第6学年国語科学習指導案

期 間  平成9年9月4日〜9月22日
場 所  玉山村立渋民小学校
授業者  平山壽雅子(長期研修生)
児童数  男子16名,女子12名,計28名

1 単元名・教材名 『成長の姿を』「海の命」

2 単元について

(1) 教材について

「海の命」は,主人公の太一が,周りの人々とのかかわりの中で,人間として成長していく様子を描いた作品である。六つの場面構成は時間の流れに沿ったもので,夢を追い,葛藤し,それらを乗り越えてより大きな人間になっていく太一の生き方が,感動的に描かれている。物語の展開はわかりやすいが,一つ一つの表現は味わい深い。また,父をはじめとする様々な人物の設定や「海の命」という象徴的な題名は,読み手が多様な視点で作品に入り込むことを可能にしている。一人一人が自分の思いを大事にしながら,じっくりと読み味わうことのできる作品である。

(2) 児童について

児童は今までに,物語文の学習をとおして,叙述に即して内容や主題を読み取ることを経験してきている。しかし,作者の考えと自分の考えを対比したり,作品をとおして自分の生き方を考える学習はほとんど経験していない。文章の意味・内容は言葉に即してとらえられるようになっているものの,読み取った内容に対し自分の立場を明らかにして考えをもつことは十分とはいえない実態が見られる。これは,叙述を正確に読みとることに力点がおかれ,自分の問題意識に基づいて内容をとらえ考えを深めていく機会が少なかったためであると思われるそこで,授業では,それぞれが自分の立場から考えを追究し続けることができるような活動を設定するとともに,考えの深まりの過程に目を向けて指導を行うことが大切であると考える。

(3) 指導にあたって

本単元の指導にあたっては,「海の命」という作品を通じて,主人公の生き方や主題に対して,児童一人一人が自分なりに価値づけできる力を育てたい。そのために,次のような順序で学習を展開していきたい。まず,事柄の推移や主人公の変容に着目して粗筋を再構成しながら疑問点を明らかにさせる。このことをとおして,作品全体を通じて追究したいことや着目する事柄といった主人公の生き方や主題把握につながる読み取りの視点を発見させる。次に,一人読みや意見交換をもとに,読み取ったことを再構成する活動を行い,より広い視点で叙述内容を関係づけてとらえさせていく。その際,児童が,自他の違い

やよさについて意識しながら考えを深めていくことができるように,再構成の文章表現を複数の方法から選択させる形をとる。また,自分の考えを修正しながら叙述を読み取っていくことができるような内容の活動を組む。主人公の生き方や主題の把握は,一人一人が叙述からとらえた内容をもとにまとめたものを,意見交換や読み直しをして再構成する形で行う。これを通じて,自分の立場を明確にしながら主人公の生き方や主題について価値づけさせて,児童一人一人の考えの深まりを図りたい。

3 単元目標

(1) 関心・意欲・態度

・章の叙述に即して,細かい点にまで注意しながら内容を読み取ろうとする。

・作者の考えについて,自分の考えをはっきりさせながら読み,自分自身の生き方などについて考えを深めようとする。

・語感,言葉の使い方に対する感覚などについて関心を深めようとする。

(2) 表現

・主題や意図をはっきりさせながら表現することによって,自分の考えを深めることができる。

(3) 理解

・文章の叙述に即して,細かい点にまで注意しながら読み取るとともに,作者の考えと自分の考えを対比したり,自分自身の生き方について考えを深めたりすることができる。

・優れた表現や叙述に着目してそれが表している世界をとらえることができる。

(4) 言語事項

・語感,言葉の使い方に対する感覚などについて関心を深めることができる。

・読みかえの漢字の読み書きができる。

4 単元指導計画(13時間)

第一次 「海の命」の学習計画をたてること………………………………………3時間

第二次 「海の命」を読み深めること………………………………………………7時間

第三次 「海の命」の主題に対する自分の考えを深めること……………………3時間

5 本時の指導

(1) 「海の命」の学習計画をたてること(第一次 第1,2時)

ア 目標

・「海の命」の全文を通読し,事柄の推移や主人公の変容に着目して粗筋を再構成することをとおして,読み取りの視点を発見することができる。

 

イ 展開



































 
 学習内容学習活動留意点・評価




 
1 本時学習のめあてをつかむこと ○ 粗筋を再構成して,読 み取りの視点を発見するというめあてを知る。 ・@主人公の生き方や主題に対する自分なりの考えをもつために,読み取りの視点を設定できればよいことを知らせ,学習への意欲づけを図る。






















 
2 全文を通読すること





3 粗筋を再構成すること






4 読み取りの視点を発見すること



 
○ 「海の命」を通読する
 (1) 教師の範読を聞く。
 (2) 事柄の推移や主人公の変容が分かる叙述や疑問に思ったところにサイドラインを引きながら黙読する。
○ 学習シートに粗筋を再構成し,疑問点を明らかにする。
再構成活動1
事柄の推移や主人公の変容に着目して,粗筋を整理する。

