岩手県立総合教育センター研究集録(2000)
社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導に関する研究
−児童自作の映像資料の活用をとおして−
北上市立黒沢尻西小学校 教諭 中野 順一
T 研究目的
小学校社会科の学習指導においては、社会生活や我が国の国土と歴史についての理解を深めることが求められている。そのためには、体験的な活動や資料を用いて調べる活動を行ったり、様々な表現活動を行ったりすることによって、社会的事象がなぜ起こり、社会にどのような影響を及ぼしているかなど、社会的事象の意味を考える力を高める必要がある。
しかし、本校の児童の実態をみると、社会科の学習において、個々の児童は体験的な活動や調べる活動に意欲的に取り組んでいるものの、調べたことを交流する場では、形式的な発表会で終わりがちで、他の発表と比べたり結び付けたりするなどして社会的事象の意味を考えるまでには至っていない。これは、調べたことを交流する場において、各自がつかんだ事実やそれをもとに考えたことをわかりやすく伝え、学び合う活動が十分ではなかったことによると思われる。
このような状況を改善するためには、児童が調べたことをわかりやすく伝えるために、臨場感があり、しかも伝えたいことを強調したり再生したりすることができる映像資料にまとめさせ、その内容についての話し合いをもとに、互いに学んだことを共有するような指導が必要である。
そこでこの研究は、小学校社会科において、児童自作の映像資料の活用をとおして、社会的事象の意味を考える力を高める学習指導の在り方を明らかにし、小学校社会科の学習指導の改善に役立てようとするものである。
U 研究仮説
小学校社会科の学習指導において、児童自作の映像資料の活用を次のように行えば、互いに学んだことが共有され、児童の社会的事象の意味を考える力が高まるであろう。
(1) 調べたことの表し方を、臨場感、強調、再生という観点で児童に検討させ、映像資料を作成させる。
(2) 映像資料を視聴し、各自がつかんだ事実や、それをもとに考えたことを述べ合うようにさせる。
V 研究の内容と方法
1 研究の内容
(1) 社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導についての基本構想の立案
(2) 社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導についての指導試案の作成
(3) 単元「くらしを支える情報・運輸」の学習指導案の作成
(4) 単元「くらしを支える情報・運輸」の授業実践
(5) 実践結果の分析と考察
(6) 社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導の在り方のまとめ
2 研究の方法
(1) 文献法 (2) 質問紙法 (3) テスト法 (4) 授業実践
3 授業実践の対象
北上市立黒沢尻西小学校 第5学年 1学級(男子15名、女子13名、計28名)
W 研究結果の分析と考察
1 社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導についての基本構想
(1) 社会的事象の意味を考える力を高めることについての基本的な考え方
ア 社会的事象の意味を考える力とは
社会的事象の意味とは、ある事実や出来事のできた原因、その社会に与えている影響、さらには、その社会全体の中で果たしている役割などのことである。そして、小学校社会科における社会的事象の意味を考える力とは、地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考えたり、社会的事象の意味を広い視野からみたり考えたりする力である。この研究では、小学校社会科における社会的事象の意味を考える力は、次の三つの要素から構成され、それぞれ次のような意味をもつものとする。
イ 社会的事象の意味を考える力を高めることの意義
小学校社会科においては、教師が教科書や副読本の内容を説明したり板書したりして学習を進める知識中心の授業の反省から、社会的事象を観察・調査したり見学したりする活動や体験的活動、調べたことを表現する活動など、多様な学習活動を取り入れた授業が見られるようになった。しかし、児童に多様な活動をさせながらも、教師が中心となって学習を進めることが多く、児童にとっては単なる事実認識にとどまり、社会的事象の意味を考える力が十分に高まっているとはいえない状況にある。このことは、児童が社会的事象を知識として暗記するにとどまっているともいえる。
