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 さる2月9日(木)・10日(金)に、花巻温泉、総合教育センター及び生涯学習推進センターを会場として、第60回岩手県教育研究発表会を開催いたしました。県内外から2日間でのべ3,000名を超える参加者を迎えての開催となりました。 今年度のテーマは「確かな学び、豊かな学びをつなぐ」としました。今年度から3年間継続したテーマを設定しました。次期学習指導要領等を見据えて、今後の方向性についての共通理解する機会となりました。

 1日目(2/9)の午前中は、開会行事(主催者挨拶 高橋嘉行 教育長、基調提案 小野寺哲男 首席指導主事兼学力・復興教育課長)、全体会では講演会(講師 松下佳代 京都大学教授)とパネルディスカッション(「アクティブ・ラーニングの実際」 パネラー:佐瀬智洋 教諭(盛岡市立緑が丘小学校)、佐々木巳樹 教諭(盛岡市立上田中学校)、高屋恵理 教諭(県立盛岡第三高等学校)、コーディネーター:鈴木徹 主任研修指導主事(県立総合教育センター)、助言者:松下佳代 教授(京都大学))を行いました。全体会の講演会では、松下佳代教授より、資質・能力の三つの柱を育成するための手法として、「主体的・対話的な深い学び」が必要であることなどをお話しいただきました。パネルディスカッションでは、高等学校公民科「現代社会」のダイジェストビデオを視聴後、各パネラーより実践内容や心がけていることなどをお話いただきました。午後は、「知・徳・体」を柱とした特設分科会1「確かな学力(知)」、特設分科会2「豊かな心(徳)」、特設分科会3「健やかな体(体)」、そして、「教員の人材育成」分科会、「幼児教育/幼小接続」分科会を開催しました。


 特設分科会1「確かな学力(知)」では、「先進実践校」の取組を発表していただき、その後、「調査結果から見える課題解決の方策」と題して、校内の取組について考える機会となりました。

 特設分科会2「豊かな心(徳)」では、久慈市立長内中学校の実践発表が行われ、その後、武蔵野大学の貝塚茂樹教授のご講演をいただきました。

 特設分科会3「健やかな体(体)」では、児童生徒の行動変容を促す指導の在り方について考える機会となりました。


 開会行事・全体会には736名、特設分科会1「確かな学力」: 222名、特設分科会2「豊かな心」: 167名、特設分科会3「健やかな体」:86名、「教員の人材育成」分科会は91名、「幼児教育/幼小接続」分科会は93名の参加者を得て、大変充実した内容となりました。

 2日目は、各教科領域等16分科会において、約80主題の授業実践、研究成果が発表されました。それぞれの分科会ではパネルディスカッションやワークショップなどを取り入れたり、講演会を実施したりと運営に工夫を凝らし、興味深い発表や活発な協議をする場になりました。それぞれの発表の成果が、これからの岩手の教育に実際に活用されることを期待しています。

 ご多用の中、コーディネーターや講演講師、シンポジストを務めていただいた先生方、研究発表された先生方、また、発表者を推薦してくださいました関係各機関、企画展に出品していただいた関係各位、さらに、開催にあたってご支援、ご協力を賜りました花巻温泉のスタッフをはじめ関係各位、皆さまに心から感謝を申し上げます。



開会行事
主催者挨拶
県教育委員会 高橋 嘉行 教育長
 高橋嘉行教育長は、「震災からの教育の復興」を優先課題と捉え、「子どもたちの心のサポートの充実」、「安全で安心な教育環境の確保」に努めており、 「いわての復興教育の推進」に全力で取り組み、今回の被災体験を風化させることなく、本県の復興・発展を担う「ひとづくり」を進めていること、そして希望郷いわて国体・いわて大会を通じ、 文化・スポーツの持つ大きな力を改めて認識することができたことを述べました。
 さらに、次期学習指導要領の方向性が示される中、各学校で実践された授業改善の方法や内容について交流を図り、新たな方向性を見いだす機会としたいという願いから本テーマ設定を  したことを述べました。

