小学校 社会科指導プログラム

学校名 大迫町立大迫小学校
対象学級名 第5学年(男子15名,女子21名,計36名)
指導年月日 平成8年9月25日 4校時
指導者 織笠 力

1 単元名 「日本の工業の様子」

2 単元設定の理由

(1) 教材観

 第3学年の「自分たちの市」を中心とした地域の重要な生産活動の学習で,食品工業の様子を学んできた。この時には,地域の生産活動の特色と工夫についての理解をするとともに,他地域とのつながりについてもとらえている。それを受けて,本単元を含む大単元「工業生産をささえる人々」では,工業生産の現状の具体的事例,我が国の工業生産の特色や問題点の学習に発展させている。学習指導要領では,本単元のねらいを,「我が国の工業について,工業地域の分布や各種の工業生産の特色を地図や資料などで調べて,我が国の工業の特色や国民生活のうえで工業生産が大切であることを理解するとともに,工業に従事している人々の工夫や努力に気づく」としている。工業地域の分布や各種工業生産の特色などを地図や資料などを調べることを通して,わが国の工業生産の特色を理解させる。また,工業が盛んな地域の生産活動の様子を調べることを通して,新しい技術の開発や資源の有効な利用及び確保などにつとめていることを具体的にとらえさせることを主なねらいとしている。

(2) 児童観

 前提テストの結果から,分布図やグラフの大まかな読み取りについては,ほぼ定着していると思われる。社会科の学習に関する意識調査の結果から,社会科は覚えなければいけない内容が多く面倒であるという意識を持つ児童が多い。また,日常の学習の様子から,用語の意味理解において定着が十分でない面が見られる。コンピュータを用いた授業についての児童の関心が非常に高いので,この関心の高さを指導に生かしていきたい。

(3) 指導観

 「我が国の工業生産の特色や工業生産の大切さを理解させること。」については,はじめに,工業地帯・地域の分布を取り上げ,工業の立地条件に関わる資料と工業地帯・地域の分布図とを比較したり関連づけさせたりすることにより,分布の特徴をとらえさせたい。さらにICやLSIの  工場の分布を工業地帯・地域や空港の分布図と比較させることにより,工業の立地条件が従来と  は変わってきていることに気づかせたい。また,軽工業中心だった日本の工業が重化学工業中心  に変わってきたことを統計資料を用いて比較させることによりとらえさせたい。これらのことから日本の工業の特色について理解させたい。
 「工業に従事している人々の工夫や努力に気づかせる」については,はじめに,大工場と中小工場との違いを取り上げ,各工場の写真資料の観察等により働く人の姿や施設・設備の違い,製品の違いなどをとらえさせたい。次に,中小工場の役割を取り上げ,大工場と中小工場の関係の図や読み物資料の読み取りにより,中小工場の役割の大切さや抱えている悩みについて考えさせたい。また,工業に従事している人々の労働環境改善に向けての努力についても関心を持たせたい。これらのことから,大工場と中小工場の生産物や施設及び働く人の仕事やくらしの違いについて理解させたい。
 指導に当たっては,日本の工業の様子について多面的な理解を図るために,写真資料,統計資料,読み物資料等を用い,それらから読み取ることのできる特徴や傾向をもとにして,相違点や共通点に着目させながら資料を比較し関連づけて考えさせるようにしたい。また,児童が自らの見通しに基づき自分なりの進め方で課題解決ができるように,自力解決の段階にコンピュータ教材を取り入れ,児童が複数の資料を並べて表示したり重ねて表示したりすることによって資料の相違点や共通点に気づき,その意味の分析をするようにさせたい。

3 単元の指導目標

・わが国の工業の特色や工業の盛んな地域について資料で調べることを通して,わが国の工業の発展に関心を持たせる。(関心・意欲・態度)
・各種の資料から日本の工業の盛んな地域の分布,大工場・中小工場の生産のようすなどを正しく読み取らせる。(技能・表現)
・工場で生産されるものや生産の様子などを調べることをとおして,国民生活を支える工業生産の意味について考えさせる。(思考・判断)
・工業生産に関する写真や地図・統計資料などを使ってわが国の工業の盛んな地域を調べさせ,大工場と中小工場の生産の様子や働く人の仕事,くらしなどの違いを理解させる。(知識・理解)

4 単元の教材構造(略)

5 単元の指導計画(3時間扱い)

