岩手県立総合教育センター研究集録(2000)


中学校理科「生物界のつながり」における食物連鎖の観察・実験教材の開発に関する研究

宮古市立亀岳中学校 教諭 白 土 一 哉


T 研究目的

 中学3年の「生物界のつながり」の学習においては、食物連鎖による植物と動物のつながりを理解させるとともに、ある区域内の生物の量にはバランスが保たれていることに気付かせ、さらには生物の量の間にはピラミッド型の関係が見られることなどを身近な事例で理解させることをねらいにしている。
 しかし、食物連鎖による植物と動物のつながりを身近な自然の中から見つけ出し、その量的変化やバランスについて観察、実験で確かめることのできる教材が極めて少なく、教科書等の図を見て考えさせるような学習になっていることが多い。また、食物連鎖が時間的・空間的な広がりをもつ現象であるため、限られた空間内での観察、実験のみでは生徒の理解を深めることに限界がある。
 したがって、このような状況を改善するには、身近な生物を用いて食物連鎖の観察、実験を行うなどの直接体験と、得られたデータを基にして生物間のつながりを考えさせるようなコンピュータによる模擬体験とを組み合わせて理解を図ることが有効であると考える。
 そこで、この研究は、食物連鎖について身近な地域に生息する動植物を用いて観察、実験を行うとともに、実験の測定値を基にしたコンピュータシミュレーションで生物間のつながりを考察できるような教材を開発することによって、「生物界のつながり」について理解を深めさせ、その指導の改善に役立てようとするものである。

U 研究仮説

 中学3年「生物界のつながり」の学習において、身近な地域に生息する動植物を用いて、生徒に食物連鎖を実際に観察、実験させるとともに、生物間のつながりを時間的、空間的に考察できるようなコンピュータを活用した教材を開発することにより、生物界のつながりや自然界のつり合いについての理解を深めさせることができるであろう。

V 研究の内容と方法

1 研究の内容
 (1) 中学校理科「生物界のつながり」における食物連鎖の観察・実験教材の開発に関する研究についての基本構想の立案
 (2) 基本構想に基づく指導試案の作成
 (3) 指導試案に基づく教材の開発
 (4) 授業実践及び実験結果の分析と考察
 (5) 食物連鎖の観察・実験教材の開発に関する研究のまとめ

2 研究の方法
 (1) 文献法   (2) 質問紙法   (3) テスト法    (4) 授業実践

3 授業実践の対象
 宮古市立亀岳中学校 第2、3学年 (計9名)

W 研究結果の分析と考察

1 食物連鎖の観察・実験教材の開発に関する基本構想

(1) 食物連鎖の学習についての基本的な考え方
 生物が生きていくためには有機物が必要である。植物は光合成を行い、無機物から有機物を合成できるが、動物は植物や他の動物を食べて必要な有機物を取り入れている。食物連鎖の学習では、このような生物間のつながりを時間的・空間的な概念でしかも量的にとらえさせていくことが大切である。

ア 食物連鎖の理解の基本的な考え方
 「生物界のつながり」の学習においては、食物連鎖による植物と動物のつながりを理解させるとともに、ある区域内の生物の量にはバランスが保たれていることに気づかせることがねらいとなる。また、食物連鎖によってつながっている生物の量の間にはピラミッド型の関係が見られることや、その関係が破れたときの生物界の混乱などについて、身近な事例で理解させるようにすることが大切である。したがって、食物連鎖の学習では身近な例をもとにして捕食・被捕食の関係について、実際の体験をとおして理解させるとともに、それぞれの量的な関係にも目を向けさせることが重要となってくる。

イ 食物連鎖の学習における指導上の問題点
 食物連鎖の学習は、これまで身近な動植物を用いた観察、実験の活動が少なく、図表などを見るだけで進めていくことが多かった。これは食物連鎖の学習が時間的、空間的に大きな広がりをもつため、短時間の観察、実験だけでは生徒の理解を深めさせることが難しいことと、学習に用いる材料の選定が難しいためと考える。

