第6学年 理科学習指導案

日 時   平成10年9月
場 所   北上市立二子小学校6年1組
指導者   高橋 恵子
児童数   男子13名、女子13名、計26名

1 単元名   植物のからだと日光

2 単元について

 植物の学習の流れをみてみると、第3学年では根・茎・葉のつくりを調べ、第4学年では植物の成長を季節や天気、時刻と関連づけて調べ、第5学年では発芽・成長・結実のしくみを調べてきている。これまでは植物を外見からとらえる学習が中心であったが、第6学年では植物体の内部に目を向けた学習が中心となる。本単元では、葉でできたデンプンが成長に使われたり、いもや種子に蓄えられたりすることを調べたり、水や養分の通り道をとおして水や養分のゆくえを調べたりする活動をとおして、植物の成長や個体維持、種族維持に、水と日光が深く関わっていることをとらえさせることをねらいとしている。 
 児童はこれまで、植物を育てたり、観察・実験を行ったりして、いろいろな知識を得ている。しかし、それらが植物にとってどんな意味のあることなのかといった総合的なとらえ方をしているわけではなく、一面的な見方で終わっている子が多い。また、扱った植物にだけみられる現象ととらえがちで、校庭や道端の身近な植物に目が向けられておらず、どの植物にも当てはまる法則性を実感できないでいる。
 そこで、身近にある多様な植物を取り上げ、相互関係や法則性をとらえさせていく表現活動を工夫することにより、関係づけがスムーズにできるようにしたい。そして、植物も動物と同じように、生命を維持し育つための巧みなつくりやはたらきをもっていることを感得させたい。

3 単元の目標

(1)植物には根から葉までの水や養分の通り道があり、水は主に葉から蒸散していること、葉でできたデンプンは成長のために使われたり、いもや種子に蓄えられたりすることを調べ、見出した問題を意欲的に追究する活動をとおして、植物の体内の水のゆくえや葉のはたらきについての見方や考え方を養う。
(2)観点別目標
  【自然事象への関心・意欲・態度】
   ・ジャガイモに新しいいもができているか、中に何があるかに興味をもち、進んで調べようとする。
   ・植物体内の水と養分の通り道に興味をもち、進んでそのようすを推論しようとする。
   ・生命を維持し育つためのつくりやはたらきについて、意欲的に追究しようとする。
  【科学的な思考】
   ・日光が当たった葉でつくられたデンプンを、植物は自分の成長に使ったりいもや種子に蓄えたりしていることなどを関係づけて考えることができる。
   ・植物に入った水のゆくえを葉で行われる水の蒸散と関係づけて考えることができる。
  【観察・実験の技能・表現】
   ・新しいいもの中のデンプンを顕微鏡で観察し、そのようすを記録することができる。
   ・日光に当てた葉と当てなかった葉にデンプンがあるかどうかを調べ、結果を記録することができる。
   ・食紅で染まった植物の葉・茎などの中を観察し、水と養分の通り道を調べて記録することができる。
  【自然事象についての知識・理解】
   ・植物の葉に日光が当たると、デンプンができることを理解する。
   ・葉でできたデンプンは、成長の養分として使われたり、いもや種子に蓄えられたりすることを理解する。
   ・植物の根・茎・葉には、水や養分の通り道があり、根から吸い上げられた水は主に葉から蒸発していることを理解する。 

4 指導計画(11時間)

1次 新しいいもを調べよう(1時間)
・新しいいものデンプン
2次 デンプンはどこからくるのか(5時間)
・葉でつくられたデンプン
・たくわえられるデンプン
3次 水と養分はどこを通るのか(4時間)
・水と養分の通り道
・水のゆくえ
学習のまとめ(1時間)

【第1時】

目標 新しいいもを調べ、養分としてデンプンがあることが分かる。
段階 学習活動 指導上の問題点 準備等
課題の把握 1 課題をつかむ。
 新しいいもの中にあるものは何だろう。
・ジャガイモを切ったとき、ナイフに白い粉がつくことに着目させる。 ジャガプリント




2 予想する。
・食べ物だから養分があるだろう。
・たねと同じデンプンがあるのではないか。
・家庭科での食品の栄養や、5年生でのたねの養分についての学習を想起させる。  
3 調べる方法を話し合う。
・顕微鏡で見てみよう。
・ヨウ素液をかけてみよう。
・白い粉を取り出してみよう。
デンプンにヨウ素液をかけると青紫色になることを確認する。
・顕微鏡の使い方の手順を確認する。
・ジャガイモをおろし金ですりおろしてデンプンを集めさせ、水に溶けないことや手触りを実感させる。
ジャガイモ
サツマイモ顕微鏡
ヨウ素液
おろし金
4 調べる。
・グループ毎に協力して調べる。

