第3学年社会学習指導案
学校名 | 陸前高田市立小友中学校 |
対象学級 | 3年1組(男子11名、女子8名) |
指導年月日 | 平成13年9月14日第4校時 |
指導者 | 齊 藤 貴 |
作成者 | 齊 藤 貴 |
T 単元名「企業と生産」
U 単元設定の理由
1 教材観
本単元は、公民的分野の経済活動にかかわる単元であり、資本主義経済のもとでの生産の仕組みと企業の特色について、一つのまとまった学習経験の単位として設定したものである。学習指導の主眼とするところは、現代の生産の仕組みのあらましや市場経済の基本的な考え方について理解させ、社会における企業の役割と社会的責任について考えさせることである。そこで、学習指導要領に掲げられている公民的分野の目標の(2)と(4)、及び内容(2)のアに基づいて単元のねらいとその学習内容を設定した。
生徒はこれまでに、歴史的分野でヨーロッパに起きた産業革命による資本主義社会の成立や1900年ごろに日本でも軽工業を中心に産業革命が達成され、資本主義が確立したことについて歴史的な事象の考察を深めることにより、経済的な事象にかかわる学習経験をもっている。
地理的分野では、アメリカの巨大企業としての多国籍企業やカナダ・メキシコのアメリカとの経済的な関係について空間的な広がりのなかで経済的な事象についての学習を深めた。また、かつて日本の経済の中心であった大阪と日本の政治・経済の中心地の東京について、都市の発展と経済活動という視点で経済的な認識を高めてきた。
この単元によって設定された内容は、日常営まれる経済生活の内容について取り扱う。企業と家計は経済活動の単位であり家計から企業へ労働力を提供し、賃金を得て生活するなど密接に関連している。将来、生徒が労働者としてこのような立場に立つことを考えれば、生徒にとっては身近な内容であるともいえる。特に私たちの生活を支える企業について、生産の仕組み、企業の種類と特徴、会社の組織と運営などの基本的な事項を取り上げる。そして生産の集中による市場の独占支配から消費者の利益を守ることや、企業の行き過ぎを防ぐための方法についても考えさせる。このような生産者の立場に立つ企業の仕組みや活動の様子を、この単元での学習対象として設定した。
2 生徒観
生徒は前単元までに「消費と家計」「貨幣と流通」について学習し、主として身近な消費生活を中心に経済活動の意義について学習を深めてきた。本単元は、複雑な経済の仕組みについて学ぶ内容であり、具体性に乏しい経済用語や経済概念の学習においては取り組みが消極的になる傾向にある。
この単元の学習では、生産者としての企業の仕組みや活動について直接又は間接の経験が不足しており、新聞やテレビなどから得られる情報や職場体験から得られた断片的な知識はあるものの現象を相互に関連付けて全体をとらえることが難しいと考えられる。
また、生徒はコンピュータを用いて授業を行うことが初めてである。コンピュータを使ってみたいという気持ちはもっているが、マウスやキーボード操作の経験が少ないので、あまり時間をかけずに操作できる簡便なコンピュータ教材を用いて、課題解決に対する意欲を高める工夫を取り入れた指導をしていきたい。
3 指導観
この単元では、単元をとおした学習課題を設定し、生徒の興味や関心に訴えながら課題解決型の学習に取り組ませ、生産の仕組みや企業の経済活動に対する認識を深めさせたい。そこで、コンピュータを用いて株式会社の設立、経営をシミュレーションすることにより、ふだん体験することが難しい会社の設立、経営について経済的事象を身近に感じさせたい。そのなかから経済的事象に興味を抱かせ、疑問に思ったことを調べさせて、課題解決に対する意欲を抱かせながら学習を展開したい。
また、シミュレーションで設定した社会的事象の模擬的な体験のなかでもっとも適切な選択肢を選択させ、条件判断する場面を設定することにより、生徒の課題意識を高めさせ、自己決定感を抱かせることによって学習への方向付けを図りたい。
さらに、教室内LANを用いたシミュレーション教材は、市場競争の要素が含まれており企業の利益を増やすための方策について検討するなど、学習の方向性を明確化し、さらに生徒の追究意欲を刺激していきたいと考える。
V 単元の指導目標
1 | 生産活動を行う組織形態が企業であることを生産の諸要素と結びつけて理解させ、資本主義経済における企業の目的を理解させる。 | |
