中学校理科学習指導案
 
日 時 平成12年10月2〜13日
場 所 宮古市立亀岳中学校 理科室、農園
生 徒 宮古市立亀岳中学校 第2、3学年
指導者 白 土 一 哉
                        
1 単元名 「生物界のつながり」
 
2 単元について
 「生物界のつながり」の学習においては、食物連鎖による植物と動物のつながりを理解させるとともに、ある区域内の生物の量にはバランスが保たれていることに気付かせることがねらいとなる。また、食物連鎖によってつながっている生物の量にはピラミッド型の関係が見られることや、その関係が破れたときの生物界の混乱などについて、身近な事例で理解させるようにすることが大切である。したがって、食物連鎖の学習では身近な例をもとにして補食・被補食の関係について、実際の体験をとおして理解させるとともに、それぞれの量的な関係にも目を向けさせることが重要になってくる。
 しかし、食物連鎖の学習は、これまで身近な動植物を用いた観察・実験の活動が少なく、図表を見るだけで進めていくことが多かった。これは、食物連鎖の学習が時間的、空間的に大きな広がりをもつため、短時間の観察・実験だけでは生徒の理解を深めさせることが難しいことと、学習に用いる材料の選定が難しいためと考える。
 そこで、身近な自然の中に生息する昆虫類を利用して、餌を食べる場面を観察したり、摂食量のデータをとるなどの直接体験を行わせることによって、食物連鎖の理解を深めさせることができると考えた。また、得られたデータを基にして、コンピュータによる模擬体験を行わせることによって、食物連鎖の大きな広がりを視覚的にとらえさせることができると考えた。
 
3 指導計画
  (1) 位置づけ
   「生物界のつながり」の発展的な学習として位置づける。
  (2) 指導計画
   ・身近な自然の中の食物連鎖           (1時間)
   ・野外における昆虫類の観察            (1時間)
   ・オオニジュウヤホシテントウの摂食量調査  (1時間)
   ・コンピュータを利用した食物連鎖の考察    (1時間)    計4時間
 
4 指導展開案 
  
 (1) 展開案 第1時
    学習過程 身近な自然の中の食物連鎖
    目 標  ・身近な生物を例にあげて、食物連鎖の関係を発表できる。
           ・身近な昆虫の例をあげて、食性によって草食性と捕食性に分類できる。
           ・オオニジュウヤホシテントウの特徴を理解する。
段階 学  習  活  動   指 導 上 の 留 意 点  教 材






10
1.既習事項「生物界のつながり」 について、大切な用語の意味を確認する。



2.本時の学習内容について確認する。
<大切な用語>
 ・食物連鎖→生物間の食べる食べられるという関係
 ・生産者→緑色の植物
 ・消費者→動物
 ・分解者→菌類、細菌類
学習シート



   












30
1.身近な自然の中における食物連鎖を発表する。
 
 


2.身近な自然の中の生産者を発表する。 

3.身近な自然の中の消費者を発表する。
 →さらに、自分の知っている昆虫を発表する。

4.発表した昆虫を草食性と捕食性に分類していく。

5.身近な草食性昆虫である「オオニジュウヤホシテントウ」の特徴を知る。
陸上の例
 木の葉→バッタ→カエル→ヘビ
・水中の例
 水苔→水生昆虫→イワナ
・農園や花壇における緑色植物の名前があがればよい。
     
・様々な動物の名前があがってよいが、昆虫の仲間が数量的に大変多いことに気づかせるようにする。
・正確な種類名にはこだわらずに発表させる。
・形態の特徴や食性などを発表させながらまとめていく。

・ナス畑の害虫を思い起こさせる。
・実際に昆虫を見せながら、その特徴を説明する。
 →形状、他の捕食性テントウとの違い
 →食性、他の捕食性テントウとの違い
 →生活史、年1化・成虫越冬することなど
学習シート
テントウ
シャーレ




10
オオニジュウヤホシテントウを使って食物連鎖の学習を進めていくことを確認する。

次時の学習の確認
オオニジュウヤホシテントウ成虫

 

 

 

学習シート
 
 (2) 展開案 第2時
    学習過程 野外における昆虫類の観察
    目 標  ・テントウムシが生育しているナスの農園環境を調べることができる。
            ・ナスを摂食するテントウムシの生態を観察することができる。
           ・テントウムシを採集し個体数を数えることができる。
段階 学  習  活  動 指 導 上 の 留 意 点 教 材






10
1.野外において何を観察するのかを確認する。

2.野外で観察するときの注意事項を聞く。

3.農園へ移動する。
・観察の目的と手順を確認させる。


・できるだけ自然環境を破壊しないように注意を促す。
・持ち物の確認をさせる。
学習シート



   












30
1.野外観察
 @ナス農園の面積を測量する。

 A農園に植えてあるナスの株数や葉の枚数などを調べる。
 Bオオニジュウヤホシテントウが葉を食べている様子を観察する。
 Cテントウムシとカマキリ(捕食者)を採集して数を数える。


2.理科室へ移動する。

3.グループごとの調査結果を全体でまとめる。


4.ナス農園におけるテントウムシを中心にした食物連鎖を発表する。
・ナスの植えている部分の畑面積をメジャーを使って測らせる。

・農園を区切り(1m×1m)、グループごとにナスの本数を数えさせる。

・ナスの葉に残っているテントウムシの特徴的な食痕に注目して観察させる。
・捕食者がテントウを食べている様子もできれば見させたい。
・農園を区切って、グループごとに昆虫を採集させる。



a,ナス農園の面積は何uか。
b,ナスの株数はいくつか。
c,1株のナスについている葉の平均枚数はいくつか。
d,合計何匹のテントウムシがいたか。
e,その他の昆虫の様子など

