新学期を迎える子どもの心

教育相談室長   大阪 匡洋
  完全学校週5日制が実施されて、1年が過ぎようとしています。学校では、もうすぐ始まる新学期に向けた取り組みが進められていると思います。
 新学期は子どもにとって、新たな環境の中で新しい友だちとの出会い、先生との出会いがあり、夢や希望に胸を膨らませる期待の多い時期です。そして、教師にとっても、4月は子どもたちとの新たな出会いがあり、これから始まる1年間の教育活動の礎となる重要な時期です。
 しかし、子どもたちの中には新たな出会いに一抹の不安や緊張を抱く子どももいます。当センターの教育相談室において、1年間の中で教育相談の多い時期は5月と9月です。その相談の多くが集団不適応に関する内容であり、その背景には人間関係に関することが多くあります。
 このようなことを考えるとき、子どもにとって新たな出会いとなる新学期の学校生活への適応は、大きな意味をもちます。子ども一人一人が自己の存在を実感でき、精神的に安定していることのできる場所、つまり、心の居場所が学級にあることが集団適応につながります。子どもの心の居場所をつくるためには、(1)子どもに存在感をもたせること、言い換えると子どもが集団で必要とされる存在であること、(2)共感的な人間関係を育成すること、(3)子どもに多くの自己決定の場を与えることが大切です。そして、人間関係を豊かにする指導を具体的に構想してみることです。
例えば、教師と子ども一人一人が親和的な関係をつくるための工夫をすることです。入学式や始業式などのスタートにおいて、教師と子どもとの「良き出会い」を構成的グループエンカウンター等を取り入れながらつくることです。
 また、子どもの思いや願いを出し合い話し合って「理想とする学級像」をつくりあげることです。子ども同士がお互いに知り合ったら、少し時間をかけて理想とする学級生活のイメージづくりをすることです。
 この二つを4月のスタートに丁寧に行うことが、子どもの学級への集団適応を図るために大切です。このようなことを行うことで、子どもが「今年は何か良いことがありそうな気がする」「みんなで目標を実現するために取り組もう」という意識をもつことになり、学級が醸成されていくことにつながります。
 ある電話相談の中で、母親が「私たち親や子どもは担任を選べないんですよね」とつぶやいた言葉が今でも心に残っています。子ども一人一人の新学期に対する期待と不安・緊張をしっかりと感じ取り、子どもの心の拠り所になりながら、子ども相互の関係をつくってほしいと思います。
 きらきらと輝く子どもとの出会いに、胸をわくわくさせながら、もうすぐ始まる新学期を迎えたいものです。