児童が学習の中で調べる対象にしていることは、「いま」の社会の状況や様子であり、「変わりうること」である。変わりうることについての知識は、普遍の知識とはなりえない可能性をもつ。重要なことは、変わりうることを知識として暗記することより、社会的事象の意味を、自分なりに考えることができるようにすることなのである。これは、調べたことをもとにして、新たなことに気付いたり、考えたりすることであり、児童一人一人が、今後の学習や生活で出会う他の事象や事例にも応用できるものであると考える。
(2) 社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導の在り方
ア 社会的事象の意味を考える力を高めるために、児童自作の映像資料を活用することの意義
映像資料とは、絵、写真、スライド、TPなどを指し、本来CD、録音テープなどの音声資料とは区別して定義されている。しかし、この研究では、多くのテレビ番組のように映像と音声の両面を備えた複合的資料を映像資料とする。
このような映像資料には、児童がその場に行って見たり聞いたりして直接確認することが不可能な内容についても、具体的にとらえられるというよさや、拡大や反復再生などの操作により、要素を強調して伝えられるというよさもある。小学校社会科において、児童自作の映像資料を活用することは、社会的事象の意味を考える力を高めるために、次のような意義があると考える。
第一に、調べたことをわかりやすく伝えるために、どのように映像資料を作成するかということを検討する過程で、社会的事象の意味を考えるために必要な正しい事実認識が行われるということである。
第二に、それぞれが調べたことを交流し合う場に児童自作の映像資料を活用し、全員が視聴する過程で、児童が客観的に社会的事象の相違点や共通点を発見することが可能になるということである。
第三に、他のグループの映像資料の内容も取り入れて、社会的事象を多面的にとらえることにより、社会的事象の意味を考えることができるということである。
第四に、映像資料を作成するために、ビデオカメラ、デジタルカメラなどを活用する学習は、児童が興味をもって主体的に取り組めるものであり、意欲的な学習活動の展開が期待できるということである。
そこで本研究は、社会的事象の意味を考える力を高めるための手立てとして、児童自作の映像資料を活用することとした。
イ 社会的事象の意味を考える力を高めるために児童自作の映像資料を活用した指導の展開
児童自作の映像資料を活用して社会的事象の意味を考える力を高めていく学習指導過程を、「つかむ段階」「調べる段階」「まとめる段階」の三段階とし、それぞれの段階の指導内容及び映像資料の作成と活用の留意点を次のように考えた。このうち、「調べる段階」と「まとめる段階」に社会的事象の意味を考える場を位置付けた。
「つかむ段階」では、活動や体験、資料などから社会的事象を取り上げ、学習問題を設定させる。そして、学習問題について予想し、解決の計画を立てさせる。その際、映像資料の作成や活用の仕方について説明し、児童自作の映像資料を活用した学習について見通しがもてるようにする。
「調べる段階」では、計画に基づいて観察、調査し、問題の解決に必要な情報を収集させる。その際、必要に応じて観察や調査の場所に録音、録画等のための機器を持ち込ませ、記録させるようにするとともに、現地での調査活動だけでなく、図書館の活用など、様々な調べ活動ができるようにする。調べる過程で収集した種々の情報のうち、問題の解決のために必要なものは何かを吟味させる。そして、その情報の性質から、実際の様子がよくわかるようにするためにはどうすればよいか、伝える相手の印象に残るようにするためにはどうすればよいかなどについて検討させ、工夫して映像資料にまとめさせる。
「まとめる段階」では、自分たちが作成した映像資料とともに他者が作成した映像資料を一つの資料として視聴し、各自がつかんだ事実や、それをもとに考えたことを意見や質問として述べ合う。この活動により、他者の追究と比べたり、結び付けたりするなどして、互いの追究の価値を学び合いながら社会的事象の意味を考えさせるようにする。そして、話し合いをもとにして明らかになったことを整理し、学習問題についてまとめさせる。
(3) 社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導についての基本構想図