(2) 食物連鎖の学習における教材の在り方についての基本的な考え方
 食物連鎖の学習における教材としては、植物は草食動物に食べられ、草食動物は肉食動物に食べられるといった生物間の関係が生徒に明確に理解されるものでなければならないと考える。また、捕食者と被捕食者の数量関係が観察、実験をとおして明確に提示されるような教材でなければならないと考える。さらに、身近な自然に生息する動植物を用いることにより、生徒は自分たちの身の回りの自然環境へ目を向け、食物連鎖の確かな理解を深めることができると考える。

ア 昆虫類を用いて食物連鎖の教材を開発する意義
 身近な自然の中に生息する生物の教材化を考えたときに、ホニュウ類や鳥類などのセキツイ動物は、材料として入手しにくく飼育に手間がかかることが考えられる。
 それに対して、無セキツイ動物の昆虫類は、その種類数と個体数が非常に多く、生徒も自然と目に触れる機会が多い動物であり、その多様性から見て様々な観察、実験に利用することが可能であると考える。さらに、昆虫類は一個体の大きさが比較的小さいことや一世代の長さが短いことから飼育しやすく、実際に観察できる材料としてだけではなく、継続した定量的な実験のデータを得るために好都合な材料と考える。
 したがって、昆虫が餌を食べる場面を実際に観察したり、昆虫を飼育して摂食量のデータを取るなどの直接体験を行わせ、さらに得られたデータを基にして生物の量のバランスを考察させるような教材を開発して利用することによって、食物連鎖の理解を深めさせることができると考えた。

イ コンピュータシミュレーションを用いて食物連鎖の理解を図る教材を開発する意義
 理科の学習においては、限られた観察、実験の結果から類推する力が重要である。特に食物連鎖の学習においては、観察、実験の結果から生物間のつながりの数量関係を類推することが重要であると考えられる。しかし、「生物界のつながり」の学習では、 時間的・空間的な考察を行うためのデ ータを得るために、非常に長い期間の 観察や広い範囲の調査を要したりする 場合が多く、理科の授業の中で、それ らのデータを基にした観察、実験を行 うことは容易ではない。したがって、 食物連鎖における時間的・空間的な大 きな広がりを短時間に視覚的にとらえ られるようにコンピュータによるシミ ュレーション教材を開発し、生徒に模 擬体験をさせることによって、食物連 鎖についての理解を深めさせることが できると考えた。

(3) 食物連鎖の教材開発に関する基本構想図 【図−1】

2 基本構想に基づく指導試案

(1) 指導試案の概要

ア 指導目標
 身近な動植物を用いて生徒に直接 体験をさせるとともに、コンピュー タシミュレーションによる模擬体験 を取り入れて、食物連鎖の理解を深 める。

イ 指導計画の位置づけ
 「生物界のつながり」の発展的な学習として位置づける。

ウ 指導時間(合計4時間)

(2) 指導の展開【表−1】

3 指導試案に基づく教材の開発

(1) 教材に適した昆虫の選定について

ア 教材に適した条件
 
食物連鎖の教材として昆虫を利用する場合、次の点に留意しなければならない。

@ 身近な地域に生息していて、観察、採集しやすいこと。
A 簡易に飼育できること(餌、飼育容器等)。
B 人体に無害であること。
C 摂食量や個体数などの調査データが取りやすいこと。

 昆虫類は食性の違いによって、植物を食べる食植性昆虫と他の昆虫を食べる捕食性昆虫などに分けられる。食物連鎖の教材として捕食性昆虫を見た場合、飼育する際には餌とする昆虫を確保することが難しい。また自然界における摂食量のデータとの比較が難しく利用しにくい面がある。一方、食植性昆虫は飼育する際に餌とする植物が入手しやすく、摂食量のデータが得られやすい。
 食植性昆虫の中で、身近に生息していて飼育しやすいものは数多くいるが、その中で教材化しやすいものとして、コオロギ、モンシロチョウ、オオニジュウヤホシテントウについて検討を加えた。