・同じいもをつくるサツマイモについても調べさせる。


5 結果を発表し、分かったことをまとめる。
 新しいいもの中にある白い粉はデンプンである。
・デンプンの性質であるヨウ素液をかけると青紫色になること、水に溶けないことをとらえさせる。

【第2時】

目標 新しいいものデンプンがどこでつくられて移動してくるのか、調べる方法を考えることができる。
段階 学習活動 指導上の問題点 準備等
課題の把握 1 課題をつかむ。
 新しいいものデンプンはどこからくるのだろう。
  ジャガプリント




2 予想する。
・たねいもの中から移動してきた。
・土の中から移動してきた。
・地上の葉や茎から移動してきた。
・たねいも1個に対してこいもが数個取れることから、たねいもの養分が移ったのではないことに気づかせる。
・葉や茎が茂ると実やいもができることから、葉が関係しているのではないかと推論させる。
・日光がよく当たった方が育ちがよいことから、日光との関係も考えさせる。
  
3 調べる方法を話し合う。
・葉にデンプンができているか、ヨウ素液で確かめる。
・日光に当てた葉と当てなかった葉を比べる。
・葉の緑色を除くためのアルコール脱色法について説明する。
・比較実験をして確かめることの必要性に気づかせる。
説明カード


4 次時について確認する。 ・実験する前日に日光が当たらないようにセットすることを確認する。

【第3・4時】

目標 日光に当てた葉と当てなかった葉を調べ、葉に日光が当たるとデンプンができることが分かる。
段階 学習活動 指導上の問題点 準備等
課題の把握 1 課題をつかむ。
 葉でデンプンがつくられるのか調べよう。
・前時の学習を想起させる。 ジャガプリント




2 調べる方法を確かめる。
・日光に当てた葉と当てなかった葉を準備する。
・それぞれの葉を湯につけて、柔らかくする。
・あたためたエチルアルコールに葉を入れて、葉の緑色を溶かしだす。
・湯で洗ってから、ヨウ素液に浸す。
・前時のプリントで確認させる。
エチルアル
コール
ビーカー
ヨウ素液
熱湯
ピンセット
3 調べる。 ・エチルアルコールはできるだけ少量使い、使用後は決まった容器に入れさせる。


4 調べたことを発表する。 ・簡単なポスターセッションにより発表させる。
5 分かったことをまとめる。
  日光に当たった葉にはデンプンができる。できたデンプンは成長に使われたり、いもに蓄えられる。
 

【第5・6時】

目標 葉で養分をつくっていることをいろいろな植物で確かめることができる。
段階 学習活動 指導上の問題点 準備等
課題の把握 1 課題をつかむ。
 ジャガイモのように他の植物も養分をつくっているのだろうか。
・いもをつくる植物から、いもをつくらない身近な植物へと目を向けさせる。  




2 仮説を立てる。
・いもを大きくするため、いもをつくる植物だけがデンプンをつくる。
・どの植物もデンプンをつくる。
・植物によって、デンプンをつくるものもあればつくらないものもある。
・前時までの学習内容を振り返らせ、自分なりの仮説を立てさせる。
・一人で立てられない子に対しては、周りと相談してもよいことを伝える。
ジャガプリント
3 確かめる方法についての話し合い
・学校の周りの植物で調べよう。
   校庭、花壇、畑、中庭、田、日陰など
・周りにはないが、調べみたい植物についても考えさせる。
・実験方法は、既習の方法を使う。
・葉以外の部分についても、デンプンがあるか調べてみる。
・グループで相談して、調べる場所を決めさせる。
・直接調べることができない植物でも、興味・関心を引き出す上で考えさせてみる。
・児童から出ないときは、茎や根ついてもデンプンがあるか調べてみるように助言する。
実験方法についての説明カード
4 話し合い予想する。
・仮説を立てたわけを話し合う。
・自分の仮説をもとに、それぞれについて予想を立て、プリントに書きこむ。
・自分が調べる以外のものについても予想させることで、仮説との関わりを深める。
5 観察・実験を行う。
・グループで協力して実験を行い、結果をプリントに記入する。
・スムーズに進められるよう支援する。 ヨウ素液
エチルアル
コール
ビーカー
アクリル板
電熱器
6 集団で検討する。
・グループ毎に結果を発表する。
・他グループの結果は、プリントにつけたして記入する。
・自分の仮説とのつながりや、結果同士のつながりを考え書きこむ。
・つながりを考え書きこむことにより、1枚のプリントの中に自分の考えの過程が目に見える形となり、予想や仮説との比較・検討が容易になる。


