岩手県立総合教育センター研究集録(2001)
小学校理科「人と動物のからだ」の学習において呼吸の認識を深める教材活用の在り方に関する研究
−身近な動物の呼吸を観察する教材・教具の工夫をとおして−
北上市立黒沢尻東小学校 教諭 八重樫 浩
T 研究目的
小学校理科「人と動物のからだ」の学習においては、人や他の動物を観察したり資料を活用したりして、呼吸、消化、排出・循環などの働きを調べ、人や他の動物の体のつくりと働きについての考えをもつようにすることが求められている。特に呼吸についての学習では、体内に酸素が取り入れられ体外に二酸化炭素などが出されていることなど、人の呼吸のしくみを理解するとともに、他の動物も呼吸していることを自分なりの考えをもって確かめ、認識を深めていくことが大切であると考える。
しかし、児童は人の呼吸についてそのつくりや働きを理解し、他の哺乳類や鳥類も呼吸していことは予想できるが、それ以外の水や土の中の環境に生息する動物や昆虫なども実際に呼吸していることを認識するまでには至っていない。これは、呼吸を調べる活動が人の呼吸に限られることが多く、人と他の動物と関連させた活動が十分に行われていないことが原因と思われる。
このような状況を改善するためには、人の呼吸を調べる活動と併せて、教材・教具を工夫しながら身近な動物の呼吸を調べる活動を行い、人と他の動物と関連させた学習を進めることが重要である。また、これらの活動をとおして他の動物が人と同じように呼吸していることを児童に実感させ、認識を深めさせることが必要である。
そこで、本研究では、人や身近な動物の呼吸を観察することのできる教材・教具を工夫し、その有効性を授業実践をとおして確かめることにより、人と動物の呼吸について認識を深める教材活用の在り方を明らかにし、小学校理科「人と動物のからだ」の授業改善に役立てようとするものである。
U 研究仮説
小学校理科「人と動物のからだ」の学習において、身近な動物の呼吸を観察する教材・教具を工夫し、それを用いて人と他の動物の呼吸を関連させた学習活動を展開すれば、児童は身近な動物の呼吸を実感し、人と動物の呼吸について認識を深めることができるであろう。
V 研究の内容と方法
1 研究の内容
(1) 小学校理科「人と動物のからだ」の単元において、呼吸の認識を深める教材活用の在り方の基本構想の立案
(2) 基本構想に基づく指導試案の作成
(3) 基本構想に基づく教材・教具の工夫
(4) 単元「人と動物のからだ」第一次「呼吸」の授業実践
(5) 実践結果の分析と考察
(6) 小学校理科「人と動物のからだ」の単元において、呼吸の認識を深める教材活用の在り方についての研究のまとめ
2 研究の方法
(1) 文献法 (2) 質問紙法 (3) テスト法 (4) 授業実践
3 授業実践の対象
北上市立黒沢尻東小学校 6学年 1学級 (男子15名 女子14名 計29名)
W 研究結果の分析と考察
1 人と動物の呼吸の認識を深める教材活用の在り方の基本構想
(1) 小学校理科「人と動物のからだ」の学習における呼吸について
小学校「人と動物のからだ」の学習で扱う「呼吸」は、「体内に酸素が取り入れられ、体外に二酸化炭素などが出されていること」であり、肺などの呼吸器官による外呼吸(ガス交換)のしくみである。また、呼吸にともなう呼気と吸気の温度や水分の変化についてもここでは扱う。
(2) 小学校理科で呼吸の認識を深めることについて
ア 児童の自然認識の深まり
児童の自然認識は新理科教育用語事典において、現象的認識、実体的認識、本質的認識の3つの段階により深まるとされている(【表−1】)。これらの認識の段階を人と動物の呼吸の認識に当てはめた場合、児童がどのような力を付け、学習内容をとらえたかという視点で、認識の深まりをみていく必要がある。
イ 人と動物の呼吸に対する児童の認識の深まりについて
上記の自然認識の深まる過程をふまえ、本研究では、呼吸に対する認識の深まりの過程を、児童が次のような力を付け、下の表のような学習内容をとらえていくことと考える(【表−2】)。
(ア) 現象的認識の段階−「現象をとらえる力」
