期 間 | 平成12年9月12日〜10月12日 |
場 所 | 石鳥谷町立八幡小学校 |
児童数 | 男18名 女19名 計37名 |
指導者 | 岩手県立総合教育センター 澤藤 耕平 |
1 単元名 新しい時代の幕開け
2 単元について
児童は、前単元で江戸時代における武家政治の安定の過程や町人文化の広がりと新しい学問の興隆について理解するとともに、黒船の来航をきっかけとして我が国が開国したことや、幕府が倒れ、明治政府が成立したことなどを学習してきた。これらの学習を受けて本単元では、明治維新を契機として、欧米の文化を取り入れつつ我が国の近代化が進められたことを理解させることをねらいとする。そのためには、児童に廃藩置県や四民平等、富国強兵策などの諸改革の内容やどんな欧米の文化を取り入れたのかという事実を理解させるにとどまることなく、それらが当時の社会や人々の生活にどのような影響や変化を及ぼしたかを考えさせるようにしたい。
児童は、黒船来航をきっかけとしてこれまで長く続いてきた江戸幕府が倒れ、我が国が近代化に向けて歩み始めたことは前単元で学習しており、明治政府の成立によって社会の仕組みや人々の生活がどのように変化したかということに興味をもっている。また、児童は自分で調べたり、調べてわかったことを表現したりすることを好んで行うが、調べることが資料の書き写しになったり、自分が調べたことのみの理解にとどまったりすることがある。そのような児童に対して、問題把握の段階で、心を揺さぶるような資料を提示して問題意識を喚起することにより、問題の追究をより意欲的なものとするとともに、単に事実を覚えるだけでなく、その意味を考えるようにさせたい。
我が国の近代化に向けての歩みは、欧米の文化を取り入れて人々の生活が飛躍的に向上するというプラス面と、地租改正や徴兵制等の政策によって人々の生活が圧迫されるというマイナス面の両面がある。このような複雑で多様な時代の指導にあたっては、一方だけの押さえにならないように留意する必要がある。そこで、学習課題を多様な側面から追究できるようにする。そのために、課題リンクカードを用いて学習問題を多面的にとらえたり、調べたことの発表はもとより、予想したり、グループごとに調べたりする場面においても随時児童同士が交流し、問題についての多角的な解釈が得られるようにする。それによって、児童は当時の歴史的事象を様々な側面から考えることができ、単に歴史上の出来事を理解するだけでなく、その出来事が人々に及ぼした影響などを理解できるようにしたいと考える。このことが、他の学習や生活において出会った問題の解決にあたっても転移・応用できる力につながると考える。
3 目標
(1) 明治維新、文明開化、大日本帝国憲法の発布などに関心をもち、資料などを用いてそれらについて進んで調べようとする。(社会的事象への関心・意欲・態度)
(2) 廃藩置県や四民平等などの諸改革や憲法発布が当時の国家や社会、あるいは人々の暮らしに及ぼした影響やその際、貢献した先人の果たした役割などを考える。(社会的な思考・判断)
(3) 明治維新、文明開化、大日本帝国憲法の発布などや、その際、貢献した西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、伊藤博文などの働きを年表や資料等を活用して調べる。(観察、資料活用の技能・表現)
(4) 明治時代に入り、廃藩置県や四民平等などの諸改革によって政治の仕組みが変わったことや、大日本帝国憲法の発布によって立憲政治が確立したこと、また、欧米の文化を取り入れることによって、人々の生活に大きな変化がみられたことがわかる。(社会的事象についての知識・理解)
4 単元の指導計画(9時間)
段 階 |
ね ら い | 時 | 主 な 学 習 活 動 | 資 料 等 |
つ か む ・・・・・ |
・資料をもとに江戸 と明治の世の中の様 子を比較し、学習課題をつかむ。・・・ | 1 本時@ |
1 明治時代になってからの東京の様子を表す絵を見て、江戸時代との違いを考える。 |
・絵資料「明治時代の 都市の様子」 |
2 明治以降の一揆や打ちこわしの数の変化と絵資料を関連づけ、学習課題を設定する。 <学習課題>
|
・統計資料「明治以降 の一揆の起こった数」 | |||
3 明治時代の変化を多面的にみる視点をとら
える。 ・政治の仕組み ・文化 ・教育 ・産業 ・教育 ・人々の暮らし(大名や武士、町人や農民) 4 「課題リンクカード」を用いて、学習課題解決するためにはどのようなことを調べれ よいかを考える。 |
・課題リンクカード |
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・課題について予想 をもとに、課題を解 決するため調べ方や まとめ方をグループ毎に話し合い、学習 計画を立てる。 ・ | 2 本時A |
5 グループごとに調べる課題を決め、予想にもとづいて何をどのように調べればよいか話
し合う。 ・政治の仕組みは江戸時代よりもよくなったか(どう変わったか) ・都会(町人)の暮らしは… ・農村(農民)の暮らしは… ・大名や武士の 暮らしは… ・産業は… ・教育は… ・文化は… 6 グループごとの学習計画を発表しあい、予想や調べることについて、他からの意見も聞き学習計画に補足する。 |
・学習計画表 | |
調 べ る |
