期 間 | 平成11年9月7日(火)〜29日(水) |
児 童 | 陸前高田市立気仙小学校 5学年 |
男子7名 女子12名 計19名 | |
指導者 | 戸羽 太一 |
本単元の『いのちについて考えよう』は、これまで教科や道徳、特別活動などで行われてきた「いのち」にかかわる内容を一つの大きな枠組みでとらえたものである。この「いのち」という教材は、一人一人が望まれて生まれ、大切にされて生きてきたといった心情的な面、人間や動物の生殖等の科学性、脳死や臓器移植といった今日的社会的課題などの広範多岐にわたる側面をもっており、総合的な学習によって指導するのにふさわしい内容である。現代の子どもたちは「いのち」について希薄な感覚しかもっていないと言われている。それは核家族化、少子化等により、弟や妹の誕生をみたり、祖父母の死去に立ち会ったりする経験が少ないことや、自然にふれたりペットや植物を育てた体験が少ないことなどにより、生命の有限性や価値についてふれることが少ないことによるものと考えられている。このような子どもたちに対し、「いのち」の尊さにふれさせることは大切であると考える。
「いのち」という単元は、誕生や成長をはじめ、環境とのかかわりや死など、豊かな教材性をもっている。このことは、子ども一人一人に自分なりの課題をもたせることができるであろうと考える。「いのち」との出会いによって、子どもたちは自分なりの感じ方をしたり、思いをもったりするであろう。そこで、自分の興味・関心を生かした課題を子どもがもてるように支援していく。自分の興味・関心を生かした課題は子どもに主体的に課題追求の活動に取り組ませるだろうと考える。課題追求の計画及び活動は、追求の見通しや活動に広がりをもたせ、一緒に活動することでよさをみつけさせるため、類似した課題のグループでの活動を中心に行わせるようにする。課題追求は個々の課題解決を求めるも のであるが、よさを交流し合うことで「いのち」にかかわる事柄の多様性に気づかせ、自他の生命を尊重することや、家族への敬愛の念などへつなげていきたい。
子どもたちはこれまで、教科などで調査や発表をした経験はあるものの、自分が設定した課題を自分が解決したい方法で解決していくという経験はほとんどない。また、素直で活発であり、豊かな感受性をもっているが、ずっと単級で生活しているためか、友達の見方がやや固定化している様子も見られ、全体の中では、自分の考えや意見を積極的には話そうとしない子どもがいる様子も見られる。このような子どもたちにとって、「いのち」について自分の感じ方や思いを生かした課題を解決することは、互いを思いやる気持ちを育てると共に、自己確立を図ることで互いの見方を変えるもとになるであろうと考える。学習を進めるにあたっては、地域の諸施設や専門家、家庭の協力を得、子どもたちが自発的にかかわりを求めながら追求活動を進められるように支援していく。
(1) 「いのち」のもつ重みを理解し、自他の「いのち」を尊重しながら共に生きようとする気持ちをもつことができる
(2) 「いのち」について、他者とかかわり合いながら調べる活動をとおして、課題を意欲的に追求しようとする
(3) 生命の誕生、生命の連続などの事柄について理解する
段階 | 学 習 内 容 | 時間 | 主 な 学 習 活 動 |
課 題 把 握 |
1 「出会い」の体験 | 2 | ○「出会い」の体験から、自分の考え方や思いをもつ |
2 課題の決定 | 2 | ○自分の考え方や思いを生かした課題をもつ
○個々の課題をもとに全体のテーマを決める |
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3 課題追求の計画 | 2 | ○類似した課題ごとのグループづくりをする ○課題追求の計画をたてる ○よさを交流し合うカード(「やったねカード」)、自分の活動をふり返るカード(学習カード3)の使い方を知る |
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課 題 追 求 |
4 追求活動1 | 4 | ○病院や図書館など様々な場所や人とかかわりながら、自分の課題を追求する ○友達と互いのよさについて「やったねカード」を使って交流し合う(課題追求の段階をとおして行う) |
5 追求活動のふり返り | 1 | ○ここまでの自分の課題を追求したものを持ち寄り、追求したことのよさや改善点を交流する | |
6 追求活動2 | 4 | ○改善点を生かしてさらに課題を追求する | |
7 追求活動のまとめ | 2 | ○自分の追求活動をまとめ、発表の準備をする | |
ま と め |
8 追求結果の交流 | 2 | ○グループごとに、追求活動をまとめたものを発表する
○互いの発表をもとに、特によさについて交流し合う |
9 まとめ | 1 | ○追求活動の交流について感想を書く ○自分の課題解決の活動についてまとめる |
段 階 |
学習する内容・活動 | 指導・支援 | 資料など | |
課 題 把 握 |
○人間の誕生のビデオを見る ○死にかかわる資料を見る ○命を大切にしている話を聞く |
・切実な思いがもてるように、「出会い」の場面を工夫する | 心音のテープ 人間の誕生のビデオ 死にかかわる資料 命を大切にしている話 |
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○感想をもとに、自分で調べたい課題を決める ○課題を出し合い、類似した課題ごとにグループ作りをする ○全体のテーマをどうするかについて話し合い、決定する |
・それぞれの思いや感じ方を生かし、一人一人が課題をもてるように支援する ・教師側の意図したグループ構成にする ・全体での方向性がもてるようにテーマを決めるようにする |
学習カード1(感想) |
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○よさを交流し合う「やったねカード」の使い方について知り、この時間までのよさについて試みに交流し合う ○課題追求のふり返りについて書く 学習カード3の使い方を知る |
・校内外の学習環境の活用の仕方について例示する ・誰(なに)と、どこで、どのようにかかわり合うかを具体的に計画できるように支援する ・一人一人がよさを見つけることができるよう支援する ・放課後の時間を使うことも話す |
学習カード2(計画書) | ||
課 題 追 求 |
○活動単位時間ごとに、自分の追求の様子や他者とどのようにかかわったか、などについて記録する ○活動単位時間ごとに、友達のよさを記したカードを交流する |
・「やったねカード」でよさを交流し合う活動と、学習カード3 課題追求をふり返る活動を、この段階をとおして行う
・校外の施設等へ訪問する場合の指導を行う ・学習計画に基づいて課題を追求させるようにする ・発表する事を意識させ、細かく記録するようにさせる ・よさは学習カード3にメモし、活動単位時間ごとの最後に「やったねカード」に記入して渡す |
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・課題追求の様子や、他者とかかわる課題追求の方法について、グループで交流させるようにする | |||
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・5で得た情報をもとに、追求の方法や解決の仕方について検討させ、より深い解決ができるように支援する | |||
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・聞き手を意識した発表の方法を考えさせるようにする 発表の仕方についても十分練習させるようにする |
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ま と め |
○一人一人が自分の課題解決やその活動の感想を話す ○解決の仕方や発表の仕方について評価し合う ○交流したことの感想を書く |
・グループごとの発表の中に、一人一人の発表の場面をもうけるようにする ・特によさについて目を向けることができるように支援する |
発表資料 学習カード4(感想とまとめ) |
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・どのように他者とかかわり、それがどのように解決につながっているか、自分の課題がどのように解決したかなどについてまとめる | (学習カード4) |