「現象をとらえる力」とは、身近な現象に対して興味・関心をもち、自分との関わりの中でとらえられるようにすること
(イ) 実体的認識の段階−「分析してとらえる力」
「分析してとらえる力」とは、調べたい現象に対して、内容を項目化してとらえ、これまでの経験をもとにして調べられるようにすること
(ウ) 本質的認識の段階−「類推してとらえる力」
「類推してとらえる力」とは、調べた現象から共通点を予想したり見いだしたりして他の事柄に対しても応用できるようにすること
なお、児童はそれまでの学習や生活経験から、人と動物の呼吸について既に現象的認識の段階にあるととらえ、「現象をとらえる力」をある程度身に付けているものと考える。したがって、本研究で認識を深めるとは、現象的認識の段階における「現象をとらえる力」をベースとして、「分析してとらえる力」や「類推してとらえる力」を付け、実体的認識や本質的認識の段階に深まる過程と考える。
(3) 教材活用の在り方について
第6学年の理科の目標では、見いだした問題を多面的に追究する活動をとおして生物の体のはたらきについての見方や考え方を養うことが示されている。人や他の動物の呼吸を調べる学習において、教材を工夫し活用することは、多面的なものの見方・考え方を育てることにつながると考える。そこで、教材活用の視点として次の3点を重視した。
ア 人と他の動物の呼吸について関連付けて追究できるようにすること
いろいろな動物の呼吸を調べる活動を行うとき、児童は人の呼吸の学習内容や、調べた方法をもとにして考えを進める。他の動物が人と同様に調べられることにより、児童は、人と他の動物の呼吸について関連付けて追究することができ、呼吸の認識を深めることができると考える。
イ 人以外の他の動物の呼吸について、自分の考えをもち追究できるようにすること
児童がいろいろな動物の呼吸を調べるとき、調べたい動物や調べる内容・方法について自分の考えをもつであろう。児童一人一人が人の呼吸のしくみを理解し、他の動物の呼吸を調べるための考えをもって追究することが必要であると考える。
ウ 複数の素材や方法を用いて調べることができるようにすること
児童が、すべての動物が呼吸をしていると類推し結論付けるためには、人の呼吸とともに複数の種類の動物について調べる活動が必要である。また、人と動物の呼吸を調べるための共通の観点をもち、観察・実験を行うことは科学的な見方や考え方、多面的なものの見方を育てることにつながると考える。
(4) 人と動物の呼吸の認識を深める教材活 用の在り方の基本構想図
基本構想をもとに、人と動物の呼吸の認識を深める教材活用の在り方について【図−1】のように基本構想図を作成した。
2 基本構想に基づく指導試案の作成
(1) 指導試案
人と動物のからだの学習において、呼吸の認識を深める教材活用の在り方についての指導試案を次の【表−3】のように作成した。
(2) 検証計画
授業実践をとおして指導試案の妥当性をみるために検証計画を作成し、事前と事後にテスト及び調査を実施し、検証を進める(【表−4】)。
3 基本構想に基づく教材・教具の工夫
(1) 呼吸を観察するための身近な動物の教材化
身近な動物を教材として取り上げるための視点として次の2点を重視した。
ア 児童の生活範囲の中で見られ、家庭から持ちよっ たり採集したりすることが可能であること イ 呼吸の観察・実験が児童にも可能であること
上記2つの視点のもとに、児童が採集したり、教師側で準備したりするなどして呼吸の観察・実験を行った(【表−5】)。
(2) 観察・実験を行うための教具の工夫について
ア 人の呼吸の観察・実験をするための教具の工夫
人の呼吸で調べた観察・実験方法が、他の動物の呼吸を調べるときにも応用できるような形で行うことが必要であると考え、次の点に留意した。
(ア) 酸素や二酸化炭素、水蒸気などの気体が調べられること (イ) 石灰水や、火を燃やすなどの既習の観察・実験方法で調べられること (ウ) BTB溶液や気体検知管、検圧法など未習の観察・実験方法なども行えること
