高等学校生物IBにおける「生物の反応と調節」の実験教材の開発に関する研究 

    ─── メダカの海水飼育による体や発生に与える影響を通して───        

                          岩手県立福岡工業高等学校 清瀬 剛志 

 

 第1時限 海水がメダカに与える影響について               

  目標 : 海水がメダカの体や発生に与える影響を調べ、海水の浸透圧と体液の浸透圧の関係

      を理解させる。                               


段 階

 主 な 学 習 内 容

    指 導 上 の 留 意 点

  教 材

形態






7分


























38 分



5分
 

1問題を確認する
2メダカが海水中で受ける影響を予想する
3浸透圧のモデル実験を行う
4課題を確認する
5海水の浸透圧が成魚へ与える影響を調べる実験を行う
@淡水中(対照)の鰓蓋運動を計測し、呼吸速度を測定する
A稀釈海水中(実験1の呼吸速度の測定)
B海水中(実験2)の呼吸速度の測定
C実験結果のまとめをする

6外液の浸透圧と体液浸透圧の関係をモデル図から考察する
7海水の浸透圧が胚へえる影響を調べる実験行う
@ 教師の演示により操作を確認する
A 各班毎に実験を行う
B 実験結果のまとめをする
8海水中での胚の体液の浸透圧が維持されている理由を考える
9本時の学習のまとめをする
10 アンケートに記入
1 次時の予告をする

 

「淡水魚のメダカは海水中で生存できるか淡水と海水の塩分濃度の違いから、体液の濃度や浸透圧の変化を導き出したい
 実験の結果がでるまで約15分間、静置しておく
「海水がメダカに与える影響を調べる」
外液の浸透圧が、淡水・稀釈海水・海水と塩分濃度が変化するとき、成魚への影響を呼吸速度を測定し調べる
 OHPを使用し、スクリーン上のメダカのシルエットから、鰓蓋運動をシンクロパルスで同調させ、カウンターで計測させる
 @に同じ

@に同じ

 3の実験と5の実験結果から、体液の浸透圧が海水中で上昇することと、呼吸速度が低下することを結びつける
 海水中で体液の浸透圧が上昇した理由を、淡水・稀釈海水・海水における水と塩類の吸収と排出の違いから考える
 外液の浸透圧が淡水から海水へと変化するとき、胚への影響を心拍(心臓の拍動)速度を測定し調べる(呼吸速度と相関あり)
 心拍速度の測定に用いるシンクロパルスとカウンターの使用法に注意させる
 作業分担し手際よく行う
 外液の浸透圧と心拍速度の関係をグラフにし、浸透圧が維持されていることを知る
 成魚では海水中で体液の浸透圧が上昇したが、胚では何らかの作用により体液の浸透圧が維持されると考えられる
 板書を振り返りながらまとめる


 ふ化した前期仔魚の心拍速度について
 

 
 
 
ビスキングチューブ
 
プリント1
淡  水
(対 照)
稀釈海水
(実験1)
海  水
(実験2)
シンクロパルスカウンター
OHP
結果


考察


プリント2
淡水発生
(対 照)
海水発生
(実 験)



考察




アンケート

 






































 

* シンクロパルス・カウンターは、成魚の鰓蓋運動や胚と前期仔魚の心臓の拍動のリズムを、機械的な

  リズム(光や音)と同調させ、一定時間のリズム回数を計測するために製作した機器。

 (同調機器:シンクロパルス、計測機器:カウンター)

第2時限 海水中のメダカの調節について            

  目標 : 海水中のメダカの体液の浸透圧調節を調べ、その仕組みを理解させる。      


段 階

 主 な 学 習 内 容

    指 導 上 の 留 意 点

教 材

形態






8分




























35 分



7分
 

1前時の実験結果を確認する
2前期仔魚の海水中での影響を予想する
3課題を確認する

4海水の浸透圧が前期仔魚に与える影響を調べる実験を行う
@教師の演示により操作を確認する
A各班毎に実験を行う
B実験結果のまとめをする

5海水中で前期仔魚の浸透圧が維持れている理由を考える

6海水中の体液の浸透圧調節とホルモンの関係について考える
7海水中で成魚が浸透圧を調節していることを調べる実験を行う
@ 教師の演示により操作を確認する
A 各班毎に実験を行う
B 実験結果のまとめをする


8海水中の体液の浸透圧の調節とホルモンの作用をまとめる
9本時の学習のまとめをする
10アンケートに記入をする
 

成魚と胚の外液の浸透圧と呼吸、心拍速度関係をグラフで確認する
 ふ化した前期仔魚は、卵膜や内液の保護受けないことから予想させる
「メダカの海水中での体液の浸透圧調節の仕組みを調べる」
 外液の浸透圧が淡水から海水へと変化すとき、前期仔魚への影響を心拍速度を測定し調べる
 前期仔魚はダメージを受けやすいので、取り扱いに注意させる
作業分担し手際よく行う
 前期仔魚の心拍速度も胚と同様に海水中でも変化せず、体液の浸透圧が維持されていることを知る
 前期仔魚は、卵膜などの保護がなく鱗も未発達なことから、海水中で体液の浸透圧が上昇するのを抑制するような調節を行っていると考えられる
 海水中の体液の浸透圧調節は、水を吸収し塩類を排出することで行われ、これはホルモンの制御を受けている
海水中の体液の浸透圧調節を海水順化とホルモンを投与した海水中の成魚の呼吸速を測定し調べる
 呼吸速度の測定に用いるシンクロパルスとカウンターの使用法に注意させ作業分担し手際よく行う
 海水順化とホルモンを投与した海水中で呼吸速度が低下しないことから、体液の浸透圧はホルモンのはたらきにより調節されていると考えられる
 体液の浸透圧調節は、ホルモンの制御を受け、塩類の輸送が活性化され、水の吸収
と塩類の排出により行われる
 板書を振り返りながらまとめる



 

プリント1
・2




プリント2

淡水ふ化
(対 照)
海水ふ化
(実 験)
シンクロパルス
カウンター
結果

考察






プリント3
淡  水
(対 照)
海水順化
(実験1)
ホルモン
投与海水
(実験2)
結果

考察



アンケート

 

 


 
 
 
 
 






 
 
 
 
 


 
 
 






 
 


 
 


 
 










































 

* 使用したホルモンは、塩類(Na+)の輸送活性化の促すコルチゾルで、飼育水に添加して

  用いた。この飼育水添加による方法は、投与物質の摂取量がはっきりしないため、その効果

  についての検証は、十分ではない。