技術・家庭科学習指導案

日時   平成12年10月12日(木) 6校時
場所   盛岡市立上田中学校 技術室
学級   第2学年

4 単元名  技術とものづくり 〜電気エネルギー変換を利用した製作品の設計・製作〜

5 単元について

(1)教材観
@ 新しい指導要領による技術・家庭科の内容は教科時数の削減もあって大幅な改訂がなされた。技術分野においては技術・家庭科開設以来40年間も続いてきた「木材加工」「金属加工」「機械」「電気」「栽培」「情報基礎」等の領域ごとの内容が姿を消して「A技術とものづくり」「B情報とコンピュータ」の2分野にまとめられた形となった。
 従って、思い切って発想を転換し、今までのようにひとつの領域に多くの時間をかけてその領域の内容を細かく指導することから、限られた時間の中で子供たちに技術の本質を教え、「技術ってこんなにも楽しく、素晴らしいことなのか、これからももっと学んでみたい」という意欲を喚起する指導を行うことを常に心掛けていかなければならない。
A 2学年の後期の学習は、前期の家庭分野「生活の自立と衣食住」から技術分野の「技術とものづくり」に切り替わる。ここでは、指導要領の第8節、第2の2.内容(5)エネルギーの変換を利用した製作品の設計・製作に基づいた学習を行う。内容としては、「電気」を中心に「エネルギーの変換」や「代表的な電気器具のしくみ」「電気回路の製作」「技術と環境や資源」を取り扱うこととする。
B 製作題材としては「ダイナモ2000(手回し発電機付ラジオ&ライト)」を取り上げる。その理由はこの題材が電気エネルギーの発生、変換と利用に関して様々な実験を折り込みながら楽しく製作することが可能であり、しかも作品は従来まで取り扱ってきたいろいろな作品と比較してみると、実用品として日常の生活の中で十分に活用することができる優れた性能を有しているからである。

(2)生徒観
@ 2年生の現段階では、理科で「電気」の学習は未習であり、電気に関する基礎知識は小学校で学習した段階に止まっている状態である。しかも近年は、様々な電気製品がブラックボックスと同様の状態となっており、日常の生活の中で分解して中身を観察したり、自分で修理したりしたという経験は全くないといっても過言ではない。従って、興味や関心は持っていても基礎的な知識や技能を有していないため積極的に課題を追求したり、自分の力で作って見たいという気持ちは薄いと思われる。また、電気の知識や技能に関しての男女差は全く無いと思われる。
A 日常生活の中には、多くの電化製品が溢れ、電気エネルギーの供給も非常に豊かであるため、その恩恵を殆ど感じてはいないものと思われる。同じ電気でも興味関心はパソコンやファミコンなどのエレクトロニクス関係にあると思われる。

(3)指導観
@ この単元では、「電気エネルギーの変換」と「電気回路」の学習を中心テーマとして据えることとする。それは従来までのように電気器具に始まり電気器具に終わってしまうような学習では断片的な知識しか得られないと考えたからである。人類が電流と磁気の関係を発見し、それから電磁石を作り、誘導作用を発見し、変圧器を作り、それらの法則の中からさらに発電機やモーターを作っていった事実、その歴史的なつながりの中で、電気エネルギーの本質的な意味を知らせていくことの方がはるかに重要であるととらえている。
A 単元の導入の段階では、電気はエネルギーであり、他のエネルギーと比較して極めて便利なエネルギーであることをとらえさせたい。次に、その電気をどのような方法で作り出し、どのような仕組みで有効に活用しているのかを幾つかの教材を使って実感させながら理解を深めていく。まとめの段階では、実用的な製品の製作を行って電気に関する興味関心を高め、電気エネルギーに関する今日的課題の追求にまで迫っていきたい。

6 指導計画 <35時間>

(1)電気エネルギーの正体(10時間)
 @電気はどのようにして作り出すのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8時間(本時1時間目)
 A電気はどのようにして送るのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2時間
(2)電気機器のしくみ(15時間)
 @電気をどのようにして測定するのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5時間
 A電気をどのようにして他のエネルギーに変換するのか・・・・・10時間
(3)電気機器の製作(10時間)
 @電気回路を組み立てる技能のコツは何か・・・・・・・・・・・・・・・・2時間
 A図面に基づいて電気機器を組み立てよう・・・・・・・・・・・・・・・・8時間

