41号コラム(2009.08.12)
『不易流行』
 当センターで毎年発行している『岩手県教育史資料』第68集(昭和12年)の編集作業を現在行っています。今年10月の発行を予定しており、上梓後には県内各校へ送付しますので、ぜひご一読をお願いします。
 さて、その編集作業中、『岩手教育』(昭12・10月号)の記事に、一際興味深いものを見つけました。「学力を向上せしめたる経験と其の方法」という題で、いくつかの小学校から寄せられた原稿です。その中から、長くなりますが、紫波郡日詰小学校長の原稿を紹介します。

 教壇生活二十数年、児童の学力を著しく向上せしめたりと自信し得る経験を有せざる ことを恥ぢ申候へども、左の条々は、殊に大切なることゝ存じ候。
 一、教師の実力豊富なること。
 一、教師自身常に向上の一途をたどり、常に勉強努力して止まざる人たること。
 一、児童生徒の実力を向上せしめんとする情熱を有し、積極的に倦まず撓まず努力する教育者たること。
 一、児童生徒が可愛くてたまらない教師たること。
とし、さらに続けて、
 一にも二にも教育者自身の実力と、自信と、熱意とを問題にして、教授の方法とか、設備とか等は、第二義的の様に感ぜられ候も、
 一、復習の重視並に方法の工夫。
 一、記憶(論理的記憶のみならず、機械的記憶)重視並にその方法工夫。
 一、聴覚のみならずあらゆる感覚に訴へて学習せしむる様工夫すること。
 一、応用及び発表の重視。
 一、各教科の横並に縦の連絡を有機的たらしむこと。

とありました。
 いかがでしょう。実力と熱意にあふれる教師像に言及した前段も、具体的な事項を指摘した後段も、確かに言い回しは文語文で古いのですが、その内容は既視感を覚えるようなものではないでしょうか。同誌別号でも学力向上を取り上げて、校内研究授業や他校との研究会などで効果を挙げている等の報告も掲載されていました。学力向上は古今共通の教育課題であり、その解決に向かう教師の真摯な姿勢もまた共通であることを、改めて知る機会となりました。(吾)
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