・カマキリや捕食性テントウなど捕食者の存在にもふれておく。
学習シート
メジャー
1m枠
ルーペ
カメラ
捕虫網
採集道具
採集容器
学習シート




10
1.後片づけをする。


2.次時の学習の確認をする。
・採集したテントウムシは生かしたまま持ち帰り、飼育容器に移す。
・今後数日間テントウムシを飼育していき、摂食量を調べていくことを話す。
昆虫の飼育

 

 

 

飼育容器
学習シート

 
 (3) 展開案 第3時
    学習過程 オオニジュウヤホシテントウの摂食量調査
    目 標  ・オオニジュウヤホシテントウ1匹1日の摂食量を調べることができる。
          ・調査したデータを基にして、テントウムシが生息できるナスの畑面積を考えることができる。
段階 学  習  活  動 指 導 上 の 留 意 点 教  材






10
1.テントウムシの摂食量(食べた葉の面積)を調べる方法を知る。
 @OHPの使い方
 A方眼紙への写し方
 B重さから面積への換算方法
・摂食量は、その日の気温などテントウムシの活動量によって大きく変動するので、事前にデータをとっておくようにする。
テントウムシの食痕

 

 

 

学習シート
方眼紙
ハサミ
電卓



   












30
1.テントウムシの摂食量を調査する。

 @テントウムシが食べたナスの葉をOHPに当てて、方眼紙に葉の形とテントウムシの食痕を写し取る。

 A写し取った方眼紙を食痕に沿って切り取る。

 B切り取られた方眼紙の重さをはかり、テントウムシが食べた葉の面積を換算して求める。


2.テントウムシ1匹・1日の摂食量を換算して求める。


3.方眼紙を全葉の形に切り取り、方眼紙の重さから全葉の面積を換算して求める。



4.農園で採集したテントウムシが 4ヵ月間生息するために必要な葉面積を求める。
 ナス畑何uに相当するかを換算する。
あらかじめ方眼紙の重さと面積の関係を計算しておき、調査の前に説明する。
方眼紙に写し取った食痕

 

 

 


・ナス1株あたりの葉の枚数を求めておく。
・前もって調べておいたデータと大きく異なるときは、その原因について考察しておく必要がある。
(例)飼育していた期間の気温条件
   与えた葉の状態
   テントウムシの数と葉面積等

<必要なデータ>
・飼育していたテントウムシの数
・飼育していた日数
・調査で求めた葉面積

・実際の農園より計算上の面積が大きい場合→農園ではテントウムシの数を減らす要因があることを考えさせる。
・実際の農園より計算上の面積が小さい場合→飼育期間の気温、天候、季節の影響があることを考えさせる。

電子天秤
学習シート
OHP
プラスチック板
電卓




10
草食性昆虫と生息できる面積との関係を知る。


次時の学習の確認をする。
・ナス畑がなぜ全滅しないのか、捕食性昆虫(天敵)の存在を気づかせる。
摂食量の調査

 

 

 

学習シート

 
 (4) 展開案 第4時
    学習過程 コンピュータを利用した食物連鎖の考察
    目 標  ・得られたデータを基にして、コンピュータシミュレーションを行うことができる。
          ・ナス畑における食物連鎖の時間的空間的な広がりを考察できる。
          ・生物界のつり合いについて身近な例をあげて説明できる。
段階 学  習  活  動 指 導 上 の 留 意 点 教  材





10
1.これまでに観察したデータを確認する。

2.本時において食物連鎖をシミュレーションする目的を知る。

3.シミュレーション教材の使い方を知る。
・農園の面積
・テントウムシ1匹1日の摂食量

・シミュレーションは、実際に観察することが困難な自然現象を理解するための有効な手段のひとつであることを説明する。
学習シート



   












30
1.コンピュータを使ってシミュレーションを体験する。
 @ナスの葉の生長について
  →テントウムシがいないナス畑ではナスが限りなく生長していく様子を知る。

 Aテントウムシの摂食量とナス畑の関係について
  調査した摂食量のデータから、テントウムシが数日でナス畑を食べ尽くすことを知る。

 B捕食者の存在によってテントウムシの個体数とナス畑の関係がどう変わるか。
  カマキリやクモなどの捕食者の存在によってナス畑が食べ尽くされずに残ることを知る。



2.実際の農園のデータとシミュレーションしたものを比べて、安定した数量関係について考える。
・はじめの画面を使って、テントウムシの生活史を説明しておく。
・テントウムシが全く存在しない状況は、人為的な環境下でしかあり得ないことを理解させる。

・実際のナス畑が全滅しないのはなぜなのかを考えさせる。
コンピュータを使ったシミュレーション

 

 

 



・テントウムシの死ぬ要因は、実際には天敵以外にもいろいろあることを説明する。
・テントウムシが全滅しない理由も考えさせる。
・食物連鎖でつながっている生物の数量関係にはピラミッド型の関係が見られることを理解させる。

・ある区域内の生物の数量関係にはバランスが保たれていることを気づかせる。

コンピュータ
学習シート




10
身近な自然の中における生物のつり合いを発表する。

「生物界のつながり」についてまとめる。
・身近な自然の中で、生物量のバランスがくずれた例を考えさせる。

・自然界では、植物と動物がつり合いを保って生活していることを理解する。
学習シート