7 本時について
(1)目標
@電気はエネルギーであることを説明することができる。
A電気の諸現象に疑問を持ち、課題化することができる。
(2)指導の構想
 本時は新しい単元の第1時間目であるので、電気に対して興味・関心を持ち、電気の諸現象について自分なりの課題を設定できるように指導したい。導入の段階ではもっとも身近な発電機である自転車の発電機で豆電球を点灯してみる。豆電球を付けたときと外した時では回転する力に違いがあることを気付かせる。さらに各班ごとに「手回し発電機(ゼネコン)」使って一人一人に運動エネルギーが電気エネルギーに変わることを実感させる。展開の段階では、自転車の発電機で作られた電気でラジオを鳴らすことができるかどうかを試してみて、電気には交流と直流があることを気付かせたい。まとめの段階では、携帯用発電機を作動し、発電の量について考えさせ、この後の学習について課題や意欲を持たせるようにしたい。
(3)本時の展開


学習過程 授業者の働きかけ 生徒の活動 教材・資料



10
1 学習内容の把握 1 電気の正体について質問する。
 ・個体か、流体か、それとも?

 電気とは何でしょうか?
1電気の正体について自分の考えていることを発表する。
・白熱電球
・ロウソク
2 電気は便利なエネルギーであることを説明する。 2 エネルギーの言葉の意味について理解する。  
2 課題の確認 3 自転車の発電機を例に上げ、電気エネルギーについて調べることを説明する。

 身近な発電機とは?
3 自転車の発電機を観察し、そのしくみについて理解する。
・自転車の発電機(分解したもの)







30


3 観察と予想
学習課題
発電機を回して電気エネルギーについて調べよう
 
4 自転車の発電機を回し、電球を点灯させ、運動エネルギーが電気、そして光のエネルギーと変わっていることを気付かせる。

 自転車の発電機の実験
4 黒板の前に集まり、発電の様子を観察する。
 ・代表生徒がペダルを回す
・自転車1台(スタンド付き)
・豆電球
4 実験の考察 5 電球を付けた時と外した時では、ペダルにかかる力はどのように違うか気付かせる。 5 電球を付けると、ペダルにかかる力が急に強くなることに気付き、電気エネルギーに変わることを理解する。  
6 各班ごとに手回し発電機を使って、豆電球を点灯した時と外した時の回転の違いを確かめさせる。

 手回し発電機とは
 手回し発電機の実験結果
6 各班ごとに手回し発電機を回して、実験を行い、豆電球の点灯時には力がかかることを実感する。 ・手回し発電機(6台)
5 事実の検証 7 自転車の発電機でラジオを鳴らすことができるかどうか試して見る。

 ラジオは自転車の発電機で鳴らせるのか?
 ラジオを鳴らす実験
 もう一度チャレンジしてみよう
7 予想を立てる。
 ・同じ電気なのでなると思う。
 ・電源は電池では無いので鳴らない。
・小型トランジスタラジオ(1台)
・オシロスコープ(1台)
8 オシロスコープを使って交流と直流の波形を観察させ、その違いについて説明する。

 電気のちがいを調べる方法はないだろうか?
 電気を目で見てみましょう
 ラジオが鳴るときの電気の正体は?
 電気の正体をまとめてみよう
 みんなの家の電気の正体は?
8 電気の流れ方には交流と直流の二つの種類があることを理解する。   



10

6 追試の実験 9 自転車の発電機で100Wの白熱電球を点灯することができるか試してみる。

 自転車の発電機で白熱電球がつくか?
 白熱電球がつくかどうか 実験
 なぜだろう? 
9 予想を立てる。
 ・同じ交流なので点灯すると思う。
 ・エネルギー不足で点灯しない。
・携帯用発電機と100W白熱電球(5個)
7 課題化 10 携帯用の発電機を回して、白熱電球を点灯し、さらに電球の数を増やしていくとどうなるか観察させる。

 もっと大きな電気が作れないか?
 何か気がついたことありますか?

11 電気について今後、どんなことを学んでみたいと思ったか、各自プリントに記入させる。
10 白熱電球の数を増やしていくとエンジンの音が違ってくることに気付き、その理由について考える。

11 実験や観察をとおしての疑問や、これから学んでみたいことをまとめる。
・まとめ用のプリント