第4学年算数科学習指導案

日 時   平成12年2月17日(木) 10:10〜11:10
児 童   東和町立土沢小学校 第4学年 35名
場 所   岩手県立総合教育センター 体育館
指導者   岩手県立総合教育センター


1単元名  直方体と立方体

2目標
 図形を観察したり、構成したり、分解したりすることをとおして、直方体や立方体の概念について理解するとともに、直方体に関連して直線や平面の平行、垂直の関係について理解する。また、平面上や空間にある点の位置を表すことができるようにする。

[関心・意欲・態度] 直方体や立方体について、その構成要素に着目し、調べようとする。

[数学的な考え方] 直方体の形は縦、横、高さの3つの辺の長さで決まることに気づく。

[表現・処理] 直方体、立方体の展開図をかくことができる。平面上や空間にある点の位置を表すことができる。

[知識・理解] 直方体や立方体の概念、及びその展開図の意味がわかる。
          面や辺の平行、垂直の関係や、平面上や空間にある点の位置の表し方がわかる。

3 単元について

(1)単元「直方体と立方体」の指導
 第4学年の基本的な立体図形と空間の学習は、第1学年での、形の全体的な考察を行う学習と、第2学年での、図形を構成している要素について観察し、図形や空間の概念の理解を図る学習をもとに展開される。また、第5学年での直方体と立方体の体積、容積の学習、第6学年での角柱、円柱などの性質の学習へと発展する。
 本単元の指導は、立方体や直方体を構成する頂点、辺、面の個数や面の形、辺や面の平行、垂直の関係について理解を深め、空間の広がりについても着目できるようにすることがねらいである。
 指導にあたっては、低学年での学習が、形を観察したり組み合わせていろいろなものを作ったりすることをとおして行われたように、図形を観察したり、構成したり、分解したりする具体的な操作活動をとおして、理解を深め、身に付くようにしていくことが大切であると考える。
 単元の指導時間数は9時間とし、直方体と立方体の定義、展開図、面や辺の平行と垂直の学習を終えた第6時間目に、オープンエンドの問題による指導を位置付ける。これは、平成9〜10年度の総合教育センター算数・数学科の研究である「数学的な見方や考え方を高める算数・数学科の学習指導に関する研究−オープンエンドの問題の提示をとおして−」に基づいた指導である。
 この第6時の授業時間は、単位時間を弾力的に使い60分とする。これは、児童の数学的な見方や考え方を高めるために操作活動と活動後の話し合いを充分に行いたいと考えたからである。
 なお、本単元「立方体と直方体」の学習は、平成14年度から実施される学習指導要領では、第6学年の内容となる。

(2)オープンエンドの問題による指導
 一般に、オープンエンドの問題とは、正答が無限に存在する問題のことだが、先行研究にもとづき、この指導では、児童が解を考えることに価値があると認められる問題ならば、有限個の場合もオープンエンドの問題に含めることとする。
 このような問題による指導は、単元の学習の終末段階に、単元の学習内容に沿うオープンエンドの問題を提示し、その解決と、解決結果の比較・検討をとおして、学習したことの理解を深めるとともに数学的な見方や考え方を高めることをねらいとする。
 オープンエンドの問題による指導は、次の点で意義があると考える。

@児童がオープンエンドの問題に取り組む場合には、一人一人の考えによって解答は幾通りにもなり、どれもが正答となり得る。そのため、児童一人一人がこれまでに学んだことをもとに創意工夫する学習が可能になる。
A一人一人が自由に考えを進めることができ、素朴な考えによる方法も手際のよい方法も正答となり得るのであるから、自分の力に応じてだれもが精一杯学習に取り組むことができる。
B各自が解決に取り組んだ後は、それぞれが様々な角度から考えたことを比較し、似ている点で分類する活動などによる検討を行うことから、数学的な見方や考え方を高めることができる。

4 指導計画(9時間扱い)