以上のようなことを念頭に人の呼吸を調べる装置の基本形としてペットボトルを用いて下の図のような実験装置を製作した(【図−2】)。
イ 動物の呼吸の観察・実験するための教具の工夫
動物の呼吸を観察・実験するときの教具の工夫の視点として次の2点を重視した。
・児童の観察・実験が可能であること
・人の呼吸の観察・実験との関連性をもてること
ウ 工夫した教具の概要
上記2つの視点のもと、次のような教具の工夫を行った。
(ア) 動物の呼吸による酸素の消費を調べる検圧法と呼ばれる実験方法である。従来、中学校や高等学校などでの実験方法として紹介されているものであるが、動物の呼吸を確かめる方法として小学校高学年でも活用できるよう実験装置を改良した(【図−3−(ア)】)。 (イ) 動物の呼吸による二酸化炭素の増加を調べる実験方法で、動物の呼吸室および容器内の呼気を吸引する器具を改良し、容易に動物の呼吸を確認できるようにした(【図−3−(イ)】)。
4 授業実践及び実践結果の分析と考察
(1) 授業実践の概要
ア 人の呼吸についての実験
【図−4】、【図−5】は人の呼吸の実験の様子である。【図−4】は、4〜5回呼吸を行いペットボトルに呼気を閉じ込めているところである。呼気を閉じ込めることによって温度の変化やペットボトルのくもりによる水分の上昇などの変化の様子を観察することができる。【図−5】は、ペットボトルに閉じ込めた呼気の中でろうそくを燃やし酸素の減少を確かめる実験である。事前に空気を閉じ込めた場合の時間(数を数える)を確かめているので、その時間と比較することによって呼気中の酸素の減少を確かめることができる。また、呼吸後のペットボトルの中の呼気を吸い出し、石灰水やBTB溶液に通して二酸化炭素の増加を調べた。さらに、演示実験により、気体検知管を使って呼気中の酸素濃度の減少や二酸化炭素濃度の増加を調べたり検圧法により酸素の減少を確かめたりした(【図‐6】)。
【図‐7】は児童が実験で活用した学習プリントである。呼吸についていろいろな観点で調べることができた。
イ 動物の呼吸についての実験
【図‐8】は、検圧法によって毛虫(アメリカシロヒトリ)の呼吸を調べる実験である。呼吸室に毛虫を10匹程閉じこめた後、赤インクの動きを観察し2分毎に移動距離を測定した。毛虫の場合は赤インクの移動の様子が目視で確認することができ、昆虫の呼吸を実感することができた。【図−9】は、検圧法によってカタツムリの呼吸を調べる実験である。カタツムリの呼吸については対照実験との差がほとんど見られず十分な結果は得られなかった。【図−10】はBTB溶液を使ってカエルの呼吸を調べる実験である。スチロール棒ビンの呼吸室にカエルを密封して、2分毎に中の空気を吸い出してBTB溶液に通した。BTB溶液はアルカリ性の青色から酸性の黄色に変化し、二酸化炭素の増加を確認することができた。【図‐11】は同様にしてハムスタ−の呼吸を石灰水で調べる実験である。石灰水が白く濁る様子が観察され二酸化炭素の増加を確認することができた。
(2) 実践結果の分析と考察
ア 人と動物の呼吸についての認識状況
人と動物の呼吸に対する認識の深まりの状況をみるためにテスト問題を作成し、事前及び事後に実施した。
(ア) 分析してとらえる力の形成状況
【表‐6】は、「分析してとらえる力」の形成状況について表したものであり、学級全体、上位群、下位群において有意差が認められた。
この結果から、児童は、人の呼吸では酸素を取り入れ二酸化炭素などを出していること、呼気と吸気の温度や水分の違いがあることなどを理解し、また、それを調べるための観察・実験方法について理解しながら、「分析してとらえる力」を高めていくことができたと考えられる。このことから、上位群、下位群の児童とも、実体的認識の段階に認識を高めていく上で指導に効果があったと考えられる。
(イ) 類推してとらえる力の形成状況
