中学校第3学年数学科指導プログラム

学校名 一戸町立平糠中学校
対象学級 3年(男子1名女子4名計5名)
対象年月日 平成9年9月25日第4校時
指導者 小野寺一行
作成者 小野寺一行

1 単元名    「 円周角 」

2 単元設定の理由

(1) 教材観

 円は、生活空間の中に数多くみられ、私たちにとって身近な図形である。その円を数学的にとらえることは、小学校から学習している。小学校第3学年では円における中心、直径及び半径の意味、第5学年では円周率を導入して円の面積を求めること、第6学年では多角形とともに円の対称性について学習している。中学校第1学年では、円という図形を1つの定点から一定の距離にある点の集合としてとらえられること、すなわち円の等距離性についても学習している。さらに、図形の移動の学習を通して図形の性質を考察する基礎を培い、第2学年から図形の性質を考察することを通して、論理的に筋道を立てて正しい推論を行うことができるようにするとともに、その推論の過程を正しく表現できるようにしている。

 中学校学習指導要領では、図形領域「円」のねらいを、「円の性質についての理解を深め、それを用いて図形の性質を考察することができるようにすること」としている。このことをうけて本単元では、円の対称性を根拠として、円に関わる基本的な性質や円周角と中心角の関係などを導き、次単元において円と直線及び2つの円の位置関係について考察したり、接線に関わる学習を深めたりしながら、直観的な扱いや数学的な推論によって、円の性質を考察し、その理解を深めるとともに、第2学年に引き続き論理的に思考したり表現したりする力を一層伸ばすことをねらいとしている。

(2) 生徒観

 事前の調査の結果から、第2学年に学習した図形の性質において、定着率が低いと思われる内容は、「四角形の性質」、特に「平行四辺形の性質や条件」などであり、それらについては直感的にとらえているものの言葉としてはっきり述べることができないと思われる。また与えられた図の中から三角形や四角形などの図形を見つけ出し、その図形の関わる性質をあてはめることができないものと思われる。

 日常の学習の様子から、根拠を明らかにしながら学習を進めることが少なく、単に答えを出すだけに終わることが多い。そのため、第2学年の図形の学習では、証明問題を敬遠しがちであった。

 コンピュータを用いた授業については、関心や期待が非常に高く、特に「数と式」では計算力の向上のためのドリル、「図形」では図形の性質を予想する学習場面などで、コンピュータを用いると意欲的に取り組む。

(3) 指導観

 円の対称性や等距離性などに加えて、円の等角性を点の集合の立場から考察する動的な見方や考え方をさせることによって、円の基本的な性質や円周角に関わる性質などを気付せたい。そのことによって弧をみこむ角の等角性によって円をとらえさせ、円周角と中心角と関係、円周角に関わる性質、円に関わる三角形・四角形などの性質を理解させる。さらに、円に関わる性質を根拠に、新たな円の性質を調べる学習を通して、証明(推論)の考え方や方法を適用させ、図形の性質を論理的に考察する力を伸ばしたい。また中学校図形領域の学習において、3年間の図形学習を総括する単元としてとらえ、総合的な見方、考え方をさせながら、学習してきた内容を縦横に活用する力や見通しをもち証明の根拠を明確にしながら筋道を立てて論理的に思考する力を育てたい。

 指導にあたっては、図形の性質を考察する力を伸ばすために、問題を提示する場合、「〜を証明しなさい」という形ではなく、「〜についてどのようなことがいえるか調べてみよう」というように、与えられた条件から得られた図やコンピュータシミュレーションによって観察・実測しながら、生徒が見通しを立て、それを確かめていく主体的な取り組みの場を設けたい。コンピュータ教材の支援を受けながら既習の図形の性質を想起したり、それらの中から証明の根拠となりうるものを選び出したりしながら、それらを関連づけたりする活動を自分の立てた筋道に沿って進めさせたい。

3 単元の指導目標

(1) 具体的な図やコンピュータシミュレーションを用いて観察・実測する活動をとおして、円周角や円に関わる三角形や四角形の性質を理解させる。(数量,図形などについての知識・理解)

(2) 円周角の等角性を用いて、円周上の点を動的に変化させることによって、新たな図形の性質を見つけ出させる。(数学的な考え方)

(3) 円の基本性質や円周角に関する性質を用いて、新たな図形の性質を演繹的な推論によって導くことができるようにさせる。 (数学的な考え方、数学的な表現・処理)

(4) 円に関わる図形の新たな性質を探し出させることによって、円という図形への関心を高めさせるとともに、既習の性質を用いてその性質を導こうとする態度を養う。(数学への関心・意欲・態度)

