中学校理科 第1学年 学習指導案

日 時  平成13年2月16日(金) 9:15〜10:30
生 徒  石鳥谷町立石鳥谷中学校
 1年2組  男子18名 女子19名 計 37名
場 所  岩手県立総合教育センター大会議室
指導者  岩手県立総合教育センター 理科教育室

1 単元名 大地の変化(ゆれ動く大地) 「新編 新しい科学 2分野下 (東京書籍)」

2 単元について

 新学習指導要領では、「目的意識をもって観察、実験を行う」ことの重要性が明記されている。また、地学的な事象・現象についても「観察、実験を行い、観察・実験技能を習得させ、観察、実験の結果を考察して、自らの考えを導き出し表現する能力を育てること」がその主なねらいであると記されている。
 本単元の学習では、地震の体験や記録を基に、そのゆれの大きさや伝わり方の規則性に気づくとともに、地震の原因を地球内部の働きと関連付けてとらえ、地震に伴う土地の変化の様子を理解することが目標となるが、単に、過去の体験や資料だけでは、地震波の特徴や規則性を主体的に探究しようとする動機づけには不十分であり、生徒の五感に訴えるようなモデル実験教材を用いた学習が必要であると考える。
 そこで、震源の位置を変えて、ゆれの特徴を繰り返しとらえることのできるコンピュータを活用した地震のモデル実験教材を開発するともに、個々のモデル教材から得られるデータをネットワークをとおして共有することにより、観測地点が異なればゆれの様子が異なり、震源とゆれの規則性をとらえさせることが可能な教材も併せて開発した。
 このモデル教材を授業で活用することにより、生徒は、震源の位置を変えながらゆれの特徴を繰り返し観察でき、その結果から震源とゆれの規則性をとらえることができると考える。
 以上のような活動を行うことにより、学習内容の習熟が図られるとともに、最近多発する地震災害についての関心をさらに高め、日常における防災意識の高揚へとつなげていきたい。

3 生徒について

 全体的に、観察、実験に対しての興味・関心は高く、意欲をもって取り組む生徒が多い。身近な自然現象については、興味が高い生徒とそうでない生徒の差が激しい。これは、生活経験の差から生じていると思われる。地震についてのアンケート調査を実施した結果、「地震で避難行動をとったことがある」と答えた生徒は全体の36%であった。また、ほとんどの生徒が直接体験した大きな地震名を記入しておらず、強烈な地震の記憶がない世代といえる。これらのことから、ほとんどの生徒は地震の最初にカタカタといった小さくなゆれがあることに気づいていないと思われる。しかし「地震について知りたいこと、疑問点はあるか」といった問いに対して、ほぼ全員が「ある」と答えており、地震についての興味・関心の高さがうかがわれる。これは最近各地で起こっている地震やそれにともなう災害の報道に接する機会が多いためではないかと分析する。
したがって、地震の学習において、生徒の五感に訴えるモデル実験教材を用いることは地震体験の少ない点を補うことになるのは勿論のこと、観察、実験の結果から自分の力で結論を導いたり、一般化を図る点においても非常に有効であると考える。
コンピュータの操作については、「情報基礎」の教科の中でワープロを基本とした学習をしており、入力等の基本操作はほぼできている。また、社会科の調べ学習でインターネットによる調査をグループ学習の中に取り入れており、コンピュータを活用した観察、実験をともなう理科の学習にも興味をもって取り組むことが予想される。さらに、コンピュータネットワークを用いて自分たちの結果と他の結果を即時に比較し考えることが可能となれば学習効果もより高まるものと考える。

4 指導目標

(1) 地震について体験を発表したり、地震データを意欲的に調べたりする。
(2) 地震によって起こる災害や土地の変化について調べようとする。
(3) 初期微動継続時間と震源距離との関係をモデル実験で確かめようとする。
(自然現象への関心・意欲・態度)
(4) 波動実験装置や地震計の記録から違う種類の波の存在に気づく。
(5) 初期微動継続時間と震源距離との関係を見いだし、初期微動継続時間から震源距離を推定できる。
(6) 震源・火山の分布をプレートの動きと結びつけて考えることができる。
(科学的な思考)
(7) 地震による地表のゆれを表す基準(震度)を把握し、それとともに地震発生時における震度分布図を作成できる。
(8) 等発震時曲線を描くことができる。
(観察・実験の技能・表現)
(9) 震源距離と震度との関係を説明できる。
(10) 地震波にはP波・S波があり、その特徴を説明できる。
(11) 初期微動継続時間と震源距離の関係を説明できる。
(12) 震源・震央の区別、震度・マグニチュードの区別ができる。
(13) 日本列島の地下における巨大地震の発生する原因を説明できる。
(自然現象についての知識・理解)

5 指導計画

第1章   活動する大地
 1   ゆれ動く大地              [ 4時間 ]
  (1) 地震とは 1時間
  (2) 地震のゆれと伝わり方 2時間・・・・・・本時(75分)
  (3) 地震の起こる場所とその原因 1時間
 2   火をふく大地               [ 4時間 ]

