指導期間 | 平成11年9月1日〜9月24日 |
指導学級 | 衣川村立衣里小学校第6学年 |
男子12名、女子12名、計24名 | |
指導者 | 菅原文彦 |
この教材は、二つの要素を含んだ作品である。
一つ目は、陶芸家として父の存在を乗り越えたいと願いながら、なかなか乗り越えられない主人公楊の葛藤をとおして、子供から大人へと成長していく過程を描いた作品である。二つ目は、主人公楊の美を追究する姿をとおして、価値あるもの、見かけではない真に美しいものとは何なのかを読み手に問いかけた作品である。陶芸家の父は、見た目に華やかなものを作らず、すずり箱や茶碗などふだん使う焼き物のなかに真の値打ちを見いだす。それに対して、息子の楊は、観賞の対象となりうる華やかな装飾品のなかに真の値打ちを見いだす。作者は、美に対する異なる二つの価値観を対峙させながら、主人公楊が、父の偉大さに気付き、人間の内面に依拠するものの価値について理解していく過程を描いている。
作品の題材である陶芸家という職業は、児童にとってなじみの薄いものであるが、美しい情景描写や巧みな文章構成、さらに最後の場面での意外な結末は、児童の興味や関心をかきたてるのに十分なものと考える。そして、自分の将来やこれからの生き方というものについて考え始めるこの時期の児童にとって、人物のものの見方や考え方、生き方をとおして、自分自身を見つめ直す契機を与える作品であると考える。
児童は、今までに、理解領域の学習において、文章の叙述に即して内容を読み取ったり、主題や要旨を考えながら内容を読み取ったりする学習を経験してきている。また、一人学びの活動をとおして、文章のなかの重要語句に着眼して、自分なりの考えをもつことができるようになってきている。
しかし、話し合い活動をとおして学び合った内容をもとに、別の視点から自分の考えを見つめ直し、更に考えを深めることのできる児童は少ない。また、話し合い活動において、進んで自分の考えを話す児童も限られている。
本単元の指導にあたっては、「桃花片」という物語教材を通じて、主人公の生き方や主題に対して一人一人の考えを深めていきたい。
そのために、まず、単元の「つかむ」段階では、登場人物の行動や心情の変化に着目しながら児童一人一人が興味・関心の観点から自分なりの問いをもつことができるようにする。そして、児童相互に問いを紹介し合うことで、自分が次の「ふかめる」段階で、だれに、何を問いかければ考えを深められそうなのか見通しをもつことができるようにする。
次に、「ふかめる」段階では、登場人物の行動や心情の変化など、自分の問いについて、一人学びの活動をとおして自分なりの考えをもつことができるようにする。そして、話し合い活動において、自ら問いを発して相手の考えを聞き、自分の考えとの相違点や共通点を問い直したり確認したりして、自分の問いを追究し、考えを深められるようにする。
最後に、「ひろげる」段階では、類似内容の他の作品を読むことで、「ふかめる」段階での学習で得た考えをひろげられるようにする。さらに、単元の学習を振り返って自己評価活動及び相互評価活動を行い、児童一人一人が学習活動に対する成就感や満足感を味わえるようにする。
[関心・意欲・態度] | 登場人物がもつ相対する価値観にふれ、自分の価値観を見直し、自分の生き方について考えようとする。 |
[表現の能力] | 作品の主題をはっきりさせて文章に表現することができる。 |
[言語に関する知識・理解・技能] | 文や文章にはいろいろな構成があることについて理解を深める。 |
第一次 (つかむ) |
自分の問いをもつ(2時間) ・全文を通読して第一次感想を書く (1) ・自分の問いをもち、単元全体の学習計画を立てる (1) |
第二次 (ふかめる) |
話し合い活動を行い、考えを深める(4時間) ・一人学びの活動を行い、問いに対する自分なりの考えをもつ (1) ・楊の焼き物に対する価値観と父親に対する心情の変化について、 児童の問いをもとに読み深める (2) ・「桃花片」の主題について、児童の問いをもとに読み深める (1) |
第三次 (ひろげる) |
学習内容をひろげるとともに、単元の学習を振り返る(2時間) ・類似内容の作品を読んで、考えをひろげる (1) ・単元の学習を振り返って、第二次感想を書く (1) |
[関心・意欲・態度]
◎登場人物のものの見方や考え方と自分のものの見方や考え方を比較しながら考えを深めようとしているか。
◆進んで自分の問いをもつようにしているか。