◎再構成活動1
  事柄の推移や主人公の変容に着目して,粗筋を整理する。

○ 粗筋を整理しながら疑問点を明らかする。
○ 学習シートに再構成したことや疑問点をもとに読み取りの視点を発見する。
 

・表記の正しい読み方が分かるようにゆっくりと読む。
・サイドラインを引く着目点を知らせる。
・机間指導をして作業状況をとらえ必要に応じて助言を与える。
・粗筋メモを作らせ,それをもとに再構成させていく。
・登場人物について各場面ごとに整理する形式の学習シートを用いることにより,どの児童も事柄の推移や主人公の変容に着目して粗筋を整理できるように図る。
・学習シートに粗筋を整理することができたか。
・再構成したことや疑問点から,作品全体をとおして追究したいことや何に着目して追究していくのかということをおさえさせる。
・自分の読み取りの視点を発見することができたか。

 





 
5 学習のまとめをすること
6 次時の学習内容を知ること
○ 本時めあてにてらして学習活動を自己評価する

○ 読み取りの視点をもとに学習計画をたてることを知る。
・達成感をもつことができるよう評価させる。

・本時の成果を確認して次時の予告をし,意欲づけを図る。
 


































 

(2) 「海の命を読み深めること」(第二次 第4,5時)

ア 目標

(ア) 自他の視点の特徴について話し合い,自分の読み取りに取り入れたいよさに気付くことができる。

(イ) 広げた視点で再構成する活動をとおして,母の思いとたくましい若者として生きる太一の姿をとらえることができる。

イ 展開










































 
  学習内容  学習活動    留意点・評価

























 
1 本時学習のめあてをつかむこと






2 視点の特徴について話し合うこと




3 本時場面を読み深めること









 
○ 自他の視点のよさについて話し合い,自分の視点の広げ方をつかんで4の場面の読み取りを行うことを確認する。



○ それぞれの視点の特徴−良い点や足りない点−について,これまでの再構成活動をもとに話し合う。

○ 取り入れたい視点について整理する。
○ 4の場面を読む。
○ 自分の学習課題の解決予想を書く。
○ 小グループで解決予想をもとに話し合い,解決できなかったことや確認したいことをまとめる。
○ 小グループで解決できなかったことや確認したいことについて全体で話し合う。
 
・各自の表現方法がどの視点を生かしたものかをおさえさせておき,これまでの再構成活動をもとに,視点のよさに気付いていけるようにする。
 吹き出し−人物の言動
 心情曲線−言動と変化・関係
 書き抜き−表現
 文図−場面の様子
 新聞−色々な視点
・自他の視点のよさをとらえることができるように,助言や発問を行う。
・自分に取り入れたい視点のよさは,学習シート記入欄にチェックさせていく。
・自分に取り入れたい視点のよさに気付くことができたか。
・1〜2人の児童に読ませる。
・予想できたこと,できなかったことを明確にさせ,話し合いへの意欲づけを図る。
・机間指導を行う。話し合いの状況をつかみ,助言する。
・自分の解決予想をもち,疑問点を整理することができたか。
・読み取りに大きな誤りがないときは結論を一つにまとめないで,児童がいくつかの考えから選んでいけるようにする。









 
4 本時場面の内容を再構成すること






 
○ 話し合いから取り入れたいことを整理する。
再構成活動2
自他のよさを取り入れた視点で読み取ったことを,自分なりの表現方法でまとめる。

 
・取り入れたいことをメモさせる。
・取り入れたいことをメモすることができたか。       
・作品全体を通じて自分が追究していることとかかわらせながらまとめさせていく。
・各自が自分の視点でまとめられるように時間を保障する。
・広げた視点で読み取った内容を再構成することができたか。
 









































 

(3) 「海の命」の主題に対する自分の考えを深めること(第三次 第1,2時)

ア 目標

(ア) 主人公の生き方や主題について再構成する活動をとおして,主人公の生き方や作者の考えに対して価値づけすることができる。

イ 展開




















 
  学習内容学習活動留意点・評価











 
1 本時学習のめあてをつかむこと


2 主人公の生き方や主題について再構成すること

 
○ 主人公の生き方や主題について再構成し,それらに対する自分の考えをまとめることを確認する。
再構成活動3
主人公の生き方や主題について,自分の表現方法でまとめる。

  

 
・自分の追究してきたことについてそれぞれの表現方法でまとめること,
 主人公の生き方や作者の考えに対する自分の考えをまとめることを確認させる。
・再構成しながら確認したい点を整理させる。必要に応じて小グループや全体での話し合いを設定し,どの児童も内容を把握できるようにする。 
・主人公の生き方や主題について再構成することができたか。
 






 
3 主人公の生き方や作者の考えに 対して価値づけすること
 
○ 主人公の生き方や作者の考えに対する自分の考えをまとめる。



 
・主人公の生き方や作者の考えに対して,叙述内容をふまえ,自分の立場を明らかにさせてまとめさせる。
・主人公の生き方や作者の考えに対する自分の考えをまとめることができたか。