・年表や資料を活用 し、それぞれの課題 について調べ、それ をみんなに知らせる ことができるように 表現する。 | 3 ・ 4 ・ 5 ・ 6 |
7 グループごとに年表や資料を活用して調べる。 <調べる内容例> ・政治の仕組み(五箇条の御誓文、廃藩置県、四民平等、徴兵令、地租改正、国会開設、大日本帝国憲法など) ・教育や文化(学制、学問のすすめ、福沢諭吉、鉄道、電信電話、郵便、ガス灯など) ・産業(富国強兵、官営工場、富岡製糸場、 地租改正など) ・大名や武士の暮らし(廃藩置県、四民平等、徴兵令、士族 の反乱、自由民権運動、西郷隆盛など) ・都会(町人)の暮らし(衣食住、鉄道、電信電話、郵便、ガス灯など) ・農村(農民)の暮らし(四民平等、地租改正、徴兵令、農民一揆など) |
・児童の収集資料 |
8 調べたことを全体に発表できるようにまとめる。 ・新聞形式にまとめる ・模造紙にイラストや文でまとめる ・紙芝居的にまとめる ・その他 |
・ |
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9 調べたことの要点を発表の予告編として作成する。 | ・予告編カード ・まとめ学習シート |
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ま と め る |
・明治時代に入り、 政治の仕組みが変わ ったことや、人々の 生活に大きな変化が 見られたことがわか る。 | 7 ・ 8 |
11 グループ毎に調べた結果を発表する。 12 調べたことについての発表をもとに質疑応答や意見交流を行う。 13 発表や意見交流をもとに学習問題に対する自分の結論をまとめる。 |
・児童の発表資料 ・まとめ学習シート |
ひ ろ げ る |
・明治維新やそれに 貢献した先人の役割 を考える。 | 9 |
14 明治時代の変化と自分たちの生活の結びつ きを考える。 | ・自主学習シート |
本時の指導@ (第1時)
(1) 目 標
・資料をもとに江戸と明治の世の中の様子を比較し、政治の仕組みや文化、人々の生活のようすなどの視点から、明治時代になったころの我が国のようすを調べるための学習課題を設定する。
(2) 展 開
段階 | 学 習 活 動 | 資 料 等 | 留 意 点 |
つ か む |
1 明治時代になってからの東京の様子を表した絵を見て、江戸時代には見られなかったものを見つける。 | 絵資料「明治時代 の都市の様子」 | ・江戸時代から急速に発展したことをつかませる。 |
2 明治以降の一揆や打ちこわしの数の変化を示したグラフを見て、なぜ、増えたのかを前出の資料と関連づけながら考え、学習課題を設定する。
<学習課題>
|
グラフ「農民一揆 の発生件数」 | ・グラフの提示によって、絵資 料から暮らしなどがよくなっただろうと思っている子供たちの意識に揺さぶりをかける。 | |
3 課題を解決するためには、明治時代 と江戸時代のどんな様子と比べれば課
題を解決することになるかを考える ・政治の仕組み ・文化 ・教育 ・産業 ・人々の暮らし(大名や武士、町人や農民) |
補足資料「江戸時 代の様子」 | ・補足資料を提示することによ り、何が「よくなった」かとい うことを考え、明治時代の変化 を多面的にみる視点をとらえら れるようにする。 | |
4 3で考えた視点をもとに、課題を解決するためにはさらに何を調べていけばいいかを具体的に考える。
5 次時の学習内容を知る。 |
課題リンクカード | ・課題リンクカードにそれぞれ の視点について発展する課題項目をウエビング方式で書かせる。 |
本時の指導A (第2時)
1 目 標
・学習課題について予想をもとに、課題を解決するため調べ方やまとめ方をグループ毎に話し合い、学習計画を立てる。
2 展 開
段階 | 学 習 活 動 | 資 料 等 | 留 意 点 |
つかむ | 1 前時の学習課題を確認する。 | ・ | ・ |
2 グループごとに調べる課題を決め、 それぞれ予想にもとづいて何をどのように調べればいいか話し合い、学習計画を立てる。
<各グループ毎の調べる課題例> ・政治の仕組みは、江戸時代よりもよくなっただろうか(どう変わったか) ・都会(町人)の暮らしは、江戸時代よりもよくなっただろ か(どう変わったか) ・農村(農民)の暮らしは、江戸時代 よりもよくなっただろうか(どう変わったか) |
課題リンクカード 学習計画表 |
・グループごとに調べる課題は 教師側で提示する。 ・前時の課題リンクカードをも とに各グループごとに話し合い、 学習計画表にまとめるようにする。また、計画表を例示する
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3 グループごとの学習計画を発表し合 う。 ・学習計画の発表 ・予想についての質疑応答 ・調べる内容や方法についての意見の述べ合い |
・ | ・自分が調べない課題についても、自分が調べるつもりで考え
るよう促す。 ・どのグループの課題についても全員の予想を確認する。 |
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4 予想や調べることについて、他から の意見を学習計画に補足する。 | ・ | ・他からの意見については、受 け入れられるかどうかをグループで話し合わせるようにする。 |