【表‐7】は、「 類推してとらえる力」の形成状況について表したものであり、学級全体と上位群において有意差が認められた。このことから上位群の児童は、人の呼吸を調べた方法が他の動物にも応用できることを理解するとともに、人と動物の呼吸の共通点を予想したり見いだしたりすることができたと思われる。また、「すべての動物が呼吸しているらしい」と類推するためには、人と動物の呼吸を関連付けて考え、人も含めて複数の動物を調べる必要性のあることに気がついていると考えられる。これらのことから、上位群の児童には本質的認識の段階に認識を高めていくうえで指導に効果があったと考えられる。また、下位群の児童には有意差は認められなかったことから、下位群の児童においては、人の呼吸で学習した内容と動物の呼吸を関連付けてとらえることが十分ではなく、「すべての動物が呼吸しているらしい」と類推するための根拠が明確ではなかったと考えられる。下位群の児童においては、人の呼吸と動物の呼吸の基本的な内容をとらえたうえで、関連させてとらえられるような指導を行いながら「類推してとらえる力」を養い、本質的認識の段階に高められるような手だての工夫がさらに必要である。
イ 単元「人と動物のからだ」第一次「呼吸」の学習内容の習得状況
指導試案に基づく授業実践で学習した内容の習得状況をみるためにテスト問題を作成し、事前及び事後に実施した。 【表−8】は単元第一次「呼吸」で学習する内容の習得状況について学級全体と各能力群の事前及び事後テストの結果を平均点、標準偏差、及びt検定(平均の差)を用いて表したものである。単元第一次「呼吸」全体の学習内容の習得状況は、事後で正答率の平均が学級で約76%であり学習内容については概ね理解できたものと考える。また、t検定の結果、学級全体、上位群、下位群において有意差が認められ、学習内容の理解において指導に効果があったものと考えられる。
ウ 学習に関する意識の変容状況
【表−9】は、理科の学習に関する意識の変容状況について、χ2 検定(変化の検定)を用いて表したものであり、設問4に有意差が認められた。このことから、本研究における呼吸の認識段階を深めていく授業実践が、児童に予想を立てて学習を進めることの必要性を意識させるうえで大きな関わりをもつものと考えられる。本研究では、児童の認識状況が本質的認識の段階に高まっていくためには、「類推してとらえる力 」の形成が必要と考え実践を行った。人の呼吸について分析し学んだことを、次の動物の呼吸の学習に生かし、予想を立てたり応用したりしながら学習を進めることにより「類推してとらえる力」が育つものと考えた。
さらに、人と複数の動物の呼吸を同様の方法で確認することにより、「すべての動物が呼吸しているらしい」と予想し、結論付けてきた。このような学習の流れが、既習経験をもとに予想を立てて学習をすることの必要性を児童に意識させるうえで効果があったものと考えられる。
エ 人と動物の呼吸の認識を深めるための活動を取り入れた学習に関する意識の状況
【表−10】は、人と動物の呼吸を調べるための観察・実験に対して、技能的に児童がどのように感じ、また、動物の呼吸をどのようなときに実感したかのアンケートの調査結果である。
下の結果では、児童にとって今回行った人及び動物の呼吸の観察・実験は少し難しく感じられるものであった。
これは、実験した動物によっては必ずしも満足のいく結果が得られなかったり、動物の扱いに不慣れなために実験がスム−ズにいかなかったりしたことが原因であると思われる。実験する動物に関しては、児童の調べたい動物、扱いの難しさ、実験結果の得られやすい動物を選択するなど、実験の準備に対する配慮が必要である。また、複数の実験内容を導入する場合は、グループ毎に実験を振り分けて調べるなど授業展開の工夫を行い、観察・実験の基本的な内容が定着できるよう配慮する必要がある。
次に、どんな時に呼吸を実感したかの調査ではBTB溶液の反応及び赤インクの動きと答えている児童が多い。このことは、呼吸の観察・実験方法として結果が視覚的によりはっきり観察できる現象が児童にとってわかりやすいと考えることができる。このことから、今回工夫した実験装置は児童が視覚的に確認できるものであり、効果があったと考える。
オ 学習に対する児童の感想
【表‐11】は、呼吸の学習に対する児童の感想である。人の呼吸とともにいろいろな動物の呼吸について確かめられたことに対する驚きや呼吸について新たな認識を示す感想を書いている児童もみられた。