7 仮説の修正・まとめ
 どの植物も葉でデンプンをつくっている
・まとめを小カードに書き、仮説の上に貼らせる。  
8 法則性に気づく。
・どの植物も葉でデンプンをつくっていることに気づく。
・直接調べることができない植物についても、法則性に基づいて考えることができる。
・見出した法則性から、実際に調べることができない植物についても推論させる。

【第7時】

目標 根から取り入れた水や養分が植物のからだのどこを通るのかを調べ、植物には水や養分の通り道があることが分かる。
段階 学習活動 指導上の問題点 準備等
課題の把握 1 課題をつかむ。
 根から取り入れた水や養分は、からだのどこを通るのだろう。
・しおれている植物に水を与えるとピンと立ち元気になることから、水がからだのどこを通っているのかを考えさせる。 ジャガプリント




2 予想する。
・茎全体をしみ込みながら上がっていくのではないか。
・ストローのように管の中を上がっていくのではないか。
   
3 調べる方法を確認する。
・水の代わりに色水を吸わせる。
・根、茎、葉を切って、色水がどこを通っているか見る。
・そのまま切ったのでは分かりにくいことから、色水を吸わせればよいことに気づかせる。  
4 調べる。
・茎や根を縦・横に切り、どこが染まっているか調べ、スケッチする。
・どこが染まったかプリントに記入させる。
・カッターナイフの使い方には、十分注意させる。
・葉の葉脈の部分が染まっていることに気づかせる。
ホウセンカ
カッターナ
イフ
解剖顕微鏡
スライドガ
ラス


5 分かったことをまとめる。
 植物のからだには、水や養分の通り道があり、葉のすみずみにまで運ばれる。

・しおれている植物に水を与えるとピンと立ち元気になることから、水がからだのどこを通っているのかを考えさせる。
  

【第8時】

目標 根から取り入れた水は、葉まで運ばれたあと、水蒸気として葉から出ていくことが分かる。
段階 学習活動 指導上の問題点 準備等
課題の把握 1 課題をつかむ。
 葉まで運ばれた水は、その後どうなるのだろう。
  ジャガプリント




2 予想する。
・葉から出ていくのではないか。
・からだの中にためているのではないか。
・水をやらないでおくとしおれたり、花瓶の水が減ったりすることから、水が出ていっていることに目を向けさせる。  
3 調べる方法を話し合う。
・袋をかぶせ、水滴がつくか調べる。
・葉をつけたものと葉を取ったもので比べてみる。
・そのまま切ったのでは分かりにくいことから、色水を吸わせればよいことに気づかせる。  
4 調べる。
・グループ毎に、葉をつけたものと取ったものに袋をかぶせ、しばらく様子をみる。
・袋の内側の様子とフラスコの水の減り方に着目させる。 ポリエチレン袋
モール
フラスコ
ホウセンカ


5 分かったことをまとめる。
 根から取り入れた水は、茎を通って葉から出ていく。
 

【第9・10時】

目標 根から吸い上げられた水は茎を通って、水蒸気として葉から蒸発していることを、いろいろな植物で確かめることができる。
段階 学習活動 指導上の問題点 準備等
課題の把握 1 課題をつかむ。
 ホウセンカのようにどの植物も根から吸い上げた水を葉から出しているのだろうか。
・身近な植物へと目を向けさせる。 ジャガプリント




2 仮説を立てる
・どの植物も吸い上げた水を葉から出している。
・出す植物もあれば出さないものもある。
・前時までの学習内容を振り返らせ、自分なりの仮説を立てさせる。  
3 確かめる方法について話し合う。
・学校の周りの植物で調べよう。 
・実験方法は既習の方法を使う。
・グループで相談して、調べる植物を決めさせる。
・ビニル袋は大きさの違うものを用意しておく。
 
4 話し合い予想する。
・仮説を立てたわけを話し合う。
・自分の仮説をもとに、それぞれについて予想を立て、プリントに書きこむ。
・自分が調べる以外のものについても予想させることで、仮説との関わりを深めさせる。  
5 観察・実験を行う。
・グループ毎に実験を行い、結果をプリントに記入する。
・授業時間以外の観察を勧める。 ビニル袋
モール
6 集団で検討する。
・グループ毎に結果を発表する。
・他グループの結果は、プリントにつけたして記入する。
・自分の仮説とのつながりや、結果同士のつながりを考え書きこむ。
・つながりを考えプリントに書きこむ。  


7 仮説の修正・まとめ
 どの植物も根から吸い上げた水を水蒸気として葉から出している。
・まとめを小カードに書き、仮説の上に貼らせる。 小カード
8 法則性に気づく。
・どの植物も水蒸気として葉から出していることに気づく。
・直接調べることができない植物についても、法則性に基づいて考えることができる。
・見出した法則性から、実際に調べることができない植物についても推論させる。