(ア) コオロギ
 コオロギは、採集や飼育がしやすい昆虫である。しかし、キュウリやナスなどの生野菜を餌とするため摂食量のデータが取りにくい。また、乾燥飼料を用いた飼育例もあるが、乾燥飼料の量と実際の餌となる植物の量との関係が生徒にはとらえにくい面が見られる。
(イ) モンシロチョウ
 モンシロチョウは、飼育した経験のある生徒も多く、比較的なじみのある昆虫である。しかし、野外での成虫の個体数調査は難しく、また幼虫と成虫で餌が違うという点でも摂食量のデータが取りにくい。
(ウ) オオニジュウヤホシテントウ
 オオニジュウヤホシテントウは、家庭菜園でトマトなどのナス科野菜を栽培していると、よく食害にあうことで一般的に知られている昆虫である。6月あたりから10月頃まで採集ができ、餌としてナスの葉を与えるだけなので飼育も容易である。他の食植性昆虫と違い、葉を食べる前と食べた後での特徴的な食痕跡を残すので摂食量のデータが取りやすい。

 以上のことから、オオニジュウヤホシテントウは食物連鎖の教材として適していると考える。

イ オオニジュウヤホシテントウの特徴について
 テントウムシの仲間の多くは捕食性であるが、その中 から食性を植物食に転じたグループが現れたと考えられ ている。その一つがオオニジュウヤホシテントウの属す るマダラテントウ類である。
 本来は熱帯にすむグループで、すべての種類が幼虫も 成虫も植物を食する。日本国内にもいくつかのグループ が存在するが、代表的なものはオオニジュウヤホシテン トウ群とニジュウヤホシテントウ群である。分布する境 界は、年平均気温14℃の等温線にほぼ一致しており、 それより北側にはオオニジュウヤホシテントウが生息し、南側にはニジュウヤホシテントウがいる。
 したがって、岩手県内に生息するのは、オオニジュウヤホシテントウである【図−2】。
 テントウムシ類は捕まると体から臭い液を出すが、こ れは捕食者に対する防御行動の一つと考えられている。
 オオニジュウヤホシテントウは、幼虫も成虫もナス科 野菜を食べる。葉肉だけをすりおろすように食べるため 網目状の食痕が残る【図−3】。したがって、葉をまる ごと食べてしまうチョウ・ガ類の幼虫の食痕とは区別し やすい。以後、文中の「テントウムシ」はオオニジュウ ヤホシテントウを指す。

ウ オオニジュウヤホシテントウの一生について

 オオニジュウヤホシテントウは、原則として、 年1化・成虫越冬である。越年成虫の出現は5月 末から6月初めである。産卵は比較的短期間に集中して行われ、越年成虫は7月中にはほとんどが姿を消す。新成虫は8月上旬に羽化する。夏に羽化した成虫は、交尾は行うが産卵はせずに越冬に入る。ジャガイモなどの畑周辺の森林・やぶ・落ち葉の下で越冬する【図−4】。雌1個体あたりの平均産卵数は約700個である。それを基にしたテントウムシの生存曲線が【図−5】である。

(2) オオニジュウヤホシテントウの摂食量調査
 オオニジュウヤホシテントウは、ナス科植物の葉の葉肉の部分をすりおろすように食べるため、網目状の食痕を残す。この面積から摂食量を調べることができる。

ア 調査の方法

(ア) テントウムシの飼育
 @ 採集してきたテントウムシを、ペットボトルを利用して作った飼育容器に数匹ずつ入れて、そこにナスの葉を数枚ずつ入れて数日間飼育する。
 A ナスの葉を取り替える際に、テントウムシの摂食の様子を観察する。

(イ) 摂食量の調べ方
 @ OHPを使って、テントウムシの食痕を方眼紙に写し取る【図−6】。
 A 方眼紙を食痕に沿ってカッターで切り抜く【図−7】。
 B 切り抜く前の方眼紙の重さから切り抜いた後の方眼紙の重さを引き、食痕の面積を換算して求める。

イ 事前調査の結果
 餌として用いたナスは「紫紺仙台長」という品種を用いた。テントウムシ1匹が1日で食べるナスの葉面積は、2日ごとに4回測定し、その平均をとった結果、約10.3cuであった。

(3) コンピュータを利用した食物連鎖の教材開発
 コンピュータを用いたシミュレーションでは、自分たちが調べたテントウムシの摂食量や個体数などのデータなどを入力することによって食物連鎖の関係が視覚的に表わされるので理解が深まると考えた。