5 小学校理科「人と動物のからだ」の学習において呼吸の認識を深める教材活用の在り方に関する研究のまとめ
小学校理科「人と動物のからだ」の学習において、人と動物の呼吸の認識を深める教材活用の在り方について仮説に基づき、授業実践を行うことによって明らかになったことは以下のとおりである。
(1) 人と他の動物の呼吸を関連させて追究できるよう教材活用の在り方を工夫したことにより、児童は、人の呼吸の学習で学んだ内容を他の動物の学習にも応用しながら追究することができた。また、このような学習の過程で、児童は、「分析してとらえる力」や「類推してとらえる力」を高め、人と動物の呼吸について認識を深めることができた。 (2) 人と動物の呼吸を実感できるよう実験装置を工夫したことにより、児童は、人と動物の呼吸について認識を深めることができた。
ア 人の呼吸の実験装置を工夫したことにより、人の呼吸をいろいろな観点から観察・実験したり、人と動物の呼吸を関連させて追究したりすることができるようになった。
イ 動物の呼吸の実験装置を工夫し、呼吸の有無が視覚的な変化によってとらえられるようにしたことは、動物の呼吸を実感し、認識を深めていくうえで効果的であった。
(ア) 検圧法を用いた酸素の消費を調べる実験装置では、3つのアタッチメント方式にし、フェライト磁石を用いたことによって、従来、中学校や高等学校などの実験の方法として紹介されていた手法を、小学校高学年でも操作可能なレベルにすることができた。
(イ) 動物の呼吸室や吸引器具などの装置を工夫したことにより、昆虫など小さな動物の呼吸を容易に実験することができた。(3) 土や水の中の環境に生育する動物や昆虫など、呼吸していることが児童にとって意外性の感じられる素材をあつかい、観察・実験をとおして確かめられたことは、児童が動物の呼吸に対する認識を深めていくうえで効果的であった。 (4) 自分の考えをもって追究できるようにするためには、複数の観察・実験を行う必要がある。観察・実験の基本的な内容を定着させるうえで、児童に混乱が生じた。特に、下位群の児童に混乱の度合いが大きく、観察・実験の基本的な内容を十分考慮したうえで導入する必要がある。 (5) 児童にとって、観察・実験が技能的に難しい面がみられた。酸素の消費を調べる検圧法の実験装置による実験では、実験操作の習熟の時間を設けるなど導入に際しては配慮が必要である。
以上のことから、身近な動物の呼吸を観察する教材・教具を工夫し、それを用いて人と動物の呼吸を関連させた学習活動を行うことは、人と動物の呼吸の認識を深めるうえで効果的であったと考える。
X 研究のまとめと今後の課題
1 研究のまとめ
本研究では、人や身近な動物の呼吸を観察することのできる教材・教具を工夫し、その有効性を授業実践をとおして確かめることにより、人と動物の呼吸について認識を深める教材活用の在り方について、次のような点を明らかにすることができた。
(1) 人と他の動物の呼吸を関連させて追究する学習活動を行うことは、児童が人と動物の呼吸について認識を深めていくうえで効果的であった。 (2) 身近な動物の呼吸を観察するための教材・教具を工夫することにより、児童は人以外の動物の呼吸について実感することができ、呼吸について認識を深めていくうえで役立つことが明らかになった。
2 今後の課題
動物の呼吸を調べるための観察・実験方法をさらに改善するとともに、身近な動物の中から児童が取り組みやすく、効果的に結果が得られるような動物を選定することにより、児童にとってより探究心のもてるような活動の展開を工夫することである。
【参考文献】
文部省 「小学校学習指導要領解説 理科編」 東洋館出版社 1999年
井口尚久 「 新理科教育用語事典」 初教出版 1991年
理科教育学会 「理科教育学講座3 発達と科学概念形成」 東洋館出版社 1992年
大塚誠造 監修 「 原色図解 理科実験大事典 機器構造・操作編 」 全教図 1981年
伊神大四郎・大塚誠造・小林学 「中学校理科観察と実験の事典」 第一法規出版 1973年