院教育学研究科長 教授 中村 和彦
分科会−17分科会実施−
参加者の声〜アンケートから〜
 発表会にご参加いただいた皆様に、会運営や所員等の発表内容について、アンケートを実施しました。
<おことわり> ●アンケート回収枚数は761枚(昨年770枚)です。●割合の合計は、端数処理のため100にならない場合があります。●未回答があるため、所属校種の合計はアンケート回収枚数と異なります。
( )は昨年度
所属校種
上段:回答数
下段:割合%
幼稚園
保育所
小学校 中学校 高等学校 特別支援学校 その他
51 (35) 328 (348) 205 (216) 60 (71) 48 (40) 32 (40)
7.0 (4.7) 45.3 (46.4) 28.3 (28.8) 8.3 (9.5) 6.6 (5.3) 4.4 (5.3)
全体会
人数[割合%]
名称 大いに
参考になった
参考になった あまり参考に
ならなかった
参考に
ならなかった
講演会 117人[48%] 121人[50%] 4人[2%] 0人[0%]
授業改善実践発表 123人[51%] 104人[43%] 14人[6%] 1人[0%]
特設分科会の満足度
人数[割合%]
分科会 大いに
参考になった
参考になった あまり参考に
ならなかった
参考に
ならなかった
特設1〔知〕 65人[59%] 44人[40%] 2人[2%] 0人[0%]
特設2〔徳〕 54人[78%] 15人[22%] 0人[0%] 0人[0%]
特設3〔体〕 45人[76%] 14人[24%] 0人[0%] 0人[0%]
アンケート結果 (PDF:260KB)




アンケートの
記述から
(抜粋)
  • これからの教育の在り方を考える時間を興味深く過ごすことができました。望まれる教師、求める子どもたちの姿を心に留めながら、実践、改善していきます。(小学校)。
  • 学校という組織として一丸となって、授業力の向上に努めることの大切さを改めて学びました。ありがとうございました(その他)。
  • 初めて参加させていただきましたが、発表内容がどれも素晴らしく、とても充実した一日となりました。これからの実践につなげていきたいと思います(中学校)。
  • 先生方の熱心な研究を聞き、明日からの授業に活かしていきたいです(小学校)。
  • パネルディスカッションがとても勉強になりました。学調の分析の仕方や結果の見方について、具体的な事例で教えていただきありがとうございました(小学校)。
  • 生徒に対して、どのように接するか、今後の課題などを学ぶことができて良かった。若い教員にも伝えたいです(高等学校)。
  • 所員の方が親切でした。明窓館に宿泊しましたが、とても快適で、研修環境が整っていると感じました。会場からの移動バス、駐車場について、今年のやり方が利用しやすいと思いました。講師の人選も吟味されていおり、大変勉強になりました(小学校)。
アンケートにご協力いただきました皆様、ありがとうございました。今回のアンケート結果を来年度の研究発表会の運営や所員等の研究推進に生かしていきたいと考えています。来年度も先生方の多数のご参会をお待ちしております。

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