第5学年算数科学習指導案

期 間 13年9月3日〜9月21日
対 象 宮古市立藤原小学校
第5学年 男子10名 女子8名 計18名
授業者 花輪直之

1 単元名 四角形と三角形の面積(東京書籍「新しい算数5年 上」

2 単元について
(1) 教材観
 「量と測定」の領域のねらいは、児童が実生活で出会う様々な量について、それらの量の意味と測定についての理解を図り、測定することができるようにするとともに、量の大きさについての感覚を育てることである。本単元では、平行四辺形や三角形の面積の求め方を、既習の求積可能な長方形や正方形の面積の求め方をもとに考えたり、新しい公式をつくり出したりすることや、その過程で論理的な考え方など数学的な考え方の育成をはかることが主なねらいとなる。
(2) 児童観
 児童は、第4学年で単位面積をもとに長方形と正方形の面積を求めることを学習している。レディネステストの結果、公式を用いて計算によって長方形の面積を求めることは全ての児童ができているが、単位面に基づいた面積の考え方について説明できる児童は全体の2割ほどである。また、これまでに学習している基本的な図形の名称や定義、特徴などについての理解の状況も十分であるとは言い難い。
(3) 指導観
 本単元では、既習の面積の求め方に帰着させ、平行四辺形、三角形の面積の求め方を理解し、それらの面積を求めることができるようになることをねらいとする。
 このことを次の手順で指導にあたる。

@  長方形、正方形、それらの複合図形、平行四辺形、三角形を一括提示し、面積の求積という観 点から同異弁別の作業的算数的活動をさせる。そのような活動をもとに、単元のねらいをつかませる とともに、学習計画を立てさせる。
A  外的な算数的活動をとおして、既習の学習内容に帰着させながら平行四辺形と三角形の面積の求め方を考えさせ、公式を導き出すようにさせる。
・平行四辺形の面積・・・長方形への等積変形で求める。
・三角形の面積・・・・・平行四辺形と長方形への等積変形、倍積変形で求める。
B  本単元で習得したた内容をもとに、各児童の思いによって発展的、応用的算数的活動を選択させ、活動の計画、実施、交流を行わせる。

3 単元の目標
  平行四辺形、三角形の面積の求め方を理解し、面積を求めることができる。
(1) 関心・意欲・態度
 求積方法が未習な図形の面積を求めるときに、既習の図形と関連づけて考えようとする。
(2) 数学的な考え方
 求積方法が未習な図形の面積は、既習の図形に変形したり、分けたりすれば求められることに気づく。
(3) 表現・処理
 平行四辺形、三角形などの面積を求めることができる。
(4) 知識・理解
 平行四辺形や三角形の面積を求める公式や、平行四辺形や三角形などの面積の求め方がわかる。

4 指導計画(全11時間)

指導過程 ねらい 時数 学習活動 算数的活動
つかむ ・単元の学習課題の把握する
 <単元の学習課題>
平行四辺形や三角形の面積の求め方を考えよう
1実践例1 ・複数の図形の面積をくらべるという観点で図形を同異弁別する活動をとおし、単元の学習課題をもつ ・長方形、正方形、長方形の複合図形、平行四辺形、三角形の弁別
わかる・できる 平行四辺形の面積 ・平行四辺形の面積を求めることができる
平行四辺形の面積の求め方を考えよう
平行四辺形の面積は長方形になおして求めることができる
・平行四辺形を長方形へ変 形して面積を求める ・平行四辺形の長方形への等積変形
・平行四辺形の面積を求める公式を理解する
平行四辺形の面積をはやく求める方法を考えよう
平行四辺形の面積は「底辺×高さ」で求められる
・平行四辺形の面積を求める公式をまとめ、公式を適用する
・用語「底辺」「高さ」を知る
・面積を求めるために必要な長さの調査、測定
・高さが平行四辺形の外にある場合も面積の公式は適用できることを理解する
高さがわからない平行四辺形の面積の求め方を考えよう
高さが平行四辺形の外にある場合でも、公式をつかって面積を求めることができる
・高さが平行四辺形の外にある場合の面積の求め方を考える
・高さが平行四辺形の外にある場合も公式が適用できることを理解する
・面積を求めるために必要な長さの測定の工夫 、高さが図形の内側にある図形への等積変形
三角形の面積 ・三角形の面積を求めることができる
三角形の面積の求め方を考えよう
三角形の面積は、長方形や平行四辺形になおして求めることができる
1実践例2 ・三角形の面積を長方形や平行四辺形へ変形して面積を求める ・三角形の長方形・平行四辺形への等積変形・倍積変形
・三角形の面積を求める公式を理解する
三角形の面積をはやく求める方法を考えよう
三角形の面積は、「底辺×高さ÷2」で求められる
・三角形の面積を求める公式をまとめ、公式を適用する
・用語「底辺」「高さ」を知る
・面積を求めるために必要な長さの調査、測定
・高さが三角形の外側にある場合も面積の公式は適用できることを理解する
高さがわからない三角形の面積の求め方を考えよう
高さが三角形の外にある場合でも、公式をつかって面積を求めることができる
・高さが三角形の外にある場合の面積の求め方を考える
・高さが三角形の外にある場合も公式が適用できることを理解する
・面積を求めるために必要な長さの測定の工夫 、高さが図形の内側にある図形への等積変形
・平行四辺形、三角形の面積の求め方の習熟を図る ・練習問題を解く
つかう ・単元の学習で習得した平行四辺形や三角形などの面積の求め方を発展的に活用できる
単元で学習したことを生かして、活動を計画し、実行しよう
2実践例3 ・単元の学習で習得した平行四辺形や三角形の面積の求め方を生かした活動の計画を立て、実行する ・学習内容をもとにした発展的な算数的活動
○校舎内外の測定
○発展的の問題への取り組み
○問題づくり
   * 
単元の課題
本時の課題
本時のまとめ