基調提案
小野寺哲男 首席指導主事
兼学力・復興教育課長
 小野寺哲男首席指導主事兼学力・復興教育課長からは、本テーマの根幹をなすものは、「これからの岩手の義務教育」及び「岩手の高校教育が目指すもの」 で規定している「人間形成」であること、そして、次期学習指導要領等が目指す理念を実現するためには、学校において教育目標の達成を目指し、教育課程全体を通して教科横断的な 視点から教育活動を行っていくことや、学校内外の人的、物的資源を活用して教育課程を編成の上、PDCAサイクルを回していくことの必要性を述べました。
全体会(講演会、パネルディスカッション)
講演会
京都大学 松下 佳代 教授
 京都大学高等研究開発推進センター 松下佳代教授からは、「学びを深めるアクティブ・ラーニング」と題して、資質・能力の三つの柱を育成するための手法として、「主体的・対話的な深い学び」が必要であることや、学びの深さに目を向けた「ディープ・アクティブラーニング」について、学習活動の構造や学習のプロセスについて解説いただきました。最後に、ディープ・アクティブラーニングの土台は、すでに日本の教育実践の中に存在し、その土台の上に、新しい実践を築いていくことが求められていることをお話しいただきました。

パネルディスカッション
(パネラー)
佐瀬智洋 教諭
(盛岡市立緑が丘小学校)
佐々木巳樹教諭
(盛岡市立上田中学校)
高屋恵理 教諭
(県立盛岡第三高等学校)
 「アクティブ・ラーニングの実際」と題して、パネラーに盛岡市立緑が丘小学校 佐瀬智洋 教諭、盛岡市立上田中学校 佐々木巳樹 教諭、県立盛岡第三高等学校 屋恵理 教諭、コーディネーターに県立総合教育センター 鈴木徹主任研修指導主事、助言者に京都大学高等研究開発推進センター 松下佳代教授によるパネルディスカッションを行いました。
 最初に、県立大船渡東高等学校 斎藤信太郎 教諭による地理歴史・公民科「現代社会」授業のダイジェスト映像を視聴しました。これを受けて、「Q1 社会とのつながり、あるいは異校種との接続をどのように意識して授業をデザインしているか」、「Q2 主体的・対話的で深い学びの実現のために、それぞれの校種でどのような授業改善がなされているか」、「Q3 深い学びに導くために工夫されている点は」を軸に、各パネラーから日々の実践内容や授業デザインの工夫や進展についてお話しいただきました。

特設分科会1「確かな学力」
紫波町立長岡小学校 小野一彦 教諭
宮古市立河南中学校 金田美輝子 教諭
県立水沢商業高等学校 松浦昭彦 指導教諭
遠山 秀樹 主任指導主事
 岩手県教育委員会では、「確かな学び、豊かな学びプロジェクト」の推進に当たり、学校の組織的対応と諸調査等エビデンスの活用を柱に、 取組を進めてきました。本分科会は、その趣旨に沿った具体的な取組事例の共有と考え方の共通理解の機会と位置付けました。前半の事例発表では、 本年度の「先進実践校」である紫波町立長岡小学校と宮古市立河南中学校、「各種調査等に基づいた学力向上に係る学校全体での組織的な取組」を 推進している県立水沢商業高等学校の実践を紹介します。[  後半は、「調査結果から見える課題解決の方策」と題して、エビデンスを基にした校内の 取組について考える機会としました。

  <実践発表1>
    紫波町立長岡小学校 小野 一彦 教諭
    
  <実践発表2>
    宮古市立河南中学校 金田 美輝子 教諭
    
  <実践発表3>
    県立水沢商業高等学校 松浦 昭彦 指導教諭
    
  <報告及び提案>
    「調査結果から見える課題解決の方策」
      学校教育室 遠山 秀樹 主任指導主事

特設分科会2「豊かな心」
武蔵野大学 貝塚 茂樹 教授
 道徳の教科化に向けて、これから道徳教育をどのように改善・充実を図っていけばよいのでしょうか。 本特設分科会では、 文部科学省の方針等の説明、本県の研究指定校である久慈市立長内中学校による実践発表を通して、これからの道徳教育の在り方、 「特別の教科 道徳」の 趣旨を踏まえた授業改善の方策等について理解を深めていきたいと思います。 そして、今回の中教審教育課程部会の「考える道徳への転換に向けたワーキンググループ」の委員である武蔵野大学貝塚茂樹教授をお迎えして、 「考え、議論する」道徳の授業とはどうあればよいのか、具体的な指導内容や指導方法、評価等についてご講演をいただきました。

