学校名 | 大船渡市立第一中学校 |
対象学級 | 第3学年 4学級 |
指導者 | 教諭 佐々木 哲 |
作成者 | 教諭 佐々木 哲 |
生徒は,これまでに,地理的分野の学習において,生産が企業を中心として行われていることについての学習経験をもっている。また,歴史的分野の学習において,資本主義経済の発展とその影響について史実をもとに学習してきた。本単元は,これらの学習経験を基底にして設定されている。
「経済の仕組みと生活」の学習においては,経済活動を動かす柱として消費・流通・生産・財政の4つの要素をとりあげ,この4つの要素がどのようにかかわり合いながら,経済の流れが生まれるのかを整理しつつ,そのなかでの家計・企業・政府,さらには貯蓄・貨幣・価格・租税などの役割や仕組みについて理解を図ることが主な学習内容である。よって本単元は,文部省「中学校学習指導要領」(社会公民的分野)に掲げられている目標の(2)と(4)および内容(2)アに基づいて設定した単元「経済の仕組みと生活」という大単元のもとの小単元の一つとして設定した。
この小単元は,株式会社を中心とする企業についての学習を展開するなかで,現代の生産の仕組みへの理解を図るとともに,それに関連させて社会における企業の役割や在り方について考えさせることにより,経済活動の意義とあらましについての理解を深めることをねらいとして学習が展開される。
企業は家計と密接に関連しており,将来ほとんどの生徒は企業に労働力を提供し,収入を得て生活するであろう。そういう点では日常生活に密着しており,生徒にとっては身近な題材といえる。特に,「株式会社の仕組み」については,企業の多くが株式会社であることや,株価は現在の経済状況を如実に反映していること。さらに株価の変動が経済に大きな影響を与えていることや,他の経済的分野の学習とも大きくかかわっていることなどから,経済的分野の学習において重要な題材の一つであると考えられる。
生徒は,社会科は暗記科目で語句を覚えることが大切であるという意識を強くもっており,日々の学習においては,教師から指示されたり,提示されたことを覚えることを中心としたどちらかというと受け身的な態度である。よって,多少難しい用語が出てきたり,出てくる用語が多かったりすると学習に対する取り組みが消極的になる傾向が見られる。前述のとおり本単元で学習する題材は身近で重要なものであるが,学習を進めるにあたって難しい経済用語や,複雑な経済のメカニズムなどがかかわってくるので,生徒の学習に対する意欲が喚起されず,取り組みが消極的になることが考えられる。
そこで,コンピュータを用いたシミュレーション教材を活用した学習を展開することにより,難しい経済用語や,複雑な経済のメカニズム中心の学習ではなく,身近で具体的な事例をとおして,経済活動が様々な条件のなかでの選択を通じて営まれていることに気付かせるような学習を展開し,生徒の興味・関心,意欲を喚起し,認識を深めていくことが必要と考えた。
(1) 生産活動を行う組織形態が企業であることを,生産に必要な要素と資本から気付かせ,資本主義経済における企業の目的を理解させる。また,資本主義経済と社会主義経済を比較させることにより,社会主義国の現状に関心をもたせる。
(2) 私企業と公企業,大企業と中小企業を比較して考えさせることにより,それぞれの特色を理解させるとともに,中小企業の現状に目を向けさせる。また,企業経営の仕組みを資本家,経営者,労働者それぞれの役割から理解させる。
(3) 株式の利点,株式会社の仕組み,企業の社会的責任について,株主という立場での擬似体験から体験的にとらえさせ,確かめようとする意欲を育てるとともに,理解させる。
(4) 株式の売買を実際のデータに基づき擬似体験させることにより,経済的に意志決定をする態度を育てるとともに,株価の変動は社会の出来事や経済の動きに関連していることに気付かせ,社会の出来事に目を向ける態度を養う。
(5) 企業の競争の行き過ぎは,消費者の利益を侵害することを把握させ,それを防ぐ目的で独占禁止法が制定されたことを理解させる。また,企業競争の功罪に気付き消費者としての在り方について考えさせる。
(6) 技術革新によって産業構造が変化したことを,資料から読み取らせることによって気付かせる。また,情報化社会による生活の変化に興味をもち,これからの生活の在り方を考えさせる。
(7) 以上の学習を通じて,統計資料や,図表,文書資料などを活用しようとする態度や能力を養う。
授 業 計 画 第1次 生産の仕組みと
企業の種類第1時 生産の仕組み・・・・・・・・・・・・・・・・・(0.5時間)
第2時 企業の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( 1時間)
第2次 株式会社の仕組み
【コンピュータ教材】事前意識調査・事前テスト・・・・・・・・・・(0.5時間)
第1時 株とは何か・・・・・・・・・・・・・・・・( 1時間)
第2時 株価変動に与える影響・・・・・・・( 1時間)
第3時 本格的に株の売買をしてみよう・( 1時間)
事後意識調査・事後テスト ・・・・・・・・・・(0.5時間)
第3次 企業グループと
産業構造の変化第1時 企業グループ ・・・・・・・・・・・・・( 1時間)
第2時 産業構造の変化・・・・・・・・・・・(0.5時間)
株式の利点,株式会社の組織と運営について,株主という立場から体験的にとらえさせながら,理解させる。また,株式の売買の擬似体験をとおして経済的に意志決定をする態度を育てるとともに,自分と社会とのかかわりを感じさせ社会の出来事に目を向ける態度を養う。
株主を擬似体験することをとおして,株式会社の特色について,資金,組織と運営,株主の権利,企業の社会的責任について説明できる。また,株価変動の理由等を社会の出来事と関連づけて説明できる。
@ 株式の特色について,株式は会社の資本金を小口に分割したもので,株式を発行することにより,多額の資金を集めることができることを説明できる。
RA 日本の企業の多くは株式会社であるといえる。
RB 会社を作るには資金が必要であるといえる。
C 投資家が株式を購入することによって株式会社は資金を得ることができるといえる。
D 株式は資本金を小口に分割したものだといえる。
E 多くの株主から資金を集めることによって多額の資金になることがいえる。
F 株式会社の組織と運営について,株主の権利,株主と経営者の関係,企業の社会的責任の点から説明できる。
G 株主には株主総会を通じて会社の経営に参加する権利があるといえる。
H 株主には配当を受ける権利があるといえる。
I 株主総会は株式会社の最高決定機関であるといえる。
J 会社の経営は総会で選任された取締役が行うといえる。
K 株価の変動は様々な要因に影響されることを,社会の出来事や経済の動き,会社の状況等から説明できる。
L 株価は変動するといえる。
M 株式は自由に売買できるといえる。
N 株価の変動には影響を与える出来事があるといえる。
O 株式の売買の擬似体験をとおして自分と社会とのかかわりを感じ,社会の出来事に目を向けることができる。
P 株式を売買するには情報が必要であるといえる。
Q 会社四季報などの資料から株価の変動を予想し購入する銘柄を決めることができる。
R 自分たちの予想と,実際の変動をつきあわせながら,株式の売買を擬似体験できる。
S 株価の変動は,社会や我々の生活に大きな影響を与えるといえる。
21 企業には社会的責任があるということがいえる。
22 擬似体験を通じて,学習したことが現実の社会にもかかわっていることを感じることができる。