小単元(時数) 時間 学   習   内   容
直方体と立方体(2) 第1時
45分
箱を集め、仲間に分ける
・辺の長さや面の形で分類する
仲間分けした観点の違いに着目し「直方体」「立方体」を定義する
・定義「長方形だけで囲まれた形や長方形と正方形で囲まれた形が直方体。正方形だけで囲まれた形が立方体」
第2時
45分
直方体、立方体の構成要素である面、辺、頂点を導入しそれらの数や形を考察する
・直方体の面は、同じ形の長方形が2つずつ3組ある。立方体は、正方形6つでできている
・直方体の大きさはそれを構成している縦、横、高さの3つの辺の長さによって決まる
展開図(2) 第3時
45分
箱を切り開いた形を考えながら展開図について理解する
展開図をかいて組み立てる
・面は6つ、向かい合った面の形は同じ
・直方体では同じ形の長方形が2つずつ3組ある、直方体では同じ形の面は隣同士にならない
・縦、横、高さの長さがわかれば展開図がかける
第4時
45分
立方体の展開図をつくり、いろいろな種類があることに気づく
・立方体の展開図は11種類ある
面や辺の平行と垂直(1) 第5時
45分
直方体、立方体の面の並び方や交わり方(平行、垂直関係)について考える直方体、立方体の辺の並び方や交わり方と辺と1つの面の垂直関係について考える
・向かい合った面は平行である
・12個の辺のうち4こずつ3組の辺がそれぞれ平行になる
・1つの辺が2つの面に垂直になる
・1つの頂点に集まる3つの辺が互いに垂直になる
直方体の展開図をつくろう(1)
(本時)
第6時
60分
直方体の展開図をつくり、立方体以上にいろいろな種類があることに気づく
・たくさんの展開図を分類・整理するときは、面の並び方に着目する
位置の表し方(2) 第7時
45分
絵地図上の点の位置の表し方を平面図形の長方形をもとにして考える
・平面上の位置の表し方は、原点をきめる→2つの互いに直交する方向をきめる→それぞれの方向への距離をとる
第8時
45分
電灯の位置の表し方を直方体をもとにして考える
・空間の位置の表し方は、直方体をもとにする
・模型をゆびでたどる→見取り図などのモデルをたどる→それらの活動を記号化する
まとめ(1) 第9時
30分
単元「直方体と立方体」の学習のまとめ

5 本時の指導「直方体の展開図をつくろう」について

(1)本時の目標
 長方形を組み合わせて直方体の展開図をつくり、それを分類・整理する活動をとおして、数学的な見方や考え方を高める。

[関心・意欲・態度] 直方体のいろいろな展開図をつくろうとする。

[数学的な考え方] 直方体の展開図は、立方体以上にいろいろな種類があることに気づく。
             できあがった展開図をもとにして別の展開図を類推する仕方に気づく。
             展開図の分類の観点に気づく。

[表現・処理] 直方体の展開図を複数つくることができる。

(2)本時の指導構想

指導のねらい
 本時の指導では、直方体の展開図が立方体の展開図(11種類)以上にたくさんあることに気づいたり、種類の違う展開図をみつけるために自分なりに考え工夫したりして、数学的な見方や考え方を高めることがねらいである。
提示するオープンエンドの問題
 そこで、児童が、できるだけたくさんの展開図を試行錯誤しながらつくることができるように、長方形を組み合わせる活動を取り入れ、提示するオープンエンドの問題は「直方体の展開図を長方形を組み合わせてつくりましょう」とした。
 この「長方形を組み合わせて展開図をつくる方法」は、次の4点から、よいと考えた。@展開図を作図する必要がない A正しい展開図かどうか、すぐに確かめられる Bセロハンテープでつなぐので、修正が容易にできる C面や辺のつながりや位置関係についての理解を深めることができる。
本時の学習活動
 児童は本時の学習で、はじめに、長方形を組み合わせて直方体の展開図をつくる活動に取り組む。次に、つくった展開図を紹介し合う。最後に、全員がつくった展開図を観点を決めて分類し、気づいたことを話し合う。
指導上の留意点
 これらの指導にあたっては、以下のことに留意する。
 展開図をつくる活動では、児童それぞれが、直方体の展開図を複数つくる ことができるようにしたい。そのため、机間指導で個に応じた支援を行う。 また、自力解決を主とする活動ではあるが、児童が取り組みを交流しながら 自分の考えを広げることができるようにする。
 展開図を紹介する活動では、直方体の展開図がいろいろあることに気づか せたい。そこで、活動の形態は二人組とするが固定せず、より多くの相手と紹 介し合えるようにする。
 全員が作った展開図を分類する活動では、第4時に行う立方体の展開図の 学習を拠り所としたい。直方体の側面となる4面がつながった形を基本とす る考えや、立方体の11種類の展開図をもとにして分類する考えである。
 また、分類した展開図を見て気づいたことを話し合う活動では、分類の観 点がわかれば、それをもとにして、まだ見つけていない展開図を見通すこと ができることや、種類の異なる展開図を能率的につくることができることなどに気づかせたい。
新学習指導要領との関連
 平成14年度から実施される学習指導要領では、展開図の指導について「立体の構成や分解などの作業的な活動を通して、立方体や直方体の展開図はいろいろ考えられることを経験することも、図形についての感覚を豊かにする上で有効である。」(小学校学習指導要領解説 算数編 p159)と解説されている。したがって、本指導は現行の学習指導要領の下に第4学年で行ったが、今後、学習内容が第6学年に移行されても、本時のような、直方体になるかどうかを自分で確かめながら展開図をつくる活動は、前時までに学習した「直方体の構成要素である面の数や形」「面や辺の平行や垂直の関係」などについての理解を深め、図形についての感覚を豊かにする学習として意義があると考える。
参考にした実践例
 なお、本時の指導を構想するにあたり、次の実践を参考にした。
@ 「考える過程で発見のある授業を −4年「直方体と立方体」の授業を通して−」(筑波大学附属小学校 夏坂哲志 教育科学算数教育 1998年  5月号 p41〜45 明治図書)
A 算数科オープンエンドアプローチ(坪田耕三著 明治図書 p56〜58  「箱をひらいたら」) *「箱をひらいたら」の実践例の中に、直方体の展開図が54種類であることが示されている。 (「算数科・『楽考跡』で広がる算数の世界(2) 追究・直方体の展開図は何通り?」田中博史 教育研究 No.1088 1992年)