◆自ら問いを発して相手の考えを聞き、自分の考えを深めようとしているか。
[表現の能力]
◎主人公楊の父親に対する心情の変化と焼き物作りに対する見方、考え方の変化にふれながら、作品の主題について文章に書き表すことができたか。
◆考えの根拠を明確にし、話題からそれずに話し合うことができたか。
[理解の能力]
◎主人公楊の父親に対する心情の変化と焼き物作りに対する見方、考え方の変化にふれながら、作品の主題を理解することができたか。
◆話し手のものの見方、考え方、感じ方などについて、自分の考えと比較しながら相違点や共通点を明確にすることができたか。
[言語に関する知識・理解・技能]
◎文や文章にはいろいろな構成があることについて理解を深めたか。
◎ 学習計画を立て、単元全体の学習を見通すことができる。
◆ 登場人物の行動や心情の変化に着眼した問いをもつことができる。
段階 | 学習内容及び活動 | 指導上の留意点(〇)及び評価(◎) |
つかむ 12分 |
1 前時の学習内容を想起する | 〇児童全員分の第一次感想を観点別にまとめた学習プリントを作成し児童に配付する |
2 本時の学習のめあてを確認する
|
〇興味・関心のある内容に印を付けて読むように指示する |
|
ふかめる 23分 |
3 学習課題を設定する <予想される児童の学習課題> ・焼き物についての価値観 ・焼き物作りに取り組む楊の姿 ・父親に対する楊の心情の移り変わり ・楊を見守る父親の思い |
〇問いを記述するための学習シートと掲示用のカードを準備する
◎進んで自分の問いをもつようにしているか 〇児童相互に問いを紹介し合うことで、だれが、どんな問いをもって いるのか、児童相互に知り合えるようにする |
4 学習計画を立てる ・一人学びの方法について 抜き書き、書き込み、心情曲線、サイドライン等 ・学び合いの方法について |
〇学級全体の場で話し合うときに、だれに、どんなことを質問するとよいのかを整理させる | |
ひろげる 10分 |
5 学習のまとめをする ・自分の問いについて ・一人学びと学び合いの方法について |
◎自分の問いについて、解決の見通しをもつことができたか |
6 学習を振り返る ・自己評価 ・相互評価 |
〇自己の学び方について、ハンドサインによる4段階評価を行う | |
7 次時の学習内容を確認する ・一人学びをして、自分なりの考えをもつこと |
◎ 自分の問いを解決するための方法について見通しをもつことができたか。
◆ 楊の行動や心情の変化、楊を見守る父親の心情、焼き物作りに対する価値観に着眼して問いをもつことができたか。
◎ 父親に対する楊の心情の変化と楊と父親の焼き物作りについての価値観の違いを理解することができる。
◆ 自ら問いを発して相手の考えを聞き、自分の考えを深めることができる。
段階 | 学習内容及び活動 | 指導上の留意点(〇)及び評価(◎) | |
つかむ 5分 |
1 前時の学習内容を想起する 2 本時の学習のめあてを確認する
|
〇学習シートを参考にして、問いに対する自分の考えと学び合いの方 法について確認させる | |
ふかめる 75分 |
3 グループによる話し合い活動を行い、問いに対する考えを深める (自ら問いを発して相手の考えを聞き、自分の考えとの相違点や共通点を相手に問い直したり確認したりする活動@) |
〇類似の学習課題をもった者どうしで、グループを編成する
◎自ら問いを発して、相手の考えを聞こうとしているか 〇父親の焼き物に対する価値観と比較しながら楊の焼き物に対する価値観を話し合うようにする |
|
4 グループ学習した内容を整理する | |||
5 学級全体による話し合い活動を行い、問いに対する自分なりの考えを深める | 〇文章の叙述と関連させながら自分の考えを話すようにする ◎考えの根拠を明確にし、話題からそれずに話し合うことができたか |
||
ひろげる 10分 |
6 学習のまとめをする 7 学習を振り返る ・自己評価活動 ・相互評価活動 |
◎友達の考えのよさを取り入れながら、楊の焼き物作り対する価値観や父親に対する心情の変化を理解することができたか 〇問いに対する自分の考えの深まりを実感できるようにする |
|
8 次時の学習内容の確認する |
◎ 楊と父親の焼き物に対する価値観の違いを理解することができたか。
◆ 父親に対する楊の心情の変化と楊の姿を見守る父親の心情について、自ら問いを発して相手の考えを聞くことで、自分の考えを深めることができたか。