ア シミュレーション教材開発の概要
 教材は、プログラムの作成が苦手な人にも容易にグラフが作れるようにと考えて、市販ソフト(エクセル)を用いて開発した。

イ 教材の概要
 基本構想に基づき、教材開発の目標に従って作成した教材の概要を次に示す。

(ア) テントウの生活史
 シミュレーションのはじめにオオニジュウヤホシテント ウの生活史【図−8】を提示して、テントウムシの一生につ いて理解を深めさせる。
 オオニジュウヤホシテントウは、卵から孵化してから成 虫になるまで約1ヵ月である。その後、活動期になるが餌 となる植物が枯れる頃になると冬眠期に入る。

(イ) テントウムシのいないナス畑
 テントウムシのいないナス畑におけるナスの葉面積の推移を示したグラフが【図−9】である。
 ナスは日照時間が長く気温も高い8月 までは、葉の数をふやし、葉の面積を広 げていく。その後、10月下旬あたりま で栽培が続けられる。【図−9】は、面積 100uのナス畑におけるナスの葉の総 面積の推移を表している。畑の畝間は 50pと考えて、栽培しているナスの株 数200本として計算している。

(ウ) テントウムシのいるナス畑
 テントウムシを飼育して得られた摂食 量のデータと、ナス畑で採集したテント ウムシの個体数を入力して、ナスの葉面 積がどのように推移していくのかを示し たグラフが【図−10】である。
 【図−10】では、ナスの葉が数日間で テントウムシに食べ尽くされることが示 されている。しかし、実際のナス畑では 秋までナスの葉が残っており、捕食者の 存在を考えさせることができる。
 また、カマキリ等の捕食者のいないナ ス畑では、テントウムシの個体数は急激 に増加する。初年度にテントウムシが2 匹しかいないと仮定しても、初年度〜2 年後の個体数は、【図−11】のように増加する。
 テントウムシの個体数が増えすぎると、テントウムシは餌 となるナスの葉を食べ尽くしてしまい結果的にはテントウム シ自体も全滅してしまうことになる。自然界においては、生 物の数量関係はお互いに影響しあい、それぞれの生物のつり 合いが保たれている。
 したがって、ナス畑においても、ナス の葉が食べ尽くされないように、テント ウムシの個体数の増加を止めるような生 物が存在する。ナス畑の野外観察におい て、すでにカマキリ等の捕食性昆虫を確 認している。

(エ) カマキリのいるナス畑
 調査したナス畑の面積と、採集したテ ントウムシの個体数と、ナス畑で確認し たカマキリの個体数を入力して得られた グラフが【図−12】である。
 【図−12】は、カマキリのいるナス畑 において、テントウムシの存在によって ナスの葉面積がどのように推移するのか を表している。【図−10】と【図−12】 のグラフを比較することによって、ナス 畑にカマキリが存在し、テントウムシの 個体数が減らされることで、ナスの葉が 秋まで残っていくことを視覚的にとらえ ることができる。
 【図−13】は、100uのナス畑にお いて、テントウの個体数とカマキリの個 体数が増減を繰り返しながら推移していく様子を表した5年間のグラフである。このグラフから、ナス畑とテントウとカマキリはお互いに関係しあってバランスを保っていることをとらえさせることができる。
 授業の終わりに自然界のつり合いを崩す原因となっていることは、人間の関与によるものが多いことを身近な例から考察する場面を設定した。

4 授業実践及び実践結果の分析と考察

(1) 検証計画

(2) 結果の分析と考察

ア 生物界のつながりや生物界のつり合いについての理解の深まり

(ア) 事前・事後テストの結果と分析
 事前テストと事後テストの正答率を比較してみると、どの項目においても事後の方が高くなっており、生物界のつながりや生物界のつり合いについての理解が深まったと考えられる【図−14】。