(3)本時の展開

@ 本時の目標
 長方形を組み合わせて直方体の展開図をつくり、それを分類・整理する活動をとおして、数学的な見方や考え方を高める。

[関心・意欲・態度] 直方体のいろいろな展開図をつくろうとする。

[数学的な考え方] 直方体の展開図は、立方体以上にいろいろな種類があることに気づく。
             できあがった展開図をもとにして別の展開図を類推する仕方に気づく。
             展開図の分類の観点に気づく。

[表現・処理] 直方体の展開図を複数つくることができる。

A 本時の展開

学 習 活 動 指 導 上 の 留 意 点 評   価
1 直方体について次のことを確認する
(1) 面の形は長方形だけ、または長方形と正方形
(2) 面の数は6枚
(3) 向かい合う面は同じ形
1 長方形を組み合わせて直方体の展開図をつくる活動の途中に、面の数や向かい合う面の形などを確かめる質問を盛り込み、直方体のイメージをもたせるようにする。
2 直方体の正しい展開図を見つける
展開図を3例程度提示し正しい展開図をみわける
2 直方体の展開図も立方体のようにいろいろありそうだという関心をもたせたい
3 課題をつかむ
学習課題
直方体の展開図をいろいろつくりましょう
3 直方体の展開図がいくつくらいになるか、立方体の展開図の学習をもとに予想させる。
4 長方形を組み合わせて直方体の展開図をつくる 4 直方体の面となる3種類の大きさの長方形を厚紙で準備する。全員が長方形だけで囲まれた同じ直方体の展開図をつくる。机間指導では、次の点に留意する。
・一人一人の児童が、異なる展開図を複数つくることができるように支援する。
・種類の違う展開図をどのようにしてみつけたのか児童の考えをとらえる。
 自力解決の時間を保障した後、児童の取り組みの様子に応じて、交流をさせ、さらに展開図をつくることができるようにする。
(表現・処理)つくれるか
(関心・意欲・態度)いろいろつくろうとしているか
5 展開図を紹介し合い、互いの成果を知る
(1) 展開図を紹介し合う
(2) 展開図をつくるときに工夫したことを話す
5−(1) 形態は二人組であるが、固定せず、多くの相手と紹介し合えるようにする。
 自分の展開図は誰と同じか、自分が考えつかなかった展開図にはどのようなものがあったかなどを把握しながら紹介し合わせるようにする。
5−(2) 考えた児童が少ない展開図などについて、どのようにして思いついたか聞き、見方や考え方のよさにふれたい。
(数学的な考え方)いろいろあることに気づいたか
6 全員がつくった展開図をまとめる  6 同じ展開図をまとめる活動を二人組からグループへと拡大していく。
 まわしたり、裏返したりして、ぴったり重なるものは、同じとすることを伝える。
7 展開図を見て気づいたことを話し合い、新たな課題をもつ
(1) 仲間に分けて並べる
(2) 別の展開図を見つけだすことができるかどうか考える
7−(1) 立方体の展開図を分類・整理したときの考えを使い、面のつながり方に着目させたい。
7−(2) ある展開図をもとにして別の展開図を見つけだす仕方を話させたい。
(数学的な考え方)・分類の観点に気づいたか・類推する仕方に気づいたか


6 研究授業の様子

授業の様子 1 授業の様子 2
授業の様子 3 授業の様子 4
研究協議の様子 1 研究協議の様子 2