学校名 | 大東町立渋民小学校 |
対象学級 | 第5学年(男子2名女子6名計8名) |
指導者 | 小 野 寺 茂 |
作成者 | 小 野 寺 茂 |
木版画はおよそ1200年以前に中国から伝来し、日本の芸術文化の一端を担ってきた。この歴史ある技法を用いて制作をすることは、絵画表現の手段としての幅を広げるだけでなく、日本の伝統文化を学ぶ上でも貴重な体験である。木版画は、「一版刷り」「多版多色刷り」「一版多色刷り」と大別されるが工夫しだいでかなり応用が効き、和紙やインクの色を替えたり、彫刻刀以外の道具で彫りの変化をつけたりすることもできる。
本題材は、自分の生活を振り返り強く心に残っていることをテーマとし、一版で表すことをねらいとしている。テーマ「ゆめをほる」は自分の生活の一場面や思い出を素材にし、下絵を作成するために、実際に友達と遊んだ場所へ行ったり、遊び道具や友達のポーズをスケッチしたりして、より具体性をもたせて画面構成を考えるよう設定したい。
版画の表現として、特に白と黒で表すことは基本となっており、主題をはっきり表すためには、白と黒のバランスや白と黒の配置は、画面を構成する重要な要素である。さらに、一本の刀での彫り方の工夫や数種類の刀の選択による効果を考えて制作すると、より自分の思いに迫ることができる。インクの色を自分の思いに合った色に変えたり、仕上げに淡彩を施したりすると更に雰囲気を高めることができる。このように、本題材では版画表現の基本をしっかり学びながら児童の版画制作への意欲を高め、版画で表すことのおもしろさを味わわせるために適した題材と考えて設定した。
児童は、これまでに紙版画や初めての木版を体験し、直接描いた絵とは違った味わいを楽しんできた。白と黒の世界だけでも、紙版画では素材の異なるものを貼り合わせて質感を工夫したり、不安と期待の思いをもちながらも彫刻刀で切れ味を楽しんで木版画の作品を完成させたりすることができた。しかし、木版画においては、主題を表すために丸刀を中心にバックを彫ることが精一杯で、構図や彫り方を意識して十分に自分の思いを表現するまでには至っていない。
この時期の子どもたちは、ものごとを客観的に見ようとする傾向が高まり、写実的な完成度の高い作品を求める気持ちが強くなると同時に、見通しを立てて計画的に活動を進めることができるようになる。実際に学級の子どもたちは、図工等の創作活動だけでなく様々な場面で先を見通して活動するようになってきている。
本題材の指導の中で、テーマにかかわる児童の思いと発想を大事にするとともに、主題に迫るために、次の3つの段階で重点的に指導することを考えている。
@構想の段階において、中心になるものの大きさや位置、白くする部分とインクをつける部分の配置などを考えて構成を十分に練る。
A彫りの段階において、刀の使い方とその効果を把握し自分の作品の中に生かすことで、豊かな彫りの表現を実現する。
B仕上げの段階において、彫りに使うインクの色や淡彩の色を工夫し、雰囲気を高める。
これらの3つの段階で、コンピュータ教材を利用し、見通しをもちながら制作を進められるようにしたい。コンピュータ教材の利用は、思いどおり進んでいる子にとっては自信を高め、迷っている子にとっては見通しをもたせ、表現を豊かにするための手段と考える。
1<関心・意欲・態度>
自分の生活の一場面を、表したい思いが伝わるように工夫しようとするとともに、版で表す喜びを味わう。
2<造形に対する知識・理解>
木版画で表したい思いを表現するために、白と黒のバランスや白黒の配置を考えて構想する必要があることを理解するとともに、刀の安全な使い方と刀の選択による効果について知る。
3<発想や構想の能力>
表したい思いを表現するために、どのように構成するか考える。
4<創造的な技能>
彫りの効果を考えて、彫刻刀の使い分けをしたり、刷りのインクの色や仕上げの淡彩の色を選択したりして、試行錯誤を生かしながら自分の思いに迫ることができる。
5<鑑賞の能力>
自他の作品の良さや工夫している点を見つけ認め合い、作品への思いを感じ取る。
(構想の段階) 「構想を練りながら主題のはっきりした下絵を描く」
(彫りの段階) 「刀の効果を使い分けて版を彫る」
(仕上げの段階) 「主題に合ったインクの色を考えて刷る」
「淡彩で版画の雰囲気に合った仕上げをする」
(鑑賞) 「自他の作品の良さを見つけながら鑑賞し合う」
(構想の段階)
○自分の思いを表現するために十分に構想を練りながら下絵を描かせ、彫りへの意欲を高める。
(彫りの段階)
○刀の選択による効果や彫り方を理解させ、表現豊かに彫りの作業を進めさせると共に、自分のイメージの世界を表現する喜びを高める。
(仕上げの段階)
○刷り方について理解させるとともに、自分のイメージに合ったインクを選ばせ、完成に近づいた喜びを味わわせながら刷らせる。
○作品の雰囲気を高めるために淡彩で仕上げをさせ、完成の喜びを味わわせる。
(鑑賞)
○自他の作品を鑑賞し合い、それぞれの良さを認め合う。
G 白黒の配置や白黒のバランスを考えて描いた下絵を、表現に応じて彫刻刀を選択をしながら彫り、イメージに合ったインクや絵の具の淡彩で、思い通りの作品を仕上げることができる。また、でき上がった作品を鑑賞し合うことができる。
@それぞれの作品の良さを認め合うことができる。
A自他の作品の良さを見つけることができる。
RB自分の思いに迫った作品を作るための苦労や工夫について振り返ることができる。
C一版色刷り淡彩仕上げの版画ができる。
D版画の作品の雰囲気にあった淡彩がつけられる。
RE淡彩がつけられる。
F主題にあった色刷りができる。
G主題に合ったインクが選べる。
RH黒のインクで版画を刷ることができる。
I表現に応じて刀の効果を使い分け、彫りを完成させることができる。
J刀の効果を生かした彫りができる。
K表現したい効果にあった彫刻刀を選べる。
RL丸刀で彫刻刀の基本的な扱いができる。
M白と黒の配置をした主題がはっきり表れている下絵ができる。
N中心になるものが目立つように白と黒を配置できる。
O中心になるものがはっきりとした構成で下絵ができる。
Pアイディアスケッチができる。
RQアイディアのイメージがもてる。
5 形成関係図とグルーピング
6 単元本時の展開