6 本時の指導目標

(1) 初期微動継続時間と震源距離との関係をモデル実験で確かめようとする。
(自然現象への関心・意欲・態度)
(2) 波動実験装置や地震計の記録から違う種類の波の存在に気づく。
(3) 得られたデータなどから、2つの波の到着時間の差(初期微動継続時間)が震源距離と関係のあることを見いだすことができる。
(4) 初期微動継続時間から震源距離を推定することができる。
(科学的な思考)

7 本時の展開

過程 時間
 

 
教師のはたらきかけ 評価及び指導・支援上の留意点 学 習 材
(教材)等
学 習
形 態
    T1     T2

導   

 






 
1.波動実験装置によるゆれの実験
・たてゆれとよこゆれ
・距離によるゆれの違い


2.学習課題の把握
○波動実験装置で板(地面)のゆれ  る様子を観察する
・たてにゆれ、よこにゆれたぞ!
・距離を長くするとたてゆれとよこゆれの間隔が広がる!

○学習課題を把握する
・波動実験装置によるゆれの実験
「地面はどうゆれた?」
「距離を長くしたらどうなった?」

 

・実験補助




 
・既習事項の確認をしながら進める
・実験装置の地面部分に注目させる
○2つのゆれがあることに気づいたか
 
・波動実験装置




 
一 斉





 





















































 

8分










7分


10










25分










10








3分


 
  地震のゆれ方(初期微動継続時間)と震源距離とは関係があるのだろうか  

・波動実験装置


・地震計


・学習プリント
・紙板書






・学習プリント
・紙板書









・パソコン
・平面地震モデル実験装置
・計測用ソフト
・測距用糸
・学習プリント








・紙板書





・映像資料



 

一 斉


























グループ











一 斉












 
3.異なる波の発見
・波動実験装置で発生する波


・地震計の記録






4.初期微動、主要動、初期微動継続時間


5.初期微動継続時間の異なる地震計の記録









6.平面地震モデル実験











7.初期微動継続時間と震源距離との関係







8.地震のゆれの様子



 

○波動実験装置で波の伝わる様子  を観察する
・2種類の波がある!
・方向と速さが違う!
○地震計を見る
・ゆれはこのように記録されるのか

○地震計の記録を見る
・最初に小さなゆれがあり、後から大きなゆれがきている!

○初期微動、主要動、初期微動継   続時間についての説明を聞く
○学習プリントに記入する

○各自で初期微動部分に色を塗り、  班内で確認する
○各記録の初期微動継続時間を確認する
・600kmになったら長くなるはずだ
・どうも震源距離と関係がありそうだ!




○実験方法について説明を聞く
○観測点と震源距離を確認し出てくる波形の予想を立てる
○予想を発表する
○震源距離と初期微動継続時間に相当する部分の測定を繰り返し行う
○学習プリントに記録する
○結果をパソコンに入力する




○グラフを見ながら初期微動継続時間と震源距離との関係を考察する
・比例していそうだ
○初期微動継続時間と震源距離との関係をプリントにまとめる




○実際の地震のゆれの様子を見る
・すごいゆれだ!
・でもちょっと初期微動があるぞ!
・震源は近かったんだな
 

・視点を変えて波が伝わる様子を観察させる
「2つの波の違いは?」
・カメラ操作






・机間指導



・机間指導

・画面操作で初期微動部分を示す








・画面操作

・ソフト立ち上げ指示
 及び操作説明
・つまずいている班を支援する
・入力操作説明




・得られた各班のデータをネットワークを用いて集約し、グラフ化する


・実際の地震のデータを紹介する





 

・実験補助



・地震計の提示
・地震計に振動を与えてみる
・地震計の記録の提示
「この記録からわかることは?」

・初期微動、主要動、初期微動継続時間について説明する

・初期微動継続時間の異なる地震計の記録を提示し色塗りを指示する
「もし、距離が600kmになったら初期微動継続時間は?」




・実験方法の説明
・波形の予想を班毎に立てさせる
・発表指示
・震源を示し地震を起こす
・つまずいている班を支援する




「グラフからどのようなことがわかるか?」

・初期微動継続時間と震源距離との関係をまとめ板書する



・兵庫県南部地震の映像を提示する



・実験装置の波動伝播部分に注目させる
○違う種類の波の存在に気づいたか











・色塗り作業を通して初期微動継続時間に注目させる











・理由も述べるように指導する
・全員が実験に参加できるよう配慮する
○初期微動継続時間と震源距離との関係をモデル実験で進んで確かめようとしたか

○初期微動継続時間と震源距離との関係を見いだすことができたか





・最初の小さなゆれにも注目させる
○初期微動継続時間から震源距離を推定することができたか




 
7分


 
9.感想記入及び自己評価

10.次時予告
 
○本時の学習について感想記入しながら自己評価する

○次時の学習課題を確認する
 
・机間指導


・本時のまとめをし、次時の予告をする
・机間指導



 




 
・自己評価プリント


 
個 別



 
 

8 本時の評価

  (1) 初期微動継続時間と震源距離との関係をモデル実験で進んで確かめようとしたか。

  (2) 波動実験装置や地震計の記録から違う種類の波の存在に気づいたか。    
  (3) 得られたデータなどから、2つの波の到着時間の差(初期微動継続時間)が震源距離と関係のあることを見いだすことができたか。
  (4) 初期微動継続時間から震源距離を推定することができたか。