イ 食物連鎖に関する開発教材の有効性
 開発教材を使った授業をとおして生徒の意識がどのように変容したかを【表−3】に示す。

 生徒Aは、事前調査において「理科の学習が好き」、「昆虫が好き」と答えており、理科の学習に対して興味・関心が高い生徒である。はじめの授業から自分の生活体験に基づく昆虫についての疑問点をもっていたようである。昆虫を扱う観察、実験を積極的に取り組んでいた。コンピュータを使った授業においては、これまでの生活体験を基にした食物連鎖の事象について相互に関連づけて考えられるようになり、また興味・関心についても更に高まった様子が見られた。
 生徒Bは、事前調査において「理科の学習が好き」だが「昆虫は気持ち悪いから嫌い」と答えていた生徒である。野外での観察やテントウムシの捕食の様子をとおして、昆虫にもしだいに抵抗感が見られなくなってきた。また、昆虫の摂食量の計算では最後までやり通し、学習に対して積極的な様子が見られるようになってきた。
 生徒Cは、事前調査では「観察や実験はめんどうだから嫌い」と答えており、理科の学習に対して興味・関心が高くない生徒である。はじめは学習に対する意欲もあまり見られなかったが、昆虫の摂食量調査では積極的に活動する様子が見られた。またコンピュータを使った学習では意欲的に取り組む姿が見られるようになった。以上のような結果から、開発した教材は学習意欲の向上に有効だったと考えられる。

ウ 身近な自然への興味・関心の高まり
 生徒の感想アンケートの主なものを次に紹介する。

・私たちは現在学校周辺の川にトネリコの木を植え、チョウセンアカシジミというチョウの保護活動を推進している。これは人間が自然を破壊したために、チョウが絶滅の危機にあるのではないかと思う。
・オオニジュウヤホシテントウの飼育で、エサとしてジャガイモとナスの両方を与えたならば、どちらの方を好んで食べるのだろうか調べてみたい【図−15】。
・テントウムシの飼育をとおして、成虫と幼虫は観察できたが、蛹から成虫になるまでの観察もしてみたいと思った。

 事前のアンケートでは、食物連鎖から連想するものとして、「カメレオンがハエを食べる」とか、「ライオンがシマウマを食べる」といったTV番組からの情報が多く、自分たちの身の回りの生物にふれた回答はほとんどなかった。しかし、事後のアンケートでは、上記のような回答が多く見られるようになり、自分たちの身近な自然に意識が向いてきたことがわかる。

5 食物連鎖の観察・実験教材の開発に関する研究のまとめ

(1) 身近な生物を用いて開発した教材について
 身近な地域に生息する生物の中から、ナスとオオニジュウヤホシテントウに着目して食物連鎖の観察・実験教材を開発した。テントウムシを実際に採集、飼育して摂食量を調べることにより、「食物連鎖」が自分たちの身の回りの出来事であることとして理解が深められたことが確かめられた。

(2) コンピュータを利用して開発した教材について
 時間的・空間的な広がりをもっているために実際の観察が困難な「生物界のつり合い」について、自分たちが調査したデータを入力してシミュレーションすることにより、生物の数量関係についての理解が深められたことが確かめられた。

X 研究のまとめと今後の課題

1 研究のまとめ
 本研究は、食物連鎖について身近な地域に生息する動植物を用いて観察、実験を行うとともに、実験の測定値を基にしたコンピュータシミュレーションで生物間のつながりを考察できるような教材を開発することによって、「生物界のつながり」についての理解を深めさせようとしたものである。その結果、次のようなことがわかった。

(1) 身近な地域に生息する生物から食物連鎖の観察・実験に適した動植物を選定して教材化することができた。
(2) コンピュータを利用して食物連鎖の理解を深めることのできる教材を開発することができた。
(3) この教材を使うことによって、生徒たちは食物連鎖の関係を身近な自然の中から見い出し、その量的変化やバランスについて実際に確かめることができ、食物連鎖の理解を深め、身近な自然環境に対しての興味・関心を高めることができた。

2 今後の課題

(1) 昆虫の摂食量調査は、昆虫の種類や生育のステージ、飼育環境の違いによってデータが大きく左右される。したがって、適切な観察の時期や生徒への提示方法などの工夫が必要である。
(2) コンピュータシミュレーションについて、誰にでも簡単に操作できて理解しやすい画面の工夫が必要である。


【主な参考文献】
片倉晴雄著 「オオニジュウヤホシテントウ」 文一総合出版 1988年
大串龍一著 「病害虫・雑草防除の基礎」 農山漁村文化協会 2000年
井村治、二宮正士 「画像解析による昆虫の食害葉面積の計測法」 農業環境技術研究所 1995年



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