・地図などの資料から,わが国の工業の盛んな地域を調べ,工業生産の特色をとらえる ・・・1
・大工場と中小工場では生産物や施設に違いがあることをとらえる  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
・大工場と中小工場では,働く人の仕事やくらしに違いがあることをとらえる・・・・・・・・・・・・・・・1(本時)

6 本時の学習指導

(1) 主題 「だれもが生き生きと働けるように」

(2) 指導目標

働く人々の仕事や環境にはいろいろな問題が起きていることを理解させるとともに,問題の解決に向けて様々な取り組みがなされていることに目を向けさせる。

(3) 目標行動

 工場で働く人々の仕事や環境に関する問題や解決に向けての取り組みを,賃金や労働時間などと関連づけて説明することができる。

(4) 下位目標行動

R@大工場では,整った設備や技術のもとで大量生産をしているといえる。
RA中小工場では,設備などが整っていないところが多く,人手もかかるので,少量生産になりがちであるといえる。
RB1年間の一人当たりの生産額,1年間の一人当たりの賃金のグラフを読み取ることができる。
RC中小工場の賃金は,大工場にくらべて低いといえる。
RD1ヶ月の労働時間比較のグラフを読み取ることができる。
RE中小工場の労働時間は,大工場にくらべて長いといえる。
 F中小工場では,下うけをしているところが多く,経営が安定しない悩みがあるといえる。
 G中小工場では,働く人が集まりにくいという悩みを抱えていることろもあるといえる。
 H労働者の不足を補うために,外国人労働者を雇い入れているといえる。
 I外国人労働に関わって,言葉がうまく通じない,賃金が安いなどの問題があることがいえる。
 J労働組合とは,工場で働く人々の生活を向上させるためのものであるといえる。
 K労働組合の代表の人たちは,職場の環境や賃金などについて会社と話し合っているといえる。
 L女性の労働に関わって,希望する職業につきにくい,賃金が男性より低いなどの問題があるといえる。
 M女性も働けるように環境を整える職場が出てきたので,男性の職場といわれていたところに女性が進出してきているといえる。
 N障害を受けている人とは,どのような人かいえる。
 O障害を受けている人は,環境が整っていないために,なかなか仕事につくことができないといえる。
 P環境を整えて,障害を受けている人を受け入れるようになった職場があるといえる。
 Q技術を高めたり,多種少量生産などの生産の工夫をして,経営の安定に努めている中小工場があるといえる。
 R生産を高めるためには,だれもが生き生きと働けるようにしていくとことが大切であるといえる。
※) Rは,レディネスを表す。

(5) 下位目標行動のグルーピング

(6) 本時の展開過程

時間
配分
主な学習内容 展開の流れ 教材・教具と留意事項
7分 資料を観察する問題を理解
する
(R@ RA)

・大工場と中工場,小工場の工場の内部や生産の様子を比べることができる写真資料を児童のコンピュータに提示して,課題意識を持たせる。
・学習課題について話し合い,課題が明確にとらえられるようにする。
学習プリント
20分 解決の見通しを持つ
(R@ RA RB RD)
既有の知識や経験,提示された資料などをもとにして,解決の見通しを持たせる。
・見通しを確かめるためにどんな資料を使うかを考えさせる。
・自力解決をする
(R@ RA RB RC
RD RE F G
H I J K
L M N)
・コンピュータ教材を使い,自分の解決の見通しにしたがって,働く人の悩みやその解決に向けての努力をべたり考えたりさせ,調べてわかったことなどをプリントに記入させる。
・必要な情報が選択できるように,机間巡視をし,選ぶ資料についての助言を行う。
11分 ・働く人の努力や様子について確かめる
(RD RE F G
H I J K
L M N O
P Q)
・友達の考えや説明を聞いてわかったことや気づいたことを,自分の考えと比較しながらまとめることができるようにする。
・コンピュータ教材(2人で1台を使用する。)
 
働く人の努力や様子についてまとめる
(J L O P Q)
[評価]
7分 本時のまとめをする
(G)
・学習を振り返って,働く人の労働環境改善に向けての努力について具体的に指摘できるようにする。
・自己評価をする ・自力解決場面での学習について自己評価させ,自力解決ができたことに対して満足感を持つようにする。
・本時の学習で自力解決できたことを自覚させ,問題解決への意欲を高めることができるようにする。 
・次時の予告を聞く