4 単元の教材構造

5 単元の指導計画

 第1時 円の基本性質(1)
 第2時 円の基本性質(2)
 第3時 三角形の外接円とその作図
 第4時 円周角の意味と円周角と中心角との関係
 第5時 円周角の定理
 第6時 円周角と弧の関係
 第7時 直径と円周角の関係
 第8時 円周角の定理の逆
 第9時 円に内接する四角形の性質(本時)
 第10時 円に内接する四角形の条件
 第11時 円に関わる性質を用いた練習問題

6 本時の学習

(1) 主題   円に内接する四角形の性質

(2) 指導目標

 コンピュータシミュレーションによる観察から性質を見つけ出させ、それを証明することによって、円に内接する四角形の性質をとらえさせるとともに、新たな図形の性質を考察しようとする態度を養う。

(3) 目標行動

 コンピュータシミュレーションによる観察や計測によって、円に内接する四角形の性質を見つけ出すことができ、その見つけ出した性質を、既習の性質を用いて筋道を立て説明することができる。

(4) 下位目標行動

 G 目標行動と同じ

 @ 円に内接する四角形の対角の和は180度であることを証明することができる。

 A 円に内接する四角形の対角の和は180度であることを新たな性質として見つけ出すことができる。

 B 証明するための筋道を立てることができる。

 C 与えられた図において、中心角の性質をあてはめることができる。

 D 与えられた図において、中心角と円周角の関係をあてはめることができる。

RE 1つの円の円周に対する中心角は360度であることを説明できる。

RF 1つの弧に対する中心角と円周角の関係を説明できる。

 G 予想した円に内接する四角形の性質について、仮定と結論に分けることができる。

RH 仮定と結論の意味を説明できる。

 I 予想した性質の中でまだ証明されていない性質は、「円に内接する四角形の対角の和は180度である」と指摘できる。

RJ 四角形の対角の意味を説明できる。

 K 予想した性質の中の内角におけることがらにおいて、既習の性質で説明できるものを選ぶことができる。

RL 円周角の定理を説明できる。

 M シミュレーションの観察や計測から、円に内接する四角形の角に関わって気付いたことをあげることができる。

 N シミュレーションの観察や計測から、円に内接する四角形の辺に関わって気付いたことをあげることができる。

 O 円に内接する四角形の定義を説明できる。

 P 円に内接する四角形と内接しない四角形を分類できる。

RQ 内接の定義を指摘できる。

(5) 形成関係図とグルーピング

             

(6) 本時の展開

時間 学習内容 展開の流れ 教材・教具と留意事項
<導入>

・レディネス調査 (RL)


学習シート
学習シートの問題を解き、解答を書き込ませる。
・円に内接する四形の定義
(円に内接する角形と内接しない四角形)
(O P RQ)

・学習課題の設定 
カード
円に内接する四角形と内接しない四角形を提示し、それを分類させ、円に内接する四角形を定義する。

円に内接する四角形の性質の学習であることを確認させる。 
10 <展開>
1)問題の理解
  (M N)
シミュレーション教材
コンピュータを操作させ、円に内接する四角形の辺、についての特徴を見つけ出させる。
評価1 (A )
対角の和が 180度であることを見つけることができたか
対角の性質を見つけることができない場合には、生徒の発表の後にもう一シミュレーションを見させる。
2)性質の予想のまとめ
(I RJ KA) 
既に証明できるものと未だ証明されていないものに分ける。
20 3)仮定と結論の区別
  (G RH)
仮定 四角形ABCDは円に内接している
結論 対角の和が180度ある ∠A+∠C=180゜
4)証明の筋道筋立て・補助線の検討と選択 コンピュータ教材:提示
証明の手がかりとして補助線を考えさせる。補助線を提示し、解決の見通しを立てさせる。
・自力解決(筋道筋て)
(C D RERF)

評価2(B)
証明の筋道を立てることができたか
コンピュータ教材
コンピュータを操作させ、既習の性質の中から用いる性質を選ばせ、それを関連づけさせながら、筋道を立てさせる。
机間巡視によりアドバイスする。
10 5)証明のまとめ
・証明の記述
 (@)
学習シート
自分の立てた筋道に沿っ て証明をシートに記述させる。
評価3(@)
証明することができたか
机間巡視によりアドバイスする。時間に余裕のある生徒には、他の証明の筋道を立てさせ、記述をさせる。
・発表・検討 
 (@ B)
黒板
・コンピュータ教材:提示
証明の根拠を明確にさせながら自分の証明を発表させる。
他の生徒の発表を聞いて証明の筋道を自分のものと比較しながらよさを見つけさせる。
<まとめ>
・本時のまとめ 
   (G)

・自己評価
学習をふりかえって円に 内接する四角形、その性 質についてまとめる。
コンピュータを利用して、性質を予想したり証明したりする活動について自己評価させる。
・次時の予告 次時は円に内接するか内接しないかの判断について学習することを予告する。