<説明>
   学校教育室 主任指導主事 田代 航

<実践発表> 「自ら高め、ともに認め合う生徒の育成〜発問とそのちながりを工夫した授業展開を通じて〜」
  久慈市立長内中学校 藤森 崇浩 教諭

<講演> 「考え、議論する道徳」の授業づくりと評価の在り方」
   武蔵野大学 教授 貝塚 茂樹

特設分科会3「健やかな体」
早稲田大学 竹中 晃二 教授
 学力や豊かな心の支えとなる「健やかな体」に焦点をあて、児童生徒の望ましい生活習慣・運動習慣の定着の意義と、 児童生徒の行動変容を促す指導の在り方について、理解を深める機会となりました。  講師に早稲田大学人間科学学術院竹中晃二教授をお迎えし、児童・生徒の健康行動に関する行動変容について専門的見地から解説いただくとともに、 本県の課題である肥満予防に係るご指導をいただきました。

  <実践発表>
  1 「高校生を対象としたスマートフォン等利用の実態調査から見えてきた
     生活・心への影響について
     〜5年前の調査と比較して〜」
         県立盛岡工業高等学校 教諭 佐々木 透

  2 「学校生活における身体活動量を根拠とした、運動習慣形成の効果的な
     取組の方向性について
     〜60運動推進プロジェクト実践校の取組から〜」
         スポーツ健康課 主任指導主事兼主任保健体育主事 村田 浩隆
 
  <講演>
  「児童・生徒の健康行動変容を促す仕掛けづくり」
   講 師  早稲田大学人間科学学術院 教授 竹中 晃二
分科会−18分科会実施−
参加者の声〜アンケートから〜
 発表会にご参加いただいた皆様に、会運営や所員等の発表内容について、アンケートを実施しました。
<おことわり>
 ●アンケート回収枚数は、796枚(昨年761枚)です。
 ●割合の合計は、端数処理のため100にならない場合があります。
 ●未回答があるため、所属校種の合計はアンケート回収枚数と異なります。
( )は昨年度
幼稚園
保育所
小学校 中学校 高等学校 特別支援学校 その他
47 (51) 322 (328) 248 (205) 84 (60) 57 (48) 33 (32)
5.9 (7.0) 40.7 (45.3) 31.4 (28.3) 10.6 (8.3) 7.2 (6.6) 4.2 (4.4)
名称 大いに
参考になった
参考になった あまり参考に
ならなかった
参考に
ならなかった
講演会 255人[63%] 144人[35%] 6人[1%] 3人[1%]
パネルディスカッション 139人[38%] 183人[49%] 43人[12%] 4人[1%]
分科会 大いに
参考になった
参考になった あまり参考に
ならなかった
参考に
ならなかった
特設1〔知〕 63人[42%] 83人[56%] 3人[2%] 0人[0%]
特設2〔徳〕 72人[65%] 34人[31%] 4人[4%] 0人[0%]
特設3〔体〕 30人[57%] 22人[42%] 1人[1%] 0人[0%]
アンケート結果 (PDF:261KB)
  • アクティブ・ラーニングについての松下先生の話は、興味深いものであった。話を聞きながら、この場面では、このようなことができる、このようにやっていたが意図的でなかったなど、授業改善を考えられるものであった。課題をイメージし、表現できる創造性豊かな子ども達にできるよう努力したい(小学校)。
  • パネルディスカッションにおいて、パネラーの実践をもとに、校種間相互のディスカッションを期待していました。実践からは各校の様子を知る機会となった点は良かったと思います(小学校)。
  • 調査結果と学力(上位校、下位校)の相関関係に驚きました。教師の自己満足でやっていてはダメだと思いました(中学校)。
  • センター研究(アクティブ・ラーニング)を通して、昨年度に引き続き、子どものよりよい成長のために大切にしなければならないことを深く教えていただきました。教えていただいたことを、各学校にしっかりと伝えていきたいと思います(県内教育委員会関係者)。
  • 2日間大変お世話いただき、感謝申し上げます。ありがとうございます。素晴らしい学びと思います。県内、幼小中高の教員全部が参加して、学んで共有していけると良いなと思います(高等学校)。
  • 次年度の研究に向けて、大いに参考にさせていただきます。次期学習指導要領を的確に理解し、実践提案できればと考えております(中学校)。
  • 2月の研究発表会は次年度の方向性を検討する上で、大変大きな学びとなりました。充実した実践発表を少しでも自校の実践にいかしていきたいと思います。高校での授業が変わってきたと思います。中学校、小学校も本気で授業改善に向かっていきたいと思います(小学校)。
アンケートにご協力いただきました皆様、ありがとうございました。今回のアンケート結果を来年度の研究発表会の運営や所員等の研究推進に生かしていきたいと考えています。来年度も先生方の多数のご参会をお待ちしております。

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