2 | 企業には、その設立の形態によって様々な種類があることを知らせ、それぞれの特徴を理解させる。また、中小企業の問題点について考えさせる。 | |
3 | 株式会社を設立する発起人の立場での疑似体験から株式会社の仕組みについて体験的にとらえさせる。また、株式会社の特色を調べようとする意欲を高めるとともに、理解させる。 | |
4 | シミュレーション教材を用いて、企業が互いに競争しながら経営を行っていることに気付かせ、企業が発展するための方策について考えさせる。また、企業への行き過ぎを防ぐために独占禁止法が制定されたことについて理解させ、身近な企業の経済活動への関心を高めさせる。 | |
5 | 技術革新によって産業構造が変化したことを、資料から読み取らせることによって気付かせる。また、産業の変化に伴う問題点を考えさせる。 | |
6 | 社会全体における企業の果たす役割について、資料から読み取らせ、企業の望ましいあり方について考えさせる。また、社会生活における職業の意義と役割及び雇用について考えさせ、レポートにまとめさせる活動をとおして、将来の職業についての関心をもたせる。 |
W 単元の教材構造
X 単元の指導計画(全6時間)
第1次 | 生産の仕組みと企業の種類 | ||
第1時 | 「企業と生産の仕組み」 | ||
第2時 | 「大企業と中小企業」 | ||
第2次 | 株式会社の仕組み | ||
第3時 | 「株式会社の組織と経営」 | ||
第4時 | 「市場支配と独占禁止法」(本時) | ||
第3次 | 社会における企業の役割 | ||
第5時 | 「生産技術の革新と情報産業」 | ||
第6時 | 「企業の社会貢献活動」 |
Y 本時の学習指導
1 主題 「市場支配と独占禁止法」
2 指導目標
シミュレーション教材を用いて、企業が互いに競争しながら経営を行っていることに気付かせ、企業が発展するための方策について考えさせる。また、企業への行き過ぎを防ぐために独占禁止法が制定されたことについて理解させ、身近な企業の経済活動への関心を高めさせる。
3 目標行動
企業は利潤の追求のために互いに競争しながら経営を行っており、安定した発展を続けるためには財・サービスの市場占有率を高める必要があることを、企業集団の形成や市場支配の種類、消費者の利益などをあげて説明できる。
4 下位目標行動
R@ | 企業は自然・労働・資本などの生産要素を結合し、他に販売するための財・サービスの生産を行う組織であるといえる。 | |
RA | 私企業の大企業の多くは株式会社であるといえる。 | |
B | 企業は互いに競争しながら経営を行っていることを指摘できる。 | |
C | 企業は、新しい財・サービスの開発を試み、販売していることを指摘できる。 | |
D | 企業は、生産にかかる費用が安く、販売量が多ければ利益が多くなることを説明できる | |
E | 企業は、競争に取り残されると倒産する場合があるといえる。 | |
F | 企業が倒産した場合、株主は自分の投資分だけの損失を受けるといえる。 | |
G | 企業が競争を行うのは、社会に存在する需要を満足させるために消費者に財・サービスを提供して利潤を得ることであるといえる。 | |
H | 企業は、競争に取り残されると同業種の企業あるいは異なる業種の企業に吸収・合併される場合があることを説明できる。 | |
I | 企業は、吸収・合併されることにより企業が集中、系列化が進んでいくことが予測できる。 | |
RJ | 企業は、利潤を最大のものにするよう企業活動を行うといえる。 | |
K | 企業間での活発な競争の結果、世界規模の大企業が生まれたことや複数国にまたがる多国籍企業も多くなっていると指摘できる。 | |
L | 競争とは、コストダウンや品質の向上、販売先の拡大であることと説明できる。 | |
M | 大企業のなかには、中小企業に下請けの部品加工を委託したり、小売店と特約店契約を結んで財・サービスを販売しているということを指摘できる。 | |
N | 市場占有率とは、市場に出回っている財・サービスの割合であるといえる。 | |
O | 独占とは、ある財・サービスの生産や販売がただ一つの企業で行われている場合であるといえる。 | |