5 授業実践記録
 指導試案に基づいて作成した学習指導案にしたがい授業実践を行った。「実践例1 つかむ段階での試案に基づく活動」、「実践例2 わかる・できる段階での試案に基づく活動」、「実践例3 つかう段階での試案に基づく活動」の授業実践の概要を以下に示す。  

(1) 実践例1 つかむ段階での試案に基づく活動
 ア 本時の指導についての考え
(ア) 本時のねらい
 面積に関する既習の内容を想起し、単元の学習課題を設定し、学習計画を立てることができる
(イ) 算数的活動の内容
 正方形、長方形、平行四辺形、三角形、正方形と長方形の複合図形の五つを、面積を求めるという観点から既習の内容と未習の内容の図形に同異弁別する算数的活動
(ウ) 本時で想起させ、生かしたい主な既習事項
・長方形、正方形の求積方法(単位量の考え、長方形と正方形の面積の公式)
・長方形と正方形の複合図形の求積方法(既習の図形に帰着し、分割や補充をして求める考え)
 イ 授業実践の概要
学習活動・内容  算数的活動を中心とした活動の様子
1 既習の図形についての想起
・図形の名称、定義、特徴

(提示した図形)
○ 図形についての想起の場面では、図形の名称はほぼ理解しているものの、それぞれの特徴や定義を忘れている児童が多かった。しかし、提示された五つの図形に触れながら調べたり、話し合ったりする活動をとおし、単元の学習を進めるうえで必要な基本的な事項を改めて想起することができた。
辺の長さや角の大きさを測定し、既習の内容を想起する
2 本時の課題の把握
5つの図形を面積が求められるものと求められないものに分けよう
3 解決の見通し
○ 見通しの段階では、面積を求めることについても既習の内容が十分に定着しているとはいえない児童が多く、既習を用いて求積可能な図形の弁別の見通しは曖昧であった。
4 自力解決
・面積を求めることを観点に五つの図形を弁別
・可能なものは求積
・弁別の結果を記録
図形を操作し自力解決 ○ 自力解決での求積をとおし、既習の内容を想起し、見通しの段階で立てた予想に修正を加えながら解決に取り組んだ。複合図形については、図形の分割や補充等によって既習の正方形や長方形に変形して求めるという考え方が想起できず、解決できない児童も多くみられた。また、経験の不足から配布された図形を切ったり、書き加えたりすることに初めは抵抗感を示す様子も見られた。
5 問題解決の検討
・操作活動を用いた同異弁別の結果とその理由についての交流
図形を操作しながら解決方法を説明 ○ 問題解決の検討場面での交流では、個々の解決方法について図形の具体的な操作を加えて説明し合ったことにより、話すことが得意でない児童も自分の考えを十分に伝えることができた。また、図形の操作による視覚をともなった説明により、平行四辺形の求積に長方形の公式を当てはめることの誤りに気づいたり、複合図形の求積の仕方を理解したりできた。
6 単元の学習課題の設定
三角形と平行四辺形の面積を求められるようになろう
○ 単位時間の学習段階で、提示した五つの図形について面積を求めることが可能と判断したものは【表−1】に示すとおりである。
 上記の活動をとおし、児童は面積を求めるという観点で、【表−1】にみられるように既習の内容と未習の内容を明確にすることができた。これにより、単元の学習課題を設定することができた。
【表−1】各段階で求積できる図形と判断 した人数   N=17
見通し 自力解決 問題解決の検討後
正方形 17 14 17
平行四辺形 11
長方形 17 15 17
三角形
複合図形 17 11 17
7 単元の学習計画の立案
T:平行四辺形と三角形のどちらから学習したらよいと思いますか
C1 :長方形に近いので、平行四辺形からがよいと思う
C2 :三角形がわかれば平行四辺形がわかりそう