社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導についての基本構想図を【図−1】のように作成した。
2 社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導についての指導試案
(1) 指導試案作成上の留意点
実態調査の結果より明らかになった問題点を解決するために、指導試案を作成するうえで、次の点に留意する必要があると思われる。
ア 調べ学習の手引きを作成し、聞き取り調べや記録の仕方などについて見通しがもてるようにする。
イ まちがいを恐れずに発表できるような雰囲気作りに努めるとともに、児童が自信をもって発表することができるようにする。
ウ 児童の役割分担が適切に行われるよう、グループごとに個別に支援する。
エ 調べたことをまとめる際に資料の訴求性が高まるように作成の支援をする。
オ 視聴覚機器の基本的な操作について指導するとともに、臨場感のある映像資料の作り方についても指導する。
(2) 社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導についての学習指導過程試案
実態調査から明らかになったことを考慮して、学習指導過程試案を【表−1】のように作成した。
(3) 検証計画
授業実践をとおして指導試案の妥当性をみるために、「社会的事象の意味を考える力の高まりの状況」「学習単元の理解の状況」「学習に関する意識の状況」について、それぞれ事前と事後にテスト及び調査を実施して検証を進めることとする。
3 単元「くらしを支える情報・運輸」の学習指導案(省略)
4 単元「くらしを支える情報・運輸」の授業実践
(1) 授業の計画
ア 授業実践期間 平成12年9月12日〜10月4日
イ 能力群の編成
指導試案に基づく授業実践前後の児童の変容を詳しくみるために群を編成したものが【表−2】である。能力群の編成にあたっては、1学期の単元テストと学期末テストの偏差値をもとに行った。その際、各群間の比較が行われるように、上位群と下位群の間の2名と他の児童との差が大きい児童1名を除き、上位群12名、下位群13名で編成した。
ウ 小単元の指導計画(10時間)
(ア) 情報を集めて品物を売るコンビニエンスストア(8時間)
@ 学習問題を設定するとともに、学習活動について理解し、計画を立てる(2時間)
A 調べる活動を行う(2時間)
B 集めた資料を整理し、映像資料として表現する(3時間)
C 調べたことを交流し、まとめる(1時間)
(イ) 情報をのせて荷物を運ぶ宅配便(2時間)
(2) 授業実践の概要
次のア〜ウの授業実践の記録は、「情報を集めて品物を売るコンビニエンスストア」の授業記録の一部を示したものである。なお、授業実践の記録のTは教師の働きかけや説明、Cは児童の反応や活動を表している。
ア 「つかむ」段階と「調べる」段階の授業実践の記録
イ 「調べる」段階の授業実践の記録
ウ 「まとめる」段階の授業実践の記録
5 実践結果の分析と考察
(1) 社会的事象の意味を考える力の高まりの状況
ア 社会的事象の意味を考える力の高まりの状況についてのテスト結果
【表−3】から、社会的事象の意味を考える力の高まりの状況については、t検定(平均の差の検定)の結果、学級全体、上位群・下位群とも、有意差が認められた。このことから、社会科の学習指導において、児童自作の映像資料を活用したことが、社会的事象の意味を考える力を高めるうえで有効に働いたと考える。
指導試案に基づく授業実践では、小単元の学習問題のもとに学級の児童が四つのグループに分かれ、それぞれのグループの学習問題(グループテーマ)について調べる活動を行った。そして、調べて得た資料の表し方を、臨場感、強調、再生という観点で検討し、映像資料を作成した。また、それぞれのグループが作成した映像資料を全員で視聴し、各自がつかんだ事実やそれをもとに考えたことを述べ合った。それらの学習活動により、児童は、複数の事象や資料を比べたり結び付けたりするなどして社会的事象の意味を考えることができるようになったと考える。
イ 社会的事象の意味を考える力のテストの構成要素別結果
(ア) 社会的事象を分析する力の高まりの状況