P | 寡占とは、ある財・サービスの生産や販売を少数の企業で行われている場合であるといえる。 | |
Q | 市場占有率が高まると、消費者の利益よりも企業の利益の方が優先されるおそれがあることを説明できる。 | |
R | 企業は、銀行を中心に企業集団を形成する場合があるといえる。 | |
S | 企業の結びつきには、カルテル・トラスト・コンツェルンなどがあるといえる。 | |
21 | 企業の行きすぎを防ぐために独占禁止法が制定されたことを説明できる。 | |
22 | 公正取引委員会は、独占禁止法に基づいて企業の監視を行っているといえる。 | |
R23 | 消費者は、品質がよく、価格が安い財・サービスを望んでいることを説明できる。 | |
24 | 独占禁止法を制定したのは、企業による市場支配の行き過ぎを防ぎ、企業間の自由競争を守り、消費者の利益を保護するためであるといえる。 | |
25 | 市場の大きさによって財・サービスの販売量が変化することを予測できる。 |
5 下位目標行動の関連図
6 本時の展開
時間 | おもな学習内容 | 教材・教具、機器と留意事項 |
5分 | <導入> 1.レディネス調査 ・生産の三要素(R@) ・企業形態、目的(RA) ・利潤(RJ) |
・前時までの活動を想起させ、生産の三要素とは何かを確認させておく。 ・企業の種類、株式会社の特徴について確認する。 ・以上について構成選択法で確認する。 |
2.プレテスト ・企業が売り上げを伸ばすにはどのような方法があるだろうか(G) |
○資料集 ・小さな企業が大きく成長した例を資料で示し、「どうしてこの企業は大きく発展したのだろうか」と生徒をゆさぶる質問をする。しかし問題提起にとどめて深入りしない。 ・生徒の課題意識を喚起させるように留意する。 |
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3.主題 ・「市場支配と独占禁止法」 ・学習課題の設定
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・主題名と学習課題を板書する。 | |
15分 | <展開1> 1.企業の競争 ・企業の競争(BCDEF25) 〔評価1〕 ・企業が競争をするのは、どうしてか。(G) |
○PC ・グループで1台のコンピュータを使用して会社経営のシミュレーションを行う。企業は互いに競争しながら経営を行っていることに気付かせる。 ・各グループの企業活動の成果を発表する。 |
10分 | <展開2> 2.市場競争の内容と方法 ・消費者はどのような商品を購入したいと考えるか?(R23) ・競争の内容と方法 (LM) ・企業の集中と系列化 (KI) 〔評価2〕 ・企業間競争に取り残されると企業はどうなるだろうか。(H) |
・生産者と消費者の両面から考えられるように気付いたことを自由に発表させる。 ○教科書・資料集・ノート ・競争に勝つために企業はどのような工夫をしているのか、その内容、方法について課題を設定し、資料を用いて詳しく調べ、ノートにまとめる。 ○教科書・資料集・ノート ・代表する企業集団を例に出して調べたことを発表させる。 ・企業がまとまることの利点を考えさせる。 ○ワークシート ・競争に勝つ企業は、それに見合う企業努力を行っていること。企業の判断は、経営陣が行っていることを補足する。 |
15分 | <展開3> 3.企業の集中と市場支配 ・市場占有率の意味(N) ・独占と寡占(OP) ・企業集団(RS) ・独占禁止法(Q2122) 〔評価3〕 ・企業の行き過ぎを防ぐために企業を監視しているのはどこか。(24) |
○教科書・資料集 ・ビールや自動車などの例をあげて市場占有率の意味について説明する。 ○教科書・資料集・ノート ・企業が安定した発展を続けるためにはどのような工夫をしているのかを資料から調べ、ノートにまとめる。 ・調べた結果を発表させる。 ・市場占有率が高まることにより消費者にとって不利益になる場合があることに気付かせる。 ○ワークシート ・企業の行き過ぎを監視するために独占禁止法にもとづき公正取引委員会が活動していることを確認する。 |
5分 | <まとめ> 1.ポストテスト(G) 2.次時の予告 ・生産技術の革新と情報産業 |
ワークシート ・完成法で記入させ、生徒に発表させながら確認する。 |