   ↓<話し合い>
単元の学習計画
(1)平行四辺形の面積
(2)三角形の面積
(3)学習したことをつかって
○ 学習計画の立案では、話し合いをとおし、既習の正方形や長方形に形が近いという観点で、平行四辺形から学習を進めることにした。また、授業者から平行四辺形と三角形の面積の求め方の学習の終了後、それらをつかって活動することを提案し、計画に加えた。
8 学習のふり返り

(2) 実践例2 わかる・できる段階での試案に基づく活動
 ア 本時の指導についての考え
(ア) 本時のねらい
 既習の図形である平行四辺形、正方形、長方形に帰着して三角形の面積を求めることができる
(イ) 算数的活動の内容
 未習の内容である三角形の面積を切る・貼るなどの作業的な活動により、既習である平行四辺形、正方形、長方形に等積変形や倍積変形し、求積する算数的活動
(ウ) 本時で想起させ、生かしたい主な既習事項
・平行四辺形、正方形、長方形の求積方法
・等積変形や倍積変形によって面積を求積する考え方
 イ 授業実践の概要
学習活動・内容 算数的活動を中心とした活動の様子
1 前時までの想起
○ 発言と前時までの学習の掲示物により想起
2 問題の提示
下の図形の面積は何cm2だろうか ○ 黒板掲示の図形と個別配布の図形によって特徴をつかむ。
3 課題の把握
三角形の面積の求め方を考えよう
○ 単元の学習計画により、課題の設定に至るまでの過程を短時間で行うことができた。
4 解決の見通し
・平行四辺形の面積の求め方を想起し解決方法の見通しをもつ
T:どのようにすれば三角形の面積を求められるでしょう
 C1:形を変える  
 C2:長方形や正方形にする 
 C3:平行四辺形にすればいい
○ 見通しの段階では、本時が小単元の二つ目であるため、第一小単元「平行四辺形の面積」 での学習を生かし、どの児童も短時間で解決方法の見通しをもつことができた
5 自力解決
・平行四辺形、長方形、正方形への等積変形や倍積変形
図形を切る、貼る、組み合わせるなどしながら自力解決 ○ 自力解決では、各自の見通しに従いすばやく問題の解決に取り組んだ。実際に図形を操作することによって見通した方法では解決できないことに気づいた児童は、考えを修正して別のカードで活動を行った。また、解決を終えた児童は他の解決方法を見つけようと意欲的に取り組んだ。図形を実際に切ったり、貼ったり、組み合わせたりする活動は、自分の考え方を視覚をとおして確かめたり修正したりすることが容易にできるものであった。また、考えを深めたり広めたりするうえでも有効にはたらくものであった。
6 問題解決の検討
・操作活動を用いた求積方法の交流
図形を操作し、方法を説明 ○ 問題解決の検討場面での交流では、各自の解決方法を図形を操作しながら説明し合った。 言葉だけで自分の考え方を伝えることが苦手な児童も活動をとおして具体的に伝えることができた。また、説明を聞く側も他の考え方を視覚をともなって理解し、多様な考え方に触れることができた。
7 類似問題の解決
・多様な方法から選択し解決
・選択の根拠の記入
類題を解き、解決方法の選択、理由を記述したノート ○ 類似問題の解決において、全ての児童が平行四辺形への倍積変形を選択した。多様な考えに触れることを主とした本時の場合どの方法でもよいのだが、自力解決での自分自身の活動体験や、問題解決の検討場面での友達の操作の様子を「図形を何度切ったか」「何度張り合わせたか」のような簡潔さ、明瞭さ、 的確さにかかわった視点で検討できたものと考えられる
8 まとめ
三角形の面積は、平行四辺形や正方形、長方形になおして求めることができる
○ 単位時間の学習過程で、三角形の面積の求積方法として個々の児童が選択したものは、【表−2】に示すとおりである。