【表−4】から、社会的事象を分析する力の高まりの状況については、t検定の結果、学級全体と上位群において有意差が認められた。これは、次のような学習活動を展開したことが有効に働いたことによると思われる。児童は、調べ学習によって得た多数の資料をもとにして映像資料を作成するために、問題の解決のために必要な内容は何かを吟味した。このような活動を行うなかで、社会的事象を詳しくみて、その事象がなぜ起きたか、どんな影響を与えたかなど、個々の事実を正しく認識することができるようになったものと思われる。
しかし、下位群の児童においては有意差が認められなかった。これは、集めた資料を読み取ったり、次の活動の役割分担をしたりすることが一部の児童によってなされ、十分な調査活動として位置付づいていなかった児童もいたことによるものと思われる。今後は、どの児童にも十分な調査活動として位置付づくよう、役割分担を含めた各グループの計画について支援をすることが必要であると思われる。
(イ) 社会的事象を関連づける力の高まりの状況
【表−5】から、社会的事象を関連づける力の高まりの状況については、t検定の結果、学級全体と下位群において、有意差が認められた。これは、次のような学習活動を展開したことが有効に働いたことによると思われる。児童は、吟味した資料を映像資料として表すために、実際の様子がよくわかるようにするためにはどうすればよいか、伝える相手の印象に残るようにするためにはどうすればよいかなどについて検討した。そして、グループテーマを解決するために、臨場感、強調、再生などの特徴をもった映像資料としてまとめた。その結果、社会的事象相互の関係をつなげてみたり考えたりすることができるようになったものと思われる。
しかし、上位群の児童においては有意差が認められなかった。これは、吟味した資料を臨場感、強調、再生と
いう観点で検討し、映像資料に表したグループテーマのまとめを、個々の児童に認識させるような手だてが不十分だったことによると思われる。今後は、臨場感、強調、再生という観点で検討したグループテーマのまとめは、映像資料に表すだけでなく、個々の児童にもまとめさせるようにすることが必要であると思われる。
(ウ) 社会的事象を総合する力の高まりの状況
【表−6】から、社会的事象を総合する力の高まりの状況についてt検定の結果、学級全体と下位群において、有意差が認められた。これは、次のような学習活動を展開したことが有効に働いたためと思われる。児童は、四つのグループが作成した映像資料を視聴し、それぞれの映像資料から各自がわかったことを述べ合った。また、それをもとにして各児童が学習問題について自分なりのまとめをし、さらに学級全体としてのまとめもした。その結果、児童はそれぞれのグループが学んだことを共有し合うことで事象における個々の事実やそのつながりにしたがって事象の特色を全体的にとらえることができるようになったものと思われる。
しかし、上位群の児童においては有意差が認められなかった。これは、各グループが作成した映像資料を視聴して学び合いを行った後、個人で考えたことを学級全体でまとめるための話し合いがあまり深まらず、上位群の児童にとっては物足りないものであったことによると思われる。今後は、話し合いが十分に深まるよう、適切な発問を中心とした教師のかかわり方の工夫が必要であると思われる。
(2) 学習単元の理解の状況
【表−7】から、単元テスト全体の有効度指数は学級全体で55という結果であった。また、観点別にみてみると、「社会的な思考・判断」は72、「観察・資料活用の技能・表現」は36、「社会的事象についての知識・理解」は54という結果になった。「社会的な思考・判断」について72という数値を示したのは、映像資料を作成したり、映像資料を活用して話し合いを行ったりする学習が、社会的事象の意味を広い視野からみたり考えたりすることにも有効に働いたためと思われる。一方「観察・資料活用の技能・表現」についてみると、下位群において18という低い数値を示した。これは、映像資料を作成する活動は主体的に行ったものの、調べてきたことを分析する活動が一部の児童によってなされたことによると思われる。
(3) 学習に関する意識の状況
ア 社会科の学習に関する意識
【表−8】から、χ2検定(変化の検定)の結果、社会科の学習に関する意識について、いずれの設問においても有意差は認められなかった。これは、映像資料の作成や活用にかかわる個々の児童の活動への支援が十分ではなかったことによると思われる。
また、設問3と設問4には、事後にも多くのマイナス反応が見られる。これは、児童自作の映像資料を活用しての学習という手だてのもと、児童の調査や表現の方法がある程度限定されていたことによると思われる。
一方、設問2や設問5では、事前にはマイナス反応だったが、事後にプラス反応に変容した児童が多く、社会科の学習に関して、好ましい方向への意識の変容がみられる。
イ 社会的事象の意味を考えることに関する意識
【表−9】から、社会的事象の意味を考えることに関する意識について、いずれの設問においても有意差は認められなかった。これは、児童自作の映像資料を活用しての学習が初めてであったために、主に学習活動を理解することに意識が向いたことと、短い時間の中での、学習問題についてのまとめの指導が十分ではなかったことによると思われる。
また、設問6では、事前はプラス反応だったが、事後にマイナス反応に変容した児童が多い。これは、社会的事象の見方、考え方は高まっているものの、考えることの難しさを実感した児童が多かったことによると思われる。
ウ 児童自作の映像資料を活用した学習に関する意識
【図−2】から、三つの設問すべてにおいて、学級全体の90%前後の児童が肯定的な回答をしていることがわかる。このことから、児童自作の映像資料を活用した学習は、児童に好意的に受け止められたものと考える。さらに、【表−10】の感想をみると、全体として肯定的な記述が多かったことがわかる。なかでも、「学習の充実感」に関する記述が多かった。これは、児童自作の映像資料を活用しての学習に成就感を得ることができたためと考える。
しかし、学習方法の困難さを述べている児童も少なくない。これは、ビデオカメラやデジタルカメラでの撮影の仕方の指導が十分ではなく、自分たちが撮影してきた映像や、それをもとに作成した映像資料が、自分が思い描いていたものにまで至らなかったことによると思われる。
6 社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導の在り方のまとめ
(1) 成果として考えられること
ア 調べたことを、臨場感、強調、再生という観点で検討し、映像資料として表すことにより、社会的事象における個々の事実を正しく認識したり、事象相互の関係をつなげてみたり考えたりすることができるようになったこと
イ 児童自作の映像資料を視聴し、わかったことや疑問に思ったことを話し合うことにより、社会的事象の特色を全体的にとらえることができるようになったこと
ウ 児童自作の映像資料を活用した学習によって、社会的事象の意味を広い視野からみたり考えたりすることができるようになり、学習単元の「社会的な思考・判断」の能力の習得に有効にはたらいたこと
(2) 課題として考えられること
ア 集めた資料を読み取ったり、次の活動の役割分担をしたりすることが一部の児童によってなされ、十分な調査活動として位置付いていなかった児童もいたこと
イ 吟味した資料を臨場感、強調、再生という観点で検討し、映像資料に表したグループテーマのまとめを、個々の児童に認識させるような手だてが十分ではなかったこと
ウ 学習問題について、個人で考えたことを学級でまとめる際、話し合いが十分に深まらず、上位群の児童にとって物足りないものであったこと
(3) 指導の在り方の改善点
ア 集めた資料を読み取ったり、次の活動の役割分担をしたりすることが、どの児童にも十分な調査活動として位置付くよう、役割分担を含めた各グループの計画について支援をすること
イ 臨場感、強調、再生という観点で検討したグループテーマのまとめは、映像資料に表すだけでなく、個々の児童にも文章などでまとめをさせるようにすること
ウ 学習問題についてまとめるための話し合いを深めるため、適切な発問を中心とした教師のかかわり方の工夫が必要であること
X 研究のまとめと今後の課題
1 研究のまとめ
本研究をとおして、社会的事象の意味を考える力を高める小学校社会科の学習指導について次のことを明らかにすることができた。
(1) 小学校社会科において、児童自作の映像資料を活用することは、社会的事象の意味を考える力を高めることに有効であること
(2) 小学校社会科において、児童自作の映像資料を活用することは、学習に対する充実感をもたせることに有効であること
2 今後の課題
(1) 地域学習や歴史学習においても本指導試案を有効に活用できるように検討し改善を加えていくこと
(2) 児童自作の映像資料を活用して、社会的事象の意味を考える力をより高めていくために、映像資料としての表現の仕方や活用の方法を工夫していくこと
≪主な参考文献≫
北俊夫著 「『社会科の授業』はどう変わらなければならないか」
明治図書 1997年
文部省 「初等教育資料704『社会科の学習指導の改善の視点』」
東洋館出版社 1999年