【表−2】各段階における解決方法の選択人数  N=18
見通し 自力解決 類似問題 類似問題での
選択理由
正方形・等積変形 ・簡単
・切らなくていい
・つけたすだけでいい
・はやい
長方形・等積変形
長方形・倍積変形
平行四辺形・倍積A 11 11 12
平行四辺形・倍積B
長方形への分割
その他
9 学習のふり返り

(3) 実践例3 つかう段階での試案に基づく活動
 ア 本時の指導についての考え
(ア) 本時のねらい
 平行四辺形と三角形の面積の求積方法を生かし、それらの活用場面を選択し、活動することができる
(イ) 算数的活動の内容
 単元の学習をとおして身に付けた平行四辺形と三角形の求積方法を問題づくりや体験的な活動、発展問題の解決に生かす、学んだことを広げて用いる算数的活動
(ウ) 本時で想起させ、生かしたい主な既習事項
・平行四辺形、三角形の面積の求積方法
・等積変形や倍積変形、分割などによって面積を求積する考え方
 イ 授業実践の概要
学習活動・内容 算数的活動を中心とした活動の様子
1 学習内容の想起 ○ 発言と前時までの学習の掲示物により想起
2 課題の把握
平行四辺形と三角形の面積の求め方を生かして活動しよう
○ 単元の学習計画に沿って設定
3 活動の選択
・児童の思いをもとに コースを設定
・活動を各自が選択
<設定した3つのコース>
学習していない図形の面積の求積 (4名) 面積の問題づくり (2名) 校地内の面積の実測(12名→2グループ)
○ 活動内容の選択では、まず、個々の児童がしてみたい活動を発表し合った。それをもとに授業者が分類した「学習していない図形の面積の求積」「面積の問題づくり」「校地内の面積の実測」の三つのコースのなかから各自が再度選択した。初めは活動内容をイメージできない児童もいたが、友達の発表を聞くことによって自分がしてみたい活動を具体化させることができた。
4 活動計画の立案
・グループ毎に話し合い、活動計画を作成

活動計画書の作成
<活動計画書への記入事項>
・コースを選んだ理由
・活動内容
・活動場所
・活動の順序
・必要な用具
・発表方法
○ 活動計画の立案では、活動計画書の様式に沿ってグループごとに話し合いながら進めたが、このような活動の経験が多くはないため時間を要した。しかし、友達同士の話し合いや授業者による必要に応じた個別の助言によって、どの児童も滞ることなく最後まで活動を進めることができた。
5 活動
・計画に基づいた活動・発表の準備

<ひし形の求積>

<プリント問題の作成>

<プールの敷地の実測>
○ 活動の実施においては、グループ内で仕事を分担したり、協力し合ったりしながら単元で学習したことを生かしながらどの児童も意欲的に取り組み、それぞれの課題を解決した。また、活動内容とその結果を伝えるための工夫にも努めた。
6 活動の交流
・操作活動をとおした 自力解決の結果の発表
・感想、意見の交流

・台形の求積
・ひし形の求積
・五・六角形の求積

・四段階のプリント問題の作成と配布
・解決方法の演示

・プールの敷地の求積(三角形への分割・およその形)
・渡り廊下の求積
○ 各グループの活動と活動の交流場面での発表内容は、以下のとおりである。
 <学習していない図形の面積の求積>
台形やひし形、五角形、六角形などの未習の図形の求積を個別に実施し、まとめた。問題を解決する際は、「わかる・できる段階」での学習活動の展開に沿って、個々に外的な活動を主とする算数的活動を行い、答えを導き出すとともに公式化に迫った。また、操作活動をとおして発表した。
<面積の問題づくり>
問題づくりを行った児童は、基本的な平行四辺形や三角形、複合図形、未習の図形の問題など、難易度による四段階のプリントを作成し、他の児童の希望によって問題を選択させた。また、解決方法を演示で説明した。
<校地内の面積の実測>
校舎内外の面積を求積した児童は、初めに対象となる場所の選定からはじめた。プールの敷地の面積の求積は、三角形と長方形に分割して求めたグループと全体をおよその三角形ととらえて求積したグループがあり、正確に求める考えとはやく求める考 えの比較となった。児童は、それぞれの違いとよさを認識した。また、授業では取り扱わなかった平方メートルにも触れることになった。なお、求積計算には電卓を使用させた。
7 学習のふり返り ○ 感想発表では、児童は互いに他のグループの活動に感心し、学んだことを活用する多様な 場があることを実感した。